※この作品はR-18です。

東方恋人探   作:一ノ瀬 崇

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注意。


今回の話には残虐な表現が多く含まれています。
苦手な方はご注意ください。





異伝――男、それが求めた力と狂気。

 いつからなのか、と言う問いには答えられなかった。

 物心付く前。

 それともこの世に生まれ落ちた時だろうか。

 解らない。

 だが、どうしてなのか、と言う問いには自信を持って答える事が出来る。

 忘れもしない、あれを手にしたからだ。

 あぁ、解った。

 いつからなのか、と言う問いの答えも、きっとあれを手にした時からなのだろう。

 私が、妖怪を憎む様になったのは。

 きっと、多分、恐らく。

 あの力を手に入れた瞬間からだ。

 あの力が何なのかは解らない。

 だが、今の私には関係の無い事だ。

 力は只力で在るだけで良い。

 純然たる力に、理由も謂れも由来も発祥も正義も理念も信念も思想も要らない。

 必要なのは、それを振るう事だけだ。

 

 

 

 

 あれを初めて手にしたのは、私がまだ幼く野山を駆けるのが何よりも楽しかった子供の頃だ。

 当時の私には怖い物など無く、世の中の全てが好奇心を満たす為の素晴らしい宝物に見えていたのだ。

 空を飛ぶ鳥も、野を掛ける兎も、往来を行く人も、辺りに転がる石ころでさえ。

 私の世界を広げる為の役者であった。

 そうして毎日広がっていく世界に、私は目を輝かせていた。

 今思い返してみるだけで、何と浅はかで愚かしい子供時代で在ったのだろうと自嘲の笑みが零れ落ちる。

 知らぬ事とは言え、どうやら幼い私は余程純粋で、無知な子供だったらしい。

 母もそんな私の様子に苦笑に近い笑みを零している事が多かった様に思う。

 手の掛かる子程可愛い、というものなのだろうか。

 父は毎日の様に服を泥で汚し生傷を作って帰ってくる私を、その太い腕で優しく、しかし不器用に撫でてくれた。

 終ぞ言えなかったが、私は父に撫でられる度にくすぐったい様な誇らしい様な、そんな気持ちになっていた事を覚えている。

 二人共、私の自慢の両親だった。

 最期の時まで、愚かな私を守り、救ってくれた。

 そう、両親は既に他界している。

 他でもない、私の所為で。

 

 

 

 

 切っ掛けは些末な事だった。

 私には同年代の友人が居た。

 いつも尊大な態度を取りつつもその実面倒見が良い奴、遠出したり少しでも危険な事をしようとすると涙目になりながら止めようとする奴、そんな私達を眺めて一歩引いた位置から楽しんでいる奴。

 私達はいつも四人で遊んでいた。

 在る時、私達は行商人からちょっとした噂を聞いた。

 曰く、里山の裏には小さな祠が有り、そこには強大な力が眠っている。

 言うまでも無く、里山にその様な話は一切出回っていない。

 私も父の手伝いで何度か倒木を片付けたり、冬に使う薪を拾いに行ったりして里山には慣れ親しんでいる。

 人を襲う妖か獣の類も居らず、精々青大将が日当たりの良い場所で日向ぼっこをしているくらいのものだ。

 はっきり言って眉唾では有ったが、度胸試しには丁度良い。

 とは言え何かしらの危険が有る可能性は捨て切れない。

 土砂崩れや他の山から迷い込んだ猪が出ては子供に太刀打ち出来る術は無い。

 そこで私達は村に住んでいる妖怪の濡女子に、里山で茸狩りをしてくると伝えた。

 私達の村では争いを好まない妖怪や、人と結ばれた妖怪が共に暮らしている。

 この濡女子も、そうした一人だ。

 そして、この村に一番初めに住み着いた古株の妖怪でも有る。

 ……ちなみに、私はおしめを替えられた事も有る。

 そう言った経緯も有ってか、彼女は私を甚く気に入っている様だ。

 

 

「里山にかい? 危ない事は無いだろうけど、余り遅くならない内に帰るんだよ。あぁそうそう、茸が豊作だったらアタイの所にも持ってきておくれよ? 期待してるからね、坊」

 

 

