短編。私は、鳳翔は幸せでした。金剛や五十鈴や暁が子供達と戯れるのを眺めることができて。人は死ぬ。戦場以外であっさりと死にます。それが、よくわかったのです。だから、それでも私は幸せでした。

/「鳳翔さんのおっぱいっ、吸わせてください!!」→「そうだ! おっぱいなんかどうでもいい」

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鳳翔さん、母性が溢れてショタっ子とちょっとエッチなことになる × おねショタ、ママショタ

/序

 ある里山の麓。

 すっかり高くなった秋の空と、さびしげで柔らかな秋の日射し。

 私は、泥だらけになった服と身体を日向で休ませ、艦娘と子供達が一生懸命土を掘り返して土器の欠片を探しているのを眺めていました。

 とてもほほえましい風景。

 私はただ、この景色をずっと見ていたいのです。

「見て~~~~! 鳳翔さ~~~~ん!」

 と、一人の男の子、翔太くんが飛び出てきました。

 その手に、少し欠けた薄い青銅色のお皿が掲げられているのを見て、私は、

「すごいわね~~~~!!」

 と応えました。

 翔太くんは一番年長で、年長なだけに損する役回りの多い彼の、その屈託のない笑顔に私は癒やされました。

 子供達が彼を囲んでわんやわんやと騒いでいます。

「すげーー!! 何時代?! これ何土器っていうの?!」「やっぱ縄文時代でしょ!!」「あ! そっかぁ、縄文時代かぁ!!」「なんだよ楽勝だなあ、縄文時代!!」

 口々に好きなことを言い合う子供達に、近くに立っている金剛と五十鈴が笑っています。

「アハハ! キッズ、違いますヨ! こんな薄いお皿を縄文風に焼いたらパリパリ割れるデス!! これはネ、江戸時代の土器ですよ!! 私にはわっかりますネー!!

 ケラケラ笑っていた五十鈴が、目を剥きました。

「ちょっと! 子供に適当教えるのはやめなさいよ!! あんた土器のことなんて何も知らないでしょ!!」「oh、こわ。でもこれ江戸デス」「なんだ、江戸かぁ!」「この薄さも江戸なら納得だなー!」「金剛姉ちゃん、あたまいいねー!!」「ヘヘ」「嘘よ!! 知らないのに適当言ってるのよ金剛は!!」

 五十鈴と金剛が取っ組み合ってるのを横目に、子供達は「土器」を宝物のようにしばらく見つめてから、すぐにまた、穴掘り作業に戻りました。

「ねえ、鳳翔さんもきてよーーーー! 休憩もういいでしょーーーー!」

 年少の子が一人、私を呼んでいます。

 小さい子は、そろそろ飽きてきちゃったかもしれません。

 優太くんがその子に色々話してかけ、気分をそらせていました。優太くんは、翔太くんと同じ一番年長の男の子で、翔太くんが元気な男の子達を、優太くんは大人しい子や男の子の遊びに混じりたがる女の子の面倒と、自然に別れています。

 常に誰かの面倒ばかり見ている彼らが、私はいつも心配なのですが……。

「も~~~~鳳翔さ~~~ん!!」

「ごめんなさい! もうちょっとだけ休ませて~~~~!」

 杉の林がそよ風にさざめき、色づき始めた裏山に子供達の歓声が響いています。

 もう少しだけ、私はもう少しだけこの風景を眺めていたかった。

 だって、ひとときはもう子供達に会えないものと諦めていたものですから。

「──やあ、鳳翔さん! 今日はまた、みんな随分楽しそうですね!」

 背後から声を掛けられました。

 背広姿の若い男性。まだ三十にもなっていないと分かる外見からはなかなかわかりませんが、この町の町長さんです。

 事情があり元々の町長さんとその助役さんがお辞めになられたときに、職務管掌と言ってその代わりをするため県からやってきた若いお役人さんなのです。

「あら、こんにちは! 町長さん! うふふ。実は、裏山から土器が出るんだってみんなで発掘作業してるんです」

「ほう、土器ですか! 僕も田舎が九州ですから土器にはうるさいですよ!!」

「うふふ。田舎が九州なのと土器って、なにか関係があるんですか?」

「オオアリですよ!! いや畑を掘り返すとですね、ってあッ、あれですか! あれが土器ですかッ」

「ふふ。すごいでしょう。欠片じゃないんですよ。でも、本当に土器なのか、土器でも何時代なのか、私達にはわからないんです」

「ちょ、ちょっと僕に見せ────」

 興奮した面持ちで土器の方へ行こうとした町長さんは、思い直したように、

「あ、いや、どうでしょう! 明日、休みですから僕学芸員連れて鑑定させに来ますよ!! みんなが発掘した欠片をそれぞれ持ち寄って、君の欠片は何時代、君のは何時代ってやりましょうよ!! うん!! これはなかなか子供達のいい思い出になりませんか! ねえ鳳翔さん!」

 町長さんが、子供達のために一人で得心していく姿が可愛らしくて、思わず笑ってしまいました。

「うふふ。ありがとうございます、町長さん。でもよろしいんですか、お休みにもたくさん偉い方達にお会いしなくちゃならないんでしょう……」

「いいんです! 会うのはもうみッんな、クソジジ……ではなく、ご年配の方々ですから! ……鳳翔さん知ってますか! 老人は若者のエネルギーを吸って生きてるんですよ!! 若者の至らぬところを糧にして生きてるんです!!」

「まあ!」

「だから、たまには艦娘と子供達に囲まれて色々補給しませんとね!! やつら、県の若い事務官は完全自治体のことなにも知らないと思って意地悪な質問ばかりしてくるんでトサカにきましてね!! この前大激論やって流石に大人しくなりましたよ!!

 この人は、いつも何でも笑い話にして飄々としています。

 でもこの動じなさに今回どれだけ助けられたことでしょう。

 …………そう。

 先々月。お盆過ぎの八月のことでした。

 ある事件が起きたのです。

 私たちの提督が、テロに遭いました。

 提督は、「人間とは種族の違う、最後のところでは何をしでかすかわからないエイリアン」である艦娘を、「国民の尊敬の対象・海軍軍人を、父親のように慕う娘っ子」にしたという世間からの信用を、一手に引き受けていたのです。

 提督は一命を取り留めましたが意識は戻らず。

 ニュースの拡散で艦娘とその周囲に対する風評悪化は甚だしく。

 それでも内務省という官庁に私達は世間の波から守られていたのです。

 ……私たちは、内務省にお世話になって、ある里山で人間籍を得るための教育を受けているのです。そして子供達は孤児院の孤児です。孤児院は内務省系の社会事業団体によって営まれていて、誰が考えたのか、艦娘と孤児を触れあわせるという目的で、毎シーズン連休ごとに子供達はやってくるのです。

 けれど内務省の関係省庁の某審議会であるお偉い方が、「こんな時に艦娘の元へ孤児をやるなど怪しからん! 一体何を考えているのか関係者は!」と演説を打ったことで、審議分科会は大紛糾し、それまで比較的変化の少なかった艦娘界隈に内部からの一撃は大きな変化を起こしました。

