※この作品はR-18です。

好色平凡な男がゾイドに乗る   作:触手スライム

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8話 首輪

Z.E. 428年 2月13日 午後5時00分

 

 砲弾のように脇道から現れたのは、肌が透けるように薄い布で作られた貫頭衣を纏った二人の女。

 肌は薄い褐色で、白い髪をしている。

 先頭を走る女は、手のひらで包むのにちょうどいい乳房を上向きに弾ませ、肩口まである白髪を風に靡かせ、しなやかな脚を懸命に前に出す。

 その女に手を引かれているのは、まだ発育がないのかと疑う少女。

 捲れ上がる貫頭衣から股が見えて、女とわかるが髪の長い少年と言われても通る容姿をしている。

 しかし強烈なのは、首輪に鎖がついていて繋がれていたのか首には酷い跡があった。

 

「そこのお前!」

 視線に気が付いたのか、褐色で背の高い方の女がドレンへと向かってくる。

 ドレンはセナに隠れるよう手振りで伝えると、腰の銃に手をやった。

 

「なんのようだ?

 何かから逃げるなら、追わないからさっさと行けよ」

 相手が目の前に来る直前、ドレンはそう言い放った。

 

「うるせー。

 お前、軍人だよな?」

「あん?

 軍人だが、それがどうかしたか?」

 急な問いかけにドレンが答えると、女はドレンの体に正面から抱き着いてきた。

 

 僅かな隙に、セナ達を視線で探すと、アカネが瓦礫を手に、ヨウコとセナを庇うように前に立っていた。

 

「俺と妹を買ってくれ、後で返すから!」

「は、お前は何を言っているんだ?」

 彼女は抱き着いたまま、胸元から上目遣いに、釣り目の赤い瞳でドレンを見つめる。

 そして自分の胸を押し付け、尻にドレンの手を誘導する。

 

(いい匂いと感触なんだが、視線が痛い)

 ドレンは、抱き着いてきた褐色で背の高い方の女の荒い吐息と発せられる甘い匂い、手に直接伝わる柔らかな感覚を、背筋に受ける氷の視線で耐えていた。

 

「なんでこんな事をする」

「……傭兵の仕事でドジってゾイド壊しちまって、借金の返済ができなくなって、借金奴隷に落とされた。

 でも、糞爺をぶん殴って返品された後、最前線の慰問に行かされるって聞いて、隙を見て俺は妹と逃げて来たんだ。

 頼む!

 俺と妹を買ってくれ、ちゃんと返すから!!」

 褐色で背の高い方の女は抱き着く力を強くしながら、ドレンの問いかけに答えると、さらに強く抱きつく。

 

「あのなぁ……どっからきた?」

「ヘリック共和国のマウント・アーサーだよ。

 なあ、頼むってアタシなら何でもするから」

 

 ドレンの問いかけに女が答えると、遠くから野太い男の声が近づいて来ているのが判った。

 

(まあ、楽しむことができるのなら悪い買い物でもないか……。

 周囲は良い目で見ないだろうが、次こそ死んでしまうかもしれないなら、やってもいいよな)

「お前らゾイドに乗った経験は?」

「俺はグランチュラに乗っていた。

 妹は自分の機体を持っていないが、手伝いでよく乗っていたぜ」

(なんで俺なんかにペラペラと話すのかね?

 ……まぁ、逃げやすい相手と舐められているのだろうなぁ)

 自分の記憶だけで間違いがあってはいけないので、携帯端末が使えることを確認すると、渋々と軍務局の窓口につないだ。

 

 

 そこで個人奴隷の扱いを聞くと、国としては【国際指定労働移譲法(通称:人身売買法)】に準拠している。

 刑事犯は、【第1種移譲対象(カテゴリー1)】に分類され、人権はない。

 経済破綻者は、【第2種移譲対象(カテゴリー2)】に分類され、所有者の許可などの条件はあるが多少の自由がある。

 

 その上で、【取引結果の奴隷】は資産と捉えていることや、本人がそれの継続を望む事も多々あり、法的な罰則もなく曖昧な状態となっている。

 

 軍としては人的資源確保の観点から、上司に申請すれば従兵のような扱いで主人と同じ軍施設内に入ることができるが、問題が発生した場合は主人の責任となる、という話をドレンは聞き出していた。

 

 窓口との話が終わり、通信端末を切るのと同じタイミングで前後から男達が現れる。

 

(少尉は混乱しているだろうけど、向こうから来てくれたのはありがたい。

 エネミーゾイド撃破の報奨金も入っているが、自分の工場かゾイドが欲しくて国際通貨【G】をためていてよかった)

 抱き着く女の腰に手を回しその肌を確かめながら、そう考えていた。

 

「あんたらは、奴隷商か?」

 不意に懐のIDカードに手を添えて存在を確かめると、ドレンは彼らに声を掛けた。

 

「ああ、そうだ。

 ここで問題を起こす気はねぇ、そいつらを渡して貰えねぇか?」

 正面から近づいてきた集団から、男が進み出てそう言った。

 男は緑色の目をした、倭国では珍しい刺青を顔に入れていた。

 

「こいつらを俺の奴隷として買いたいんだが、どこに行けばいい?」

 ドレンに抱き着いていた女が男の方へと向き直り、女の妹が女の手を握るように隣に立つ。

 ドレンは姉の腰を引き寄せつつ、妹の肩に手を回し、姉の胸を揉むように掴んだ。

 

「ちょっ!」

「ひっ」

 姉妹は顔を赤くするが、姉は気が付いたのか妹を気にしつつ、わざとらしく甘えるしぐさを見せ、ドレンにもたれるように体重を掛けた。

 

「なんだと?

