賑やかだった宴も、漸く終わった。
まぁ、賑やかというには少々騒がしかったのだが。
二次会の折、ひょんな事から嫁達全員に詰め寄られ必ず帰って来ると指切りさせられた。
何故か指切りの列に並んでいた永琳とにとりとも『約束』を結ぶ事に。
何処か嬉しそうに微笑む永琳と、頬を赤く染めて掌を見詰めて熱い息を吐くにとりの様子が何とも印象的だった。
勇儀はそれを横目に複雑な表情を浮かべて杯を傾けていたな。
取り敢えず嫁達を宥めて酔わせて布団を敷いて、広間に寝かせて置いた。
見渡す限り美女と美少女と美幼女が集まって寝ている姿はなかなか壮観だったな。
「おとーさん、お疲れ様でした。お茶が入りましたよ」
「ん、有り難う奈苗」
自室に戻って一息吐くと同時、からりと襖が開いた。
艶やかな黒髪の中に一房だけ入り交じった緑髪が、楽しげに揺れている。
月明かり以外に光源は無いのに、奈苗は器用に座布団を避けて卓袱台の上へ湯飲みをコトリと置いた。
いつの間に用意したのやら、奈苗の行動は相変わらず不思議だ。
湯気を立てている湯飲みを覗き込めば、緑色に輝く水面に茶柱が一つ。
「お、茶柱が」
「何か良い事起きますかね?」
「もう起きてるさ。可愛い奈苗と一緒にお茶が飲めるんだからな」
「はわっ、おとーさんったら大胆です」
「はっはっは、ちょっと気障だったか?」
「キュンキュンしちゃいました。おとーさん責任取ってください」
きゃー、と楽しそうな悲鳴を上げて抱き付いてくる奈苗。
頭を撫でてやると嬉しそうに頬を寄せて密着してきた。
本当に良くやってくれていると思う。
神奈子と諏訪子に仕え、ルーミアの家事を手伝い、妹紅の面倒を見て。
その上俺まで気遣ってくれている。
「お前は本当に得難い娘だよ、奈苗」
「どうしたんですか、急にしみじみと」
「ん、何となくな」
「なんだかお爺ちゃんみたいですよ?」
「失礼な奴め」
「きゃー、おとーさんが怒りましたー♪」
怯えた振りをしつつも抱き付いて離れない奈苗に苦笑を零して、その艶やかな髪をわしわしと撫で下ろす。
おとーさんっ、おとーさんっ、と甘えた声を上げて力一杯抱き締めてくる姿はとても可愛らしいし魅力的だ。
全力で甘えてくる奈苗に対して、俺は若干顔が赤くなっている。
今まで生きてきてここまで他人に懐かれた事も無いから、何となく小っ恥ずかしい。
そんな俺の動揺を知ってか知らずか奈苗は頬を寄せてきた。
余り肌艶が良いとは言えない俺の右頬にふにゃりと柔らかい感触が広がり、酒気で火照った暖かな熱と脳髄を刺激する女の子の香りが俺を包み込む。
両手を回し、そっと抱き締める。
小さい。
心で感じていた存在の大きさよりも、奈苗の身体はずっと小さかった。
無邪気に甘えてくるこの娘が、ひどく愛おしい。
「おとーさんっ」
「ん?」
「でへへ、大好きです」
「あぁ、俺もだ」
「でへへ……相思相愛、ですねっ♪」
嬉しそうに笑う奈苗に釣られ、ついつい口の端が上がる。
両腕に少し力を込めて抱き寄せると、応える様に両手両足を絡めてきた。
このまままったりと抱き合うのも良いかもな、とそんな事を思い浮かべた矢先、腕の中のお姫様が小さく唇を震わせた。
か細く空に溶けるくらいの声量で放たれた言葉。
辛うじて聞き取れたそれには、言霊としての力が乗っていた。
「対象:おとーさん。範囲:おとーさんに適用中のエンチャント。効果:エンチャントの破壊」
「なっ!?」
聞き取れた言葉を理解すると同時、パリンと硝子が割れる様な甲高い音が脳内に響き渡る。
途端に身体を支える力が弱くなり、そのまま奈苗に押し倒された。
確認しなくても解る。
俺に付けられていた筈のエンチャントが一枚残らず『割られて』いた。
驚愕と混乱に目を見開く俺に、奈苗は悪戯っぽい笑みを見せる。
「これで私でもおとーさんを組み伏せられますねっ♪」