 艦娘と孤児、どちらにも責任を持っているのが、内務省とその関係省庁です。艦娘が地域社会に溶け込んで暮らせるようにするのも、内務省の職務の一つです。

 なのにそういうものを全て否定しかねない発言は無責任だと批判され、議事録からも消されましたが、艦娘に忌避感を持つ方々まで巻き込んで百家争鳴し、私達の住む田舎町まで様々な噂が流れてきました。みんなが、不安だったのです。

 だから、今年はもう孤児院の来泊は見合わせると聞いたとき、やっぱりと思いつつ、みんなとても落ち込みました。

 提督がやられ、その報復も禁止され、子供達は来ない。

 その時の気持ちは……艦娘でなければわからないでしょう。

「────鳳翔さん、唐突ではありますがッ」

 二人で子供達を眺めていたはずが、町長さんが私に向き直っていました。

 その表情は、意を決していて、

「今回の件、本当に申し訳ありませんでした! 件の人物も、非公式にですがとうとう謝罪いたしました! ですが身内の恥です! これだけこういう状況にありながら、艦娘の傷口に塩を塗り込むようなことを平気でするのがいる! 許せない、ことです!」

 町長さんが頭を下げました。子供達からはそうとわからないように。

 でも、町長さんが謝る理由なんて一つもないのです。

 町長さんは、話を聞くと一番に帝都に飛んでいって本省で訴えに行きました。それが済むと出向元の県と社会事業団体に事情を話して回り、そしてどこからも何の説明もなく不安と不信を抱く町内をよく回ってくれました。

 本当に、よくしてくれたのです。

 町長さんは握り拳で静かに怒っています。本当に、本気で怒ってくれているのです。

 だから私は、

「…………町長さんは、院長先生から聞かれましたか。私はとても嬉しかったんですけれど、今年は様子見と決まりかけたとき、子供達がそろって反対して、ストライキみたいなことをしたんですって。いつも最後には言うことを聞く、翔太くんも優太くんも、頑として受け付けなかったって…………」

「そう、ですか」

「そんな話を聞いてしまいましたから、みんなの顔を見たとき、思わず涙腺が緩んでしまって……。仲間のおかげで、子供達には恥ずかしいところを見られずに済みましたけれど、もう会えないものと一度は心に決めました」

 町長さんの手を開いて、自分の手を重ねました。

 その眼が見開き、私を見ました。

「でも。私、町長さんにしていただいたこと、みんな覚えていますから。町長さんに謝っていたくことなんて一つもなくて、私は本当に町長さんに感謝しているんです。ほんとうの、ほんとうに……」

 緩んだ拳、ゴツゴツの指先に少しだけ触れました。

「私は、みんな覚えていますから………………。ありがとう、ございます」

 秋の風がカエデの葉を転がし、きゃっきゃと艦娘と子供達の声が響きました。

 ……手が擦れ合うと、町長さんの手ががさついて少し荒れているのが、わかります……。

「──鳳翔さん」

「はい」

「実は最近、街に小さなイタリアンができたんです。うちの役所のグルメな連中が口をそろえておいしいと太鼓判を押すんですよ」

「あ、あらぁ~~、素敵ですねっ」

「僕はまだ行ったことがないんですが、鳳翔さん、今度、僕と一緒に行きませんか」

 いつの間にか、逆に握られてしまっている手。

 一瞬頭が真っ白になりました。

 何を言われているのかわからなくて。

 そして町長さんの大きな瞳がじっと私を見つめてきて、それに吸い込まれて思わず見つめ合ってしまって、

「あ、あの」

 そうして答えも決めずに口を開いてしまったその時、

「こらーーーー!! いつまで鳳翔さん独り占めしてんだオッサン!!」

「そうだよ鳳翔さんにデレデレすんなよ、オッサン!!」

「って、ああああああああああッッ、手握ってる!!!! 手ーーーー!!」

「ぎゃああああ!!!!」「いやらしい!」「いやらしいオッサン!!」「不潔なオッサン!!」

 ベンチの周りはあっという間に騒音に包まれました。

 町長さんにそっと手を離されると、なんだか寂しいような気がして、すぐにその気分を打ち消しました。

「おいオッサン! 申し開きによっては院長先生と施設長と長門さんに御用になるぞ!」

「いや待たれい、クソガキ共! まず言っておく。俺はオッサンじゃない。二十代だ!!」

「オッサンはオッサンだろ!」

「そうだ! 二十のオッサンと三十のオッサン、何が違うんだ!! 言ってみろ!!」

「ぐッ、……なッ、…………な、なにッッ!!」

 あ、ショックを受けています……。

 町長さんが本気でショックを受けている顔です…………。

「こ、こら! 町長さんになんてこと──」

 と言いかけたとき、翔太くんがするりとみんなの間を抜けてやってきました。

「なあオッサン! 俺達土器見つけたんだぜ! それも、皿!! まんま皿!!」

「あ、ああ、ちょっと見たよ。すごいな。でも俺も土器に関しちゃちょっとうるさいぜ」

「へー! じゃあちょっと見てみてよ! 縄文土器なんだけど」

「えっ?! じょ、縄文土器?!」

「あ、ごめん違った。江戸土器だった」

「え、江戸土器?! あはははは!! そうか、そりゃいい! そりゃいいな!! なあ、俺明日学者連れてくるからさ、発掘混ぜてくれよ!」

「俺達が飽きてなかったらな、いいよ!」

「……は、早いな飽きるの!! まあ見てろ、あいつすっげー詳しいから絶対飽きさせないぜ! じゃ、鳳翔さん、また!!」

 と、なんだか楽しそうにして、みんなで慌ただしく行ってしまいました……。

 あ。長門には水に流すよう言っておくと、伝えそびれてしまいました。

 カンカンに長門が怒っていたのを、町長さんはとっても気にしていましたから……。

 ……それに。

 町長さんは何も気にしない風に行ってしまわれたけど、私……、食事に誘われて…………。

「ふう…………」

「ごめんね。大切な話してる最中に……」

「あッ、ゆ、優太くん……」

 優太くんが、傍に残っていました。

 き、気持ちを切り替えます。

「い、いいのよ。ごめんね、任せっぱなしにしちゃって」

 ……翔太くんと優太くんは、その年齢以上に大人です。見かけも、行動も、一見普通の子供となんら変わるところがないのに、実は必要以上の気遣いが裏にあることに最初気づけませんでした。

 そして、彼らは町長さんと私が話していると、何故か邪魔が入らないよう二人きりにするよう色々しているのです。

 別に町長さんとは何もありません。

 た、確かに、今食事に誘われましたが、でも、何もありません。

 他の艦娘にも誰にも何とも言っていません。

 だから妙な気を遣われる理由がわからなくて……。

 その、わからないのがとても悲しかった。

 彼らが一番年長の孤児として、日頃どのような苦労をしているのか、私には又聞きとわずかな滞在の日々からうかがうしかありません。

 でも、毎日とてもとても頑張っているのです。

 自分の楽しいことよりみんなが楽しく遊べるよう、心を砕いているのです。

 でもここに来たときぐらい、私達のところに来たときぐらい、二人には何も気を遣わず伸び伸びと遊んで欲しい。

 そう思っていて…………。

「金剛さんが、発掘に飽きた子集めてキャンプファイヤーし始めちゃって……」

「うふふふ。大丈夫よ。ああ見えて、危ないことには一番早く気付くから」

 まあ、この前あまりに轟々とやりすぎたせいで各方面からべちこんべちこんと盛大に怒られましたけれど……。

 ……そうだ!

