※この作品はR-18です。

【完結】はる君とレイアちゃん   作:はのじ

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息抜きで不定期。
文章の勉強を兼ねて。

勝手がわからないのでタグは随時追加予定。


序 どこにでもあるありふれたお話

 紫黄諸藩皇国(しおうしょはんおうこく)

 

 皇王を頂点とした七三の藩からなる封建国家である。皇王は軍備を一切保たず権威だけを有す。古にはアリア大陸の西、紫霊山脈の裾野に広がる大平原に於いて比較的大きな部族の族長程度の存在であったが、周辺部族を力で纏め上げ、以降多くの動乱の中、唯一古の血脈を保ち生き残ってきた。多くの部族、英雄が栄枯盛衰を繰り返す中、皇王の血脈は次第に領地を失い武という力を失ったが、言葉を以って周辺部族の諍いを公平に仲裁し続けていた。時代が移るとも変わらない皇王の公平な仲裁。武力を持たない皇王の血脈は、いつしか不可侵の存在へと尊崇を集め、権威を持つに至った。諸侯と呼ばれるに至った部族長達は藩体制を築き、藩同士、相争い戦火が絶えることはなかったが、外敵の侵攻の際には皇王の号令の下、一致団結して戦うまでに至った。

 

 染織技術が未熟だった古の時代から夫婦で紫黄の衣を身に纏う風習があった皇王の一族の風習に肖り紫黄諸藩皇国(しおうしょはんおうこく)と名乗る封建国家が正式に樹立したのが今より五〇〇年前。以後、『統治すれども武は保たず』が国是の皇国は、時に外敵に一体団結して戦い、藩同士の争いを皇王が仲裁しながら揺るがない社会体制を築いていた。

 

 物語は七三ある藩の内、紫霊山脈にほど近い周辺八藩で結成される『紫霊八藩連盟』の盟主を務める紫熊(しゆう)藩の天守から始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■

「久しいな。首を用意しているとは殊勝な事だ。アレイア」

 

 ナーブ種の特徴を色濃く持った、ヒト種にはない大柄な体躯に鎧を纏いアルタイはアレイアと呼ばれたナーブ種の女性に声をかけた。

 

 ナーブ種は紫霊山脈の東に集落を築く見た目、蛇の特徴を持つ種族である。蛇の特徴を持つと言っても祖先は蛇ではない。

 

 遠目にはヒト種と変わらぬが、近づけば違いは一目瞭然だった。肌はところどころ鱗に覆われ、黄金の瞳は縦に二つに割れている。額に男性は二本、女性は一本、白い角が飛び出し、強い力を持つもの程大きいとされる。

 

 臀部に近い左右の太腿には祖先の名残である副足(ふくそく)と呼ばれる蛇の尾に似た器官がついている。変温動物ほどではないが体温はヒト種より低く、外気温に一定量左右され、氷点下ともなると動けなく場合があった。

 

 体格は男女ともにヒト種を上回り、男性は五割、女性は二割ほど大きい。当然膂力もヒト種を上回る。寿命は五〇〇年を超える。それ故か生殖能力は低くヒト種ほどには数はいない。齢一〇〇を超えた辺りから子を成すことが可能となり同時に一人前と認められる。

 

 その性質は紫黄諸藩皇国にある記録では『冷酷にして冷徹。同種であろうと平気で盾にする。しかし理性的でもあり戦闘相手が集団を代表する長の首を差し恭順の姿勢を示せば無(・)意(・)味(・)な(・)殺戮を行わない』とある。

 

 ヒト種と異なり摩訶不思議な力を持つことが有名で、個体により力は異なる。全ての個体が持っているわけではないが、力を持った個体は種族の中でも一目置かれ、氏族の長、または種族全体を纏める種族長となる。

 

 アルタイは力持つ個体として次期族長と目されていた。

 

 ナーブ種は古くから紫黄諸藩皇国と争いを繰り返していた。紫霊山脈の東部は荒ぶる精霊が多い。暑気には強いため夏は活動的になるが、数年に一度、冬の気温は零下を下回り活動がほぼ停止する。

