※この作品はR-18です。

東方恋人探   作:一ノ瀬 崇

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一先ず帰郷。そして妹紅の育成計画。

 あの後どうにか妹紅の怒りを鎮め許して貰ったのが深夜四時。

 腰を振りながら「にぃにはもこうのだんなさまなんだからね!」と搾り取ってきた妹紅に若干ヤンデレの気配がした。

 ヤンデレはノーサンキューだったので昼前まで再度調教を施し、取り敢えずの教育を終えた。

 帰ったらもう一度じっくり調教して置かなければ。

 

 

 ──ヤンデレ、ダメ、ゼッタイ。

 

 

 決意を新たにした俺は妹紅を膝に乗せ、牛車で諏訪大社へ向けて移動していた。

 月からの追っ手を振り切る意味も有り平城京を後にする事は前々から決めていたが、出掛けに不比等と話せなかったのは少し心残りか。

 とは言え不比等と妹紅は示し合わせていたらしく、今回の出立に際し目立った問題は無かった。

 そう、出立には。

 

 

「にぃに、むぎゅぅ」

 

 

 楽しそうに抱き付いてくる白髪の幼女。

 名前を藤原妹紅と言う。

 

 

 

 

 事が起きたのは京を出立して二日目の早朝。

 早く目が覚めた妹紅は喉の渇きを覚えて水筒を探していた所俺の胸ポケットにしまってある小瓶に気付き、みかんか何かの果汁だと思って飲んでしまったらしい。

 突然聞こえた「ぅ……ぅぅ、ぅぅぅぅうみみゃあ!」という謎の声に驚いて跳ね起きるとあら不思議。

 妹紅が白髪になっていましたとさ。

 

 

 

 

 ……めでたしめでたし、とは行かないのが悲しい所だ。

 妹紅に言い含めて置けば良かったと後悔が止まらない。

 普通の女の子だった藤原妹紅は死に、不老不死の怪物と化してしまった妹紅が誕生したのだ。

 一人の女の子の人生を崩壊所か終了させてしまった。

 そこはかとない罪悪感が押し寄せる。

 妹紅が「これでにぃにと、ずっといっしょだね」と言ってくれた事で多少救われた気持ちになったか。

 四百年以上同じ姿だと告白した俺を怖がらず、化物になった事を責めるでも無く一緒に居られて嬉しいと言ってくれる。

 だがそれは妹紅の人生経験の浅さから来る言動だ。

 十年もしない内に「クサいんですけど」とか「服一緒に洗濯しないでって言ってるでしょ」とか言われるに違い無い。

 あぁ、今から鬱になってきた。

 

 

「にぃに、どしたの?」

「あぁ、何でもない。非情な運命に嘆いていた所サ……」

 

 

 怪しくなった発音をしながら乾いた笑いで答える。

 そんな遣り取りをしながらのんびり牛車に揺られ、各地で団子や魚を堪能しつつも一週間で飽きてしまい妹紅を背負って山中突破。

 最初からこうすりゃ良かったと自分の馬鹿さ加減に辟易しながら、諏訪の国へと辿り着いた。

 先日来た時には気付かなかったが、存外暮らしは豊かな様だ。

 道を行く人々の血色は良く、物乞いや世捨て人の姿は見られない。

 だが俺達は不思議と注目を集めていた。

 恐らく妹紅の髪色の所為だろう。

 見た目は幼女なのに髪の毛は老婆の様に白い。

 近くで見れば艶の有る綺麗な髪なのだが、端から見るとただの白髪だからな。

 

 

「おぉ、あの御方が諏訪大社の……」

「ありがたやありがたや」

「ははうえ、本当に石像そっくりなんですね!」

「流石おにいさん、有名人だね」

 

 

 だから皆が俺の方を見て何事か喋っているのも気にしない。

 爺さんが拝んでたり子供が石像どうのこうの言ってるのも何かの間違いだ。

 そして姿は見えないのにどこからか聞こえてくる、あのリボンをあげた幼女の声がするのも気の所為だ。

 初めて訪れた村にはしゃぐ妹紅の手を引いて足を進める。

 目指すは見上げると首がこきっ、と鳴る長さの階段を越えた先。

 

 

「わぁ、にぃに、くびがこきってなった」

「俺も鳴った。或る意味これをやらないと上れないんだ」

「あはは、こきこき~」

「よし、上るか妹紅」

「はぁい」

 

 

 小さな左手を優しく握り、一緒に石段を上って行く。

 あの時は走って駆け上がったが、地道に一段一段進んで行くのは骨が折れる。

 五分程上って、妹紅は早くも膝が上がらなくなった様だ。

 妹紅のペースに合わせているが、流石にこの石段を八歳の子供が行くのは厳しい。

 額に玉の様な汗が浮かんでいる。

 

 

「大丈夫か、妹紅」

「うんっ、はふぅ、だいじょぶ、だよっ」

「無理するな、少し休もう」

 

