【ねぷねぷ学園パロ】テスト期間明けなんてお祭りムード一色なのに、気分の浮かないブラン。みんなに内緒で先生と付き合っていたブランは、好き過ぎてつらいと彼に別れを切り出すのだった。そしたら先生に壁へ押し付けられて……!!

※日本語圏の特定のお客様向け。性格的にはブラン:ホワイトハート=8:2ぐらい、女神化はありません。ブラン視点なのでオリ主タグでなくオリキャラタグ入れてます。

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※日本語圏の特定のお客様向け。今回は性格的にはブラン:ホワイトハート=8:2ぐらい、女神化はありません。


B級文学少女ブランとせんせいのひみつ

ロム「ミナちゃん、このかんじはどうよむの?」

ミナ「はいはい。『これは本当にあった話です』……」

 

  * * *

 

「解説は以上。もう時間ないから質問があるヤツは休み時間にでも来い。星組の平均点は73点。喜べ、2年の中で一番成績がいい」

 

 先生の低く艶めいた声が教室中を潤(うるお)わすと、わーっと歓声が上がる。

 わたしは嬉しいのにその空気に馴染めないでいて。

 もともとテンションを上げづらいこともあるけれど、それ以上に……点数が低くて。

 

「よし、今日はここまで。解散!」

 

 チャイムが鳴るより少し早く、授業が終わった。

 休み時間になれば、どこもかしこもテストの点数の話で持ちきりだ。

 

「ノワールー! 今のテスト何点だった?」

 

 ネプテューヌの威勢のいい声が響く。

 

「89点止まりだったわ。まだまだね」

 

 テスト前の休み時間に、ネプテューヌからのその前の科目の質問攻撃に遭っていたのに全然響いてない。

 

「ベールは!?」

 

「91点でしたわ。先生、相変わらず容赦なさいませんわね……」

 

(この時間の首席争いは、ベールが一歩リードというところね)

 

「ブランはブランは?」

 

「そういうあなたはどうだったのかしら」

 

「よくぞ聞いてくれました! ……17点! てへっミ☆」

 

(『てへっミ☆』じゃねえよこのヤロウ! 授業中何聞いてんだ?)

 

 自分のこと棚に上げてるのは分かってるけど、どうしてもイラッと来てしまう。

 

「あなた、わたしばかりじゃなくてネプギアにも勉強みてもらえばいいじゃない」

 

「妹の勉強をジャマしちゃ悪いかなーと思って、姉として! それにそれに、ネプギアって頭良すぎてときどきネプリッシュでおkってカンジになるんだもん」

 

「ネプリッシュって何よ……。ユニはネプギアの説明よく分かるって言ってるわよ」

 

「あの二人は特別だと思うわ。この辺りの学校で、射爆理論で盛り上がる中学生なんてユニとネプギアぐらいでしょう」

 

 さすがにそこは同情する。

 

「ネプギアちゃんもユニちゃんも、出来のいい妹で鼻が高いですわ。リーンボックス伯家の未来は明るくってよ」

 

「「うちの妹だから!」」

 

 ネプテューヌとノワールの声がハモった。成績は対象的なのに仲のいい二人だ。

 

「わたしは言ったよ、ブランは何点だったのさ?」

 

「ななじゅう、ごてん」

 

「75点!? 最近調子上げてきてるじゃない?」

 

「わたくしもうかうかしていられませんわね」

 

 ノワールとベールの反応がぐさりと来るけれど、今までの自分の行いの結果だし仕方ない。

 

「ブランだけはズッ友だと思ってたのにぃ!」

 

「テメェは人の足引っ張ろうとすんな、ちったあ努力しやがれ!」

 

  * * *

 

 学校はテストの後でお祭り状態だったけど、塾は平常営業だ。

 けど今はその方が落ち着けた。

 そして塾が終われば――家には帰らず、先生のマンションへと足を向けた。

 

 

 

 あれは高等部に入ってまだ間もないころの話。

 とある新人賞の〆切に追われていたわたしは、嫌いな科目をすっぽかして執筆時間に充(あ)てていた。

 そこをその科目の担当だったあの先生に見つかって、原稿を取り上げられ職員室に呼び出されて。

 