 ちょっと待て……」

 目の前の男はそう言うと、少し考えるそぶりを見せると人を走らせる。

 お互いに名乗りもしない状態で待っていると、不意にセナがドレンに歩み寄ってきた。

 

「そろそろ、離しても良いんじゃないですか?」

 セナが笑みを浮かべたまま、二人の女の胸を揉んでいる手を指さした。

 

「おっと、悪いな。

 つい掴み心地がよくて」

 ドレンはそう言うと、女から手を離す。

 

「俺はアモス・エバンス、共和国で奴隷商を営んでいる者だ。

 ……ところで、お前が逃亡した借金奴隷を購入したいというのは本気か?」

 アモスは人懐こい笑みのまま名乗ると、雰囲気が変わりドレンにそう尋ねる。

 

「俺はドレン・アサクラ。

 さっきも言ったが、この二人を買い取りたい。ついでに他にもいれば購入したいのだが、良いのはいるか?」

「……正気か?」

 アモスの問い掛けにドレンは笑みを浮かべる。

 

「客ならいいんだ、それならガイロス帝国産の訳アリがいるぜ。

 その二人込みで話すならついてきな」

 そう言って奴隷商がもと来た道に戻るように歩き始める。

 

「少尉、イザワ軍曹とナシザキ二等兵を連れて基地に戻ったら元気な爺さんに伝えてほしい。

 人手を確保できそうだから寝床と足が欲しいとな、人数は追って連絡するが、モルガにトレーラーでも曳かせて、今日使った街の入り口に迎えに来てくれ」

 ドレンがセナに大雑把に伝言を伝えると、アカネが激しく反応する。

 

「まって!わたしは着いて行く、あんたが何をしようとしているのか見極める」

 ドレンと睨み合うが、アカネは一歩も譲らなかった。

 

「……わかった。ただし、俺の指示通りに動け、余計なことはするな」

 その言葉に、アカネが頷くのを確認すると、セナの答えを聞かないで奴隷商の後を小走りでついて行った。

 

「あ……おいて行かれましたね」

 セナは少し寂しそうにヨウコに言った。

 

「まあ、しょうがないかな?

 闇市なんて普通近寄るものでもないし、それより基地に帰って曹長に言われたことしないといけないんじゃない?」

 ヨウコはセナを気遣いながらそう言った。

 

 ドレンとアカネは無言で、二人の少女を引っ張りながら街の奥へと進んでいく。

 やがてモルガが二機駐機し、軍の輸送コンテナ四つが連結された場所に出た。

 

 その先頭の輸送コンテナに、招かれる。

 そこには簡単な応接室以外にも、様々な装置があった。

 その応接室にアモスはふてぶてしく座っていた。

 

「先にその二人を預かってもいいかい?

 一応まだ商品なんでね」

「……いいが視界に入るところに置いておいてくれ」

「勿論だとも」

 そう言うと、アモスは軽く手を挙げて二人を拘束する。

 

「畜生畜生」

「おねぇちゃん」

 二人は連れられながらその言葉を連呼していた。

 

「さて、奴隷が欲しいという事だが、国際指定労働移譲法で売買は、【人の命よりも貴重な水】が基準の国際通貨【G】で行うことになっている。

 大丈夫だと思うが、持っているのか?」

 アモスの言葉にドレンはニヤリと笑うと、懐から厳重な金属ケースをだした。

 

 そのケースを開けると刻印のあるチップが入っていた。

 

「1枚1000万Gだ、十枚で1億。

 本来なら最後に見せるべきだろうが、こっちは急いでいてね。

 ゾイドに乗れるか、肉体労働、洗濯なんかができる相手を探している。

 ……とりあえず十人としようか」

「はっはっは!

 こいつは驚いたGチップでの支払いなら問題ない。

 後で本物か調べさせて貰うがね」

 ドレンの言葉に、アモスは愉快に笑ってそう言った。

 それから二人をソファーへと招く。

 

 ドレンとアカネがソファーに座ると、水が運ばれてきた。

 運んできたのは女性で、彼女もまた美人だった。

 

「こちらのおすすめ順で見て貰おうと考えているが、お忙しいとの事だし、ここで検品をするかい?」

「できれば手早く済ませたいのでね、条件はさっき言った通りだ」

 ドレンの返事に頷くと、手元の端末を操作して、何かの指示を出しているようだった。

 

 やがて運ばれてきたのは透明な特殊ショーケースに全裸で入った女達、血縁者なのか髪色に目とそっくりだった。

 

「彼女達は、過去に栄華を極めたガイロス帝国のリリエンタール家が、事業で失敗し莫大な借金で奴隷になりまして。その額も莫大で、その上、あの家族は三人一緒が良いという条件を付けたためプレミア価格となっています。

 あ、おさわりは厳禁ですが、ケースから彼女達を良くご覧ください」

 ショーケースを運んできた男が、わざわざ目の前に移動させてくる。

 

「この女とは話せるのか?」

「勿論だ。 その奴隷は地底族のハンナ・リリエンタール。

 三十八歳だが、まだまだ若いし夜の相手にこなれた女ってのもいいだろう?」

 ドレンの質問にアモスは紹介も添えて答えた。

 

「ハンナ。お前はここを出るためなんでもやれるか?