 せっかく金剛達がみんなを見てくれてるんですもの。

 今なら前々から考えていたこと。

 それができます!

 キャンプファイヤーをしている方へ向かうと、町長さんがその火を指さしながら身振り手振りで縄文土器の作り方を教えています。

 そして、その火を囲んで、暁が小さい子達にリパブリック賛歌の聞き慣れた替え歌を教えながら歌っています。

「そ~りゃ大した死に様だ! そ~~りゃ大した死に様だ♪ そ~~ぅりゃ大した死に様だ♪♪ 艤装が艦娘の死に装束♪ もう海にはゆ~~け~~な~~い!! そ~りゃ大した死に様だ! そ~~りゃ↑大した死に様↑だ! あいつは最後に叫んだよ♪ こーんな死に方真っ平↑だッ♪♪ 艤装は穴あき海の底♪ もうお嫁にいっ~~け~~な~~い♪♪」

 酷い歌ですが、鎮守府ではみんなよく歌ったものです。でもその内施設長がカンカンに怒鳴りこんでくるでしょう。「お嫁に行けない」あたりは改変の改変で、お淑やかにしなさいといつも言っている施設長への当てつけですから……。

 でも、まあ、みんなが楽しそうなほほえましい光景。

 私は人間には聞こえない口笛で金剛と呆れ顔の五十鈴を呼び、この場のあとをよろしくと示したころ、金剛が笑顔で親指を立てました!

 これで、よし!

「──ねえ、優太くん。翔太くんを、誰にもばれないよう、こっそり呼んできて?」

 

 

/破

 施設の西を通る山奥へと続く道路を横切り杉林を抜けると、小さな川があります。

 川と言っても岩ばかりの小さな川なのですが、そこを登っていくとちょっとした沢登りをするような沢になっているのです。なめらかにされた岩の上を沢の水が滝のように滑り落ちる急流。艦娘の格好の遊び場です。たま~に沢登りの格好をした団体さんと遭遇してギョッとされます。

 艦娘はその沢の上流、地元の人達が「イノシシ穴」と呼ぶ洞穴に拠点を作り、そこから毎日出撃して山をかけずり回ってます。イノシシ、シカ、あ、クマもいます。クマからは逃げます。そんな風に誰彼かまわず縄張りを荒らし回るものですから、地元の猟友会のグループの方々に見つかって、どうみても少女の集団(……私を抜かして?)がイノシシを追いかけ回しているのに度肝を抜かれていました(←そのあと、とってもとっても怒られたのは言うまでもありません)。一時期、私達は山に住む物の怪かツチノコかと言われていたと言われていたそうで、大笑いしたものです。

 そんな彼らともなんだかんだと仲良くなって、無理矢理勢子をやらせてもらい、仕留めたイノシシを料亭で捌いてもらって、イノシシ肉を頬張りながら「艦娘なら誤射してもだいじょぶネー!!」「大丈夫じゃねえよ、一生銃握れねえよこっちは!」と笑い合って酒盛りをするような毎日です(……勉強もちゃんとしていますよ)。

 そういうことをとても羨ましそうに聞いていた翔太くんと優太くんは、川の下流でみんなで遊んでいた時、沢を登ってみたいなあと一度だけ私にこぼしたのです。

 子供は怖いもの知らずというか、得体の知れないものが大好きです!

 だから艦娘は子供に好かれるんだ、というのは考えないことにして!!

 私は、決めたんです!!

 沢に子供達と行ってはいけない理由!!「危ないからダメ」「用具必要だからダメ」「子供大勢でいくのは無条件でダメ」「孤児院の院長と施設長が許さなきゃダメ」

 みんな私が取り除いてきました!! 院長先生も施設長も「若いねえ」と言って許してくれました!! 装備は駆逐艦の子達の拝借します!!

 ザックにメットに渓流シューズに沢登り用靴下、タイツにカッパ他防水防寒用具!!

