──何だ……?
僅かばかりの冷気が肌を伝う。
突然の感覚に、深い微睡みからゆっくりと意識が浮上してくる。
両肩に掛かる重みから察するに、布団が剥がれ落ちたという訳では無さそうだ。
確かめてみようかと思うが、すぐに眠気と布団にくるまる暖かさが一切の思考を拒否させた。
だが意識が戻っているのに起きる気が全く湧かないという事は、恐らくまだ夜明け前なのだろう。
身体を動かそうにも脳からの信号が上手く伝わらない。
所謂、頭は起きているが身体は寝ている状態なのだろう。
と、その時漸く腹の上に有る微かな重みに気付いた。
体感的には諏訪子より軽い。
一体誰だろうな、と疑問を得ると同時、何かが首元に抱き付いてきた。
「……えへへ、ケイ、あったかいなぁ」
チルノの声だ。
いつもの元気さは少し控え目に、代わりに甘くとろける様な声になっている。
成程、この冷気はチルノの所為か。
小さな身体から漂う冷気が、火照って汗を掻きそうな布団の熱を、寒くならない程良い温度まで下げてくれる。
ピクリ、と指先が動く。
どうやら身体も起きた様だ。
早速両手を動かし、胸の上に寝そべる氷精をむぎゅっと抱き締めてやる。
「ひゃわっ、ケ、ケイ……」
腕の中で恥ずかしそうに声を上げる。
が、すぐに身を預けてきた。
──少し悪戯してやるか。
抱き締めたまま、右手を下にずらす。
背中を優しく撫で下ろしてやると、ほあぁ~……、と脱力した声が鳴る。
腕を更に下へ。
腰元をなぞるとくすぐったいのか、もぞもぞと小さく身を捩る。
更に下へ手を這わせた所で、それまでとは違う反応を見せた。
「ひにゃっ、や、ケイぃ……」
戸惑いと艶を含んだ音が、俺の名を呼ぶ。
柔らかな尻肉をワンピースの上からこねくり回す度、ぴくっぴくっと小さな身体が跳ね上がる。
愛らしい反応だな。
次第に呼吸も荒くなり、熱を帯びた息が首に掛かる。
「んっ、ふぅ、っ、んぅっ、ぁ、あん」
甘く鼻に掛かった声に気分を良くし、チルノを抱き締めたままくるりと体躯を入れ替える。
勿論潰れてしまわない様に優しくな。
目を開ければ、腕の中でぱちくりと俺を見上げる氷精の顔が有った。
「おはよう、チルノ」
「ふぇっ……? あ、おは、よう……?」
困惑した様子で返事をしたが徐々に顔が赤くなっていき、恥ずかしそうに口をあわあわさせ始めた。
じたばた身を捩ろうとするが、小さな身体は俺に抱き締められ身動きが取れない。
恥ずかしさからかどうにかして距離を取ろうとする愛らしいお嬢さんに、俺は更に顔を近付けてみた。
宝石の様な美しい蒼の瞳が俺を映す。
「え、わ、ゎ、ケ、ケイ……?」
「綺麗だな、チルノの瞳」
「なぅ、あ、ぅぅっ!?」
「ぷっくりほっぺも艶やかな唇も、凄く綺麗だ。思わず口付けたくなるな」
言葉通り、桜色の唇を吸う。
触れ合った瞬間、チルノの身体がぴくんと跳ねた。
視界に互いの瞳だけを映し合うと、驚きと羞恥を湛えていた瞳に愛欲と安らぎが浮かび上がる。
くてっ、と小さな身体から力が抜けた。
腕の位置を変え脇の下から抱え込む様に抱くと、チルノも俺を抱き返してくれた。
同時、舌がおずおずと伸びてくる。
自分の舌を絡ませると、チルノは嬉しそうにぴくりと身体を揺らした。
「んっ、ちゅ、ちゅるっ、んむっ、ちゅっちゅっ、ちゅぷ、んぷっ、んっんっ」
口内に侵入してきた小さな舌が、そこかしこを愛おしそうに駆け回る。
唾液も滲み出た先から飲み干されていく。
こくこく、と艶めかしく喉を鳴らす姿は普段の子供っぽさを未熟も感じさせない。