 ゾイドに乗ったり、洗濯なんかの雑用に耐えられるか?」

「わたくしだけでなく、娘達も一緒なら何でもします」

 ドレンはハンナの答えを聞きながら、地底族特有の白い肌に赤毛、がっちりとした長身、それにぶら下がる豊満な胸と、開いてくれた足の間にある局部。

 羞恥で真っ赤に染まる背中から首から踵までをみて、最後に口と目をみて購入を決めた。

 

「性病検査は全員済ませているんだろ?

 こいつを購入する、他の二人も同じように一緒に持ってきてくれ」

 その声に、運んできた男が躊躇するが、アモスは構わないという仕草でドレンの要求を受け入れた。

 

 やがて同じように運ばれてきた二人の入ったショーケース越しに同じ質問を受け、「母と妹と一緒なら」と答える。

 

「こいつらの名前は?」

「二人ともハンナの娘で、姉がエルザ・リリエンタール。十八歳で初物だ。

 ……妹はミナ・リリエンタール。少し肉付きが悪いが、十五歳でこっちも初物だ」

 

 ドレンは姉妹をハンナと同じように値踏みする。

 地底族特有の白い肌に赤毛、長身の体に張はあるが母より小ぶりな胸と、無理やりに開かれた足の間にある局部。

 背中から首から踵までをみて、最後に口と目をみて購入を決めた。

 

(母は巨乳で、姉は美乳、妹は栄養失調か?肉付きが悪い)

 ドレンは内心でそう考えながら、母親は雑用、姉妹はゾイドと考えていた。

 

「まだ買うのかい?

 今のリリエンタール家の親娘で5000万Gだが。

 ああ、あの褐色の姉妹。あの子を入れてもまだ5人だ。

 もう少し買いたいね」

 

「本来なら、そこの姉妹も元借金奴隷。

 砂族のレイラ・ラミレス二十歳、レイシー・ラミレス十四歳の姉妹は、容姿も良くて若いから高級娼館でも引き合いがあったんだがね。

 ……だったんだが、一度客に暴行をしたのと、逃げ出したので犯罪奴隷に格下げだ」

「ふざけんな!」

 アモスの話にレイラの怒声が襲い掛かる。

 

「国際法で決まっていることだ、諦めろ。

 それと、一度買った客に暴行しているだろう?

 ……多少値は下げて2000万Gだ」

「一応聞いておくか、立たせて連れて来てくれ」

 ドレンがそう要望するとレイラ・ラミレス、レイシー・ラミレスが全裸でドレンの前に立つ。

 

 長い白髪と薄茶の肌、黒い眼で、勝気な性格からか乳房は上向き、一切の毛が生えておらず、無毛だった。

 

「レイラ。お前はここを出るためなんでもやれるか?

 ゾイドに乗ったり、洗濯なんかの雑用に耐えられるか?」

「……わかったやるよ」

 レイラは僅かに躊躇するが、ドレンの問い掛けにそう答える。

 

「レイシー。お前はここを出るためなんでもやれるか?

 ゾイドに乗ったり、洗濯なんかの雑用に耐えられるか?」

「はい」

 

「次は、ガイロス帝国で借金を背負わされて家族に売られた美娼年ニルス・カフカ十五歳だ。

 娼館様に引き取られる予定のデザインチャイルドだったんだが、こっちに回ってきてね。

 そういう店で働く都合ですぐ発情しちまうが、女の体に少年の逸物ってのは滅多にお目にかかれないぜ?

 ただ、ヒノデ防衛戦時に運悪く軍に連れていかれ、物資運搬中に熱中症で返品されてな。傷がついたんで2000万でどうだ?」

 アモスの言葉とともに、少年がショーケースに入って運ばれてくる。

 聞いていなければ少女に見える彼は、ショーケース越しにドレンを熱い視線で見る。

 

 体に外傷はなく、全身が少女としか思えない見た目をしているが、唯一男根だけは付いており、今も包茎の勃起したものが天を向いていた。

 ドレンはニルスの背後も見て回った後同じ問いかけをする。

 

「ニルス。お前はここを出るためなんでもやれるか?

 ゾイドに乗ったり、洗濯なんかの雑用に耐えられるか?」

「はい。僕がんばります」

 それを聞いて、ドレンもニルスを買うことに決める。

 

「ニルスもかよ?

 すげぇな、うちの在庫がなくなっちまうぜ。

 次で最後だ、ガイロス帝国の【市民権更新試験】で試験を落とされた四人なんだが、妙でなこいつらは四人で1000万Gでいい。

 ……見るかい?」

 アモスの言葉に少し引っかかったが、ドレンは見ることにして促した。

 

「ああ、確認させて貰おう」

 ドレンがそう言うと、素裸の四人の男女が顔を赤くしながら押し出される。

 

「左から砂族ハンス・クラフト。十六歳、肉体労働に向いているが要領が悪く、実技試験でおとされた。

 砂族フリッツ・ヴェーバー。十五歳、手先は器用だが、メカニック志望だが内気すぎて面接で落とされた。

 虫族マルガレーテ・アドラー。十六歳、計算能力は高いが、視力が悪く(眼鏡)、精密射撃ができずに不合格になっている。

 砂族トルーデ・クライン。十六歳、性格に難ありで落ちている」

 