 さあ、

「出発進行~~~~!!」

「おーー!!」「お~~~~!! って鳳翔さんだけ、いつものまんまじゃん!! 着物じゃん!! それで沢いくの!!」

「うーん、私はこれでいいかなって……」

「いくないでしょ!!」

 水のにおい、せせらぎ。

 二人はジャブジャブと川の中に入って「お~~~~あんま冷たくね~~~~!!」とはしゃいでいます。

 せっかくなので両手両足を使って軽い急流登りをさせてみたり、

「──この滝本当に登れるの?!」

 私たちが確保したロープで難所を越えてみたり、

「──これロープ意味ないじゃん!! 艦娘専用ルートじゃん!!」

 わざわざ巻き道を使ってみたり……。

 二人がいつもと違って、本当にきゃっきゃとはしゃいでいるのが嬉しかった。

 この子達だって、本当はこうなんだから……。

 本当は、こうなんだよって……。

 みんなに、教えたいな……。

「──わあ、タマゴタケだわ! まだあるのね。せっかくだから、採っていきましょう……」

「えっ…………。ほっ、鳳翔さん、それ、毒キノコ!!」「ほっ、ほんとだ! 真っ赤! 真っ赤な毒キノコ!!」

「うふふ。違います。毒キノコに見えるけど、これはね、タマゴタケって言って──」

「毒キノコ!! 艦娘は、毒キノコ食べてもへっちゃら!!」

「毒消しいらず!」

「すげー!!」

「あ、そういうこと言うのね! せっかく美味しく料理して食べさせてあげようと思ったのに」

「う、うーん……」「……いいけど。他の艦娘の子に、食べさせてみてからにして?」

「そんなこと言ってる間に全部食べられちゃうんですからね! タマゴタケは、他のキノコと違ってすごく───あ、見て、シマヘビ!」

「うわああああ!! 蛇だああああ!!」「はじめて見た!」

「うふふ。かわいいわねぇ~……。あれも捕って帰ってみんなで食べましょう」

「やだ!! 絶対やだ!!」「やだすぎ!!」

「えっ、そう……残念ね…………とってもおいしいのに…………あ、ヤマブドウ!」

「ねえちょっと!! 鳳翔さん!!」「さっきから食べることばっかり!!」

「あ、あら~~……」

「俺たち沢登りに来たの!」「そうだよ! おばあちゃんの山菜採りみたいなのは後にして!」

「はいはい。ごめんなさい」

 といつつ、足下に生えてるミズを教えて食べさせてみると顔を輝かせてうまいうまいと言っていました。あ、タマゴタケはしっかり採りました。本当においしいんですよ。

 ……小さな沢登り。

 沢登りをしっかり趣味にしている方達からするとお遊びみたいなものかもしれませんが、三人でするととても楽しい。

 ゴールを目前に、ブナの倒木に座って、少しだけ休憩を兼ねて森林浴をしました。

「ふ~~~~気持ちいいわね~~~~」

「鳳翔さん、そんな着物で濡れちゃって寒くないの?」

「そうねえ。もうなれっこだから、大丈夫かな」

「なれっこ?」

「そう。艦娘はね、人間とはやっぱりちょっと違うの。だからもし大きくなって、艦娘と人間って違うな変だなって思っても、艦娘のこと嫌いにならないでね」

「ならないよ! なるわけないじゃん! なあ!」

「そうだよ! だって僕たち、鳳翔さんのこと、だ、だっ、……ダだ……大好き、なんだから…………」

 その言葉に、森の木々と川がこたえ。

 顔を真っ赤にして言う優太くんと、恥ずかしそうにぷいっと横を向いた翔太くんがいました。

 あまりにかわいくて、二人とも抱きしめたいほどでした。

 連れてきて、よかった。

「こんなときに変なこと言うなよな! 優太!!」

「だ、だって、もう言うとき、なさそうだし……」

「…………………チッ!! 休憩おわり!! 優太、行くぞ!」

 と言って翔太くんはザブザブと次の滝の滝壺に入っていきます。

「あ、待って! 最後はそっちじゃないのよ! 最後はあの巻き道通っていくの。そっちはとっても危ないから──」

「最初の滝と同じだよ!」

 全然違います。幅も水量も手足の置き所も。

 なのにどんどん翔太くんは登っていって────

「お願いだから、あッッッ」

 スローモーションに見えた。

 大人の頭の高さより高いところで足を滑らせた翔太くん、それに気づきもせず急いで翔太くんの後を追おうとしている優太くんが。

 私は、跳んでいました。

 

 

 

 イノシシ穴に入った私は、みんなが持ち込んだ野外用具の中からガスコンロと鍋とミネラルウォーターでお湯を沸かし、何か言いたげな二人に問答無用で服を脱ぐように言いました。

「ほ、鳳翔さん、ほんとうにむこう見てる?!」

「いいから。早く脱ぎなさい」

 ……幸い二人のどこにも怪我はありませんでした。ザックとヘルメットのおかげです。その代わり、滝壺に思いっきり落ちたおかげで三人とも頭からつま先までずぶ濡れです。

 そして今、焦って子供おちんちんをふりふりさせてタイツを脱いでいる二人を楽しく眺めているわけです。ふふふ。

「って、あーー!! やっぱ見てんじゃん! えっち!!」「へんたい!!」

「うふふふ」

「嘘つき!!」

 脱ぎ終えて情けないポーズをしている二人に大きなバスタオルと蜂蜜入りのお湯を渡しました。二人の小さな身体はバスタオルにすっぽり収まりました。

「……鳳翔さんこそ、まだずぶ濡れじゃん」

「私は風邪引かないから。……でも、そうね。隣に来て。…………そう。もっと、くっついて、あったかくしてちょうだい」

 皮をはいだ丸太の上に座り、二人を両脇にして抱きしめました。

「ああ、あったかい。ちょっと水がしみるけど、ごめんね」

「いいよ、そんなの」

 外はいつの間にか小雨が降り、小さな洞穴にガスの音とお湯が沸騰する音、木の葉を小雨が打つ音が響いていました。

 そして、

「ごめん、鳳翔さん」「ごめんなさい」

「もういいのよ」

「……でも教えて」

 翔太くんの声は、かたくなでした。抱きしめている優太くんの身体も、私を拒絶している。

 こんなに近くで身体を触れあわせていても、二人がとても遠くに感じられる。

 洞穴に入るまではあんなに楽しそうだったのに……。

「ねえ。あいつのこと、好きなの?」

「…………あいつ?」

「町長! 町長のおっさん! いつもへらへらして、でもいつもうまいこと鳳翔さんと仲良くなろうとしてるあいつ!」

「……町長さんとは、本当になんでもないのよ」

「嘘だ! 鳳翔さんは自分に嘘ついてる! 子供にだって二人がなんとなく通じ合ってることぐらいわかるよ! 鳳翔さんがたまにあいつのこと待ってること、あいつだって理由を見つけてはやってくること! たまにしか来ない俺達にだって、わかるぐらいに!!」

 翔太くんは怒っていました。

 私でも町長さんにでもない、別の何かに。

 そして、わかりました。

 私が、二人にただただよくしてあげたい、二人に何かしてあげたいと思うこの気持ちが、この子達を不安にさせていたのだと。この子達に拒絶されて、試されて当然のことなのでした。

「……そうね。ちょっとだけ、待っていたのは本当よ」

「ほら!」

「でもね。それは、もしかしたら一つ違えば私たちがあなたたちに会えなくなって、それどころかこの町にすらいられなくなるって、そうなるかもしれなかった。そういうことを、町長さんは、町長さんだけじゃないけれど、足を棒にして止めてくれたの」

 二人の眼を、順番に見ました。

「それはとても大変なことですもの。すごいな、すてきだなって思ったわ。でも、それだけ。町長さんが私のことどう思ってくれてるかはわからないけど、私は、本当にそれだけなの」

 二人の身体をバスタオル越しにぎゅっと抱きしめました。

(こうしてぎゅってしていれば、嘘じゃないって、あなたたちに伝わればいいのに。私の気持ち、あなたたちに伝わればいいのに)

 ねえ。

 あなたたちのしたいこと、もっとこうしたいって言っていいのよ。それがちょっと大変なことで周りを困らせるようなことになっても、私達がきっとなんとかしてあげるから。私が、本当になんとかしてあげるから…………。

「…………鳳翔さん」

「うん?」

「俺も、ぎゅってしていい?」

「いいわよ」

「僕も! …………手も、握っていい?」

「はいはい」

「……冷たいけど、あったかい」

 この子達が、この子達らしさを失わず大きくなって欲しい。この子達がこの子達のまま、立派に大きくなって欲しい。でもこの子達はあっという間に大きくなって、きっとここに二度と来ることもなくなる。見届けることもできず、何もしてあげられることはない。

 今、こうして触れあっていられることさえ、奇跡のようなこと……。

 そう思うと、黙って二人を抱え上げて、膝の上に載せました。二人は恥ずかしそうにモジモジとバスタオルを気にしたり私の身体を見たりしていましたが、私が促すときゅっと赤ちゃんのように抱きつき胸に顔をうずめました。

 ああ。

 今、この瞬間だけ。

(二人が、どうかくじけず大きくなれますように。

 そして、どうか愛らしい思いやりを忘れずに居続けてくれますように)

 祈って足りることでは、ないにしても……。

 私のおっぱいに顔をうずめる二人の耳は真っ赤になっています。耳を真っ赤にしながらも顔をぐりぐりと押しつけてくるので、二人の顔の形がよくわかりました。

「うふふ。大きな赤ちゃんが二人もいるわ。ふふふ。よしよし」

 私が気持ちよく二人の頭を撫でていると、

「──あっ」

 と、翔太くんが声をあげました。私も、一瞬固まりました。

 滝壺に飛び込んだ時、胸元に勢いよく水流が流れ込んできて……着物も下着もはだけてしまって、それはすぐに直したのですがちゃんと直しきれなくて……。翔太くんに頭を押しつけられる内に、また、濡れた着物がずれてしまって……。