 

 対して紫霊山脈の西は年間を通して温暖な気候が広がり、冬でも薄い掛衣を羽織る程度で済む。これは紫霊山脈の西に居座る精霊が穏やかな性格をしていると同時に皇王が精霊の祭祀を欠かすこと無く奉っているからとも言われている。

 

 紫霊山脈の西はナーブにとって昔から垂涎の土地であった。数年に一度、夏の季節に紫黄諸藩皇国の外縁部に攻め入るが、その度に八の藩からなる紫霊八藩連盟が中心となり七三の藩に援軍を求める。争いの最中でもこの時ばかりは皇王の名の下、即時の停戦となりナーブの撃退に向かうのである。紫霊八藩連盟は援軍が集まるまでの時間を稼ぎ、集結した援軍と共にナーブを撃退するのである。

 

 ヒト種からすればナーブの摩訶不思議な力は脅威であり、それ故古くから研究が進んでおり、今では限界はあるが、対処可能なものが増えてきている。数に劣るナーブは悔しがりながらも、再び彼の地を奪取するために力を貯めるのがこれまでの経緯であった。

 

 三五年前の夏。この年、ナーブの襲撃はなかった。代わりに和平交渉を目的にナーブからの使節団が現れた。使節団は鎧・武器等寸鉄の一切を身に纏わず、身一つで族長の親書を携えていた。

 

 当時の紫霊八藩連盟の盟主、倉桐晴興は訝しりながらも皇王と五人の大諸侯に連絡をとり協議を行った。その間使節団は紫霊八藩連盟の盟主を務める紫熊藩が預かり饗すと同時に監視を行っていた。

 

 歴史書に記されるほど長い年月を戦ってきた相手だ。和平といってもそう簡単にはいかない。一旦使節団は東の集落に送り返し年を明けての交渉再開となる。

 

 確執はあったが、その後一五年間ナーブの襲撃はなく、以後、少人数の駐在員を交換する通信使節、一部制限付きの通商条約と段階を踏み、互いの交流を少しずつ増やしていった。

 

 そしてそれから五年、現在から一五年前に和親条約が正式に締結され、駐在員は外交官となり数に制限はあるものの、山脈をまたいで互いに行き来する事が可能となった。

 

 そして更なるお互いの理解を求めて八年前にナーブからある話が持ち上がる。紫霊八藩連盟の若き盟主晴信とナーブ族族長の娘との政略婚である。交渉にはナーブからは次期族長と目されるアルタイが臨んだ。

 

 ナーブ同士でも子はなかなか成せぬ。ヒトとナーブであるなら尚更である。しかもお互いの見た目に不快感を催すものがいるのも事実だ。年齢も離れていた。ナーブの成人は一〇〇を超える。一五と一〇八の婚姻である。しかしお伽噺や口伝で伝わる昔話などには、異種族同士で子を成したと思われる話がいくつもあった。しかし結末はどれも不幸に終わり、紫霊山脈の山深くでひっそりと暮らしている少数民族がその子孫であるとの言い伝えもある。

 

 交渉はアルタイの粘り強い交渉により皇王を動かし、反対する子族、仕族を抑え最終的に若き盟主晴信の一言で決着がついた。ただ一言「諾」と。

 

 それから七年。切り落とされた切断面が汚れぬよう、痛まぬよう、丁寧に絹の布で巻かれ、瞳を閉じられた晴信の首の前で剣を手にしたアルタイが立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

■

 アレイアはアルタイの目の前で正座をし頭を下げていた。その先には晴信の首がある。

 

 晴信の首はアレイアが落とした。苦しまぬよう一瞬の事だった。晴信は最後の最後までアレイアに微笑みを浮かべていた。落ちた首は今も穏やかな顔をしている。

 

「晴信様でございます。この首を以って矛を収めていただきますよう」

 

 アレイアがアルタイに兵を引くよう願い出る。

 