 ドレンは、一人ずつ全身をくまなく確認する。

 

(ガイロス帝国の【市民権更新試験】なら帝国軍の幼年学校で一応の訓練を受けた後、帝国内で食わせる基準に満たないから落とされただけのはず。

 なら、教えることが減るから儲けものかもしれないな)

 

 ハンスは死んだような目をしながら、黒い瞳はどこか救いを求めていた。

 背丈はドレンよりもやや低いが長身で、良く鍛えられた筋肉質、白髪をベリーショートにしている。

 逸物は細長いが特徴もなく、砂族特有の薄茶色の肌には、傷が幾つもついていた。

 

 フリッツはハンスより背が低いが、あとは同じでベリーショートの白髪で肌は薄茶色。

 まだ皮を半分被った逸物、それを見られて恥ずかしいのか顔を俯かせる。

 

 マルガレーテは小柄で、虫族の特徴ともいえる茶色の肌に、伸びるに任せたようなグレーの髪から除く青緑の眼。

 視力が悪いようで顔をしかめたようにしながら真っ赤になっている。

 胸は小振りだが、背丈が小柄なので違和感はなく、刈り揃えられた若草とそこに咲く赤い花は良く映え、魅力的だった。

 

 トルーデはマルガレーテより背がやや低いが、胸が比較して大きい、虫族の特徴でもある茶色の肌と青緑の眼をしている。

 グレーの髪は、ひと房頭上に張り出しているのが特徴で、同じ色の若草は全て無くなっている。

 彼女は顔を赤くしながらも積極的に脚を開き、尻を突き出す。

 

「……まあ、いいだろう。

 お前らは、ここを出るためなんでもやれるか?

 ゾイドに乗ったり、洗濯なんかの雑用に耐えられるか?」

 ドレンの言葉に、全員が「はい」と答える。

 

「これでいいだろう」

 ドレンはそう言って、アモスに向き直る。

 

「そうかい……。

ならこの金額でどうだ?」

 ドレンの意思を確認すると、アモスは近くに寄り端末の表示を見せつける。

 提示された額は一億Gで、グランチュラ十機かレッドホーンを二機買ってもお釣りが出るだけの額だった。

 

(ボール撃破に対する特別報奨金が1機5000万Gで少尉と割ると2500万Gだったがもう1機は俺だけで倒している。それで7500万G。

 俺が作ったゾイド内蔵のトイレ関連とワークスパイダー改良の権利報酬の貯蓄3000万Gを合わせて1億500万G……ほぼ吹き飛ぶな。

 ……まあ、女が手に入るならいいか)

 

 傭兵組合は、傭兵だけでなく各国の軍の兵士でもエネミーゾイド討伐時に、証拠があれば賞金を出していた。

 今回は、大型エネミーゾイド【ボール】という大金星で資金の大部分を賄っていた。

 

 ドレンはそう考えながら、テーブルに置いたGチップを指差した。

 

「わかった。

 その額でいい」

 

(十人分の人生の価格としては安いな)

 

「は?」

 アモスや周囲はその行動を理解するまで固まっていた。

 

「待て、待て、本気か!?

 ここは値引き交渉だろう!」

 我に返ったアモスが、ドレンに詰め寄る。

 

「この嬢ちゃんたちを買えるんだろ?

 安いもんだ、Gチップはこれだから確認しなよ」

 ドレンの言葉に、Gチップの入ったケースをアモスは手に取る

 

「こいつぁ驚いた。

 外のゾイドでGチップの確認はするがいいな?」

「構わねぇよ。

 ……あー、念のため俺の連れを監視に連れて行ってもらってもいいか?

 こういっちゃなんだが高額なんでね」

「ああ、それはそうだ。

 そこのねぇさんも来な」

 アモスはそう言って、アカネを連れて外に出る。

 残されたのは、ドレンと購入が決まった奴隷たち。

 

 やがて、アカネを連れてアモスが戻ってくる。

 

Z.E. 428年 2月13日 午後7時00分

 

「よし、商談成立だ。

 あっけなかったけど、他に何かあるかい?」

 

「何も問題がないのなら、作業服とか、軍施設にも連れていける服をサービスしてくれないか?

 最悪サイズの合っていないシャツでもいい。

 裸のままじゃ、危なくて連れて帰れねぇよ」

 ドレンはGチップの確認をした、アモスの本気交じりの言葉をいなすと、二人を指差して注文を付ける。

 

「服?