「俺の知ってる女王フアナと違うんだが、よく書けてるんじゃないの。だがま、授業は授業だ。次はないと思っとけ」

 

 それだけ。なのに、リア友には見せられないし佳作にも入ったことのないわたしには、その綺麗な声が響いた。

 国語の先生にはよく褒められるけれど、全然ジャンルが違うし、向こうだって褒めて伸ばすのが仕事だ。

 サボって書いてたんだしさんざんに言われるかもって身構えてたのに、毒気を抜かれた。

 だからって、大事なものを取り上げられた恨みはそうそう抜けなかったけれど。

 

 嫌いな科目だったからなかなか聞く気にもなれなくて、補習で先生と顔を合わすことも多くなった。

 そのうちに気づいた。先生の授業って、とても分かりやすい。

 ベールとの勉強だけじゃなくって、先生の席に聞きに行く回数が増えて。

 基礎の基礎からの教え直しなのに、よく丁寧に教えてくれたと思う。わたしだったらとっくにキレてる。

 

(気づいたら、心の中には収まりきらないくらいに先生の存在が大きくなっていたわ)

 

 今では恋人同士で――身も心も、結ばれてしまっている。

 

 

 

 けれど、それも今日でお終(しま)い。

 呼び鈴が鳴れば、ドアノブに手をかけた。

 おしゃれな外観の割にはがっしりしたドアが、今日はとっても重くて。

 

「こんばんは」

 

「上がんな」

 

 いつも通りのぶっきらぼうな彼に、安心して。

 

(このまま甘えていては、だめだわ)

 

 部屋に一歩だけ踏み出したところで足を止めて、切り出す。

 

「別れたいの」

 

 ドン、と横の壁に手を突かれる。

 背筋を震わせて見上げれば、彼とその腕に退路を塞(ふさ)がれていて。

 

「はあ?」

 

 語気を荒らげる彼のこと、うれしい……と思ってしまいそうになる。

 そんな自分にイライラして。

 それを、全部彼にぶつける。八つ当たりだなんて、分かってる……!

 

「ツラいんだよ、アンタのこと、好きで、好きすぎて! だからもう、おしまいにしてえんだ!」

 

 視線が、ぶつかり合う。先生の黒曜石みたいな澄(す)んだ鋭い目に、怯(ひる)みそうになる。

 けれど、退(ひ)かない。

 

「何があった?」

 

「期末試験、75点しか取れなかった」

 

「俺の?」

 

「そうだ」

 

 時計の針の撃ち合う音さえ聞こえなければ、時間が動いているかどうかさえ分からなかったかもしれない。

 一瞬なのに永遠とも思えるような時が過ぎると、先生はふ、と笑って。

 

「良い点数じゃないの」

 

「良くねえよ! 雪組と1点しか違わねえ」

 

「1点しか違わないから意味があるんだろ? ブランが去年のままだったら、同点だった」

 

(慰めるつもりなんだったら、言い方ってモンがあるだろ!)

 

 彼の眉間が険しくなるのを目(ま)の当たりにして、どうしてもたじろいでしまう。

 

「甘っ垂れてんじゃねえよ」

 

「言われなくたって、分かってる!」

 

 自分で分かってることを指摘されると、どうしてどうして冷静になれないんだろう。

 

「分かってない。言ったろ、お前はポーンだって」

 

「ああ、聞いた。けど」

 

 ドン臭いなりに、がんばってきた筈。

 

「ポーンが2マス進めるのは初手だけだ。いつまでも飛ばしてたらイリーガル・ムーブ(反則)だろうが。だがな、だからこそポーンには特別な可能性が残されてる」

 

 気づけば、先生の問いかけの答えを必死に探しているわたしがいて。

 その時点で彼の手のひらの上にいるのに、でもまだすぐ抜けられる、と思ってしまう。

 

「真正面から向き合えなくて、斜(はす)に構えてばかりってことかよ」

 

 先生の目を見ていられなくて、うつむきがちに答えた。

 