 

 石段の端に腰を下ろし、茶屋で水筒に入れて貰った玄米茶を妹紅に飲ませる。

 細く白い喉がこくこくと動き、なんとも色っぽい。

 半分程一気に飲み干して、漸く妹紅は「はふぅ……♪」と息を吐いた。

 頭をくりくり撫でてやると俺の膝に頭を預けて倒れ込んだ。

 

 

「ふにゅぅ~、ひとやすみひとやすみ」

「すっかり甘えん坊になったな」

「にぃににあまえるのは、およめさんのとっけんなのです」

 

 

 そのまま抱き付いてくる妹紅。

 幼少期特有の強い独占欲だろうか、最近甘える回数が増えてきた。

 見た目同じ幼女だし、諏訪子にでも教育して貰うか。

 悲しい事に子育ては諏訪子に任せっ切りだったからな。

 いかんいかん、と沈みがちになる思考を無理矢理引き上げ、石段を見上げる。

 まだ半分程しか来ていない。

 

 

「さ、休憩は終わりだ」

「もうちょっと、にぃにとまったりしたいなぁ」

「ダメだ、余り休んでいると妹紅に根っこが生えて動けなくなるぞ」

「ほわぁっ!? それはやだぁ! もこう、がんばってのぼる!」

 

 

 ぴんと跳ね起き水筒を腰に提げ、ぱたぱた上って行く。

 休憩が長いと時間に反比例してやる気が無くなっていくと言う事を伝えたかったんだが、妹紅はどうやら本当に根っこが生えると思ったらしい。

 純真な所も可愛いな。

 

 

「にぃに、はやくしないと、ねっこはえちゃうよ!?」

「今行くから、そんなに急ぐんじゃない。またすぐに疲れて休憩する事になるぞ」

 

 

 案外元気な妹紅に連れられ、長い長い石段を上って行く。

 白の段差に飽きてきた頃、やっと終わりが見えてきた。

 残すは後二百段程。

 

 

「よし妹紅、勝負しようか」

「しょうぶ?」

「妹紅が先に石段を登り切ったら、晩御飯の後で何かデザートを……って、居ねぇ!? スタートダッシュか、ずるいぞ妹紅!」

「たたかいはひじょうなのです!」

「チィッ、やらせはせんよ!」

 

 

 デザートと聞いて一瞬で七歩先へ走り抜けた妹紅を慌てて追い掛ける。

 子供のパワーには圧倒されるばかりだな。

 しかしただで負ける訳には行かん。

 三段飛ばしで跳ねる様に石段を越え、妹紅を追随する。

 作戦は良かったがそれでは勝てない。

 妹紅の敗因はたった一つ、たった一つのシンプルな答えだ。

 

 

 ──妹紅には石段が長過ぎた。

 

 

 若干ジョジョった思考にニヤリと意地悪な笑みが漏れる。

 確かにスタートダッシュの速さ、タイミングは完璧だった。

 だが残っていた石段は二百余り。

 妹紅の短いリーチではスタートの優位性を存分に発揮出来ない。

 普通にやったら手加減して妹紅を称えて抱き締めてやった所だが、この様な策を弄するならば全力で相手する他無い。

 数秒で妹紅を追い抜きあっさりと石段の頂点へ。

 最後の一歩を大きく踏み切り空高く舞い上がりアクロバティックな技を披露する。

 その名も空中前方七回転捻り。

 しゅたっ、と着地を決めて両手を天高く伸ばす。

 

 

「得点は!?」

「10,0であります、おとーさんたいちょー!」

 

 

 ノリで放った言葉にノリノリで返してきたのは、偶々境内を掃除していた奈苗。

 休憩中にチラッと姿が見えたのでやってみたんだが、流石は俺の子孫と言った所か。

 わぁい、と満面の笑みを浮かべる奈苗にハイタッチを返すと同時、肩で息を吐きながら妹紅が到着した。

 

 

「はぁ……はぁ……はふぅ……、にぃに、はやいよぉ」

「はっはっは、まだまだ甘いな妹紅。俺を出し抜こう等とはマジ片腹ペイン」

「まじ? ぺいん?」

「本当に片腹痛いと言う意味だ、奈苗」

「おとーさん博識ですっ、格好良い♪」

 

 

 再びわぁい、とハイタッチ。

 なんか奈苗とは空気が良いのか、存分に遊べて非常に楽しい。

 よーし、後でパパ奈苗の為にプリン作っちゃうぞー。

 と、アホな事をやっていたら騒ぎを聞き付けて諏訪子がやって来た。

 

 

「契、お帰り。なんか賑やかだと思ったら奈苗と遊んでたの?」

「ただいま諏訪子、いやぁ流石は奈苗。俺のネタに完璧な反応してくれたぞ」

「そりゃあねぇ……なんだかんだで一番契の遺伝子を色濃く受け継いでるからねぇ」

 

 

 呆れか疲れか、微妙な表情で溜息を吐く諏訪子。

 楽しそうで何よりだな。

 

 

「で、そっちの娘は? まさか契の隠し子じゃないだろうね」

「おっと、忘れてた。妹紅、おいで」

 

 

 まだ息の荒い妹紅を後ろから抱き締めて諏訪子の前に立たせる。

 

 

「ほら妹紅、自己紹介だ」

「はふぅ……、はじめまして、ふじわらのもこうといいます。にぃにのおよめさんです、よろしくおねがいします」

「……なにイィィィィィっ!?」

 

 

 諏訪子の驚愕の声で境内の木に止まっていた小鳥達が一斉に飛び立つ。

 しかし諏訪子、その驚き方はどうだ? 