 ……それくらいならサービスしてやるよ。

 まぁ、軍に纏めて納品する数は減るが、この値段なら文句はねぇ。

 よし、売買成立だ。

お前さん宛に契約書はデータで送った、確認してくれ。

 あとは、規則でチップデータの更新と首輪をつけるが、ここで待っているか?」

「移動するならついて行くが、時間は掛かるのか?」

 アモスから送られた契約書のデータに、十人のデータと所有についての権利書が入っているのを確認しつつ、アモスの問い掛けに返す様にドレンが尋ねる。

 

「元々港に拠点があったんだが、今は一区画向こうの小さなホテルを借りていてね。

 本当は店舗以外じゃ取引しねぇんだがな、先日の騒ぎで倒壊しているんだ。

 アサクラは上客になってくれそうだからな、店舗が再開したら場所教えてやるよ。

 ……それでだ、その処置は奥のコンテナにある設備でやる。

首輪は最後に着けるとして、十人分の体内チップの更新に最低二時間程度だ」

 ドレンがアカネを見ると、アカネはついて行くというような仕草を見せた。

 

 アモスに続いて行くと、コンテナの中は薄暗くなっていて、応接用のソファーとテーブル、向かい合う様に端末がつながった椅子が二脚おかれていた。

 

「アサクラ、奴隷取引は初めてか?」

 ラミレス姉妹が椅子に座り、体を拘束されながら、首に機械を当てている横でアモスが尋ねた。

 

「そうだが?」

「ソファーから二人を見てみな」

 アモスに勧められるまま、ソファーに腰かけると、椅子に座る姉妹の脚が開いた状態で固定されており、椅子に座った二人はショーケースの商品の様に照らされ、花弁が丸見えになっていた。

 姉妹も意識した様子で、全身を身じろぐ。

 レイラ・ラミレスは、体を大きく動かす度に乳房が跳ね、腰が浮くと股が強調され、只でさえ役目をこなしていない布地が水気を吸い始め肌に張り付き役目を失う。

 対照的に、妹のレイシーは申し訳ない程度の反応で、どうにか薄布で無垢な縦筋を隠せたと安堵したのも束の間、横から伸びた手がわざとらしく布で触れながら捲りあげることを繰り返す。

 

「ちくしょう……」

「おねぇちゃん」

 やがて二人がそう言葉を漏らすと、諦めたように脱力する。

 二人の動きは対照的だったが、薄らと汗に混じった女の香りが漂い、花園には朝露のきらめきがあった。

 

(こいつはいい眺めだ)

 ドレンは花に誘われる蝶のように、それを見入っていた。

 

「気に入ってくれたようで何よりだ。

 まあ、本来ならここであれの道具を見て貰うんだが、そっちのお連れさんがいるんじゃ無理は言えねぇ」

 アモスはそう言うと、アカネを見る。

 

 不安からかドレンの隣に座って真っ白になり腕にしがみ付いているアカネを見た。

 全裸で器具に固定される同性の姿(公開処刑のような辱め)を見て、生理的な嫌悪と恐怖、それに自身を重ねて言葉を失う。

 

(あー、アカネは置いてきた方がよかったか?

 でもなぁ、今の街の状況で一人にしたらいいカモだろうし)

「……そうだな。

 帰ったら楽しむとする」

 ドレンも静かだったアカネを横目で見ると、アモスにそう返した。

 

「あの姉妹から小耳に挟んだんだが、奴隷を最前線で慰み者にするって?」

 ドレンがそう言うと、アモスが頷く。

「ああ、俺らも驚いてるんだ。

 戦況はそんなにわるいのかね?

 ……あんたが今日買わなかったら、明日にでも売り捌こうと考えていたところだ」

 アモスの言葉に、その場にいたラミレス姉妹以外の奴隷が顔を青ざめさせる。

 

 そんなやり取りの最中、ラミレス姉妹は意識を失っていた。

「じゃあ、軽く説明するが冊子を後でよく読んでくれ。

 まず、奴隷にはチップと首輪の装着が義務付けられる。

 チップは奴隷落ちしたときに埋め込まれ、商品としてのタグとなる。

 その後購入されると、所有者情報などが保存され、奴隷の種類によって強さが違うが、行動の制限や強制力が発生する。

 首輪は、所有者のいる犯罪者や奴隷であることの証と、逃亡時の追跡装置だ。

 借金奴隷だけは主人でも外せる、意匠の異なるものに付け替えることも許されている。

 ただ、外したまま他の男につかまって所有者登録されても文句は言えねぇから、ずっとつけておくことを進める」

 そこでアモスは、姉妹に視線をやり一拍間をあけた。

 

「あの二人は、元は借金奴隷ではある。

 借金奴隷はある程度働いて、主人との契約で自分を買い戻すことや、期間契約にすることもできる自由のある奴隷だ。

 それだけに、チップの強制力も緩いんだがそれが今回は災いした。

 まあ、こいつらはお前さんに売り込んだわけだが、俺からすれば逃亡して今は犯罪奴隷だ。

 当然チップは、逃亡の禁止や強制力が強く働くように書き換えられる。

 労働、性処理、ゾイドのパイロットなんでもさせていいが、犯罪だけはしないでくれよ?

 なにかあれば所有者をチップで割り出せるからな。

 あとは、最低限の人としての生活をさせてやれば問題ない。

 細かいのは、この冊子を見てくれ」

 アモスはそう言って、冊子を差し出してきた。

 

「わかった。

 ありがたく読ませてもらうよ」

 ドレンはそう言うと、冊子を開いて内容をざっと確認する。

 納税にかかわる話などをしていたところで、二人の処置をしていた女から声がかかった。

 

「代表、二人の処置が終わりました」

「そうか、アサクラ。

 お前さんが首輪をつけてくれ」

 白衣に身を包み、首輪をつけた女がアモスに報告をすると、アモスは端末をのぞき込み処置内容を確認した。

 そして、用意されていた金属製の武骨な首輪を二つ手に取ると、アサクラの前に出してそう言った。

 

「ああ、わかった」

 そういうと、アサクラは首輪を受け取り意識がない二人の首にサイズを調整しつつ首輪をつける。

 