 ポーンの駒(こま)って正面の相手には手が出せなくて、斜め上の攻撃しか出来ない。

 

「それも答えだな。ポーンって駒はな、諦めずに最後のマスまで進んだときだけ何にでも成れる可能性を秘めてる」

 

「現実的じゃねえ」

 

 ポーンなんて、道半ばで横死するのが普通だ。

 

「周りのヤツは、ゴールが見えなくたってブランより前から歩き続けてきてんだ。それをお前が横からかっさらえる訳ねーだろ」

 

「なら、ずっと前から努力してきてる女と付き合えばいいだろ!」

 

 もう、無茶苦茶だ。

 どうやったって先生には敵(かな)わない。だから、考えが頭の悪い方へ向いてしまう。

 

「いねえよ。ブラン以上の女なんて」

 

 先生の声色に色気が宿ったかと思えば、壁に押し付けられて。

 

「やめ……! ん……っ」

 

 勢い任せの荒々しい彼に唇を塞がれて、下唇を喰(は)まれぬるり(・・・)としたものでなぞられる。

 唇を閉じて押しとどめようとしてもできなくて、割り入ってきた彼に舌先を誘い出され、絡め取られて。

 

「は……ふ……」

 

 背中に感じる壁はとても冷たくて、自然と彼に身を預ける形になってしまう。

 幾度となく睦(むつ)み合った先生の硬い体は、まるで自分の一部だったみたいに馴染んで。

 けれども二人の体温の混ざり合う口腔は、沸騰しそうなくらい熱くて酸素が足りなくなってく――

 

「ん……んっ……!!」

 

 先生を押し返そうと努(つと)めてみるけれど、びくともしなくて。

 別れるって言ったから、無理矢理するつもりなのかもしれない。

 それで、いい。いっそのこと、もう二度と先生のこと好きになれないよう道具みたいに無茶苦茶にして欲しい。

 今のままじゃ、決心が揺らいでしまいそうで。

 

「ん……ふ……」

 

 理不尽な怒りも、数え切らないくらいの後悔も、みんなみんな、甘い口づけの中に溶けていく。

 骨さえもとろけてなくなってしまいそうで、支えきれなくなってきた体をただただ先生にすがって。

 涙なんて流すものかって、情(じょう)も振り払ったはずなのに。

 目尻にじわりとこみ上げてくるものがあって。

 

「ふぇ……ん……は……ぁ……」

 

 唇が離れた。先生と口づけた証がビヴロスト(虹の橋)となって架かり、そして、消えた。

 背中の壁にそって、へなへなと崩れ落ちそうになる。

 その体を、先生に横抱きにされて。

 

「キス一つで泣きすがるなら、最初から別れるって言うんじゃねえよ」

 

 キッと睨(にら)みつけるばかりで、もう言い返せなくて。

 口ばかりでさえなくなったわたしを、先生は部屋の奥へとさらって行く。

 

  * * *

 

「ふぇ……」

 

 目が覚まれば、暖かな布団に包まれていた。

 先生のにおいを嗅ぐと胸の中がほっこりして、思わずはすはすと息を吸ってしまう。

 

(そういえばわたし、アタマ痛くなってきて寝かせてもらったんだったわ……)

 

 脳の普段使わない部分を働かせたせいか、知恵熱が出たみたい。けれどもうスッキリしている。

 先生分を摂(と)り過ぎたせいか、好き過ぎてたまらなくなってきて。布団をぎゅっと抱きしめた。

 

「起きたか」

 

 はっとなって布団を手放した。その勢いでがばっと上体を起こす。

 先生はこちらへ歩み寄ってくると、顔を近づけて。

 反射的に目を瞑る。

 すると、額(ひたい)にほのかな温もりを感じた。

 

「熱は、ないみたいだな」

 

(あったら、ますます熱が上がりそうだわ)

 

 熱はない。けれど。

 

 ぐう、とおなかの鳴る音がする。

 

 色々と頭を使った後なので、どうしても。空腹をこらえきれなくて。

 

「メシは?」

 

「食べて、いいの?」

 