「んっ、ぷはぁ……っ、ケイ、ケイぃっ」
「どうした、チルノ?」
「どうしよ、あたいヘンだよぉ。ケイと触れてるだけで、頭がぽぉってなって顔が火傷したみたいに熱いの」
「おや、それは大変だな」
「それにね、ケイにちゅぅされたらね、幸せがぎゅ~って胸いっぱいになって溢れちゃいそうなの。あたい、幸せ過ぎてバカになっちゃうよぉ」
「じゃあ止めるか?」
「やぁっ、止めないで、あたいバカになってもいいからっ。だからケイ、もっとちゅぅして、ケイとちゅぅするの好きなのぉ」
とろとろになったチルノが見上げてくる。
どうやら唾液にも媚薬効果が出始めたらしい。
色々と人間ではなくなってしまった俺だが流石にここまでくると自分で引きそうになるな。
血液だけだと思っていたが遂に分泌物にまで効果が及ぶとは。
……いや、考えるのは後にしよう。
今はこの愛らしいお嬢さんを可愛がってあげないとな。
「んっ、ちゅ、あは……っ♪ ケイぃ、しゅき、しゅきぃ……ちゅぅ、んちゅっ」
再び唇を重ねると、チルノは嬉しそうに羽を鳴らした。
回した右腕を外しワンピースを首元まで捲り上げる。
子供らしくまだ凹凸の少ない身体に、そっと指を這わせた。
臍の辺りから上へ向かってなぞって行くと人差し指の腹に小さな凝りの様なものが当たる。
それに触れると、チルノは弾かれた様に身体を仰け反らせた。
「んぅぅっ!? んっ、んぅ、ぁ、んぷっ、はぁっ、や、やぁっ、おっぱい、いじめないでぇ」
何度も指を往復させていると堪らず、といった様子で喘ぎながら唇を離した。
だがそれは悪手だぞ?
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべ、俺は身体を少し下にずらす。
白く絹よりも滑らかで美しい肌が映る。
その胸の中央、ぷっくりと桜色に染まった可愛らしい乳首に吸い付いた。
「ふゃぁっ!? あ、ぁ、っ、ケイぃっ、や、やらぁ、おっぱい吸っちゃ、やぁっ、あっあっ、んんっ、~~~~っ! っ、っぁ、はぁ……っ、ぁ……、ふぁっ!? あぁっ、やらっ、やらやらぁ、おっぱいおかしくなるぅ、あぁっ、やっ、またっ、またくるっ、きゅんきゅんくる、んぁぁぁ……っ!」
俺の頭を掻き抱きながら、何度も愛らしい喘ぎと共に気をやる。
感じやすいのか淫乱の素質が有るのか俺の媚薬体質が異常さを増したのか。
取り敢えず全部という事にして置こう。
と、腹に温かさが広がる。
唇を外して下を見れば、黄金色の染みが布団に薄く広がっていく。
どうやら気持ち良過ぎたらしく漏らしてしまった様だ。
──少し飛ばし過ぎたか? 洗濯は後でするとして……先に風呂に入れるか。このままだとかぶれるからな。
小さな身体をひょいと持ち上げ足で襖を開けると、ひゅうと朝の冷たい空気が流れ込む。
寒い寒い、と身震いしつつまだ仄暗い廊下をひたひた歩く。
「ふぃー……良い湯だな、っと」
チルノを抱き湯船に背を預け、白む景色を漫然と眺める。
何故か風呂場に着いた時には浴槽に湯が張られており、湯加減もちょうど良かった。
色々と謎だったが取り敢えず気にしない事にした。
湯船に浸かる前に、チルノへ『疲弊の休息』と『不死の標』をそれぞれ四回掛けて置くのも忘れない。
氷精だから溶けるかも解らん。
熱に因るダメージが無いとも限らないからな。
と、そんな感じに下準備も終えてまったり湯浴みを楽しんでいる所だ。
「ふむ……しかしこの羽の構造は謎だな。浮いてるだけかと思えばこうして収容も出来るとは」