 アレイアはナーブ族族長の娘。そしてアルタイはアレイアの実の兄。晴信とアレイアの婚姻を纏めたのはアルタイである。

 

 『冷酷にして冷徹。同種であろうと平気で盾にする。しかし理性的でもあり戦闘相手が集団を代表する長の首を差し恭順の姿勢を示せば無(・)意(・)味(・)な(・)殺戮を行わない』

 

 晴信は紫霊八藩連盟の盟主である。ナーブが矛を引くには申し分なかった。

 

「ふん。長くはないが三五年だ。ようやく念願の土地を得るのだ。何故引く必要がある」

 

 アルタイが冷徹に言う。

 

 無意味でなければナーブは引かない。ナーブとしては若く、そして女性であるアレイアは戦場の習いを知らなかった。自らの種族の性(さが)と研究と記録に熱心な紫黄諸藩皇国の記録を鵜呑みにしてしまった。

 

「紫霊八藩連盟の要だ。動揺も大きかろう。この地を橋頭堡に広がる大地全てを奪ってやるわ」

 

 この首ひとつでと、何度も断るアレイアに、他の者では嫌だと優しく何度も懇願され託された願いを叶えるため天守でアルタイを迎えた。涙が一粒も溢れない金の瞳を恨みながら。

 

 アルタイが晴信の首を手に取るため歩を進める。アレイアは頭を下げたままアルタイが近づくのを待った。

 

 アルタイの影がアレイアに重なった瞬間アレイアの首が持ち上がった。アルタイがアレイアの髪を掴み持ち上げたのだ。アルタイはアレイアの胸をまさぐり匕首を取り上げた。

 

「相変わらず怖い女だ。こいつで俺を殺す気だったか。無駄だ。女は男に勝てん」

 

 アルタイは匕首を背後に放り投げると髪を掴んだ腕をさらに持ち上げた。アレイアの足は宙に浮き動きが取れない。

 

「悲鳴も上げんか。お前には俺の子を産んでもらう。強い子が生まれるだろうよ」

 

 強い力を持つナーブが子を作るのは義務だ。そして強い力を持つ同士が子を成すのは当然だった。近親同士で子を成すのは珍しいが、忌むべきことではない。事実アルタイの両親も兄妹である。

 

「……断る…」

 

 痛みをこらえてアレイアは意思を言葉にした。晴信以外に抱かれるつもりはない。晴信はこの手で殺した。故にもう誰にも身を委ねるつもりはない。

 

「まさか本気でこの男に惚れていたのか。狂ったか!ヒトだぞ!ふはははは!こいつは笑える!」

 

 アルタイが手を離し、アレイアはその場に崩れ落ちた。アルタイは晴信の首の元までいき乱暴に首を掴んだ。

 

「こいつのどこに惚れた?外見か?性格か?それとも一物か?俺のものよりよかったのか?」

 

 アルタイはいやらしい笑顔を満面に浮かべアレイアに問いかける。

 

 アレイアは婚礼の一月前、アルタイに無理矢理犯された。力を持つ者同士子を成すのは当然だ。どうせヒトとナーブでは子は成せん。ならば代わりに仕込んでやろう。ヒトも手間が省け子がなせる。一石二鳥ではないか。

 

「お前の女陰(そそ)は今まで抱いたどの女より具合がよかったぞ。こいつもさぞ喜んだだろうよ」

 

 アルタイは晴信の首を弄ぶ。晴信の首をよく見れば違和感を感じるはずだが、気分のよかったアルタイは気が付かなかった。

 

「晴信。こいつの女陰(そそ)はな、男を咥え込むと五度以上精を放たぬ限り離してくれぬのよ。ヒトの分際でよく今まで平然としていたな。ふはははは!」

 

 間違いではない。ナーブは子をヒトの様に簡単に成せない。通常の女性は三度の精の放出で緩むが、力を持つアレイアは五度の放出が必要であった。自分の意思ではどうしようもなかった。