「ったり前だろ」

 

「……うん」

 

 小さく、うなづいた

 聞こえなかったのか、彼は顔を近づけて

 

「ん?」

 

なんて聞く。

 

「食べる。食べたい」

 

「大したものは出ねえぞ」

 

 大したものじゃないほうが、気安く口にできる。

 

「先生の出してくれるものは何でも好き」

 

 どこでか買ってきたお惣菜(そうざい)に、火を通せばさっとできあがる肉料理。

 電子レンジの鳴る音を何度か聞けば、すぐにテーブルの上が鮮やかになって。

 よく彼の部屋に上がってはいるけれど、いつもっていうわけじゃない。

 それなのに、毎回準備万端っていう感じで用意してくれる彼が好きだ。

 

 もう一緒に食事なんてできなくてもいいって、思ってたのに。

 わたしのおなかは現金で、差し出された食事が素直に流れ込んでいく。

 

「この間レストランに連れてったときより幸せそうな顔してんな」

 

「この前は、ごめんなさい。初めての経験だったし、緊張して落ち着けなかったの」

 

 精確なお値段は見せてもらえなかったから知らないけれど、いかにも高そうなところだった。

 学生身分では返せそうにないし、とてもじゃないけれど楽しむどころではなくて。

 こういうところ、すごくかわいくないと思う。

 やっぱり、わたしじゃ先生と釣り合わないな、と思ってしまう。

 

「俺が行きたかっただけだし、気にすんな」

 

「ご飯は美味しかったわ」

 

「今度はゆっくり食べられそうなところを探す」

 

  * * *

 

 ちゅうちゅうとすすってみても、口に入るのは林檎の残り香ばかり。

 コップをかたむければ、氷がからん(・・・)と小気味の良い音を立てた。

 

「冷蔵庫にもう一本入ってるぞ」

 

「ううん。ここがいいの」

 

 背中の先生は、教え子を放って映画に夢中だ。

 世界のトータスマウンテンと銘打たれた画面には、リーンボックス教会のような建物が白く映えていた。

 上空から襲い来るヘリを、大統領が自ら迎え撃つ。

 大統領がいるということは、この国は女神を崇めていないということ。

 もしかしたら、連邦制で構成国中最も権威のある女神が大統領を兼ねているのかもしれないけれど。

 

(ロムとラムのプロセッサユニットが作られたあの工場も、もうお別れね)

 

 秋風に吹かれたような気がして、ちょっとだけ、先生の方に重心をずらした。

 

(すき。だいすき……)

 

 胸の中のふわふわ浮かれるような心地いい気分は、すぐに圧力を増してくるしみ(・・・・)に変わる。

 こんなに近くに寄り添っているのに、まだ遠すぎる気がして。

 

 好きすぎて苦しくて、心の内に封じ込めておくことができなかったから先生に想いを告げた。

 唐突じゃなかったとは思うけれど、それ自体が事故みたいなものだ。

 だから、付き合ってからのほうがもっと苦しくなるなんて、思いもよらなくて。

 

(片想いの長さで我慢比べなんてバカみたいと思っていたけれど、あの子たちの方がきっと賢いわ)

 

 何もかもが理想通りという訳ではないけれど、先生はもう好きで好きで仕方がない。

 見る目がなかったのは……先生と今のわたしとで釣り合いが取れるかっていうところ。

 学生身分では彼にお返しできることなんて限られている。

 だからといって、卑屈にならずに甘えられるほどのかわいげもなくって。

 先生の科目ぐらいは頑張ろうと思っても、あの結果。

 

 せめて学校の外で逢う日は良い彼女でいようって思っていたら苦しくなって。

 我慢しきれなくって、結局、今日みたいにあることないことぶちまける、それの繰り返し。

 痴話喧嘩ですらない。自分のもやもやした気持ちを叩きつけてなだめてもらって終わりだもの。

 

(やっぱり、先生はわたしと別れたほうがいいと思う)

 

 こんな関係終わりにしなくちゃって思うほど、ますます先生から離れられなくなってく。

 出口なんて見えない水平線の先に、夜明けの空なんて見えるの?