 ころころと喉を鳴らして私に枝垂れ掛かってくる。

 濡女子の癖に明るくからっと晴れ渡った空の様な性格だ。

 生まれてくる種族を間違えたのでは無いかと常々思う。

 何かとじゃれ付いてくるのを適当にあしらい、言伝は済ませた私達は意気揚々と里山へと向かう。

 ……途中彼女にからかわれた事を茶化されもしたが。

 なだらかな斜面と見通しの良い木立を抜ければ里山の入り口へと辿り着く。

 柔い土を踏み締め、或る程度進んだ所で私達は分かれた。

 私ともう一人は二手に分かれて祠を探しに、残りの二人は山道から程近い場所で茸を探しつつ私達が戻るのを待つ。

 これで山へ来た大人達への言い訳は立つ。

 あの場所からなら多少遠くへ茸を探しに行ったと言え然程離れはしないと思えるだろう。

 二刻程度と時間を決めて、私ともう一人は山中へ散った。

 行商人の話では杉林を抜け沢を上流へ向かい四半刻程歩いた辺りに件の祠が有ると言う。

 無論見付かりはしないだろうが、その時は沢で魚を獲って帰れば良い。

 暇潰しには持って来いだ。

 ちょっとした非日常を堪能する為、私は足取りも軽く山を登り始めた。

 向かうは東の杉林。

 里山には薪を収穫する為の杉林が幾つか存在する。

 先人が里山を切り開いた際に植樹したものらしい。

 そして、その杉林の側には山頂から湧き出る清流が幾重にも分岐して出来た沢が有る。

 その中でも一箇所だけ離れた場所に有り山道からも大きく外れた位置の杉林へ、私は足を進めた。

 大層な理由等無い。

 強いて言うなら、人が余り入り込んでいない場所の方が探索するのも面白そうだと感じたくらいか。

 結果として、その考えは正しかった。

 祠を見付ける事一点に限って言えば、だが。

 

 

 

 

 余り人の入りが無いと言う事はそれだけ足場が悪いと言える。

 大きく張り出した木の根や鬱蒼と茂る竹薮を越えて暫く歩くと、漸く目的の杉林が見えてきた。

 暑い。

 暦の上ではもう秋だが、降り注ぐ日差しは今だ強い。

 噴出す汗が肌着を張り付かせ不快感を煽る。

 沢もまだ遠いのか吹き付ける風は何処か生暖かい。

 遠く聞こえる鳥の鳴き声が木々の合間へと木霊し消えて行く。

 思わず悪態が口を衝いて出そうになるのを堪え、杉林を掻き分けるように進む。

 時折木の根に足を取られそうになりながら歩き続けると、不意に視界が晴れた。

 それと同時、浮遊感が襲う。

 斜面を滑り落ち、尻を強か打ち付けた。

 鈍痛が痺れる様に広がっていく。

 何事かと振り返れば、杉林は途中から抉れる様に失われていた。

 付近に倒木は見当たらないが恐らく土砂崩れを起こしていたのであろう。

 が、僥倖と言うべきかはたまた不幸中の幸いと言うべきか。

 滑り落ちた先から小川のせせらぎが聞こえてきた。

 どうせ背後の斜面は登れそうも無いのだ、このまま川の上流へ向かって進んでみよう。

 ここからは無理でも迂回して登れる場所は幾らでも有る。

 立ち上がって服に付いた土を払い、私は川の方へと歩き出した。

 小さな砂利を踏む音、川の流れる音、鳥達の囀りが抜ける音。

 それらをどこか遠くに聴きながら進んで行く。

 大きな岩等は無く歩き易い。

 暫くのんびりと歩いた所で、小川が途切れた。

 水は斜面の地中から流れ出ている。

 これ以上川を辿るのは無理そうだ。

 どうしたものかと考えた矢先、私は或る事に気付いた。

 左手の竹薮の一部が、不自然に途切れている。

 覗いて見ればまるで獣道の様に地面が踏み固められており、竹薮の先へと続いていた。

 不思議と生き物の気配や糞等の形跡は無かったが、私は好奇心に押されてその道を辿る事にした。

 が、私は直ぐに違和感を覚える事となる。

 この道はおかしい。

 普通で有れば多少なりとも獣道というものは蛇行する筈だ。

 しかし、この道は真っ直ぐ一本道なのだ。

 振り返れば先程入ってきた藪の切れ目が見える。

 名状し難い感覚に首を傾げつつも、私は歩みを止めなかった。

 そして辿り着いた。

 草一本と生えていない、大きく円を描く様に露出した地面。

 その中央に灰色をした石造りの小さな祠が有る。

 これが話に聴いた祠なのだろう。

 どの様なものなのか確かめるべく、私は何気無く一歩踏み出した。

 

 

 ────!? 

 

 

 その瞬間、ぞわりと恐怖が撫で上げた。

 背筋を這う様な気持ち悪さ。

 思わずびくりと身体が震える。

 何事かと周囲を見渡して、初めて私は気付く事が出来た。

 一切の音が消えている。

 先程まで聞こえていた筈の風の音も、鳥達の囀りも。

 その全てが消え去っていた。

 自分の心臓の鼓動さえ、聞こえては来ない。

 ここに来て、私は後悔と言う感情を覚えた。

 だが足は動かない。

 正確に言えば、足を戻そうと幾ら力を込めてもまるで何かが私の足を掴まえているかの様で、膝から下は指一本動かす事が出来なかった。

 正体の解らない恐怖に取り込まれまいと我武者羅に足を動かすと、どうやら前には動く事が解った。

 顔を上げて前を向く。

 そこには不気味に佇む祠が有るばかり。

 私は泣きたくなった。

 何か恐ろしいモノが私を手招きしている様に感じられた。

 だが一度傾いた身体はどれ程力を込めても戻ろうとはしない。

 逆に前へ進む分には背中を押すかの様にすんなりと動く。

 気付けば、祠は目の前に有った。

 祠の中央には小さな扉が付いており、真っ赤に染まった札で封印が為されている。

 