チルノの背中、肩甲骨の下に有る小指の先程の青い突起をふにふにとつつく。
全部で六つのそれに羽が収容されている。
湯船に入れるのに『不死の標』を使った際に、するすると極自然な動きで羽が背中に戻っていった。
そして絹の様な白肌にこのぷにゅっとした青い突起が出来たという訳だ。
恐らく痕では無いと思う。
元々が自身の羽だし痕なら間髪入れずに修復される筈だ。
「……んっ、ぅ、ふぁ……」
柔肌を弄んでいると甘い吐息が漏れる。
耳たぶを優しく噛めば可愛らしい悲鳴を上げて脱力する。
なんとも愛らしいお嬢さんの姿に癒やされつつ、窓の外へと視線を向けた。
一段と寒さが増してきたな、とのんびりしていれば視界にちらちらと映るものが。
目を凝らして見れば、中空を漂っていたのは雪だった。
そう言えば初雪か、と季節の移り変わりにしみじみ感じ入っていると腕の中のお嬢さんが目を覚ました。
「んゅ……ぅ、ふわぁ……あ、あれ?」
「おはよう、チルノ」
「わ、え、ケイ?」
胸板に頭を預けたまま俺を見上げて目を丸くするチルノ。
困惑してる表情も良いな。
そのままキョロキョロと周囲を見渡し、漸く自分がどんな状況に置かれているかを把握したらしくわたわたと両手を降って暴れ出した。
「わ、わっ、ケイとお風呂だなんて恥ずかしいよ。って、おおお風呂っ!? は、早く出ないとあたい溶けちゃう、わわっ、お湯に浸かってるからもう溶けて……アレ? 溶けてない? あたいお湯平気? え? どゆこと?」
「そのまま入れてたら溶けたのか。危ない危ない、やはり初手に『不死の標』は安定だな」
「え、ケイ、あたいに何かしたの?」
「あぁ、チルノは氷の妖精だろ。だから湯熱で火傷するんじゃないかと思って俺の能力を使ってみたんだ。多分猫舌も緩和されたから温かい味噌汁が飲める様になったと思うぞ?」
微妙に食い違ってる気のする会話を交わしつつ、チルノの頬をつついて遊ぶ。
んゅー、とくすぐったそうに首を竦める姿が非常に愛らしい。
今度にとりに頼んで防水カメラ作って貰おう。
取り敢えずチルノを勝手に強化した事を謝りながら御機嫌伺いを兼ねて身体をわしわしと洗ってやる事に。
手拭いに石鹸を擦り泡立て、チルノをもこもこにする。
ざぱー、とお湯で流してやるがまだお湯に対しておっかなびっくりの様子。
まぁ寝てる間に耐性出来てたと言われても普通はなかなか実感湧かないだろうしな。
次に頭を洗おうとした所で事件は起きた。
「んぅー…………!」
何だこの可愛い生き物は。
石鹸が目に入らない様にシャンプーハット(にとり製)を被せてみたら、これが予想以上に似合う。
おまけにギュッと目を瞑り、やや上に顔を向けながらぷるぷる震えているのだ。
瞼に力を入れ過ぎた所為だと思うが、そんな力まなくても良いだろうに。
とは言え放置して眺めるのも可哀想なので勢い良くお湯で流してやれば、泡の下から艶やかな青い髪が姿を見せる。
シャンプーハットを取っ払い髪の毛を手拭いで纏めてやると、チルノは小さく息を漏らした。
「はひゅー。何だか変な感じ」
「ん?」
「お湯に触れても大丈夫、ってのがあたいまだ驚きだよ」
「まぁ、次第に慣れるだろ」
ぽりぽりと頬を掻くチルノを抱え上げ、再び浴槽に浸かる。
思わず「うぇーい」と唸れば、おじさんみたいとくすくす笑われた。
「こんな良い男捕まえておっさん呼ばわりは酷くないか?」
「えー、だってケイおじさんっぽいよ。日向ぼっこしてお茶飲んだり、暇潰しに散歩したり。アレ? どっちかって言うとケイ、お爺さん?」
「なにをー、こいつめ」