 その後ろで、ハンナ達が拘束され処置を受け始める。

 その流れを繰り返し、全員の処置が終わる頃には、寮を出てから四時間が経過していた。

 待っている間、ドレンは携帯端末を操作し、購入した奴隷のデータを第三開発部のオオムラ大佐へと送っていた。

 

 

「こいつらは、アサクラの所有物だ。

 せいぜい可愛がってやってくれ。

 俺は別の取引をしなきゃいけないんでね。

 これで失礼するよ」

 そう言って手を差し出してきたアモスの手をドレンが握る。

 

「いろいろ世話になった」

「なに、こっちも面倒な奴が売れて万々歳だ」

 アモスはドレンとのやり取りの後、トレーラーを後にした。

 

「……畜生」

「……」

 レイラとレイシーは程なく意識を取り戻したが、金属製の首輪に気が付いた様子で手を首にあてたまま一言呟くと固まっていた。

 そこに女が布を抱えて入ってくる。

 

「サイズは大きいでしょうが、ご要望の服とサービスのサンダルになります」

「ああ、助かる。

 おまえら、それを着ろ。

 いい加減帰らなきゃまずい」

 ドレンは彼女にそう言うと、彼女が持ってきた布を受け取り、呆然自失になっている彼女らに色がまちまちのオーバーサイズのシャツを着せていく。

 

「じゃあ、世話になった」

「またのお越しをお待ちしております」

 ドレンはトレーラーを後にするときにそう言うと、残っていた白衣の女がそう返した。

 

「言いたいことがあるだろうが、時間がないから待合所まで行くぞ」

 ドレンがそう言って、アカネと共に先導するように来た時に通った街の入口へと向かう。

 

 その後ろには、必死にオーバーサイズシャツを下に伸ばしつつ、局部がでないように注意する彼女たちが続いていた。

 

 

Z.E. 428年 2月13日 午後9時30分

 

 ドレン達が、街の入り口(今日セナ達と街に来た時に使った場所)に辿り着くと、そこにはワーク・モルガがトレーラーを牽引して待っていた。

 

「曹長!」

 そう声を掛けてきたのは、セナだった。

 彼女は、ドレンが連れているオーバーシャツ1枚の集団をみて眉をひそめた。

 

「曹長、その……【みすぼらしい集団】は?」

「ああ、現地調達した人員だ」

 ドレンの悪びれない返答に、セナは大きなため息をつくと、頭を切り替えるように端末を操作した。

 

「……はぁ。もう驚きません。

 オオムラ大佐から言われた通り、トレーラーに、大型天幕四張、十二人分の水筒、毛布、レーションが積んであります。

 オオムラ大佐が言うには、十人分の許可は出ているので私が最後に持ってきた端末で登録を行えば、明日には軍の身分証を兼ねた認識証が発行できるそうです。

 また、第五開発部の拠点となる港に、彼女たちを運んで、ナシザキ二等兵と共に面倒を見ろとのことです。

 併せて、第五開発部の副部長と補給課の課長が現地で作業しているらしく、挨拶しておけといってました」

 

 セナから聞いた、オオムラ大佐が用意した物資の数が二人分多い事に疑問を持っていたが、基地施設で受け入れる場所がないから、港に行って責任を持って面倒を見ろ、という命令なのだと全てを察した。

 人員の増加は許可できても、第五開発部の副部長はお怒りらしい。

 かと言って、俺一人で十人の面倒を見るのも無理があるから、アカネをつけたんだろう。

 

「了解した。

 夜も遅いので、早速港の【旧第三貯蔵区画の廃墟】にいきましょう」

 セナはドレンの言葉に迷いはしたが、それを受け入れた。

 

「私は皆さんが所属する第五〇一実験中隊のセナ・ササツカ少尉です。

 これから私たちの拠点に連れて行くので、トレーラーに乗ってください。

 曹長も二等兵もですよ」

 まだ幼く見える相手から指示され、奴隷たちには戸惑いもあったようだ。

 それでも彼らは大人しく従い、荷物を避けてトレーラーに乗り込んだ。

 全員が乗ったのを確認すると、モルガは重々しく動き始めた。

 

 

 

Z.E. 428年 2月13日 午後10時00分

 

 ワーク・モルガが港の【旧第三貯蔵区画の廃墟】(第五開発部の拠点予定地)に到着すると、ドレンがコンテナの荷卸しを奴隷に作業をさせる。

 

 明日以降のゾイドの搬入に邪魔にならない、屋根のあり、適度に瓦礫があって、すぐに駐機場にならない場所を見つけると、そこに荷物を移動させていた。

 そんな中、セナは端末を手に写真と名前を聞き取り登録していく。

 

「曹長、追加人員の必要データを確保したので、これより帰還します」

「ああ、助かった。

 ありがとう、ササツカ少尉」

 そう言って、手を振りながらセナを送り出す。

 

「お前ら、今日の寝床はこの廃墟の瓦礫が多い場所にする。

 今日は天幕を建てて寝られればいいから、お前らも動け。

 ……安心しろ、お前らを誰かの慰みものにはしない」

 荷下ろしをしたばかりの奴隷十名は、その声を号令に天幕を張るために動き出した。

 

「男はこっちで指導するから、女はアカネに任せた」

「……はぁ、了解」

 