 その答えを考えるのがつらくて、体を返しながら彼に甘えついた。

 

「あったかい……」

 

 ただ、甘えていただけなのに。

 不意にぎゅっと抱きしめられて彼の体温に包まれ、鼓動が波打つ。

 先生の堅い胸板に、とくん、とくん、と共振しているような気さえする。

 

「ブラン、愛してる。もう一度付き合って欲しい」

 

 囁かれた声色に耳元を波打たせられて、ぞくりと背筋が震えた。

 思わず目を閉じ、開く。先生を見上げながら、

 

「ずっと、付き合っていたでしょう」

 

なんて、聞いてしまう。

 もしかしたら、付き合っていると思っているのはわたしだけだったのかも、なんて思ってしまう。

 確かに返事は聞いたはずなのに、それさえも夢だったのかもって、疑ってしまう。

 

「先刻(さっき)、振られたからな」

 

 その言葉に、安心する。返事よりも、自分の気持ちを先にしてしまって――

 

「ぎゅってして欲しい……」

 

 先生の胸に顔を埋(うず)めれば、苦しくなるくらいに固く抱きしめられた。

 身長低すぎて何を着ても野暮ったくなるこの体は、すっぽりと包まれてしまって。

 白ワンピみたいな記号を纏(まと)わないと男の子と間違われるような平坦さだって、今は隙間なく彼と抱き合える。

 

「先生。大好きよ」

 

「可愛いな。好きだ」

 

「可愛くないわたしは?」

 

「それも、可愛い」

 

 そんなの言葉遊びじゃないと思う気持ちも、繰り返し撫でられるだけで薄く消えていく。

 けれど、やっぱり信じられない。

 初めは、わたしだけが好きだったはず。なのに、今では好き同士っていうことが今でも信じられない。

 そんな素敵な気持ちを受け取っておいて信じられないなんて、愛される資格ないなって思ってしまう。

 

「ほんとうに、好き……」

 

 それは彼に向かっての言葉だったのか、それとも自分へ言い聞かせるためだったかもって。

 

「あ……」

 

 あごを持ち上げられた。

 目を瞑って、先生を待つ。

 柔らかくてしっとりとしたキスに、心を奪われて――

 

「ん……ふ……!」

 

 抱きしめ合って比翼の鳥のように彼と結ばれているのに、少し突っぱねられているところがあって。

 

(先生……おっきくなっているわ……)

 

 結ばれたい。先生と、もっと深く。

 けれど、今日は日が悪い。

 今日まで別れようと固く誓ってきたから、泣いてわたしの中の女神を斬ってきてしまっている。

 お手入れ不足なのに、女になんてなれない……!

 

「あ……や……!!」

 

 ぱちん、ぱちん、と胸元のボタンが外されていく。

 シャツの隙間から入り込んできた先生が、胸の輪郭をなぞる。あばら骨がくすぐったくて。

 

「可愛いブラしてんな」

 

 彼もだいたい意地が悪い。スポブラに、色気なんてあるはずはずないのに。

 

「小さくてごめんなさい」

 

 当てつけるみたいにして答えてしまう。

 するとキャミも引き上げ巻き取られて、頂(いただ)きの木の実を直(じか)に摘(つ)まれた。

 収穫期を迎えたように熟れた尖端へ彼が触れるたび、しびれるような触感がふりまかれる。

 

「ふぇ……!」

 

 先生の整った顔立ちが、ゆっくりと胸元へ下りてきて。

 

(今、見られたくないわ)

 

 ぐい、と先生の顔を押し返す。

 

「ま、待っ……! 今日はわたしが、ご奉仕するわ」

 

「テスト明けで疲れてんだろ」

 

「先生よりは、疲れていないつもりよ。わたしに任せて」

 

 ひたい(・・・)に、ふわっとしたキスが跳ねて。

 お返しにと、おしりを持ち上げ先生へ口づけた。

 

「無理すんなよ」

 

「うん。電気だけ、消して欲しい」

 