 乳首が見えてしまったのです。

 冷えて硬くなってしまっている私の乳首。

 私は自分の耳まで赤くなっていくのを感じました。

 二人が、乳房を、乳首を見ているのがわかります。

 それは一瞬の間。わずかな逡巡。

 ごめんなさいと言ってすぐに着物を直す、それだけのことなのに────

「ちゅっ」

 翔太くんが乳首に口づけをしたのです。

 母乳を求めるように、ちゅっちゅっと何度も吸い付くのです。

 確かめるように、大事なものを見つけたかのように……。

 上目遣いで見上げてきた翔太くんの眼を見返すことはできず、眼をつむって、頭を撫でました。

 私は……。

 私には、止められません。

 もし赤ちゃんが乳房を求めるのなら、きっとこんな風なんだって……。

 そして優太くんが恐る恐る私の着物と下着をずらしていくのも、感じました。

 ただただ、二人の頭を無心で撫でて。

 ガスの音、洞穴の小雨の音、二人が私のおっぱいをなめる音、洞穴を巻く風が運ぶ草木と水の匂い。

(あ────)

 そして気付いてしまいました。

 太股に載せた二人のおちんちんが、とても硬くなってしまっていることに。

 たぶん無意識なのでしょう。

 ゆさゆさと、ぐりぐりととても硬いものが私の太股に押しつけられて……。

 小さいながらも精一杯自分を主張する、子供おちんちん。

 そして慣れてきた二人の舌使いが、だんだんエッチなものへと変わってきて……。

 ……ああ。

 これ以上は、いけないわ……。

 でも、

 でもどうしたら…………。

 ──そこに。

 洞穴の外、叫び声とともに枯れ葉と土が傾れ落ちていく音がしました。

「うわあああああ!! おッ、俺の一張羅がああアアアア!! って、ここか!! ここじゃねえか!! 五十鈴の奴、道間違えてんな!!」

 思考が停止した頭に、やたらハイテンションな声が響き。

 何か考えようとしたその一瞬で、

「鳳翔さん?! います?!」

 懐中電灯が私達に向けられました。

「──きッ」

「ほうしょ──」

「きゃあああああああああああ!!」

 丸太の後ろに二人ごと転げ落ちました。

「鳳翔さん?! 大丈夫ですか?!?!」

「だ、だいじょぶです!! 滑りますから!! 中滑りますから!! 気をつけてください!!」

「そんなことより──」

「だいじょぶです!!!! じかんをください!!!!」

 よくわからないことを口走りつつ、光速で着物の乱れを直し、光速で心気を整え自分の体を何度も見直してから、ようやく二人を支えながら立ち上がりました。

「す、すいません……。思わずひっくり返ってしまいまして、お、お恥ずかしいところを…………」

 落ち着いてみると、洞穴の入り口に町長さんが懐中電灯と傘を差して立っていました。

「い、いえ。こちらこそすいません。驚かせてしまって……。あ、あの、二人は、大丈夫ですか?」

「え、ええ。大丈夫よね?」

「ふんッ」

「ぷいッ」

 あ、ああ、あの愛らしい二人はどこに行ってしまったのでしょう……。

 途方に暮れてしまいます。

 と、私が困っていると、外で艦娘特有のバネを使ったジャンプからの着地音がしました。

「鳳翔さん?! って、町長さんも! 泥だらけですよ!」

「おい五十鈴! 教えてくれた道ちょっと違ったぞ」

「違いません! 間違えたのは町長さんの方だってば! わたしは一応沢沿いを全部確認してきたから遅れたの!」

 というと、トランシーバーで私達の無事を伝えていました。

 これは、あとで皆さんからたくさん怒られることになりそうですね。ふふっ(←謎の余裕の微笑み)。

「鳳翔さんもこっちくるならトランシーバー忘れないでくださいよ!」

「ごめんなさいね」

「ほらっ! なんだか知らないけどあんた達もむくれてないでさっさとタイツ着る!」

「えーっ、まだ冷たいよ!」

「そ~~~~お~~~~? じゃあ裸でわたしにお姫様だっこされて山降りましょうか? あ、でもビビってちびられても困るわね。ああもういいから早く着なさい!!」

「二人を抱えて降りるの、五十鈴?」

「そうですよ。当たり前じゃないですか。こいつら風邪引く前に暗くなる前にちゃっちゃと降りましょう」

「でも、町長さんがいるでしょう。この子達はタオルで包んで抱えて、五人でゆっくり降りましょう」

「いえ、俺は──」

「だめです! 施設長と院長先生と長門が首をなが~~くして待ってるんだから。町長さんには、はいこれ。トランシーバー。使い方わかりますよね。道わからなくなったら連絡してね。あ、イノシシ見つけても走り出さずに連絡してくださいよ。まだ発情期じゃないけど何かあっても困るし」

「……………………おう」

 町長さんには何度も謝ってお礼を言ってから、結局二人で一人ずつ抱えて山を降りました。やっぱり風邪をひかれるのが一番怖いです。

 風のように獣道を駆け下ると二人はきゃっきゃと喜んでいました。その先に、怒髪天の怖い怖いおばちゃん先生達が待っているとも知らずに……。

 そしていつもの宿舎の裏に辿り着くと、他の子供達が「ずるいずるい」と騒ぎ始めましたが、施設長の一喝で蜘蛛の子のように散っていきました。施設長はまだ四十過ぎなのにとっても貫禄があります……。やっぱり結婚して子供を持つと違うのでしょうか……。

 そして、施設長さん達に呼ばれ。

 私達三人が法廷に引き出される直前、

 二人きりのとき。

「鳳翔さん、らしくないですよ」

 と、引き止めるように五十鈴が言ってきました。

「誰かをこんな露骨な特別扱いなんて、今まで絶対にしなかったじゃないですか」

「…………そうよね」

「何でもいいです。わたしでも、誰でも、言葉にして言ってください。みんな待ってますから」

 艦娘が艦娘同士で助け合うこと。

 誰かがおかしくなってると思ったら手を差し伸べること。

 それでも駄目なら、無理矢理にでも助け上げること。

 艦娘をあの手この手で引っかけた悪い男を陰ながら処理(不穏当な表現)したこと、一度じゃないですものね。うふふ。

「ありがとう、五十鈴」

「いいえ! それより、道に迷って全然帰ってこない町長さんがクマのえさになる前に見つけてこなくちゃね!」

 そう言って五十鈴は屈託なく笑いました。

 

 

/急

 宿舎の廊下の窓。

 それは二重窓になっていて、雨がやんだ後の空のきれいな月を二つに見えた。

 雨と夜の匂いが充満する廊下を、僕と翔太は音を忍ばせて歩く。

 ……これから僕たちは、鳳翔さんの部屋に行く。

 誰にも言わず。ばれず。こっそりと。

 ……鳳翔さんは優しくて、きれいで、みんなの気遣いをしてくれて、思いやりがあって。滅多にない人だよって誰もが言う。みんな、お母さんお母さんって抱きついて甘えている。

 でも、ある日翔太の機嫌が悪かった日、すごく荒れていたことがあった。

「お母さん」ってなんだよ、そんなんじゃねえだろ! 「鳳翔ママ」だって! マジで馬鹿じゃねえの、って。「ママってやつは、子供でお人形遊びやって、気が済んだらてめえの都合のいいように忘れる!! ふざけんじゃねえ!! みんな死んじまえ!!」って。翔太はお母さんに捨てられた。でもそれはみんな似たようなものだ。

 鳳翔さんは僕たちのお母さんじゃない。みんなわかってる。でも、「ママ」と言ってしまう。

 僕たちには、優しくなくていい、きれいじゃなくていい、滅多にいていいから、僕たちだけを見てくれる本当のお母さんが必要だった。そういうことを翔太に言ったら、ああ、そうだよな、って言ってくれた。

「──でも、俺達にだって俺達を生んだ奴がいたはずじゃないか」

 鳳翔さんは僕たちにとってどういう人?