 

 ──どうせ、ここまで来てはもう戻れない。

 

 

 諦めを多分に含んだ心が半ば自棄を起こし、屈み込んで両手を持ち上げた。

 伸ばした先は札の結び目。

 随分と堅く結ばれていたそれをどうにか解く。

 はらりと札が地面に落ちるが、特に何か変わったと言う事は無い。

 この祠には悪霊か何かが封印されていたが、きっと長い年月の内に成仏してしまったのだろう。

 封印を解いても何も起こらなかった事を私はそう解釈した。

 指を扉に掛け、そろりと引く。

 抵抗も無く開かれた扉の中には小さな台座が有り、その上には小さな黒い欠片が載っていた。

 恐る恐る手に取って見ると、それはまるで玉の様な手触りだった。

 瑪瑙よりも滑らかで、黒曜石よりも深い黒を湛えた不可思議な欠片。

 一瞬、この欠片に意識を奪われた。

 そして次の瞬間には、欠片は私の手から消え去っていた。

 突然の事に驚いて辺りを見回すが欠片はどこにも落ちていない。

 確かに持っていた筈なのに、と掌を返してみた所で私は目を見開いた。

 私の右手首に、欠片が埋まっていた。

 取り出そうにも肉と一体化してしまったのか、無理に剥がそうとすれば痛みが走り抜ける。

 動かす分には邪魔にならず現状で不具合が有る訳でも無かった為、私は村に戻るまでこの欠片を気にしない事にした。

 左手の指で欠片を叩けば、コツと石を叩いた様な音が鳴る。

 どうにも理解し難い状況では有ったが悩んだ所で仕方が無い。

 暫くは袖で覆い隠して置く事にしよう。

 私は立ち上がり、振り返る。

 来た時と同じ様に、真っ直ぐな道が竹薮の外まで続いている。

 もう最初に足を踏み入れた時の様な恐怖は無い。

 一体、あの感覚は何だったのか。

 首を捻りながらも、私は集合場所へと戻る事にした。

 竹薮を抜けて空を見上げれば、日が傾き掛けている。

 どうやらまだ急げば待ち合わせに遅れずに済みそうだ。

 私は『他の生き物の気配が消えた』山道を駆け抜けて行った。

 

 

 

 

 無事皆と合流出来た私は里山を後にし、村へと歩き出した。

 最初は私が見付けた祠の話や待っていた二人が収穫した茸の話題で盛り上がっていたが、村の入り口へ辿り着いた頃には皆無言になっていた。

 何かが、おかしい。

 はっきりとした事は解らなかったが、村を出る前とは何かが決定的に違っていた。

 既に日は傾き辺りは薄暗さを増している。

 不安を抱えつつも村へ辿り着いた私達を出迎えたのは、異臭。

 風に運ばれた鉄の臭いが、私達を取り囲む。

 辺りに充満する鉄の臭いとは対照的に、村の通りには誰の姿も見えなかった。

 言い知れぬ恐怖が、再び背筋を撫で上げる。

 村の中央へ進んで行くと風の音に紛れて何かが聞こえてきた。

 最初は擦れる様な音。

 進むに連れて少しずつ増えていったその音が、漸く聞き取れる。

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

 