 彼がリモコンをピッと押すと、明かりはカーテン越しに住宅街の光害が見えるだけになる。

 上体を寄せ合いながら、先生の張ったテントの形を確かめた。

 スラックスのしっかりしたでも厚さはそれはどでもない生地の上からじゃ、生々しくて。

 彼の形を知ってしまっているから、その記憶がちらつくたびに顔を背けたくなるくらい。

 

「ご奉仕してくれるんだろ。出して」

 

「うん……」

 

 一歩引いておずおずと彼の昂ぶりへ顔を近づければ、両手でそれをおおって。

 スラックスのホックを外し、じー……とファスナーを下ろしていく。

 引っかからないようボクサーパンツを注意深く下ろせば、エイリアンみたいな彼自身がきもかわいい。

 ウェットティッシュを取り出して、汗を拭くようにふきふきと撫ぜた。

 

「アルコール入りじゃないよな」

 

「だいじょうぶ」

 

 前にアルコール入りウェットティッシュで彼を悶絶させて以来、お決まりのやり取りだった。

 デリケートな肌にも使えるものだから、おちんちんくんにもきっと優しいはず。

 汚れやすい隙間も、丁寧に拭き取っていく。

 そしたら、お風呂をいやがるわんこみたいに脈打って。

 

「んっ」

 

「ッ! 悪ぃ、でもそれ反則」

 

「平気よ」

 

 先生の反応してくれたのがとてもうれしくて、わたしは愛おしげにその先端へキスをした。

 すくっと立ち上がっている彼自身はさらに角度を上げて、今にもお腹にくっつきそう。

 ちゅ、ちゅ、と口づければ、風にそよぐみたいに左右に揺れて。

 道端のねこを慈しむように撫でながら、彼の中心の近くで先生に聞いた。

 

「先生。こういうときどうすればいいかしら」

 

「そのまま口に含んで、舐めて」

 

 教わった通りに、先生のものを咥(くわ)えた。

 それはとても大きくて、のどの近くまで入れてもとても入りきりそうにない。

 全部入ってしまうわたしの体ってなんてえっちなんだろう、とふと思ってしまう。

 

「上手に、できてる?」

 

「その調子で頼む」

 

 頭のてっぺんをぽんぽんと叩かれると、じわりと愛おしさがあふれる。

 食べるものじゃないのにとても美味しく感じて、口の中が唾液で一杯になった。

 唇を先生の形に沿って滑らすとよだれがこぼれてしまいそうで、ずず、とすすって。

 

「……ふッ」

 

 彼の切なそうな息遣いが聞こえて、うれしくて。

 

「だして」

 

 たった三文字の言葉でも、口に出すのはずいぶんと勇気がいる。

 

「ブランにされると、出ちゃいそ……!」

 

 出してくれないと、困る。というより、悲しい。

 別に、好きじゃないから興奮しないっていう訳じゃないって分かってても、そう思ってしまう。

 わたしの体のほうが何倍もわがままなのに。

 

 硬く張り詰めた先生の欲望を左右に扱(しご)きながら、先っぽを絶え間なく舐め取った。

 教えてもらった気持ちのいいところに、唇をすべらせて舌先で撫ぜて。

 おくちの中に入り切らないところも、きゅ、きゅとマッサージする。

 根本から先端までぎちぎちに張っていて、すごく苦しそう。

 

「すげーいい……ッは! 出る……ッ」

 

「らして」

 

 腰を引こうとする先生を、抱きついて引き留めた。

 早く気持ちよくなって欲しくて、ヘドバンみたいに頭を揺さぶって。

 口の中の彼がとても熱くって、血が頭に上らなくなってく。

 それでも確かに先生の苦味が染み出してきて、体力を振り絞ってご奉仕した。

 水泡(みなわ)の破裂するいやらしい音に耳を犯されながら、裏筋やくびれを舌で押して。

 

「ブラン、マジで、出……!!」

 

 小さな呻き声とともに、口の中へ先生の奔流が流れ込んでく。

 のどに絡まってとても飲みやすいものじゃないのに、でも飲みきりたいと思ってしまう。

 無我夢中で、彼の吐精を飲み込んだ。

 