 優しいお姉さん? お母さんの代わり? ママ? ママって、なに?

 ……夕食の時、施設長と院長先生に囲まれて、町長がご飯を食べていた。「うまいうまい」と言っていたけれど、絶対嘘。施設長は、丸縁めがねを掛けた、ドラマに出てきそうな学校の怖い先生をさらに目つきを悪くしたおばさん。院長先生はちょっと太っちょで一見優しそうだけど、その目はどんな些細な変化も見逃さない。

「町長さんは、田舎九州の割には訛りなかあね?」

「ええ、もうこっち来てめっちゃ馬鹿にされましたからね! 頑張って直しましたよ。でも、故郷の友人に会うたびに、おまえ鹿児島捨てたな! って言われます。ははっ、ひどいですよね」

「薩摩なら成績のいい子はみんな海軍行くんじゃなかね。じゃなきゃ五高か。なんでわざわざ、後見してもらってまで一高帝大と出たんね」

「ああ。海軍の方は予備の中将が勧誘に来てましたよ。まあでも本当に出来がよくて海軍行きたい奴は幼年学校行っちゃいますし……まあそれでも結構行きましたけど。一番できた奴は五高行きました。……それで、あの、ご存じかもしれませんが、最近防長教育会みたいなのがこっちにもできまして、『何人にもよらず年寄りというのはやたらと会いに来てもらいたがる』──でッ、ではなくっ、先輩方とは色々なご縁がありまして、僕は一高に行かせてもらうことができました」

 そういう風に町長のことを、町長が持ってきた鹿児島名物カルカンを食べながら聞いていた。

 僕らは知っている。

 院長先生が、大人の男に根掘り葉掘り聞くときは、必ず誰か女の人とくっつけるつもりだっていうことを。

 そして今回、それが鳳翔さんであるということも。

 院長先生が前から艦娘は男勝りで心配だと鳳翔さんに言っていたのを知ってるし、鳳翔さんによければ模範を見せてやってほしいとも言っていた。最後には、「あの男どう思う?」と直接聞いていたこともある。鳳翔さんは、ただ困っていた。

 だから今、僕たちは鳳翔さんの部屋の扉を叩く。

 僕たちを沢登りに連れ出してくれた鳳翔さん。馬鹿をやった僕たちを身を挺して助けてくれた鳳翔さん。すねている僕たちを、優しく抱きしめてくれた鳳翔さん……。

「──い、いくぞ」「う、うん……」

 身体がぶるりと震えた。

 秋の夜。寒い。

 ……ノックの音。

 扉が、開いた。

「あら、どうしたの、二人とも、こんな時間に」

 鳳翔さんが言い切る前に、僕たちはするりと扉をすり抜けて、後ろ手に閉めた。

 驚いた顔をしている。

 一瞬だけ、躊躇した。

 でも、言うんだ。声を合わせて、

「鳳翔さんっ」

「鳳翔さんっ、鳳翔さんのおっぱい、吸わせてくださいっ!!!!」

「──って、違うっ!! 翔太!!」

 鳳翔さんと一緒に寝かせてくださいっていう予定でっ、

「えっ……あッ、やッ!! ち、ちが、鳳翔さん違────」

 翔太の奴、肝心なときにテンパった!!

「ほ、鳳翔さん、俺達、一緒に寝てくださいって言うつもりでっ! ね、寝てくださいっていうのは眠らせてくださいっていうこ、ことで!! おっ、お願いします! 一緒に寝かせてください!!」

「おっ、お願いします!! 鳳翔さん!!」

 勢いよく頭を下げた。

 もうそれ以上顔を上げていられなかったから。

 すると、クスクスと笑い声がしたので、ちょっとだけ顔を上げた。

 鳳翔さんは手を口にあてて、こらえきれないように笑っていた。

 ……それは、いままでで、一番かわいい笑顔だった。

「ほ、鳳翔さん、おっぱいとか、そういうのじゃ、俺達、本当になくて────」

 翔太がしどろもどろに言っている。顔を真っ赤にしながら。

 そして僕たちは不思議な笑顔の鳳翔さんに見惚れていた。

 そして、まだ笑っている鳳翔さんは、

 そのままベッドの脇に座り────

 一瞬だけ躊躇した後、自然な動作で着物の胸元をはだけさせた。

 僕たちは息をのんだ。

 女の人の、白い首筋。首から肩筋へのライン。

 下着に包まれた、丸い丸い二つのおっぱい。

 思わず、つばを飲んだ。

「…………二人とも。そんなに遠くから見られると恥ずかしいわ」

「だ、だって、鳳翔さんが、いきなり」

「……一緒に眠ってしまったら、あなた達が、おっぱい吸えないでしょう?」

 うわっ、と口から自然に声が漏れた。

「ほ、鳳翔さんっっ」

 鳳翔さんは、駆け寄って思いっきり抱きついた僕たちの頭をなだめるようになでてくれた。

「ねえ。あなた達の気持ち、私にも少しだけわかるもの。私達にも、お父さんやお母さんは、どこにもいない。でもね。身体ばかり強くて男勝りで人の心もわからない、どうしようもなかった私達のような艦娘にも、お父さんになってくれる人がいた。だから、きっと…………」

 僕らの首筋を撫でる、鳳翔さんの細やかな指。

 ……ああ、そうだ!

 本当におっぱいとかそういうことじゃない! そんなこと、どうでもいい!

 鳳翔さんがいれば何だってできる!

 特別扱いなんかしてくれなくてもいい!

 たまに会えて、僕らのことを陰から見ていてくれて、本当にわかってくれて、それでたまに優しくしてくれて、たまに気遣ってくれる。

 本当に、ときたまでいい。

 それだけで、いいのに!!

 それだけで僕たちは、なんだってできるのに!!

 ずっと一緒にいてほしい!!

