三日後。
俺は大和の指定した地である平原に来ていた。
勿論ルーミアと諏訪子も一緒だ。
今回は戦ではなく、顔を合わせての降伏勧告の様なものだ。
この機会を逃せば後は戦が控えるのみ、実質今日が平和的解決を望める最後のチャンスだ。
村人達には遠足と言ってあるが、近しい巫女には仔細を伝えてある。
信仰の形が変わるんだ、知らせる義務が俺には有る。
あの後案の定起き出してきた諏訪子を加えて朝まで犯し犯されつつ、どうにか現状打破の糸口が見付かった。
功労賞のルーミアには精子三回分を追加しておいた。
これで暫くは大人しくなるだろう。
っと、話が逸れたな。
攻撃手段の乏しさを補う方法、それはエンチャントを使いまくる事だった。
エンチャントは自身が場に出ている限り、永続的な効果を齎すスペルだ。
それで俺を強化しまくり圧倒的かつ破滅的な暴力でねじ伏せる。
随分と短絡的な解答だったが、案外そういったものの方が良いかもしれない。
ただエンチャントも完全じゃない。
破壊する手段には事欠かない為、イマイチ安定性に欠けるのも確かだった。
そう、確か「だった」だ。
試しに諏訪子に掛けた所、弾かれずにちゃんと効果も発揮した上、エンチャント破壊スペルを使わない限りエンチャントを破る事も出来なかった。
まぁ、エンチャント破壊スペルの代表である『解呪』が名前の短さで弾かれ、慌てふためいたのもいい思い出だ。
まぁそんな訳で、今の俺はエンチャントという後ろ盾を得て非常にノリノリだ。
どんな攻撃もクリティカル扱いだぜヒャアッハハァー!
「ケイ、ちょっとおかしくなってるよ」
「何を仰る第一夫人。この俺に不完全な所等有りはしないさ」
「はぅぅ……」
珍妙な呼ばれ方が恥ずかしいのか、両手で顔を隠すルーミア。
その仕草も可愛いぞ?
まぁ若干の寝不足によるハイっぷりは否定しない。
この嫁幼女二人の所為だが。
前日までは特訓だ、つって全力全開でトレーニングしたのに前日の休み返上でセックスとか馬鹿だろ。
休ませろよ。
「でもなんだかんだで契も楽しんでたし」
「黙らないと後ろからぶち込むぞこの淫乱雌蛙が」
「あーうー!?」
言葉責めに身体を跳ね上げて悦ぶ諏訪子。
口で幾ら否定しても身体は正直だぞ?
というか良い感じに調教の成果が出てるな、二人とも今ので愛液垂れてるぞ。
「っと、馬鹿やってる間に着いたみたいだぞ、奴さん」
眼前に降り立った人影は四つ。
内訳は男が一人、女が二人、仮面を被った謎の人物が一人。
見た感じだと仮面の人物が、向こうが指定した見届け人だろう。
女の内、背の高い青髪の美人が一歩前に出る。
「私は大和の国の神、八坂神奈子。貴殿の国の新たなる支配者となる者だ」
おーおー、言うねぇお姉さん。
威厳たっぷり威圧感もたっぷりに言い放った神奈子に対し、仰々しく腰を折ってやる。
「此度は遠路遥々ご苦労な事で。宴の用意は無いが、代わりに余興の準備が有る。今日は其方で楽しんで頂きたい」
「人間風情が随分と無礼な口を訊くじゃない、頭が高いわよ下郎!」
