「んぁっ、あぁんっ、あはぁぁっ! ……んぅっ、また中に出てるぅ♪」
「……流石にそろそろ起きないと拙い、もう正午近くだ」
「やぁん、まだダメよ? 後二回はケイの精子注ぎ込んで貰うんだから」
妖しく笑いながら俺の鎖骨下にキスマークを付けるレミリア。
魅了されていないので昨晩の様に壊す事はしない。
幼子が無邪気に玩具をねだるが如く、レミリアは俺との性交を望んだ。
大人がする様な誘惑で有れば振り切るのは容易いんだが、どうも甘えられると断り切れない。
流されるまま、通算十五回目となる射精を終えた俺はベッドに突っ伏した。
下敷きになったレミリアが「わぷっ」と可愛らしい悲鳴を上げて潰れる。
それでも腰に絡めた足は解かず、尚もカクカク腰を揺らしてくるのは流石と言っても良いのだろうか。
息子はまだまだ元気だが、体力はかなり消耗してきた。
午後には旅糧やその他日用品を買って馬車に積まないといけない。
やれやれ、と溜息を吐く。
万一に備え能力は使わずに置きたかったのだが、その万一すら迎えられない様では本末転倒か。
「白符『不死の標』」
肉体が活性化し再生力が強化される。
序でに息子も力強さを増していく……こらレミリア、恍惚としながら腰を振るな。
ヤる為に使った訳じゃ無いんだからな。
ともあれ体力を取り戻した俺はベッドから抜け出し、昨日の内に汲んで置いた盥の水にタオルを浸し身体を拭いていく。
冷たいタオルが肌の熱を奪い、思考をハッキリさせてくれる。
「もう、ケイったら意地悪ね。こんなに素敵なものが有るのに」
「いつまでもくっ付いて無いで降りろ。身体拭いてやるから」
「もうちょっとだけ、ダメ……かしら?」
対面座位で抱き付いたままのレミリアが首を傾げ見上げてくる。
断固拒否だ、と口を開く前に左手が頭を優しく撫でていた。
……つくづく甘いな、どうも。
撫でられたレミリアは年相応の笑顔を向けてきた。
こんな風に笑えるのか、と驚く一方いつもこれくらい純真な笑みを浮かべてくれればな、とも思う。
──いや、それは押し付けがましいか。
急にスカーレット家当主となり住む家も追われ幼い妹を連れての逃避行。
本人も知らない所で重圧と闘っているのだろうな。
「……ケイ?」
呼ばれる声に意識を戻せば、心配そうに俺を見上げる紅い瞳が有る。
余計な気を遣わせたか。
謝罪の意味も込め再度頭を軽く撫で、俺は汚してしまったレミリアの身体を丁寧に拭き始めた。
レミリアの身体は小さい。
妹紅と同じかそれよりも小さく、少なくとも十歳には見えない。
吸血鬼という種族特性からも成長はやや遅めだと思う。
……大人になったレミリアが想像付かん。
膨らんでもいない胸や丸くてエロい尻を綺麗にすると言う名目で愛でつつ、ふとそんな事を考えていた。
「さ、前も綺麗にしないとかぶれるぞ」
「あぁん、ケイの抜けちゃったぁ……」
腰を支えて持ち上げるとレミリアが悲しそうに肩を落とす。
だらしなく開いた淫唇からぽたぽたと愛液が滴り落ち──待て、何故精子が溢れて来ない?
ヒクヒクと震える秘裂はいやらしくその口を開けている。
普通なら精子がボトッと落ちてくる筈なんだが、と不思議に思っているとレミリアが何の気無しに言った。
「あ、勿体無いからケイの精子吸わせて貰ったわよ」
「は?」
聞けばレミリア、せっかく流し込んでくれた精子を無駄にするのは勿体無いと考えたらしい。
そこで精子を血の代わりに体内に取り込む事にした、との事。
多少血より吸収率は落ちるが、問題無く精を吸収する事に成功した。
血と違って変な副作用も無い様だ。
「だからケイ、溜まったら私がいつでもどこでも性欲処理してあげる♪」
てってれれってー。
レミリアは吸血鬼から吸精鬼にランクアップした!
……マジか。
というかレミリア、幾ら俺が呆けていたからと言って腰を落とすのは止めなさい。
「ちぇっ」
「舌打ちすんな」
なんとか身支度を整えた所で美鈴とフランが起き出してきた。
ナイトキャップを被りむにゅむにゅと口を動かして寝ぼけるフランは可愛かった。
美鈴は口の端に涎の跡が残っていた。
こう言っては何だが、緩いのか?
既に着替えていたレミリアと部屋の外で二人を待ち、着替えた所で階段を下りる。
食堂に入り席に着く。
紅茶を運んで来た女将に美鈴が「若いわねぇ」と話し掛けられていた。
はぁ、と気の抜けた返事に女将は下世話な笑みを浮かべた。
どうやら女将は話が見えず曖昧な返事をした美鈴を、昨晩の激しさに惚けたままだと勘違いしたらしい。
確かに、この面々で男女の仲になるとしたら年齢的に俺と美鈴だからな。
──って、美鈴にバレたら拙くないか?