「──あら、おっぱいはいいの?」

 今だけ。

 今だけは僕たちだけの鳳翔さんだった。

 いつまでも抱きついている僕たちを見ておかしそうに笑っている、鳳翔さんだった。

「吸います!」「吸わせてください!」

「はいはい。そう言ってるでしょう」

 そう言いながらも、ブラを外すときはちょっと恥ずかしそうだった。

 僕たちは、鳳翔さんのおっぱいにも見惚れた。

 薄暗い洞穴では見えなかった、真っ赤な乳首に丸っこい輪郭のおっぱい。見つめているとだんだん乳首がピンとしてくるようで、鳳翔さんはすぐに恥ずかしそうにおっぱいを隠した。

「見ているだけなら終わりですっ」

「ごめんなさい!!」

 ──そうして僕たちは、鳳翔さんのおっぱいを舐め始めた。

 翔太はちゅうちゅうと強く乳首に吸い付き、溢れたおっぱいを手でギュッと潰している。

 でも僕は、おっぱいはそんな風に強くしてはいけない気がした。最初に触れるか触れないかぐらいでおっぱいの肌触りを確かめたとき、鳳翔さんは一瞬ぞぞっと肩を震わせたのを見た。きっと、とっても優しく触らないといけないのだ。

 歯を立てないように唇と舌を使ってちゅうちゅうすると、鳳翔さんは黙っているけどぴくりとした。そしておっぱいの付け根から形を確かめるように指でそっとなぞると、おっぱいに鳥肌が立ったのがわかった。それに舌の中でおっぱいが硬く大きくなっている。僕は嬉しくなって乳首を舌のお腹を使って何度も何度も舐めあげた。ざらざらとした感触が上下するたびに、鳳翔さんはぴくんとする。翔太じゃない。僕が、そうさせているのだ。

 翔太はちょうどおっぱいから口を離したので、僕も離した。向こうのおっぱいもテラテラぬらぬらに照らされている。でも、僕の乳首の方が大きくなっているように見えてちょっと誇らしい。

 僕たちは、夢中になっておっぱいに吸い付いた。吸い付けば吸い付くほど立ちこめていく女の人の匂いに頭がくらくらする。

 色っぽい、ため息をつくような鳳翔さんの息づかい。鳳翔さんはエッチなかすれるような声を出す。隠そうとしているのがわかるけど、隠せてない。少しだけ歯を立ててみると、僕たちにわかるほど身体をびくんとさせた。見上げると、鳳翔さんの顔が紅潮していた。

 だんだんおっぱいよりも、鳳翔さんの身体をピクピクさせるのが楽しくなってきた。乳首が硬くなりすぎて小山みたいになってるおっぱいを優しく噛んだり根っこから優しくもみ上げると、悩ましげに身体をよじらせる。翔太もそんな鳳翔さんに興奮していて、鳳翔さんはエッチな声を隠そうともしなくなっていて、胸の奥がざわざわした。

 おっぱいを吸うことがこんなにエッチなことだなんて、知らなかった。

 女の人は、おっぱいを吸われて気持ちよくなるんだ……。

 ため息のような、もどかしそうで気持ちよさそうな声が、何度も鳳翔さんの口から漏れる。

「はぁっ…………は、はっ、はぁ…………♥」

「──あっ」

 翔太が声を上げた。

「……どうしたの、翔太くん?」

「パンツの中、おもらしみたいになっちゃってる……」

「そう……。それはね、大丈夫なのよ」

 鳳翔さんが、翔太のズボンのボタンを外してパンツまでずらすと、硬くなったおちんちんがピンと棒のように反り返った。

 夢中で気付かなかった。僕のおちんちんも半分麻痺したようになっていて、ちょっと触ったらぐっしょしていた。

「優太くんも……?」

「う、うん……」

 鳳翔さんと眼が合った。潤んで切なげな瞳は、それでもいつもの鳳翔さんの優しいたたずまいだった。

「今夜だけ、特別よ」

「えっ」

 そう言って鳳翔さんは、翔太のズボンとパンツを完全に脱がせると、座ったままの翔太のおちんちんに触れた。

「あうっ」

「ふふ。ごめんね。優しくするから……」。

 ピンピンになった翔太の皮被りのおちんちんは、鳳翔さんが少しさわさわするだけで、透明な液体をぴゅぴゅと出し始めた。

「ふふ。翔太くんのおちんちん、泣いてるみたい。かわいい……

 背中から倒れ込みそうになる翔太を支えて、鳳翔さんはおちんちんを愛しげにさすっていた。

「ほら、こーしこーし♥」

「ほ、鳳翔さぁん。おしっこ出ちゃうよっ」」

「ふふ。我慢してくれて、ありがとうね」

 そう鳳翔さんが耳元でささやくと、精液が勢いよく飛び出していた。鳳翔さんの顔にまで飛んでいた。出てしまった後も、優しく優しくしごいて、翔太の頭を撫でていた。そしておちんちんから精子が止まると、

「さ、優太くん。ごめんね、順番にしちゃって…………」

 鳳翔さんは僕にベッドの脇に立つよう促すと、翔太と同じようにズボンと下着を脱がしてくれた。反り返ったおちんちんを見せるのは恥ずかしかったけど、鳳翔さんを前にして隠す方が恥ずかしいような気がした。

「な、なにするの? 鳳翔さん……」

「優太くんが、わたしのおっぱいに優しくしてくれたお礼よ」

「──あっ」

 鳳翔さんは、そのままぬるりと僕のおちんちんを食べてしまった。

 僕のおちんちんに舌がぬるりと絡まってきて、僕のおちんちんを舌でなめあげたかと思うと、おちんちんを外に出して、ぴったり顔をぴったりくっつけて、ねろねろと玉袋と竿の根元を舐め始めた。

 僕のおちんちんが、鳳翔さんの顔に当たってる!

 エッチな顔をした鳳翔さんが、僕のおちんちんにほおずりしながらっ、

「あっ、ほ、鳳翔さんっ」

「いいのよ。すぐに出ちゃっても……」

 鳳翔さんのエッチな瞳が宙を泳いでいた。

「あ、ほうしょうさっ、あっ、あッ、でちゃッ」

 全身に寒気が走って、下半身が自分のものでないように震えると、おちんちんが白いものを吐き出していた。

 びゅるびゅるとおちんちんを震わせて出た白い液体は、鳳翔さんの目と鼻の間にに当たって垂れていく。

「うふふ。いっぱい、出たわね。あっ、暴れん坊ね優太くんのおちんちんは……」

 鳳翔さんの顔のあちこちにぴゅっぴゅと精子をはき出し続けいていたおちんちんを、鳳翔さんはまた咥えてなめ取り始めた。

 その姿がとてもいとおしそうで、

「…………あら、また優太くんの大っきくなってきちゃったわ。どうしましょう」

 その言い方が本当に困ったようでおかしかったけれど、

 僕のおちんちんはすぐにまた大きくなってしまっていた。

「お、俺も…………」

 そして、おちんちんをまたびんびんにさせた翔太も、僕と同じようにベッド脇に立ち上がっていた。

 鳳翔さんは、

「あらまあ。本当に困ったおませさん達ね」

 いつものように優しく笑ったのだ。

 

 

 それから僕たちは、鳳翔さんの両脇に立って何度もおちんちんを舐めてもらった。

 おちんちんから精液が飛び出だすと鳳翔さんは満足そうに微笑むので、すぐにまたおちんちんは硬くなった。

 鳳翔さんの顔は精液まみれですごいことになっていたけれど、とてもきれいだった。

 何度も出しているとだんだん出すまでの時間が長くなって、

 交代で鳳翔さんに正面から抱きついておっぱいを舐めるようになった。

 精液まみれのおっぱいだったけれど、関係なかった。

「鳳翔さん、俺もう出ない……」

「ふふ。がんばって♥」

 へとへとになった翔太は、特別に仰向けにされておっぱいを吸わせてもらいながらおちんちんをしごかれていた。ずるい。僕も鳳翔さんのふっくらしたもう一つの乳首に吸い付きたい。着物がずれて露わになっているお尻をわしづかみしたい。きれいな背中をなで回してみたい。いい匂いのするうなじに顔をうずめたい。髪の毛の匂いも嗅いでみたい。それから、ただ、ずっとぎゅって抱き合っていたい。