背の低い女が口喧しく騒ぎ立てる。
俺はその女を一瞥してニヤリと歯を剥いてやった。
「ピーチクパーチク騒ぐんじゃねぇよ、このちんちくりん」
「なっ、何ですって!? 私を誰だと思って」
「名前も知らなければ興味も無ぇよ。いいから黙ってろよ、へちゃむくれ。俺はこっちの綺麗な姉さんと話が有るんだ、金魚の糞は大人しくしてろ。……白符『信仰の足枷』」
何やら不穏な動きを見せようとする女を先に封じておく。
その場から動く事も喋る事も出来なくなり動揺を滲ませる女を捨て置き、俺は神奈子に向き直った。
俺の使った能力に多少驚いたものの、その美貌を崩してはいなかった。
「失礼したな。俺は浅学なもんで、神に対する言葉の使い方が解らん。そこは、まぁ、目を瞑って貰えれば有り難い」
「……お前は面白い人間だな。どうも普通の人間とは違うらしい」
「あんたも神に違わぬ美しさじゃないか。正直、目を合わせているだけで胸が高鳴りそうだ」
「世辞はいい。豊岡姫に掛けた呪いは後で解いてやってくれ」
「気が向いたらな」
ぷい、とそっぽを向きつつも若干頬に赤みが差している。
この姉さん純情だな。
大和の神も可愛いじゃないか、とほくそ笑みながら俺は口を開いた。
「自己紹介が遅れたな、俺は望月契、ただの人間だ。こっちがこの国を取り纏めている神、諏訪子。こっちは妖怪のルーミア。二人共俺の嫁だ」
「は……?」
大和の神一同が──仮面の奴は解らなかったが雰囲気で──ぽかんとした。
そりゃそうだろう、一国の主が人間と妖怪を引き連れ、更には人間が夫だと言うのだから。
後ろに立っていた男が最初に我を取り戻し、その顔を怒りに染めていく。
「我等を愚弄するか!」
「うっせーよおっさん、俺はこの可愛い姉さんと話してるんだ。その暑苦しい筋肉達磨みたいな身体を揺らすんじゃない、汗臭いのが服に移るだろ。どうしても俺と話がしたいなら、まず身体を洗ってこい」
「ぐ、青二才風情が調子に乗りおって!」
「白符『静寂の捕縛』」
唱えたと同時、男の動きが止まる。
そっちの口喧しい女とは違って言葉は喋れるが、手足を動かす事は出来ない。
やれやれ、と呆れた様に肩を竦める。
どうも大和の神は堪え性が無い。
──それだけの誇りが有るのか、それだけに驕りが有るのか、なんつってな。
尊大で自信に溢れ、誇りと矜持を抱くのは別に構わない。
それが神というものだろうし、神足る存在に押し上げている理由でも有るからだ。
だがそれを俺に押し付けるのは気に入らない。
やるなら内輪でやれ。
正直、生意気な奴は男女問わず嫌いだ。
それもただの反抗心からじゃない、意地だの誇りだの下らないものに自分の在り方を歪められて満足してる奴等は死ねばいい。
「話が逸れたな、失礼した。ただまぁ、俺達もはいそうですか、と国を渡す訳には行かない。大切な民を無能な愚鈍に預ける程、お目出度い訳でも無いしな。そこで一つ提案が有る」
「提案とは?」
神奈子が威厳を滲ませたまま問う。
たが目には興味と好奇の色がありありと浮かんでいた。
意外と子供っぽいのか?