からかい過ぎた所為で何となく俺を意識し始めているし、貞操観念もそれなりに高そうな雰囲気が有る。
幾ら美脚とは言え、真空跳び膝蹴りからネックブリーカーのコンボは遠慮したい。
あの脚線美は首を絞める為では無く、肉棒を挟み込む為に有る。
……っと、思考が危ういな。
やはり朝からレミリアを抱いたのは失敗だったな、俺の精神的安定に於いて。
「取り敢えず今日の予定だが、皆で旅糧や日用品の買い出しに行く」
食後の紅茶を飲みながら三人を見渡す。
レミリアは澄まし顔で同じ様に紅茶を啜り、フランは買い物と聞いて楽しそうに足をぶらぶらさせ、美鈴は必要な物をリストアップしている。
皆解りやすくて良いな。
どんな理由であれ単体行動はしない様レミリアとフランに言い含めて、いざ出発。
「今日も暑くなりそうだな」
「良い天気ですねぇ……くぁ」
降り注ぐ日差しに美鈴が欠伸を一つ。
確かにこの陽気は眠気を誘うが、じっとしていたら汗ばんで仕方無いと思う。
六月とは言え辺りはすっかり夏の様相。
そう、六月だ。
転移する直前まで、俺は十一月の日本に居た筈だ。
カレンダーが無いので二日三日の誤差は有るだろうが、少なくとも冬が目前に迫っていたのは間違い無い。
美鈴に確認したが勿論ここが南半球に有るという訳も無く、現在地が東ヨーロッパのルーマニア南東だと判明した。
つまり十一月から六月までの約七ヶ月間の時間を跳び越えた事になる……と言うのはあくまで希望的観測、最善の結果で有った場合だ。
正確な西暦が判明しない以上、過去に跳んだか未来に跳んだかさえ解らない。
村や馬車を見る限りそれなりの技術力は有る様だが、日本と西洋では技術力の進捗に大きな差が有る為参考にしかならない。
最悪、別の次元に跳んだ可能性も否定出来ないが……一先ずそれは置いておこう。
眼前に迫る一番の問題は距離だ。
──ルーマニアから日本まで行くってか。天竺目指すより遠いな。
等と暢気な感想を漏らしている場合では無い。
日本からヨーロッパまで確か飛行機で半日近く掛かった様な気がする。
誤差で三時間見たとして、何の障害物も無い空を車より速いスピードで移動しても、それだけの時間が掛かっている。
幾ら馬車が有るとは言え移動は陸路、山有り谷有り砂漠有り、だ。
一体何年掛かるやら……と呆けている場合でも無い。
偶発的な事故とは言え、また勝手に家を空ける事になった訳だ。
まだ幼い妹紅や紫、奈苗は当然寂しがるだろうしルーミアや諏訪子、神奈子にも要らない心配を掛けてしまう。
おまけに美人と美幼女二人を連れての帰還だ、どんなお仕置きが待っているのか想像もしたくない。
それ以前に会えるかどうかも不明だ。
過去ならまだしも未来なら最短で七ヶ月、最長で……まぁ、数百年単位だ。
間違い無く奈苗は逝ってしまっている。
他の皆も健康でいる保証は無いし、そもそも別の次元なら日本に誰一人知り合いは居ない訳だ。
……止めよう、寂しくなってきた。
「お兄様、どうしたの? ぽんぽん痛い?」
フランが心配そうに手を引いていた。
どうやら表情に出ていた様だ。
何でもない、と屈んで目の高さを合わせ優しく髪を梳いてやる。
サラサラの金髪が指の隙間から波打ち、吹き抜ける微風と戯れる。
撫でられるのは気持ち良いらしく、フランは目を細めた。
「フランの髪の毛は綺麗だな」
「お兄様の眼の方が綺麗だよ!」
にへー、と嬉しそうに笑う。
そのまま背後に回り肩に乗ろうとしてくるが、俺は立ち上がって阻止した。
意地悪されたと思ったのか不満そうにぷくっと可愛らしく頬を膨らませてみせる。
「お兄様のけちー」
「フラン、お前今スカート履いてるだろ。肩車なんかしたら捲れるぞ」
「……お兄様以外に見られるのはヤダ」
「いや、俺に見せるのもダメだろう」
「お兄様だったらイイよ?」
「おい美鈴、情操教育はどうなっている。数日内に改善した様子が見られなかったらお前の食事から五品目抜くぞ」
「ごっ、五品目ですか……って全部じゃないですか!? 水さえ許されない状況とか過酷過ぎますって!」
「呼吸止められないだけマシと思え」
ひぃ、と小さく悲鳴を上げる駄メイド長。
フランといいレミリアといい、少し無防備が過ぎやしないか?