 押し殺された呼気。

 耳元でそれを聞かされた様な感覚がした瞬間、私は無意識に左前方へと身を投げ出していた。

 背後で風を切る音が鳴る。

 転がりながら振り向いた先、共に居た三人の身体からごとりと首が落ちた。

 一拍遅れて血飛沫が上がり地面を赤く染めて行く。

 漸く、私は辺り一面に赤黒い染みが出来ているのに気付いた。

 血だ。

 この赤黒い地面の染みも、風に運ばれて来た鉄の臭いも全て。

 誰かの血で出来たものだったのだ。

 愕然とする私の前で、どさりと三人の身体が倒れる。

 赤く鮮やかな断面からはびゅくりびゅくりと血が流れ出ていたが、直ぐに勢いを失いその動きを止めた。

 ゆらり、と動く影が有る。

 反射的にそれを視線で追い掛ける。

 赤黒く罅割れた顔をした、猿の様な妖怪が立っている。

 知らない。

 こんな奴は村に居なかった。

 妖怪はこちらには目もくれず、その大きな手で何かを摘み上げた。

 三人の顔だった。

 妖怪は厭らしい笑みを浮かべるとそれを口の中に放り込む。

 ぐちゃり、ぼりぼり。

 頭蓋を噛み砕きながら恍惚とした表情でそれを貪り食っている。

 胃から酸っぱいものが競り上がってくる。

 何とか吐き気を押し止め立ち上がるのと、妖怪がこちらへ向き直るのは同時だった。

 ぎらり、と濁った黄色い双眸が私を見遣る。

 思わず身体が竦む。

 反射的に手を交差して顔を隠した。

 直ぐにそれは悪手と気付き慌てて逃げ出そうとした所で、大きな声が上がる。

 耳を劈く悲鳴の様な、酷く耳障りな音。

 その声に驚いた私は両手を下ろし、再び目の前の光景に愕然とした。

 猿の様な妖怪の顔には大きな穴が空き、そこから黒く濁った液体がどろどろと流れ落ちていたのだ。

 そのまま妖怪は力無く後ろへと倒れ込む。

 死んでいるのは疑い様が無い。

 だが、どうして。

 辺りを見回してみるが、周囲に人影は無い。

 相変わらず、不気味なまでに静まり返っている。

 ふと私は我に返った。

 

 

 ──両親を探さなくては。

 

 

 恐怖に飲み込まれそうな私が縋ったのは両親だった。

 一刻も早く家へと帰り着きたい。

 なるべく足音を立てない様に、息を殺して走り出す。

 私の家は里山とは丁度真逆の場所に建っている。

 家や木陰を通り抜ける度、また何者かが襲っては来ないだろうかと身構えながら駆ける。

 馴染み深い草臥れた戸を目にするまでは生きた心地がしなかった。

 周囲に気を配りながら息を整え、意を決して戸を引く。

 が、予想外にも家の中は伽藍堂としていて両親の姿も無ければ争った形跡も無かった。

 不思議に思いながらも入り口の戸を閉め、土足のまま家を歩き回る。

 家の奥まで行った所で、裏の勝手口が開いている事に気付いた。

 もしや両親はここから外へ出たのだろうか。

 見れば新しく付いた複数の足跡が残っており、その中の一際大きい後には見覚えが有った。

 父のものだ。

 となれば、その横に付いた小さな足跡は母のものだろう。

 歩幅が小さい事、辺りに血痕が無い事から家から離れた時点で二人に怪我は無かった様だ。

 一息吐くのはまだ早い。

 両親を見付け出さなくては。

 幸いにも、私には両親の行き先に心当たりが有った。

 再び気配を薄くして足音を立てない様に村の出口へと向かう。

 歩みを進める度に血の臭いが強くなる。

 ふとした違和感に視線を家屋の陰へ向ければ、そこには大きな影が蹲っていた。

 村に住む妖怪と、村人が重なり合って倒れ込んでいた。

 うつ伏せに倒れる村人の胸には血で赤黒く染まった貫手が生え、その下敷きになった妖怪の首元には鍬が深く突き刺さっている。

 その傍らには、私の二つ下の童女が右腕と両足を失った状態で虚ろな瞳を空へ向けていた。

 

 

 ──何故、こんな事が。

 

 

 凶行に走ったであろう妖怪は花一輪さえ摘み取れず虫一匹殺せぬ様な心優しい妖怪だった。

 村人を襲う理由等無い筈だ。

 更に先へ進むと、村人達と妖怪達が互いに争い、血を流し力尽きている姿があちらこちらに有った。

 その中には、三人の親の姿も有った。

 両親がそこに含まれていない事を確認した私は複雑な心境でそれらを見送る。

 が、少し気に掛かる。

 この周囲に有る死体は大人達のものだけだった。

 一番激しく争ったであろうこの場所に、私とそう変わらない年の子供達の死体が、無い。

 無事、逃げ果せたのだろうか。

 だとしても何処へ。

 それとも三人の様にあの得体の知れない猿の妖怪にすっかり食われてしまったとでも言うのか。

 不意に脳裏を過ぎった考えを振り払う様にして、私は走り続けた。

 漸く、村の出口へ辿り着いた頃にはすっかり息が上がっていた。

 これ程村が広く感じられたのは初めてだ。

 熱い息を吐き出しながら村の出口に立てられた門を見遣ると、その陰からゆらりと見知った顔が現れた。

 濡女子だった。

 小紋は所々破け、袖や裾が赤く染まっている。

 覗く手足には流れ出た血が筋となって滴り落ちていた。

 普段よりは少しばかり暗い笑みをこちらに向け、事も無げに口を開いた。

 

 

「おかえり、坊。アンタだけでも無事な様で良かったよ、他のは皆死んじまったみたいだからね」

 

 

 今日は良い天気だ、とでも言う様に告げる。

 この異質な状況下でいつも通りの口調で話す彼女に、私は空恐ろしいものを感じた。

 そんな私の様子を気にした風も無く彼女は言葉を紡ぐ。

 