「きゃぁ、ケイが怒ったー」
左手で捕まえたまま頬をふにふにつついてやると、楽しそうに両手でバシャバシャと水面を荒立てる。
やけに艶っぽいうなじにそっと口付ければ、ふにゃふにゃと甘ったるいくらいにとろけた笑みを浮かべて振り向いた。
そのまま小さな唇が近付き、重なる。
「んっ♪」
触れ合うだけのキスだが、チルノは嬉しそうにはにかむと両手を回して抱き付いた。
と、何を思ったのか首筋にかぷりと噛み付いて来る。
「あむあむ♪」
「こらチルノ、吸血鬼みたいに噛み付いて来るんじゃない」
「えへへ、ケイが悪いんだよー。ちゅーだけであたいをこんなにドキドキさせちゃうんだから。がぶー♪」
そう言われては怒る事も出来ない。
抵抗しないと解ったのか、チルノは回した両手に力を込めてギュッと抱き締める。
耳元に掛かる甘い吐息を受け、俺は苦笑と共に溜息を一つ。
まぁ、偶にはこんなのも良いだろう。
右肩を甘噛みされつつ、逆上せない程度に遊ばれる事にした。
「成程、そんな事が。流石おとーさん、甘々ですっ」
「はぅぁ~……」
相変わらずのテンションでお茶を啜る黒髪の巫女。
一房だけ緑に輝いて垂れ下がる髪をくるくると弄りながら、先程風呂場でやっていた乳繰り合いの様子を楽しげに聞いている。
こうなった理由は至って単純だ。
風呂から上がると既に着替えが用意されており、寝室の布団も洗濯されていた。
謎を深めつつ居間に辿り着くと、ちょうどお茶の用意をしていた奈苗が。
聞けば風呂の様子から着替えから布団の洗濯まで全部奈苗が手を回していたと言う。
やたら気が回ると言うか何と言うか。
多少の呆れを交えて苦笑していた俺とは対照的に、チルノは頬を赤く染めつつ申し訳無さそうにしていた。
まぁ、お漏らし布団を代わりに洗濯して貰った心苦しさも有るんだろう。
すると奈苗は「お二人がどんな感じにイチャイチャしてたのか教えてください♪」と言ってきた。
それでチャラになるのなら、とチルノは語り出したのだが。
「うぅ~、ケイぃ……」
言葉にするのが予想以上に恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にしてちらちらとこちらを見上げてきた。
うむ、そんな反応も非常に愛らしいぞ。
膝に乗せて頭を撫でると、まだ恥ずかしさは残っている様だがそれでも嬉しそうに身体を預けてきた。
「おとーさん、篭絡はお手の物ですね」
「それは褒めてるのか奈苗?」
「勿論ですっ。と言うかおとーさんみたいに格好良くて優しくて素敵な男性に愛を囁かれて堕ちない女の子なんて居ません!」
「じゃあそんな奴が現れて奈苗を口説いたら?」
「私はおとーさん専用なので歯牙にも掛けません!」
きりっ、と決め顔で言い切る奈苗。
だが褒めて褒めてと目で訴えてくる辺り微妙に決まって無い。
そんな所も奈苗の魅力の内か、と苦笑しつつ手を伸ばす。
撫で易い様に卓袱台の向こうから頭を向けてくるのも、また可愛らしい所だな。
「ほれ、良い子良い子」
「でへへ、褒められちゃいました」
「……奈苗が何歳か解らなくなるな」
「見た目があたいくらいだったら絶対十歳越えないよね」
「安定の一桁だよな」
「おとーさん幼女趣味ですし何の問題も有りませんね」
「否定出来ない辺り腹立たしい」
「きゃぁ、おとーさんが怒りました! 助けてください、チルノちゃん~」
「え、わぁっ!?」
あっさり俺からチルノを奪い取った奈苗は同じ様にチルノを膝に乗せると、その背中に顔を隠す。