 男の中で天幕設営を手伝ったのは、ニルス、ハンスとフリッツであるが

 ハンスとフリッツの動きが良く、天幕はすぐに張り終えた。

(ニルスがおれの近くに来ると発情しているようなんだが、なんだかなぁ)

 

 その傍らでは、もう一方の天幕が二張張られていた。

「アカネ、ずいぶん早いじゃないか」

 ドレンがそう声を掛ける。

 

「経験者が多かったからね。

 レイラ、マルガレーテ、トルーデが先頭に立って、ハンナ、エルザ、ミナ、レイシーが支援した結果だね」

 

 

 奴隷たちの建てた天幕とは別にもう一つ天幕が出来ていた。

「これは天幕の建て方を教えているついでに、アカネと一緒に張り終えたものだ。

 とりあえず荷物を運び込んだら、支給品の毛布、水筒(金属製)、水、レーションを渡すので、動いてくれ」

 ドレンの言葉に、やる気を出したハンスとフリッツによってあっという間に、ドレンの天幕に運び入れてしまう。

 

 その後、配給が始まり毛布、金属製の水筒、水、レーションが配られ、男子用天幕、女子用天幕に帰っていった。

 

 その後しばらく、ドレンとアカネは警戒していたが、ただ時間だけが過ぎていった。

 

 

Z.E. 428年 2月13日 午後10時50分

 

「曹長、話がある」

 天幕の前で警戒していたドレンに、アカネがそう言ってきた。

 その声は硬く、どこか切羽詰まった響きがあった。

 

「……聞かれると困る話か?」

 アカネの様子から、この場でしていい話ではないと察し、ドレンは天幕を離れる。

 二人は、設営場所の探索中に見つけた【旧第三貯蔵区画の廃墟】の一室へと移動した。

 辛うじて崩壊を免れた天井が、月明かりを遮っている。

 

「なぁ、アサクラ曹長。なんで奴隷なんて買いに行ったんだ?」

「……必要だったからだ」

 ドレンの短い返答が引き金になった。

 アカネはドレンの胸倉を掴み、壁に押し付けるように詰め寄る。

 

「あんた、あたしが犯罪奴隷だって知っているだろう!

 それなのになんで、なんで、あたしみたいなやつを……こんな屑みたいな世界に引き込むんだよ!」

 興奮したアカネの呼吸が荒くなる。

 瞳孔が開き、過呼吸気味に肩を上下させていた。彼女は買われてきた少女たちに、かつての自分――あるいは未来の自分を重ねて怯えているのだ。

 

(仕方ない。アカネを巻き込むかは迷っていたが……ここで壊れるよりは、俺が恨まれてでも引き上げる方がマシだな)

 ドレンは抵抗せず、暴れるアカネの腕を優しく、だが振りほどけない強さで掴んだ。

 

「……アカネ、その首輪を外してやろうか?」

 その言葉に、アカネの動きがピタリと止まる。

 信じられないものを見る目で、ドレンを見上げた。

 

「……え?」

「聞けばもう、後戻りはできない。

 あるいはこう言い換えよう。 首輪が嫌なら、俺のものになるか?

 兵士としても、女としてもだ」

 アカネは困惑し、視線を泳がせる。だが、その瞳には縋るような色が浮かんでいた。

 ドレンの首元に回していた手が、力なく彼の服を握りしめる。

 

「それでも……この首輪を取れるなら、取って……!」

 それは悲痛な叫びだった。

 

Z.E. 428年 2月13日 午後11時00分

 

「いい子だ。まずは深呼吸しろ」

 ドレンは彼女の背をポンポンと叩き、呼吸が整うのを待った。

 アカネの目から狂乱の色が消え、代わりに獲物を狙う獣のような鋭さが戻ってくるのを確認してから、ドレンは口を開いた。

 

「俺たちが『ボール』を殺したせいで、状況が変わったんだ。

 あれは本来、俺たちのような部隊が倒せる相手じゃない。だから上が動き出した」

「……上が?」

「ああ。国家間の会議で、共和国、ゼネバス、ガイロスの技術者がこの基地に来ることになった。

 名目は【技術支援】だが、実態は俺たちが使った特殊弾(G型)のデータを盗みに来るスパイだ」

 

 ドレンは一度言葉を切り、アカネの目を見据える。

「そんな連中に、好き勝手させたくない奴らがいる。

 だから俺たちは隔離された。

 危険なレッドホーンAPと、その武装、そして俺たちパイロット……それらをまとめて管理するための檻、それが【第五開発部(ここ)】だ」

 

「そんな……じゃあ、あたしらは捨て駒として切り捨てられたのかよ!」

 再び身を硬くしたアカネを、ドレンは抱き寄せて宥める。

 

「そうじゃない。逆だ。

 俺たちが主導権を握るために、頭数が必要だったんだ。

 中隊のポストを、あの奴隷たち――俺の【身内】で埋めてしまえば、後から来る他国の連中は選択肢がなくなる。

 あいつらをただのモルガ乗りにしてしまえば、勝手に動き回ることもできないからな」

 

 そこまで聞いて、ようやくアカネはドレンの意図を理解し始めたようだ。

 体を離し、少しだけ冷静な声で問う。

 

「……それで? あたしの首輪はどうなるの」

「ここからが取引だ。

 これから来る外国のエリート共を御するには、お前の階級が低すぎる。

 二等兵じゃ舐められるからな。お前を【軍曹】にする」

 