失礼な事を考えつつ、俺は口を開いた。
「何、簡単な事だ。一騎打ちをして勝った方がこの国を治めればいい」
「馬鹿を言うな! 貴様達の様な矮小な存在に付き合う道理が何処にある!」
「だからうっせーよおっさん、俺はこの麗しい姉さんと話してるんだ。次喋ったら痛い目に遭わせるぞ、この穀潰し」
「貴様ぁ! 覚悟は「白符『太陽の槍』」ぐふっ」
太陽から降り注ぐ日光が一本の槍となって男の腹部を貫く。
槍はすぐに霧散し、命中した腹部には傷一つ付いていないのが解る。
だが男は苦悶の表情を浮かべて後ろに倒れ込んだ。
それに神奈子が驚きの顔を向ける。
──お、可愛い。神奈子可愛いよ神奈子。
妙なテンションの俺はその顔にニンマリしつつ、次の言葉を発した。
ここは俺が主導権を握る場だ。
選択権は与えるが、それを決めるのも俺でなければならない。
じゃないと負けるからな。
「少なくともこの地を治めるなら相応の実力を備えているのが望ましい。諏訪子はミシャグジ様と呼ばれている祟り神を纏め上げている祟り神の頂点だ、それを上回る力を持たねば民の求心には程遠い。だからこその一騎打ちだ。ここで俺達を上回る力を見せ付ければ、民も納得して大和の神を信仰するだろうな。そして俺達が勝てば、大和はこの国を治めるに値しないと判断する事も出来る」
「随分と解りやすく野蛮な方法だな」「この国が支配者に求めるのは力だ。それは群体としてではなく、災厄すら従える個としての力。なればこその一騎打ちの提案だ。……受けて頂けるかな、可憐なる神よ」
芝居掛かった口調で喋る俺を見て、ルーミアが肩を揺らして笑いを堪える。
諏訪子はこういった事に慣れているのか、特に反応は無い。
よし、諏訪子は後でらぶらぶえっち、ルーミアは縛って見学だな。
飴と鞭の使い分けが肝要だ。
巧くやれば更に従順な嫁幼女になる。
嫁で従順で幼女とか最高だな。
アホな事を考えていると、神奈子は神妙な面持ちで視線を送ってきた。
イヤン、お兄さんゾクゾクきちゃう!
「……確かに一理有る。それに二人を拘束する呪術さえ使いこなす人間を夫とするくらいだ、久し振りに楽しく暴れられそうじゃないか」
「あぁ、勘違いしてるかも知れんから言っておくが一騎打ちの相手は俺だぞ」
「は?」
神奈子はぽかんと口を開いて呆けた。
その顔もそそるなぁ、大和の神もなかなか良いじゃないか。
だがそこの生意気なへちゃむくれ、テメーはダメだ。
失礼な考えを読み取ったのか、口喧しい女が口パクで悪態を吐いているが無視だ無視。
呆然としている神奈子に、今まで黙っていた諏訪子が口を開いた。
「信じられないかも知れないけど、契は私よりずっと強いんだよ。私じゃ一撃も与えられなかった」
「……本当に人間か?」
「私も最初は受け入れられなかったけど、契は人間だよ。……人間なんだよ」
大事な事だから二回言った様だ。
というか諏訪子、何で二回目は少し憂いを秘めて言ったんだ?
普段と違うミステリアスな諏訪子も可愛いぞ、思わず抱き締めたくなる。
安心しろ、と言葉の代わりに諏訪子の頭を撫でてやる。
ちなみにいつものケロ帽子は洗濯中だ。
予想以上に臭いが付いてたので盥の中に放り込んで置いた。
今頃は巫女少女達が俺の下着や諏訪子、ルーミアの精液塗れの浴衣にキャッキャしながら洗っている所だろう。
まぁ、神奈子が呆けている間に話を進めて置こう。
交渉は勢いとハッタリが大事だ。
「一騎打ちについてだが、色々と制約を決めて置きたい。まず、一騎打ちを行う者以外は戦いに干渉してはならない。これは勝負を汚す行為だ、破った側は即座に一騎打ちでの敗北を得るものとする。無論、干渉してきた者は誰であろうと俺が叩き潰すからルーミアと諏訪子もそのつもりでな?」
視線を向けると二人共、首を縦にこくこくと振っている。
うん、その反応は可愛いぞ。
後でなでなでしてやろう。
視線を戻せば立ち直った様子で腕を組み、発言の内容を吟味している神奈子が目に映る。
異議は無かった様で、うむ、と一つ頷いて見せた。
──Eカップだな。
腕を組んだ事で強調された胸がぷるんぷるんと震えている。