 

「皆、おかしくなっちまった。ほんの一刻程前さ、突然苦しみ始めたかと思えば近くに居る者を手当たり次第に殺して喰らい出した。幾人かはアタイと共に村人の避難を促していたんだが……結果は見ての通りさ。ついさっきまで笑い合っていた者同士が死に物狂いで互いを殺し合った。一人でも多く逃がそうとして大人達は農具や包丁なんかを手にして、子供達は泣き叫びながら必死で走った」

 

 

 矢張りあの争いは子供達を逃がす為の戦いだったのだ。

 ならばこうして会話出来る程度に正気を保っている彼女が、一先ず子供達を隠したのだろう。

 そう言って一息吐いた私に、彼女は悲しげな笑いを向ける。

 何故、そんな悲しい顔をするのだろうか。

 その答えは、直ぐに返って来た。

 

 

「駄目だったよ。坊も見ただろう? あの猿の様な化物を。あいつはおかしくなっちまった妖怪を押し止めていたアタイ達の頭上を跳び越して、逃げ惑う子供達を一人残らず喰っちまったのさ。一人残らず、そう、一人残らずだ、頭からばりばりと音を立てて。突然の凶行を目にした驚きで唖然とするアタイ達を尻目に、あいつはまた村の中へと戻って行った。そうして、逃げ遅れた村人をまた襲い始めたんだ。こっちまで聞こえて来たよ、悲痛な叫びが、助けを呼ぶ断末魔が。漸く声が聴こえ無くなった時、こっちで生き残っていたのはアタイだけだったよ。皆、皆死んじまった。誰一人救えなかったアタイは、そこで莫迦みたいに呆けていたよ。でも、さっきあいつの断末魔が聴こえたんだ」

 

 

 あの、酷く耳障りな音。

 アレは猿の様な妖怪が上げた断末魔だったのだ。

 

 

「誰かがあいつを殺してくれた。それはきっと坊なんじゃないか、って。夢物語の様な事を考えてしまったけれど、坊の気配が近付いて来たのには本当に驚いたよ。他の三人が居ないのは……残念だけどね」

 

 

 力無く笑う彼女に、何と声を掛けたら良いのか解らなかった。

 一番長くこの村で暮らしていた彼女が、争い合う村人と妖怪をどんな心境で見ていたのか。

 だが少なくとも、彼女が生きていてくれて嬉しかった。

 そう伝えると、彼女はゆっくりと首を振る。

 

 

「駄目さ、坊。辛い仕事を押し付ける様で悪いけど、まだ殺すべき妖怪は残っているんだ」

 

 

 他にもまだ、あの猿の様な妖怪が居るのだろうか。

 慌てて周囲を警戒するが、彼女は手を左右に振る。

 そしてその白く美しい指先を自分へ向ける。

 

 

「ほら、ここにまだ妖怪が居る。正直言うと色々と限界なのさ。アタイは長生きな所為か他の皆の様に狂いはしなかったけど、それでもこうして傷を負って血を流しては耐えられない。人としての心が押さえちゃいるが、妖怪としてのアタイは手っ取り早く力を取り戻す為に坊を喰いたがっているんだ。妖怪ってのは元々人の恐怖から生まれた存在だからね、本質的には人を襲うものなんだよ。とは言え、坊を傷付けたくは無いし、自殺する為の力を使うにはこの衝動から一瞬とは言え気を逸らさなくちゃいけない。その一瞬で坊の首を刎ねるなんて朝飯前だからね。だから坊が、アタイを殺しておくれよ」

 

 

 出来る筈が無い。

 気付けば私は声を搾り出す様に叫んでいた。

 感情を露にした私へ、彼女はずるい笑みを浮かべる。

 

 

「頼むよ、坊。このままじゃ何れアタイはアタイじゃ無くなっちまう。誰かに斃される時まで人を襲い続ける化物としてじゃなく、アタイとして死にたいんだ。坊だって、アタイを化物にしたくは無いだろう?」

 

 

 卑怯な物言いだ。

 そんな言い方をされては、断る事等出来ない。

 いつの間にか、涙が頬を流れ落ちていた。

 彼女には照れ臭くて伝えていなかったが、私は彼女をもう一人の母の様に思っていたのだ。

 文字通り生まれた時から世話になっていたのだ。

 そんな相手を、手に掛ける事はしたく無かった。

 涙を拭うと、彼女は私の手首に指を差す。

 

 

「坊、それは……あぁ、成程。彼女の欠片か。力の一部を封じられたとは風の噂に聴いていたが、それがまさかこうして坊の手元に有るとはね。つくづく縁とは奇妙なものだよ。坊、良くお聞き。その欠片はその辺の妖怪なら一撃で屠れる程に強い力が宿っているんだ。さっきあいつを斃したのも、その欠片の力だよ。だからその力を使えば、アタイだって殺せる筈さ」