「……取り敢えず、聞きたい事が三つ有るんだが」
「一つ、何故私がおとーさんのエンチャントを割る事が出来たのか。二つ、何故私がおとーさんのエンチャントを割ったのか。三つ、何故私がおとーさんを組み敷いているのか。ですよね?」
先回りをして質問を口にする。
いつになく楽しそうに笑う姿に驚きは覚えても、疑念は抱けない。
毒気を抜かれたというか、そもそも奈苗相手に疑念を抱くという事自体に無理が有る気がする。
だが、疑念は抱かずとも何故と問う事に変わりは無い。
酷く混乱した様子の俺を見て満足そうに目尻を下げ、奈苗は口を開いた。
「順番に答えますね。私がおとーさんのエンチャントを割る事が出来た理由は、おとーさんから受け継いだ能力のお陰です。初代はおとーさんと同じ能力を受け継いだみたいですけど、次代へ進むに連れて能力も薄れ歪になって行ったんです。私が扱える能力もかなり限定的ですからね」
そこで一度区切り、奈苗は右の人差し指を俺の頬に伸ばした。
白磁の様に綺麗な指先が、頬を押す。
ぷにぷにと頬をつついて楽しそうに揺れる指先に意識を引かれつつ、先の言葉を咀嚼した。
──つまり、割ったのは奈苗の能力か。
俺の能力が血筋に因って受け継がれていたのなら、納得は出来る。
何故今まで使わなかったのか、とも思うが普通に生活する分には能力なんて必要無い。
寧ろ俺の様に、湯水の如く使い放題なのが珍しいくらいだ。
それに奈苗が言う様に使用出来る幅が狭められているなら、それこそ日常生活では使う場面が無いだろう。
納得した俺は視線を天井から奈苗に向け、先を催促する。
と、奈苗は柔らかい笑みを浮かべたまま指先を滑らせ、つんと鼻先を押してきた。
「多分気付いて無かったと思いますけど、おとーさんの力、ちょっと大きくなり過ぎたんです。何の強化もしなくても投石だけで野兎の頭蓋を破裂させる威力を出せたんですよね? 素の力だけで充分、人間の枠を超えているんです。でもおとーさんは更に身体を強化していきました。別に悪い事では無いですよ? でも、単なる力の強化では収まりませんでした。おとーさんの精子も、同様に強化されていたんです。より強く凶悪な雄となったおとーさんの精子に、私達の卵子は耐えられませんでした。文字通り、壊されちゃったんです。ふふっ、逞し過ぎるおとーさんの精子に、私の卵子も愛さレイプされちゃったんですよ? おとーさんの雌としては最高の壊され方ですけど、おとーさんの妻としては少々不満です。私も含めて皆さん、おとーさんの子供を孕みたいですからね。だから、おとーさんにはちょっぴり弱体化して貰う事にしたんです。それが、エンチャントを割った理由ですね」
謳う様に説明する奈苗。
その内容に、俺は衝撃を受けていた。
──確かに命中率が芳しくないとは思っていたが、まさかそんな所に原因が有ったとは。
一度に注ぎ込み過ぎだとか毎日抱いていた所為で着床し辛くなっただとか、もしかしたら俺の精子の動きが悪い所為か、と考えた事は有る。
だが、流石に元気が良過ぎる所為だとは思いも寄らなかった。
とは言え何も悲観する事も無い。
奈苗の口振りから察するに、俺の力を抑制したなら問題は無い筈だ。
それに、嫁さん達に掛かる気苦労が無くなった訳だからな。
そう考えると自然に口から安堵の息が漏れ出ていた。
「……俺が原因だと解って良かった」
「ごめんなさい、もっと早く教えれば良かったですね」
「あー、いや、気にするな。奈苗にも思う所が有ったんだろう? まぁ、何故今打ち明けてくれたのかは気になるが」
そう口にすると、奈苗の両目が妖しく輝いた気がした。
同時、背筋をぞわりと悪寒が這い上がる。
これと同じものを、俺は知っている。
偶にルーミアや妹紅が向けてくる、捕食者の視線だ。
普段なら圧倒的優位に立ち庇護下に置いている愛しい娘から向けられた『それ』に、知らず表情筋が強張って行く。