良い乳だ。
ナイスプリン。
気取られぬ様に目は神奈子の顔から外さずに、俺はその乳を堪能しつつ次の言葉を発した。
「第二に、相手を殺してはならない。これはまぁ、後腐れ無い戦いにする為だな。そこのへちゃむくれや暑苦しいおっさんならまだしも、あんたの様な美しく綺麗で可愛い人を殺めると罰が当たる。それに殺しが有りなら毒や罠、人質だって用意するからな俺は」
前半に疑念、中盤に羞恥、後半に驚愕を滲ませる神奈子。
既に二人も無力化している為に、人質という言葉に真実味を感じたらしい。
それに次に定める勝敗条件を効果的に運用させる為の布石の様な意味も有る。
本音は俺の実戦経験の乏しさをカモフラージュする為でもある。
殺し合いではなく、お遊び形式というイメージを前面に押し出す事で俺の動きを或る程度誤魔化せるしな。
これについては異議を唱える前に次へ移った方がいい。
すかさず俺は口を開いた。
「第三に勝利条件を相手の気絶、敗北条件を自らの意思による降参と定める。これは危なくなった俺が死ぬ前に勝敗が決まる様にする為の制定だな、余りあんたには関係無いかもしれん」
これは言った通りの意味だ。
どれだけ力の差が有ろうとも、自ら降参を宣言しない限り戦闘は続く。
俺が負ける為にも必要な事だ。
神奈子は怪訝な顔をしつつも承諾した。
そりゃそうだろう、今まで疑問に思う所は有っても何一つ向こうに不利な条件は無いのだから。
それに相手が人間である、という意識も多分に作用している。
存在としては格下の人間に対し、公平且つ平等な条件の提示等神に対する侮辱でしか無い。
──まぁ、存分に利用させて貰うさ。俺が人間だという事をな。
時々本当に人間か、と自分でも不思議になるのはナイショだ。
ともあれ、俺は最大の難問だった三つ目を承服させる事に成功した。
後は俺次第だな、と他人事の様に思いながら最後の条件を提示する。
「最後に、どちらが勝っても遺恨は無しだ。この後は諏訪子の社で宴会だからな、楽しい酒の席でつまらない確執とか持ち込んだら酒も刺身も抜きだ。……俺は未成年だから呑めないけどな」
意味が解らず混乱を滲ませる神奈子。
しかし宴会という言葉には反応して耳をぴくっとさせた。
神奈子は酒好き、と心のメモ帳に書き込んでおく。
「俺からの条件提示は以上だ。あんたから何か追加したい条件は有るか?」
「……私が勝ったならば、お前は私の麾下に入って貰おうか」
「別に構わんよ」
「ちょっ、契!?」
いきなり承諾した俺の袖を慌てて引っ張る諏訪子。
何故かルーミアも身体を寄せて来たので、神奈子に片手を上げて待って貰う様頼む。
そして始まる内緒話。
諏訪子が器用に俺の耳へ囁く様に怒鳴る。
「何を勝手に決めちゃってるのさ! 人身御供にされちゃうかも知れないよ!?」
「いやいや、大丈夫だろ。麾下に入るのは元々決まってたしな」
「へ、なんで?」
「諏訪子、戦いに負けたらお前は大和の下に付くだろ。つまりあの姉さんの下に諏訪子が付くに当たり、諏訪子の夫である俺もそこに組み込まれるのは当然の事だろ」
「そうなのかー」
「ちょっとケロ子、私の決め台詞取らないでよっ」
「まぁ改めて言うくらいだ、この一騎打ちで実力を測り近衛程度までは召し抱えるつもりかも知れんな」
「そんな、私の契は渡さないよ!」
「ケロ子、違うでしょ。ケイが私達のものなんじゃなくて、私達がケイのものなんだよ」
「よく解ってるじゃないかルーミア。その理解力に免じてお仕置きは無しにしてやろう」
「何考えてたの?」
「諏訪子を抱いている間縄で縛って放置してやろうかと」
「何考えてたの!?」
やるじゃないかルーミア、同じ言葉で意味だけ変えてくるとは。
諏訪子は納得した様なので一先ず解散。
俺は神奈子に片手を上げて話し合いが終わった事を伝える。
「悪い、待った?」
「いや、全く」
待ち合わせのカップルみたいな遣り取りだなコレ。
「それじゃあ、始めるとするか。準備は出来たか?」
「あぁ、問題無い。開始の合図は?」
「要らねえよ、いつでも掛かってこい」
直後、風が爆ぜた。