 

 

 その言葉に右手首を返し、まじまじと欠片を見る。

 初めて手に取った時と同じ深い黒が、こちらを見返していた。

 こほっ、と咳き込む声が鳴る。

 彼女は口元を押さえていた。

 白く艶やかな指の隙間から、鮮やかな赤が踊る。

 

 

「見ての通り、そんなに余裕は無いんだよ。だから坊、アタイを楽にしちゃくれないか? もう苦しむのは嫌なんだよ」

 

 

 彼女の声に押される様に、私は彼女を見詰めた。

 それしか方法が無いのならば。

 これ以上、彼女を苦しめたくは無い。

 口の中に鉄の味が広がる。

 知らぬ間に下唇を噛み締めていたらしい。

 当然だ、こんな事、割り切りたくとも割り切れるものでは無い。

 彼女を救う為。

 そんな大義名分で自分を誤魔化さなければ心が壊れてしまいそうだった。

 ゆっくりと、右手を彼女へと伸ばす。

 力の使い方は、何となく解った。

 咄嗟に猿の様な妖怪へ放った時と同じく、相手を害する意思が有れば良い、筈だ。

 構える私を見て、彼女は安堵の笑みを浮かべる。

 覚悟なぞ出来る筈も無いが、それでもやらなければならない。

 

 

 ──ならばせめて、どうか安らかに。

 

 

 閃光の様に黒い稲妻が私の掌から生まれ、走り抜ける。

 それは彼女の心臓を貫き宙へと霧散した。

 稲妻が生まれた時も彼女を貫いた時も、何の手応えも返らなかった。

 だが、それは幸いだった。

 もし感覚が残っていたなら、直ぐ様私に向けてそれを放っていたのだろうから。

 ゆっくりと、彼女の体が崩れ落ちる。

 咄嗟に、私は駆け出して彼女の身体を抱き締めていた。

 呆れた様な声が、空に溶けて行く。

 

 

「……はは、莫迦だねぇ……。もしアタイの腕が動いたなら……坊は無駄死にする所だったってのに。……ねぇ、坊。アタイには連れも……子供も居なかったけどさ、坊の事、本当の息子みたいに……」

 

 

 声が途切れる。

 山へ行く前に枝垂れ掛かってきた時に感じられた、心地よい重みは、もう無い。

 ずるい人だ。

 最期に私の一番欲しかった言葉だけ置いて、逝ってしまった。

 彼女の顔に、ぽたりと雫が落ちる。

 雨でも降って来たのかと空を見上げる。

 雲一つ無い夜空と、ぽつんと浮かぶ満月がそこに在る。

 私が、泣いていただけだった。

 

 

 

 

 彼女の亡骸を門の側の宿屋へと運び入れ、仕舞い込んであった布団に横たえた。

 勝手に使わせて貰ったが、もう宿の主人も泊まる人も居ないのだ。

 許して貰う他無い。

 それに、彼女の亡骸だけは、地面に捨て置く事はとても出来なかった。

 外へ出るとすっかり日も落ちていた。

 幸い今日は満月。

 充分、歩き回れる明るさだ。

 気持ちを切り替える事は出来なかったが、それでも私は足を止めない。

 まだ、両親の亡骸が見付かっていないからだ。

 もしかすると、あの場所で私を待っているかも知れない。

 淡い期待を胸に抱き、私は村の出口から続く道を歩き始めた。

 村を出て道形に進み大きな欅の木を左に曲がり暫く行くと、見晴らしの良い丘に出る。

 その丘の上に、一本の杉が生えている。

 樹齢四百年を超えるらしいその杉はこの地域の御神木とされ、邪なモノは一切寄り付けないらしい。

 村人の中でも万が一の際の避難場所として知られていた。

 運良く逃げ果せた子供も居るかも知れない。

 どうかそうで有って欲しい、と言う叫びにも似た願いを抱きながら、私は走った。

 夜道では有ったが、月の光がまるで導いてくれているかの様に足元を照らしている。

 丘に出た。

 視界の先には一本杉が見える。

 今までに無い程の速さで、私は駆けた。

 愈々その杉の周囲まで見通せる位置まで来た時、不思議な感覚が有った。

 見えない壁の様な何かが私を阻んでいる。

 幾ら先に進もうと足を前に出しても一向に景色は流れて行かない。

 期待と焦燥感が綯い交ぜになり、私は苛立ちを覚えた。

 この壁を打ち破る方法は無いものかと考えた時、右手首の欠片が瞬いた様に見えた。

 そうだ、私にはこの力が有るじゃないか。

 右手を翳し、振るう。

 生まれ出た稲妻は眼前へ走り抜け、見えない壁を貫いた。

 直後、キーンと高い音が鳴り響く。

 試しに一歩踏み出してみると、あの邪魔な感覚は消え去っていた。

 どこか誇らしい気分で欠片を一撫でし、再び走り出す。

 一本杉の根元には、二人分の影が有った。

 座り込んでいた片方の影が立ち上がり、こちらへ向き直った。

 父だ。

 どうやら無事だったらしい。

 もう片方の影は母だろうか。

 やっと両親に会えた喜びで浮かれ切っていた私は気付かない。

 父の顔が驚きでは無く、恐怖に歪んでいた事に。

 父の表情が読み取れる距離まで近付いた時、突然父がこちらに駆け出した。

 