ぺたぺた甘えてくれるのは嬉しいが、その一方で心配になる時も有る。
「フラン、元気なのは良いけれど偶にはお淑やかな一面を見せてあげたらケイも喜ぶわよ? 例えば抱き付くだけじゃなく、ふとした時に小指をきゅって握ってみるとか」
レミリアはフランに淑女の嗜みとやらを伝授している。
つーかどこで覚えた。
お兄様的にストライクだから構わんが。
それをフランは真剣に聞いている。
時々チラチラとこちらを窺ってくるのはいつか試してみようという心の現れか?
ともあれ沈み込みそうだった思考を引き揚げてくれたフランに心の中で感謝して、俺は青ざめている美鈴の額に軽くデコピンを喰らわす。
「あたっ」
「冗談なんだからそんなに気を揉むな。アレぐらいの年の子は誰でも『ませた』事を言いたがるものだからな、まぁ仕方無い。しっかり常識や良識を教え、歪まない様に見守ってやれよ? 何だかんだで二人の心の一番近い場所に立っているのは、誰でもない美鈴なんだからな」
「契さん……」
「ほら、呆けていないで買い物に行くぞ。レミリアとフランも、はぐれない様にちゃんと着いて来い」
「はーい!」
「解ったわ」
とてとて可愛らしく駆け寄り、むぎゅっと抱き付いてくるフラン。
レミリアはそんなフランへ愛おしげに微笑んで、さり気無く右手を握ってきた。
三人の中で誰よりもオトナな雰囲気を醸し出しているのは、心に余裕が生まれたからなのだろうか。
──美鈴も多少、堅さが取れたか?
スカーレット家に仕える者として、二人を守る立場に有る美鈴。
その心労は並大抵では無い。
真面目な性格も相俟って余計な事まで背負い込むのは難だが、これで少しは荷を下ろせたと思う。
袖振り合うも多生の縁と言うし、俺に出来る範囲で支えてやりたい。
──やはり甘くなったな。昔の俺なら無関心で貫き通した筈だ。
良いか悪いかで言えば、悪いのだろう。
この甘さが、必要の無い傷や痛みを呼び込む事になる。
「……それでも良いか」
「ん、ケイ、どうかした?」
「何でも無い。それよりレミリア、余り構って貰えないメイド長が寂しがって鼻水啜ってるが良いのか?」
「な、変な事言わないで下さい!」
「泣かないで美鈴」
「お嬢様まで!?」
レミリアまで悪乗りしてきた事にショックを受けている美鈴を、いつの間にか背後に回り込んだフランが突き飛ばした。
勢いの良さに蹈鞴を踏み、つんのめる。
そのまま正面に居た俺の胸に顔を埋めて事無きを得るが、倒れそうになっていた為何かに掴まろうと伸ばした両腕がしっかり俺を抱き締めていた。
一呼吸置いてそれに気付いた美鈴は顔を赤くして離れようとする。
が、更に後ろから抱き付いてきたフランに挟まれ動けなくなった。
「い、いや、契さん、これはですね!?」
「落ち着け美鈴、というかもぞもぞ動かれるとくすぐったい」
「す、すいません! 今退きますから、って妹様、何を!?」
「美鈴も一緒にむぎゅってされたら寂しく無いでしょ?」
「ダ、ダメですって、契さんに迷惑が、って言うか寂しがっていません!」
「と言いながらしっかり抱き付いてるじゃない。美鈴も素直じゃないわね」
「こ、これは倒れそうになったから慌てて手を伸ばしただけで、だっ、抱き付こう等とは!」
「美鈴、顔真っ赤だよ?」
「流石に説得力無いわね」
「け、契さんも何か言って下さいよぉ!」
「美鈴みたいな美人に抱き付かれると少し照れ臭いな」
「────っ!?」
ぷしゅー、と音が聞こえそうな程に顔を赤くする美鈴。
脳がオーバーヒートしたのか、かくっと頭を落として固まってしまった。
神奈子と張り合える初々しさだな。
「ケイ、他の人の事を考えたら美鈴が可哀想よ?」
「……解るもんなのか?」
「好きな人の事だもの、何となくね」
楽しそうに笑うレミリア。
早くも尻に敷かれそうな気がしてきた。
フランは美鈴と俺に抱き付いたまま無邪気な笑みを向けてくる。
空いた左手で頭を撫でてやりながら、どうしたもんかと空を見上げた。
理由は、向けられる視線。
道の真ん中でイチャイチャしていた所為か大勢の人が足を止め視線を送ってくる。
年配の方々は微笑ましく思ったのか温かい視線を向け、うら若き女性達は少し頬を染めながら一挙一動を見守り、独身と思われる男連中からはイイ笑顔と共に爆発しろと念が送られてきた。
流石にこの状況でギャラリーと目を合わせる度胸は無い。
固まった美鈴の腰に手を回し、やや強引にエスコートしながらそそくさとその場を離れる俺だった。
──ともあれ、妙に気負っていた美鈴が暴走しない様、フラグを叩き折った事で手打ちとするか。
その所為で美鈴ルートのフラグが建った気がするが、悪影響は無いだろうから放って置こう。