「おいしい……」

 

「嘘つくんじゃねーよ」

 

 先生は少し疲れた様子でわたしを抱きしめた。

 

(嘘なんかじゃ、ないわ)

 

 もう少し優しくしてくれたら嘘にならなかったかもしれないのに、なんて考えてしまう。

 

「気持ちよく、できたかしら?」

 

「ああ……」

 

 なんだか、気だるそうだ。

 それでも静かに抱きしめられていたら胸がぽかぽかしてきて、しあわせな気持ちで。

 

「?」

 

 顔を寄せられるのを、うっとりと眺めていた。

 夢見心地の心は、カサつきのない確かな質感に触れると一気に覚醒して、焦(あせ)る。

 

「あ……だめ……っ」

 

「は……ふ……」

 

 息も詰まるくらいの恍惚の渦の中にとろけてしまいたいのに、それはできなくて。

 堕ちて、ライ麦畑のキャッチャーみたいな先生の手に捕まりそうになるのを必死に抜ける。

 すごく力強くて、触れられるときゅんと胸が鳴るようで……その中から出るのはとても大変。

 それでも、なんとか先生の上に這い上がって。

 

「今日はそういう気分じゃない?」

 

 先生と「なかよし」したい。けれど、そのための準備をしてなくて。

 もっと触ってほしいのに、触れられたら、困る。

 

「違うわ。わたしが、先生に、してあげたいの」

 

 胸をドキドキさせながら、先生の返事を待った。

 

「積極的だな。そういうブランも好き」

 

 背中をゆっくりと撫でられて、ほっとする。

 スカートを上げて、先生にまたがって。

 

「ん、……」

 

 愛器同士を触れ合わせれば、ぞくりとした感覚が体のすみずみへ走った。

 胸の中の疼きがきゅうと破裂して、転げ落ちるように先生にすがりつく。

 テスト期間のあいだ距離を置いてたから、禁断症状を起こしちゃってる……!

 

「先生、だいすき」

 

「可愛いよ、ブランは」

 

 すっと息を吸い込んで緊張を解いたら、先生の体につかまりながら彼の頂きに秘唇を這わせた。

 尖端の、少し柔らかくなっているところが花芯へ触れれば、えもいわれぬ快感が迸(ほとばし)って。

 

「っ、……」

 

 急速に体温が高まって、ぐっと息を飲んだ。

 ゆっくりゆっくりと、わたしのへこみを彼自身に沿わせてく。

 それはなかを揺さぶられるよりもずっと穏やかな運動なのに、池尻の小さな突起はいつも以上に激しく感じて。

 まるで、先生の体でいやらしいことしてるって、そんな気分になってしまう。

 花は潤んで、咲きはじめていた。

 

「ん……んっ」

 

 部屋の中は静まり返っているから、お互いの息遣いがよく聞こえてしまう。

 恥ずかしい……。けれど、何か話してっていう気分にもなれなくって。

 きっと、こんな姿を見せられるのも先生にだけだ。

 彼は飄々(ひょうひょう)としたように見えるけれど、体の震えてしまうたびに反応してくれていた。

 二人で気持ちよくなれているのがうれしくって、しだいに理性の箍(たが)が外れてくる。

 

「ブラン、そろそろ挿れさせて……」

 

 先生の語尾に、いつもなら絶対聞けないような切なさが滲んでいて。

 

「ええ」

 

 しっとり湿った秘所は、確かな存在を主張する彼自身が埋(うず)まるにつれ、簡単に形を変えていく。

 彼に体の奥を開かれる感覚がうれしくて。

 見も心も、先生の色に染まれたらいいのに、なんて考えてしまう。

 

(白のままだって、何者にも染まれないもの。わたし、頑固だから)

 

「ふぇ、あっ!」

 

 後ろ向きな気持ちを断ち切るような激しい突き上げに、目の前がチカチカと明滅した。

 気づけばがっしりとつかまれて、体の芯まで深く彼自身が突き刺さっていて。

 そしてまた弱いところをえぐるように抜き取られて、引き攣(つ)るような愉悦に生理的な涙が流れた。

 