 

「伏せろ!」

 

 

 その言葉に従えたのは偶然でしか無い。

 倒した身体の上を何かが駆け抜けた。

 そのまま転がる私の身体を力強いものが受け止める。

 次の瞬間には視界が地面と空を交互に映していた。

 どうやら父が私を抱きかかえて転がったらしい。

 

 

「おやおや、まさか避けるとは。苦しむ時間が延びるだけなのですがね」

 

 

 どこか癪に障る澄ました声が聞こえる。

 聞き覚えが有った。

 私に祠の事を教えた行商人の声だ。

 身を起こした私が父の背中越しに見たそれは、行商人の姿とは似ても似付かなかったが。

 

 

「そう言えばこの姿でお会いするのは初めてですか。どうせ直ぐ死ぬのですから余り関係は無いでしょうがね」

 

 

 全身を覆う赤くうねった短い毛、鷹の様な鋭い目、大きく裂けた口、捻じくれた灰色の角。

 異形の化物が立っていた。

 驚く私を正気に戻したのは父だった。

 ぽん、と背中を軽く叩いてくる。

 そうして自身は化物へと向き直り仁王立ちで構える。

 是非も無い、父は私を逃がそうとしているのだ。

 

 

「ほほう、美しき親子愛ですか。実に素晴らしい。しかし立つならばしっかりと立った方が良いですね」

 

 

 言うと同時、父の体が少し沈んだ。

 否、沈んだのでは無い。

 膝、銅、胸、そして首。

 それぞれの箇所から父の体は斜めに擦り落ち、ばらばらの肉片へと変わり果てた。

 飛び散る血が私の頬を濡らす。

 赤く染まった地面の上で、父の生首がこちらを向いて落ちていた。

 首だけになった父が、震える唇で何かを伝えようとしている。

 それを太い毛むくじゃらの足が頭蓋毎踏み抜いて潰した。

 ぱしゃり、と脳漿が飛び散り辺りの草を濡らす。

 白い何かが私の足元まで転がって止まる。

 反射的にそれを追う。

 目が、合った。

 

 

「おや? 目の前で親が殺されたと言うのに震えませんね。駄目ですよ、ちゃんと恐怖に震えて頂かなくては」

 

 

 上げた視線の先、ニタニタと笑う怪物の顔が目に映る。

 

 

「あぁ、良い事を思い付きました。貴方の母親も同じ様に殺して差し上げましょう。そうしたら流石に怯え泣き喚いてくれますよね?」

 

 

 咄嗟に振り向いた。

 化物はいつの間に移動したのか杉の下に立っていた。

 母は杉の木を背にしている。

 逃げて、と声を上げるが返って来たのは逆に私が逃げる様に促す言葉だった。

 

 

「貴女も他の大人達と同じ事を言うのですね。それでは面白くない。もっと無様に命乞いをしてみては如何でしょうか? ……あぁ、これは失敬。どうせ死ぬのですからどうせ無駄ですね」

 

 

 化物は母の身体を掴んで持ち上げると、事も無げにそれを握り潰した。

 ぶちり、と上半身と下半身が分かれ夥しい程の血が滝となって流れ出る。

 母の身体は激しく痙攣していたが、直ぐに動かなくなった。

 

 

「さて、これでどうでしょう……おお、それ、それですよ! その絶望に満ちた表情! 実に素晴らしい。あの村の誰よりも深い絶望が表れているじゃありませんか。それでこそ我が贄に相応しいと言うものです。では愈々仕上げと参りましょうか。あの祠の事を貴方に教えたのは何故だと思います? 実はあの祠には素晴らしいものが封印されていたのですよ。この世のどの妖怪よりも強大な力を持つ妖怪の力、その一部がね。その封印は我々妖怪には解けないものですから誰か適当な人間を差し向けねばならない。そこで白羽の矢が立ったのが貴方です。誰でも良かったのですが、貴方は私の想像以上に活躍してくれました。そして貴方は誰よりも深い絶望を感じている! その絶望に染まった人間を封印された力と共に取り込む事で私の力は天下無二のものと成るのです! より深い絶望を味わって頂く為に色々と手を回そうとしましたが、まさか封印を解いただけで村の妖怪が暴れ出すとは夢にも思いませんでしたよ。力の弱い妖怪はあの力の余波に当てられて狂ってしまったみたいですから、私が差し向けた狒々は子供を喰い散らかすくらいしか出番が無かった様です。その狒々も、唯一狂わなかった濡女子も貴方が殺してしまいましたがね。遠くで眺めていたので一体『どうやって殺したのかは解りません』でしたが、結果的に邪魔者は居なくなった訳です。この二人が結界の中へ逃げ込んだ時はどう炙り出そうかと悩みましたが、それも貴方が結界を砕いてくれたお陰で始末する事が出来ました。あの村で生き残っているのは貴方だけ。貴方がここで死ねば誰に悟られる事も無く私が無双の力を手に入れられると言う訳です。ご理解頂けましたか?」