」

 

 アルタイが晴信の首をアレイアに向けて放り投げた。

 

「晴信様!」

 

 アレイアは晴信を傷つけぬよう優しく受け取り、胸に掻き抱いた。

 

「そいつのいちもつは惚れるほどによかったか?ん?」

 

 晴信はもういない。晴信がいないこの世に未練もない。もういいだろう。だが晴信にこんな自分を見て欲しくない。アレイアは胸に掻き抱いた晴信の顔を胸に押し付けた。二重の意味で意味が無いことは十分に理解した上で。

 

「あぁ?何言ってんだ?てめぇの貧相な一物でよがる女なんぞいる訳ねぇだろが」

 

「やっと地がでたか」

 

 アルタイは気の強い女が好きだった。抵抗する女を暴力と合わせて屈服させる。最後には自ら懇願させ自分から動くように仕向ける。抵抗する時間が長ければ長いほど良い。アルタイが満足するまでに耐える女は今までいなかった。目の前の妹を抱くまでは。

 

 アルタイが特殊なのではない。ナーブの性交は概ね似たところがある。アルタイはそれが際立っていたが。

 

「てめぇに見られるだけで反吐が出るわ!」

 

 アレイアはアルタイに犯されている時快楽を一切感じていなかった。苦痛しかなかった。押さえつけられ、殴打され、乱暴に挿入された。ナーブとて快楽は感じる。むしろ快楽にはヒトより敏感である。だがアレイアは自らが持つ力の影響でアルタイの性交で快楽を得るのは不可能だった。

 

 力を持つと言ってもアレイアの力は弱い。弱いが特殊だった。肌を重ねた相手の感情が読み取れる。それだけだった。

 

 犯されている時、アルタイの感情が流れ込んで来た。暴力で屈服させる事に喜びを感じる黒くどろどろしたどこまでも傲慢で不快な感情。吐き気と寒気。ただひたすら終わるのを待つしかない情けなさ。ナーブの男女の体格差は決定的だ。絶対に力では敵わない。終わったあとアルタイが言った。

 

「気持ちよかっただろう」

 

 吐き気を通りこして笑いが出そうだった。快楽に敏感なナーブの女に絶頂を与えられない男は同性では嘲笑の対象だ。アレイアにとってアルタイは蔑みしかない。

 

「オレがてめぇの貧相な一物で、オレが一言でもよがったか?ある訳ねぇだろ!この下手糞が!」

 

「……貴様」

 

 ナーブの男にとってアレイアの言葉は到底許せるものではない。だがいいだろう。時間はいくらでもある。許しを乞うまで何日でも犯し尽くしてやる。

 

「晴信は上手かったぜ。てめぇとは比べもんにならねぇくらいにな!我慢しても声がでちまうんだ。知らねぇ内に声がでてるんだよ。もっともっとってな」

 

 晴信は優秀だった。一五にして紫霊八藩連盟の盟主を努め、これをよく纏めた。若すぎるという声は上がったが、それだけだった。皇王の覚えも良くアレイアとの婚姻が決まるまで皇王の息女との婚姻の話があった程であった。藩政においても幾つもの改革を成し、藩主になって僅か数年で領民の生活の質が向上した。土地を愛し、領民を愛し、そしてアレイアを愛した。

 

 ナーブとヒトは形が似ていても姿は異なる。ヒトに角や鱗はない。瞳も割れていない。副足もない。一つ一つは小さな違いでも全体で見れば大きく変わる。ナーブ基準では美しい容姿をしているアレイアも二つに割れた金の瞳を通せばヒトの基準に達しているかアレイアには分からない。

 

 子も成せるか分からない。側室をと強引に話を進める子族の縁談を全て断り、晴信は生涯アレイア一人で良い。跡は弟の子に任せると、からからと笑った。

 

 最初は蓮っ葉な言葉でヒト如きと馬鹿にしていた。ヒト如きと肌を重ねる事は我慢ならなかった。しかし力を持つナーブが子を成すのは義務だ。それがヒト相手であろうとも。

 