「やっ、待っ……! 今日は、わたしがご奉仕したい、の!」

 

「それ、逆効果だぜ。悪ぃ、これ以上待てねーよ」

 

 食いつくようなキスに息が詰まった。

 気持ちいいのか苦しいのか分からないくらいに頭も体も揺さぶられてて。

 外の芽も硬い体に擦(こす)れて、甘いわだかまりがぐつぐつと煮だってく。

 

「せんせい……んっ……んん……っ!」

 

「ハァ、ブランの中、熱くて吸い付いてきて、最っ高に気持ちいい」

 

 彼の求めに応(こた)えるように、襞(ひだ)をふるふると震わせた。

 不安定な膝の上では舞の一つも舞えなくて。

 突き上げては落とされて脳震盪を起こしそうに感じながら、快楽の渦に巻き込まれてく。

 

「んぅ、あ、ふぇ、ふぁん、あっ、あっあっ、せんせ、せんせい……!」

 

「っく! そんなに締め付けるな。気持ち良すぎ」

 

 抱きしめれば、ずっと欲しかった先生のぬくもりがなだれこんできて胸が一杯になった。

 二人、夢中で求め合って。エッチな音も、淫らな声も、何もかもが心地よく感じられてしまう。

 

「あんっ、はっ、ふぁん、あっ、あっ」

 

「ブラン、ブラン……!」

 

 ずっと凍りつかせておくつもりだったのに。

 先生の熱で奥はとろとろにとけて、でもまだ暖を取りたくって甘えすがるように締めつけてしまって……。

 少し動けば、気持ちのいいところにもっとたくさんこすれた。

 歯止めが効かなくなってきて、胸の高鳴るままに体を震わせていた。どんどん、体が熱くなってく……!

 

「ブラン、出すぞ……っ!」

 

「ああっ、ふ、ああんっ、中に、中に欲しい、わ、ん、や、あっ」

 

 子宮に届くくらいまで夢中で突き上げてくれる彼に、抑え込むのがつらいくらいの熱が溜まってきていて。

 痛いくらいに抱き合えば、その熱が弾けそうなくらいに膨らんだ。

 

「もう離さねーからな」

 

「うん、んっ、あっ、ふぁあああああ……っ!」

 

 おなかの奥に溜まった熱が一気に弾けて、その波が体中をうねらせて。

 言葉通りに彼の腕に捕らえられ、肉杭を奥の奥まで穿(うが)たれた。

 彼自身を絡め取るようにうごめく蜜壁の中が、その欲望で真っ白に染まったの……。

 

 

 

 終わったら、先生はわたしの体をふいてくれて。

 本当は、言ったとおりにわたしがふいてあげようと思っていたのだけれど。

 先生のほうが起き上がるのが早くって、体をふかれる暖かな感覚にどうしても甘えてしまう。

 もしかしたら、「なかよし」より、「後片付け」のほうが好きかもしれない。

 

 けど、ちょっとそっけない。

 

「先生……良かった?」

 

「ん?」

 

 顔を近づけて聞き返す先生に、また胸がきゅんと鳴って。

 

「気持ちよくご奉仕できてたか、聞きたいの」

 

「何度も言わせんな。最高の女だよ、ブランは」

 

「……ええ」

 

 頬に触れたキスの感触は、少しくすぐったかった。

 

 

 

 汗だくになった体をお風呂で流しされば、自然とタブレットのキーに指を走らせていた。

 

(1マスずつしか進めなくたって、いつかe8に辿り着いてみせるわ)

 

 クイーンに成れればいいなって思う。

 

(いいえ。そうじゃなくたって、黒のキングの隣には行きたいって思うもの)

 

 道は遠いけれど、彼ならきっと、離さないでいてくれる。

 

  (終)

 

  * * *

 

ロム「ほんとのおはなしなの?」

ミナ「どうなのでしょうか……」

ロム「おねえちゃんのにっき、よんでみたい」

ミナ「人のご本を勝手に読んではいけませんよ」

ロム「はい……」


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