 

 

 理解出来る筈も無い。

 当時の私はまだ十にも満たない小童なのだから。

 しかし、一つだけ解った事も有る。

 眼前のこの化物を殺さなければならないと言う事だ。

 右腕を力無く持ち上げた私に、化物は愉快そうな笑みを向ける。

 

 

「成程、その腕に埋め込まれた欠片が、封印されていた力の一部と言う事ですか。素直に差し出すとは実に健気ですね。宜しい、貴方は特別に全身を私の血肉としてあげ」

 

 

 耳障りな声はそこで途切れた。

 稲光よりも速い黒き稲妻が化物の全身へと突き刺さる。

 顔、胸、銅、肩、両腕、両足。

 次々に稲妻がその身を喰らい、最後の稲妻が宙へ溶けた時にはもう化物は何も残っていなかった。

 有るのは血に濡れた杉の木と、赤黒く染まった地面と、ばらばらの肉片と、上下に分かれた母の骸。

 流す涙さえ無く、私は空を見上げた。

 私の代わりに空が泣いてくれればいい。

 そんな思いを胸に見上げた先には、雲一つ無い夜空と一際輝く満月があった。

 

 

 

 

 

 

「……酷く、懐かしい夢を見たものだ」

 

 

 呟き、天井を見上げる。

 ここ暫くあの日の夢は見ていなかった。

 徐に持ち上げた右手首には、深い黒を湛えた欠片が埋まっている。

 あれから、私は只管に力を求めた。

 二度と、あの惨劇を繰り返さない為に。

 人と妖は本来交わるべきではない。

 幾ら美辞麗句を並べ立てた所で結局は力に溺れ人に害を為す。

 彼女の様な、強く気高い心を持った妖怪等、もうどこにも居ないのだ。

 居るのは誘惑に弱くどこまでも堕ちて行く下賎な妖怪ばかり。

 なら、私がその妖怪を滅ぼしてしまえば良い。

 そうすれば、もうあの時の様な惨劇は起こり得ない。

 元々、人だけで良いのだ。

 そこに妖怪という異物が紛れ込むから諍いが起き裏切られ寝首を掻かれる。

 何度私が話してみた所で、どの妖怪も結局は同じ村の人間を襲った。

 十年、私は耐えたのだ。

 十年間、私は彼女との思い出を胸に人と妖が共に暮らせる事を信じて尽力してきた。

 だが、無駄だった。

 彼女だけが、特別だったのだ。

 彼女だけが、人を心から愛し、人と共に在ろうとした。

 他の妖怪に期待するだけ無駄だったのだ。

 なら、対抗出来るだけの力を持つ私が、人を守らなければならない。

 愛していると公言した妻と子供さえ貪り食う様な妖怪に居場所は必要無い。

 全ての妖怪を滅ぼす事が、人を妖怪から守る唯一の手段なのだ。

 

 

「……ん、この反応は」

 

 

 飛ばしていた遠見式に反応が有る。

 布団から身を起こし術式を組み込んだ水晶を手に取り、遠見式と自身を同期させ視界を得ると、そこには一人の男が映り込んでいた。

 

 

「これはこれは……望月の神か」

 

 

 妖怪を保護し人と共に住まわせている、有名な東国の神だ。

 伝聞ではそれなりに力の有る神らしい。

 これは好都合だ。

 神の力を手に入れれば、私は更に強くなる。

 更なる強さが有れば妖怪をより多く殺せる。

 行く行くはこの力の基となった妖怪も殺さなくてはならない。

 御誂え向きに、望月の神はどうやら命蓮寺を目指しているらしい。

 これで人から妖へとその在り方を変えた忌々しい連中の居場所も解る。

 命蓮寺の周辺には我々陰陽師の目を眩ます妖術が仕掛けられているらしく、正確な位置を割り出せずにいた。

 しかし望月の神を辿って行けば或る程度の目星が付く。

 望月の神を捉えられなくなった辺りで欠片の力を使い妖力を纏わせれば良いのだ。

 霊力では無く妖力を纏った式で有れば面妖な術式に惑わされる事も無く結界を突破出来る。

 

 

「首を洗って待っていろ、望月の神。貴様に怨みは無いが私の悲願の為、死んで貰おう」

 

 

 

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