 ──なんて思いながら二人の情事を見つめていると、ふと鳳翔さんと眼が合った。

 その眼差しに僕のムッツリな気持ちが見抜かれたみたいで、恥ずかしくなって、見るのをやめた。

「あっ、出るっ♥」

「お疲れ様、翔太くん……」

 翔太が精液をはき出してからも、あやすように鳳翔さんは頭を撫で、おちんちんを優しくいたわっていた。翔太が寝息を立ててからもそれは続き、翔太が聞いたら怒るだろうけれど、それはやっぱりお母さんみたいだった。

「……さあごめんね、いつもいつも順番にして」

「ううん。でも鳳翔さんが、僕たちの本当のお母さんだったらよかったのに…………」

「うふふ。ありがとう。でも、お母さんはこんなことしないでしょう……」

 そう言って近寄ってきた鳳翔さんは、僕の唇にキスをして、強く抱きしめてくれた。

 初めてのキスは、ちょっと苦かった……。

「優太くんは抱っこされるのが好きなのね」

「うん。でも抱っこしてくれる鳳翔さんもすごくうれしそうだよ」

「ええ、そうよ。ずっとこうしていたいぐらい……」

 鳳翔さんは、僕がしたいことをみんなさせてくれた。

 お尻もモミモミさせてくれたし、うなじに顔をうずめさせてくれたし、すべすべの背中をさすらせてくれて、その間もおっぱいをずっと揉ませてくれた。さらさらの髪の毛もずっと触っていたかった。

 でも、

「じゃあ最後に、もう一度だけ出しましょうね……」

「う、うん……」

 僕のおちんちんは何度も出たのにまだ勃起していた。

「優太くん、来て……」

 寝転がった鳳翔さんに、導かれるまま俯せに抱っこされた。

 そしてまた導かれるまま、鳳翔さんのお腹におちんちんを擦り付けた。鳳翔さんは掌でぬるぬるのおちんちんを包んでくれて、僕が気持ちよく腰を振れるようにしてくれて……。

 キスまで、してくれた。

「ほ、鳳翔さん、キスされると出ちゃう」

「ふふ♥ ごめんね、こんなこと教えたら、本当はいけないのに……」

「あ…………っ、だめっ♥」

 僕の唇が鳳翔さんに吸われると同時に、精液をそのお腹に放っていた。昼間に見た蛇みたいに精液が鳳翔さんのお腹を伝っていた。

「ほ、鳳翔さん……」

「今は、ぐっすりおやすみなさい……」

「僕も、男の艦娘だったら、よかったのにな…………」

 最後に見た鳳翔さんの顔も笑顔だった。

 でもまどろんで眠りについた脳は同時に別のことを考えていた。

 本当に、今の鳳翔さんに一緒に寝かせてくださいなんて頼んでよかったんだろうか。

 今回の連休の鳳翔さんは少しおかしかった、僕たちに気付かれないように、陰で涙を拭っていることがあったし、僕たちのことを遠目に見ていることも多かった。

 それで僕たちのことも必要以上に心配になって、

 みんなに優しい鳳翔さんが、僕たちだけを沢登りに連れて行ってくれた。

 それで……。

 ……だから、もしかしたら僕たちは、お父さん代わりの人をなくしかけた鳳翔さんにつけこんで、たくさんの心配事で弱っていた鳳翔さんにつけこんで、卑怯なことをしたんじゃないか。

 そう思った。

 思って、眠りについた瞬間、途端に叩き起こされた。

「はいっ二人ともっ! 起床っ!」

「ふぁ、ふぁい!!」

「まずお風呂に入ります!! パジャマ脱ぎ!!」

「ふぁい!!」

 寝ぼけたまま、ぞろぞろと部屋の扉へ歩く。

「あ、大浴場じゃなくて私のお風呂よ!」

 その言葉にピーンと目が覚めた。

 よく見ると、カーテンの外はまだ暗く、時計は起床時間より遙かに早かった。

 そして一緒に裸になった鳳翔さんとお風呂にはいり、鼻歌交じりに身体をこれでもかと丹念にゴシゴシ洗われて、いつの間にかお湯が張られていた湯船にぶちこまれた。

 当然おちんちんがまたおっきくなっていたけど、今朝は抱きつくことも許してくれなかった。

 それから僕たちが浴槽に浸かっている間、鳳翔さんは先に出ていって僕たちの汚れたパジャマやらを持って部屋の外へ出て行く音がした。

 ……僕たちは、二人だけになった。

「……ねえ翔太。僕たち、これでよかったと思う?」

 普通なら、あこがれの人にエッチなことをしてもらえて喜ぶのだろう。

 でも。僕たちは。

「…………わかんねえ。でも、誰かに何かを与えるっていうのは、その時その瞬間、同時に自分にも返ってくるものがあるってことなんだと思う」

「……うん」

「無邪気に与えるのは奪うのと変わらない。だけど、昨日と今日はそうじゃなかったって、俺は思うよ」

 翔太は時折とても難しいことを言う。

 翔太が鳳翔さんのことを言っていて、鳳翔さんのことを言っていないのはわかる。

 俺達を洗ってるときの鳳翔さんは、とても楽しそうだった。

「──なあ、んなつまらないことより、鳳翔さんのおっぱい思ったより大きかったよな。それに、まさか舐めてくれるなんて思わなかった!」

「うん。でも僕がおっぱい触ってたときの方が気持ちよさそうだったよね。乳首ぷっくりしてた」

「は?! はあああ?! そういうこと言うか!? ならなんで鳳翔さん俺のちんこにいつも先に触ってくれてたんだよ。おまえの短小より俺の方が魅力的だったからに決まってんじゃん!」

「…………『ほ、鳳翔さぁん、あっ、おしっこでるぅっ♥』」」

「うるせえ!! だいたいなあ、愛し方が違うよ! 鳳翔さん俺の時は優しくて愛おしそうに触ってくれてたなあ。おまえはあれだ! おまけだ!」

「はー翔太くんはまだまだ子供だなー」

「…………でもよ、鳳翔さんめっちゃエロくなかったか? あんなにエロエロだったなんて! あれは痴女だな!!」

「うん。おちんちん舐められてるときもすっごいエロい表情でやばかった」

「だろ! どうしよう俺、明日、いや今日からまともに顔見られるかな。顔見るたびにちんこ勃つかも!」

 僕達は、一通り騒いでから、また、静かに湯船に沈んだ。

「……ま。でも、悪かったはずねえよな」

「…………たぶん」

 そしてもう喋ることはなかった。

 温かい水に包まれ、揺られ、鳳翔さんの匂いだけがする湯船。

 僕たちは、もう少しだけそこに浸かっていたかった。

 

 

 

 

 ああ。

 一つだけ付け加えておかなければならないことがあった。

 僕たちは知らなかったのだ。

 浴室の外で、鳳翔さんが僕たちの着替えを持って待っていて、会話をすべて聞かれていたと言うことを。

 そしてその日の間、鳳翔さんの全く笑ってない笑顔に泣いた。本気で泣いた。

 でも、最後の最後には許してくれました。本当にごめんなさいでした。

 


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