 女の子らしくないぞ? 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ~、しっかし契も飽きずによくもまぁ、幼子を引っ掛けてくるもんだ」

 

 

 ルーミアと神奈子も集め、改めて妹紅を紹介した。

 序でにこの前は話せなかった京で起きた騒動の詳しい顛末を余す所無く伝えると、神奈子は諦めた様に深い溜息を吐いたのだった。

 

 

「待て神奈子、それじゃ俺が幼女趣味の変態みたいじゃないか」

「違うのかい?」

「幼女趣味だったら神奈子に手は出さないだろ」

「……確かに」

「それは解らないわよ、神奈子。私がこうして大人体型になって契としてなかったら、ロリコン街道一直線だったかも知れないわ」

「ちょっ、ちが、ルーミアまで敵か!?」

「だって私達がケイを想って枕や下着を濡らしていたのに、ケイは新しい女の子とにゃんにゃんしてたんでしょう?」

「いや枕は良いにしても下着って、てかにゃんにゃんって古い、それ以前に俺はロリコンじゃねぇ!」

「おぉー、見事な突っ込みですっ。流石おとーさん♪」

「若干ずれてるが奈苗の朗らかさだけが俺の救いだ」

「こうして奈苗は契の肉奴隷になるのだった」

「諏訪子、妙なモノローグ入れるんじゃねぇ! そして奈苗、顔を赤らめるな!」

「そんなっ、おとーさんとだなんて……あっ、あのっ、初めては優しくして下さいね、おとーさん……♪」

「ヌァァァァァァァァァッ!?」

「あ、契が壊れた」

 

 

 岩男のボスラッシュより激しい嫁ラッシュに為す術も無く弄られる俺。

 あぁ、輝夜に謝りたい。

 お前はこんな気持ちで俺に突っ込みを入れてくれてたんだな。

 輝夜への好感度が上方修正された所で嫁ラッシュからは解放された。

 そのまま卓袱台に突っ伏したくなるのを堪え、隣に座る諏訪子に視線を向ける。

 目が合って数秒、こちらの意図を察してくれた諏訪子が立ち上がる。

 

 

「何かお茶請け探してくるよ」

「あ、諏訪子様。それなら私が」

「いや、俺が久し振りに何か作ってみようか。奈苗は後で皿出すの手伝ってくれ」

「はい、了解ですっ♪」

 

 

 うむ、奈苗は聞き分けが良くて助かる。

 後でプリンを多めにやろう。

 諏訪子と連れ立って台所へ向かい、そこで懐かしいルーミアの椅子を見つけた。

 まだ使ってくれてたのか。

 少し心が暖かくなる。

 

 

「で、どうしたのさ?」

「妹紅の事を頼みたくてな」

「もこちゃんの?」

 

 

 意外な用件だったのか、諏訪子はぽけっとした顔をする。

 軽く頬をつついて締まりの無い顔を注意してやった。

 

 

「俺の所為で不老不死になったんだが、未だ中身は八歳の子供でな。独占欲なんかも年相応に強い……取り繕わずに言えば、妹紅がヤンデレになりそうで怖い。助けてくれ」

「あー、確かにその年頃の子は独占欲強いからねぇ。普通なら成長と共に形を潜めるもんだけど、もこちゃん不老不死だし。肉体に精神が引き摺られる事も多々有るし、ひょっとしたらヤンデレになるかもねぇ」

 

 

 ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべて俺を見る諏訪子。

 言うまでも無く、目が語っていた。

 何か見返りを出せ、と。

 すっかり逞しくなってしまった嫁に溜息を吐いて、俺は口を開いた。

 

 

「今日の夜伽優先権で」

「乗った!」

 

 

 ガッツポーズを決める諏訪子。

 なんだかんだでエロエロなままの嫁に、今度は苦笑が漏れた。

 とは言えこれで一安心だ。

 妹紅の暴走は事前に抑えられ家庭円満、俺も刺される心配は無くなった。

 ……ん? 

 何かフラグっぽいな、ブレイクして置こうか。

 

 

 ──代わりに妹紅が息子で刺される事になるのを、妹紅は知らないのであった。

 

 

 よし、ブレイク後もエロくて良い感じだ。

 

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