 肌を重ねれば感情が読める。晴信はアレイアを愛していなかった。いや。生涯かけて愛そうと決意していた。晴信は初めてだった。

 

 子は出来ない。更に肌を重ねる事になる。アレイアの女陰(そそ)は一度男性を受け入れると五度の精を放つまで決して放そうとしない。優秀な晴信は性豪でもあった。

 

 肌を重ねる度に感じる晴信のアレイアへの愛情。日々深まっていき一度も覚めることなく今日まで続いた。今もアレイアの子宮は晴信の愛を感じ続けている。

 

 気がつけば晴信様と呼び、閨では決して出すまいと指を噛み我慢していた声が抑えられなくなっていた。晴信の性技に翻弄され、お互いを求め、求められ。

 

 口は晴信への愛を叫び、女陰(そそ)は浅ましくも晴信の精を求めた。胸の先にある授乳器官を口に含まれただけで達した。ナーブの弱点だと嘘をついた角を優しく愛撫されただけで腰が砕けた。副足はナーブの女性が性的興奮を覚えると快楽器官に変わる。抽送の最中に優しく責められるだけで晴信の一物を強く締めつけ子宮に大量の精を送られる。回数に達していない女陰(そそ)は脈動を繰り返し晴信の一物におねだりを繰り返す。自分がどんな声を上げているかすら分からない。あとで晴信に聞くと顔が真っ赤になった。

 

 ナーブの肌はヒトからすれば冷たい。鱗は滑らかだが場合によっては晴信を傷つける事がある。だが晴信が与え続ける快感で最中は気にする余裕がない。君(イア)の肌は夏は気持ちよくて、冬は僕の熱で温める事が出来る。僕だけの君(イア)だと実感出来る。重ねる肌から伝わる愛情と共に晴信が耳元で囁く。それだけで達した。気を失うほどに交わった翌朝、晴信の肌が傷ついていた。鱗で怪我をしたのだ。この傷は僕達が夫婦である印だ。印を刻まれた僕は君(イア)の物になり、僕は君(イア)にこれからも印を刻み続けていくよと女陰(そそ)に触れた。

 

 二人に性の交わりがなくてもアレイアは晴信を愛していただろう。晴信の愛は大きく深くアレイアを飲み込みそこから逃れることは不可能だった。そしてその深みへ自らさらに深く潜った。

 

 幸せだった。しかしその幸せは今日壊れた。

 

 ヒトからすれば長い、しかしナーブからすれば短い三五年の信頼を裏切り、アルタイが密かに集めていた兵を率いて城に攻めて来たのだ。ここ数年で城下にいるナーブは珍しいものではなくなり、数も増えていた。信頼しつつあったナーブに夜半に攻め入られ、城はあっけなく落ちた。城下では虐殺が始まり、晴信は虐殺を阻止するため自らの首を差し出した。

 

 事の顛末は物語にありがちでありふれたものだった。

 

 ナーブがヒトより少しだけ狡猾で辛抱強く執念深かった。だたそれだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん。今は言いたいだけ言わせてやる。屈服させて俺の子を孕むのは変わらない」

 

 アルタイはアレイアの言葉を負け惜しみと断じた。城は押さえた。城下では略奪と殺戮が行わている。待機していた部隊の引き入れは完了している。後は部下に任せ、晴信の首の前でこの女を犯し続けるだけだ。紫霊八藩連盟の一番邪魔な男は殺した。この男のいない同盟など恐れる必要などない。軛は深く打ち込まれたのだ。

 

 アルタイはアレイアが笑っていることに気がついた。気が触れたかと思ったがこの女はそんな生易しい女ではない。

 

「何がおかしい」

 

「気が付かねぇのかクソボケが。汚ねぇ目かっぽじって見やがれってんだ」

 

 アレイアは晴信の首を優しく掲げ、アルタイに見せつけた。

 

「いい男だぜ」

 