が、勿論隠れられる筈も無く身体が半分以上はみ出している。
「こそこそ」
「いや奈苗、それは無理だろ」
「奈苗ちゃん、あたいでも流石に無理だと思うよ」
「チルノちゃん、諦めたらダメです! どんな困難な時でも前を向けば道は拓けます! 決して諦めずに自分の感覚を信じてください!」
「……朝から賑やかねぇ」
からりと襖が開き、眠たげな目をした金の女性が姿を見せた。
鶯谷色の小袖を羽織っているがやや大きいのか左肩が露出しており、妖艶な色気を放っている。
まだ眠たいのか、くぁぁ、と大きな欠伸をするが奈苗がそれを軽く咎める。
「ダメですよルーミア様、そんな大きな口開けて欠伸なんて。チルノちゃんを食べちゃうつもりですか?」
「えっ、ルーミアあたい食べるの!?」
「ちょっ、そんな訳無いでしょ!」
「きゃぁ、ルーミア様が怒りました~」
「奈苗、二度ネタは禁止だ」
取り敢えずチルノを奪還し膝の上に乗せると、変な対抗心でも燃やしたのか奈苗はルーミアの膝に乗って得意気に鼻をふんすっと鳴らした。
椅子にされたルーミアは奔放な奈苗に呆れながらも、優しく髪の毛を梳いてやる。
気持ちよさそうに笑う姿を見ていると、嫁と言うより娘の様に思えてきた。
ルーミアも同じ様に感じたのか、視線を交わすとしょうがないわね、と笑みを零す。
「それで? ケイは今日どんな風に過ごすつもりかしらね」
「予定は何も無かったと思うが……せっかくチルノが遊びに来てくれたしな、今日は一緒に遊ぶか」
「えへへ……ケイあったかい~」
むぎゅっと抱き締めると俺の両手を更にむぎゅっと抱き締め返す。
そう言えば背中の羽は収納したままだったな、通りで抱き易い訳だ。
多分チルノもルーミアも羽に気付いてはいないだろう。
奈苗は……解らん。
表面的な事や俺達に関する機微は大抵想像した通りだが、そこに至るまでの過程が時折理解の及ばない道を辿っているからな。
ひょっとしたら家族で一番強いのは奈苗かもしれない。
そんな風に思考を飛ばしていると、不意に『ぐぅ~っ』と重低音が響き渡る。
発生源を辿ればルーミアが力無い笑みを浮かべて奈苗を抱き締めていた。
そのまま後ろに倒れ込む。
「お腹が空いて力が出ないわ」
「エネルギー切れか」
「奈苗~、ご飯お願い~」
「了解ですっ。でもルーミア様、離してくれないとご飯作れませんよ?」
「ん、もうちょっとギュッてしてたい」
「珍しく甘えん坊さんですね?」
「さてはルーミア、まだしっかり目覚めて無いな」
「え、ルーミアまだ寝てたの!?」
「奈苗~、ギュッてしてるから早く作ってよ~」
「半分寝てると途端に甘えん坊になるんだよ。完璧に起きると一気に顔が赤くなるけどな」
「へぇ、ルーミアいつもしっかりしてるからちょっと意外かも」
「やぁん、ルーミア様可愛いですっ♪ ほっぺつんつん~」
「この状態ならチルノの方が間違い無くお姉さんだな」
「外見が大人だから変な感じしかしないけど」
「うにゅあ~、つっつくなぁ~」
「いっそ俺が封印施すか。前みたいに幼女形態にして置けば違和感も無いだろ」
「序でに奈苗ちゃんも小さくしたら?」
「でへへ、ルーミア様に怒られちゃいました」
「名案かもしれん」
と言う訳でじゃれ合い始めたはらぺ娘とでへへ巫女は放って置き、チルノと二人で朝餉の用意をする。
台所に立つ経験は殆ど無いらしいが、教えた事はすぐに吸収して自分のものに出来ていた。
これなら我が家の料理担当に昇格出来る日も近いだろう。
──と言うか前と比べて格段に思考力や理解力や判断力が強化されてないか?