そんな様子の俺へ、奈苗は愉悦を口の端に浮かべた。
「簡単な理由ですよ。欲しくなっちゃったんです。おとーさんが」
ぞくり、と身体が震えた。
室内を照らしていた月も雲に隠れ、暗闇が辺りを包み込む。
その中で、赤黒く爛々と輝く双眸が俺を見下ろしていた。
「ふふふ……怯えるおとーさん、とても可愛いですよ?」
ひどく楽しそうに歪められた両目以外、何も見えない。
反射的に身を捩ろうとする。
が、身体がいう事を効かない。
そっと乗せられた奈苗の両手が俺の動きを封じ込めている。
何事か喋ろうと口を開き掛けた瞬間、柔らかいものが唇に触れて言葉を押し止めた。
恐らく、奈苗の人差し指だろう。
「大丈夫です。今日は私がおとーさんをいっぱい犯してあげますから♪」
蠱惑的な声が耳朶を震わせる。
確かに魅力的な提案だが、やられっぱなしと言うのも癪だ。
そう思い舌先で人差し指の腹をぺろりと舐め上げた。
「ひゃあんっ♪ ……もう、おとーさんったら。心配しなくても、いっぱいイジメてあげますよ♪」
いかん、逆効果だった。
「んぅ……ちゅ、ぴちゃ、じゅる……んふふっ、気持ち良いですか?」
淫らな水音が響き渡る。
浴衣を解かれ組み伏せられた俺に跨がり、奈苗は肉棒をしゃぶり上げる。
最初はすぐさま反撃に出ようとしていたのだが不思議な事に抑え付けられた身体はぴくりとも動かず、辛うじて首を僅かに起こす事しか出来なかった。
四苦八苦している間も官能的な奉仕は続いていた為、次第に抵抗も弱くなる。
もうかれこれ十五分程、高まる情欲に振り回されていた。
エンチャントを割られた事で、俺のパワーとタフネスは初期値まで下がっている。
故にパワーで俺を上回っているで在ろう奈苗に容易く組み伏せられた事は理解出来ていた。
……問題は、そこじゃない。
タフネスが下がった事で、快楽への耐性が殆どと言って良い程に無くなっていた。
初めてをルーミアと交換した時と、そう変わらない持続力まで落ち込んでいる。
「っ、くぅ……っ!」
「ちゅぽっ、んふふっ、まだダメです。もっともっと、我慢してくださいね♪」
早い話が、すぐに達してしまう。
が、それを即座に理解した奈苗は俺がイク事を許さず、何度も寸止めを繰り返して遊んでいた。
普段は天使だと思っていたが、どうやら今日は悪魔らしい。
サキュバスも裸足で逃げ出すんじゃないかと錯覚するくらいに淫靡な匂いを撒き散らしている奈苗。
「くぅっ、うぁぁっ、な、奈苗ぇ……っ」
「もう、そんなに可愛い声上げたらダメですよぉ。私の子宮が、きゅんきゅんしちゃいます♪」
何度も限界寸前まで上り詰めた激情が脳を、思考を灼いていく。
身体が思う様に動かず、されるがままに弄ばれている俺を眺めて、奈苗はとても嬉しそうに笑う。
淫靡な空気を纏ったまま、奈苗は跨がる様にして亀頭の先にぬらぬらと光る秘裂を触れさせた。
後少し、腰を跳ね上げれば。
ひくひくと淫らに口を開け涎を垂らして誘う秘裂に視線は釘付けだ。
そんな俺の耳に、愉しげな声が届く。
「やぁん、そんなに可愛い反応見せられたら、それだけでイっちゃいますよぉ♪ 入れたいですか? 私の膣内におちんちん入れて、びゅくびゅく射精しながら、孕ませたいんですか?」
余りに淫猥な奈苗への興奮と散々焦らされた事に因る苦痛で、発声すらまともに出来ない。
微かに言う事を聞く首を必死の思いで上下に振ると、可愛らしい笑い声が響いた。
「あはっ♪ じゃあ今は、今だけは、奈苗はおとーさんの……ううん、けーくんの恋人です。だから、けーくん。いっぱい、いっぱいエッチしよ♪」
言い終えると同時、亀頭が灼けると錯覚するくらいに熱を帯びた膣内へと埋没した。
暴力的なまでの快楽に理性はあっと言う間に振り切れ、ぷつんと糸が切れる様に俺の意識は途絶えた。