「軍曹……!? 犯罪奴隷のあたしが?」

 

「ああ。第五開発部副部長のフジエダ中佐は、情報部の人間だ。

 俺が彼女に【手札】を見せれば、きっと条件を呑む。

 その条件とは――アカネは俺の女だから、憲兵の代わりに俺の番犬として使う、という筋書きだ」

 

ドレンはニヤリと笑い、試すようにアカネを見た。

 

「ただし、向こうもタダじゃ首を縦には振らないだろう。

 俺たちが『共犯』である証拠……あるいは弱みを握らせる必要があるかもしれん。

 ……やるか?」

 ドレンはアカネの答えを待った。

 

 アカネが拒絶すれば、この計画は破綻する。

 だが、ドレンには確信があった。彼女は生きるためなら泥を啜れる女だ。

 数秒の沈黙の後、アカネは覚悟を決めた目でドレンを睨み返した。

 

「わかった、やる。

 あんたが首輪を外してくれるなら……わたしは、曹長の女になる」

 

 

Z.E. 428年 2月14日 午前00時00分

 

 

 第五開発部予定地にある廃墟の奥に仮設の指揮テントがあった。

 そこには、第五開発部の副部長アヤメ・フジエダ中佐、補給管理課課長のカエデ・フジエダ少佐がいた。

 彼女たちは、第五開発部の任務とあてがわれた施設の現状をみて、即座に必要な仕事を進めていた。

 

 そんな折、ドレン、アカネが入って来た。

 

「第五開発部、第五一大隊第五〇一実験中隊、ドレン・アサクラ曹長であります」

 ドレンが名乗りと共に綺麗な敬礼を行うと、一拍遅れてアカネも倣う。

 

「同じく……アカネ・ナシザキ二等兵であります」

 その申告を見届けてから、フジエダ姉妹は静かに答礼した。

 

「単刀直入に申しますと、取引に参りました」

 そう言うと僅かに驚いた表情を浮かべるアヤメ中佐、愉快そうに見るカエデ少佐。

 

「……普通なら追い返すところだけど、貴方が彼女をつれてきているし、私たちが向こう側と分かっての話よね?」

 アヤメの言葉に、「もちろんであります」とドレンが答えると続きを促される。

 

「第一に。ナシザキ二等兵の身分変更、および犯罪者登録の抹消」

 ドレンは、そう単刀直入に切り出した。

 

「第二に、これから来る外国の士官連中を御するには、ナシザキの階級が低すぎます。

 指揮系統を確立するために、彼女を軍曹にして頂きたい」

 最初の要求に続けてでたのもアカネに関することで、聞いていたアカネは心が温かくなっていた。

 アヤメは妖艶に微笑み、カエデは冷たく計算機を弾く。

 

「あら、ただの犯罪者に随分入れ込みようね。……でも、タダで出来ることじゃないわ。

 彼女の首輪の鍵は、私たちが握っているのよ?」

「私たち情報部と【直通のライン】を持ちたいなら、相応の誠意(対価)を見せてくださる?」

 それを聞いて、ドレンはオオムラから聞いた「スパイへの懸念」を逆手に取る。

 

「俺のレッドホーンAPの主砲を、倉庫で眠っている【試作レールガン(電磁砲)】に換装してくれ。

 奴らは特殊徹甲弾のデータを狙っている。

 なら、偽のデータを食わせてやればいい。

 ……そのテスト運用、俺が引き受ける」

 これにはカエデが食いつく。

 

「……面白い提案ね。あれは電力消費が激しすぎて凍結された欠陥品よ?

 でも、今できる欺瞞工作としては最高だわ」

「それだけじゃ、業務上の提案に過ぎないわ。個人的な『保証』が欲しいわね」

 アヤメは怪しい笑みを浮かべながら、そう言った。

 そこでドレンは覚悟を決めた目で、自身の最大の弱みを作ることを提案する。

 

「なら、俺とナシザキとの【プライベート】を提供する。

 ……行為中の記録と、事後の身体データ。

 好きに採取してくれ。俺を社会的に殺すには十分な材料だろう?」

 ドレンがそう言うとカエデは薄く笑う。

 

「そっちのナシザキ二等兵の話をしているのだけど、彼女は今一つ他人事ね。

 ……二人の性交のまえに何をするのかをちゃんと映像で記録して、身体にマーキングもしてもらうこと、終わったら、何をされた、何をしたかを全部言って記録して、下着だけをつけてここに戻ってくる。

 ……そうね、どんな風に感じたのかと、身体を映せる限り全部自分で映してね。

 それを朝までに確認できたら、あなたを物理的にしめている首輪も外せるわよ。

 その後、ちょっと付き合って貰うけどね。

 ただ、今後はその男があなたの首輪になるんだけどね」

 

 

Z.E. 428年 2月14日 午前00時50分

 

 「ここから先は保証を出してからだ」と指揮天幕を追い出された二人は、自分たちの天幕に向かって歩いていた。

 

 ドレンは心底疲れていた、それでも沈んでいるように見えるアカネに声を掛ける。

 アカネの手には、貸し出されたカメラがあった。

 

「おい。大丈夫か?」

「え、ああ……」

 ドレンの声掛けに、僅かに反応した後、生返事を返すだけだった。

 

 

 

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