まさか『不死の標』で脳が活性化でもしたのだろうか。
確かに使えば頭はすっきりするが……思考周りの強化に関しては大した検証もしていなかったな。
せっかくだし肉体の強化もして置こう、と思い立った俺は『聖なる力』を四回チルノに掛けた。
パワーに四、タフネスに八の修正が掛かった氷精の誕生だ。
災厄級のドラゴンで無い限り突破されない妖精って、一体何なんだろうな。
ともあれ強化も終わり調理も終わり、美味そうな料理を卓の上に並ベていると、起き出してきた神奈子と諏訪子に妹紅、そして大ちゃんがやって来た。
何でも昨日、ここに来る事を伝えていたらしい。
夜這いに行くのよ! と息巻いていた様だが朝早くに来るのは夜這いと言うのか多少の疑問が残る。
まぁ、食事は賑やかな方が良いと満場一致で決まり大ちゃんも加えて準備完了。
「両手を合わせて、いただきます」
『いただきまーす!』
早速チルノが作った味噌汁を一口。
具は莢豌豆と馬鈴薯だ。
少し濃いめの味が胃と頭を叩き起こしてくれる。
文句無しに美味い。
「うむ、初めて作った味噌汁でこれだけの味が出せれば引く手数多だな」
「ひくてあまた?」
「チルノがその気になれば、旦那は選び放題って事だ」
「えへへ……じゃあケイをあたいの旦那様にしちゃう」
「朝っぱらから甘いねぇ……」
「神奈子様、玉子焼きはちょうど良いくらいですよ?」
「いや奈苗、そういう意味じゃ」
「時々奈苗も天然入るからねー。流石は契の血を引いてるだけ有る」
「チルノちゃん凄い……私より上手になってるよ」
「だいちゃんもれんしゅうしたら、ごはんおいしくつくれるよ!」
「ふふ、ありがと妹紅ちゃん」
「最初に習った時の私より美味しいわね。チルノは料理の才能が有るのかしら? それとケイ、おかわり」
「ほいほい」
「ふっふっふ、流石はあたいね! 料理の才能まで有るなんて、自分が恐ろしいわ」
「普通に教わってこれなら、あの方式だとどうなるのかしら? ケイ、おかわり」
「ルーミア様、あの方式って何ですか?」
「こらこら、妙な事を教えるんじゃない」
「あぁ、アレかぁ……」
「けろちゃん、しってるの?」
「んむ、作ってる最中に意識が飛んだり泣き出しちゃう時も有ったりする契の愛情たっぷりなお料理教室だよ」
「な、なんか凄い厳しそうな雰囲気が」
「確かに厳しかったわねぇ。ケロ子は脱落しちゃったし。ケイ、おかわり」
「はわぁ、おとーさん意外とスパルタだったんですねぇ」
「いや、スパルタと言うか何というか」
何とも賑やかだ。
流石にあの内容をそのまま伝えるのは拙いと察したのか、諏訪子が間違ってはいない説明で切り抜ける。
偉いぞ諏訪子、後でご褒美をやろう。
逆に神奈子はデコピンだな、ちょっとは空気を読んで合わせろよ。
そんな事をつらつらと考えながら、俺はルーミアの椀に何度目か数えるのも面倒くさくなったおかわりを盛るのであった。
「おいルーミア、もう米無いぞ」
「あら……仕方無い、腹六分目にしておきましょう」
「お前一人で六合食ったよな!?」