 アレイアの言葉を無視して晴信の首を見た。

 

「お前、食ったな」

 

 晴信の両の瞼はくぼんでいた。この状況下で考えられるのはアレイアが晴信の目玉を食べる事しかない。

 

「晴信がな、最後までオレを見ることが出来ないって寂しがってたがこればかりはどうしようもねぇ。首を斬る前に食わしてもらった。これでオレと晴信はずっと一緒だ」

 

「迷信だ」

 

 ナーブにも神はいる。実際に存在していたものだ。祖霊である。力を持ち死亡した先祖を守護者とし、特に大きな力をもったナーブを神として祀っている。力持つナーブは死した後、神として祀られる事を目指す。当然祖霊を祀る宗教も成り立つ。輪廻転生の概念を持ち、魂の存在を信じる。古き言い伝えは残り、祖霊が生きた友の目玉を喰らい生まれ変わった後も友として生まれる事を願った一種の言い伝えである。

 

「そう思うか?」

 

 アレイアはごみを見るような目でアルタイを見た。

 

「晴信はオレが初めての女でな。一発だったぜ」

 

 アルタイは多くの処女を抱いた。アレイアも処女だった。ナーブの摩訶不思議な力の一つに処女、童貞と肌を重ねると、力を得ることが稀にある。それ故アルタイは我慢を重ねヒトの処女も犯し続けていた。アルタイに犯されたヒトの女性はアルタイの暴力に耐えきれず一回の性交で死亡していた。死体は紫霊山脈に捨てていた。

 

 多くの処女を抱いたがアルタイが得た力は元の力と合わせても二つだけだった。

 

「それにここに晴信の子がいる」

 

 アレイアは臍の下辺りを優しい顔で撫でた。

 

「もう産んでやることはできねぇが、これだけ揃えりゃ確実だ」

 

 アルタイに捕まれば、ヒトの子など堕ろされ産むことは不可能だ。晴信にも形になってすらいない我が子にも詫ても詫きれないがどうしようもなかった。

 

「どんな力を得た?」

 

 ある程度は予測はつく、恐らく転生に係る力だろう。大した力ではない。だが失うには惜しい女だった。力を新たに得たアレイアはアルタイの子を孕むのに一番適している。

 

「ボケ。誰が教えるか」

 

 アレイアは靴の底に隠していた小刀を取り出した。それを自分の首にあてがう。

 

「条件が厳しくてな。ここで待つしかなかったんだよ。誰がてめぇの顔なんざ見たいかよ。くたばれクソ野郎」

 

 アレイアは自らの首にあてがった小刀を躊躇なく引いた。アレイアの目には狂気の色が浮かんでいた。

 

 切り裂いた首から血が勢い良く飛び出た次の瞬間アレイアと晴信の首が光出す。力が発動したのだろう。死と同時に発動する力は強い。命を代償にした力は更に強い。神として崇められた祖霊も命を代償とした力を以って神となった。

 

「クソッ」

 

 もう間に合わない。だが邪魔だけはしてやる。アルタイの二つある力の一つは同族の力の発動を邪魔するだけという非常に残念なものだ。だが今の状況にはもってこいだった。自分の物にならないのなら誰のものにもしない。

 

 アルタイの手から出た黒い光がアレイアに向かう。急速な出血で意識を失っていたアレイアの手から晴信の首が転げ落ちた。そしてアルタイが発した黒い光は晴信に当たった。

 

 その直後アレイアと晴信の首が虚空に飲み込まれるように消えた。アレイアの力が発動したのだ。

 

「ふん。惜しいが失ったものは仕方がない。行くぞ。もうここには用はない。全て燃やせ。形も残すな」

 

 城に火をつけアルタイは去った。三日三晩燃え続けた城は紫霊八藩連盟の崩壊を見ること無く崩れ落ちた。

 

 二〇年に渡り泥沼の消耗戦となった紫黄諸藩皇国とナーブ種族の戦いの結末をアレイアは知らない。

 

 

 

 

 

 

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