※この作品はR-18です。

【完結】はる君とレイアちゃん   作:はのじ

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エロはありませぬ


TOKYOレイアーズ VS YOKOHA-MAMA's

 ちゅーは止められた。守っている。なのに春との楽しいお風呂まで止めなさいとは何事だ。何が問題だ。何も問題はない。レイアは断固反対した。どれだけアンジェリカが言おうと答えはNO!だ。断じてNO!だ!

 

 レイアは憤っていた。何故止めねばならぬのだと。一週間だろうと一ヶ月だとうと一年だろうと、アンジェリカと戦い続ける覚悟だった。

 

 だがしかし。ここで思わぬ伏兵が現れた。秋奈だ。春のママである。強敵だった。

 

 春のママ、秋奈はおっとりとしてるのに押しが強い。いや違う。押しが強いというより気がつけば首を縦に振らされている事ある。

 

 結婚に踏ん切りがつかず四年間プロポーズを躊躇っていた夏彦が三〇分で落とされた話は、何度も酔った夏彦が輝政に話をしていた。本人も未だに謎だと言っていた。ここは油断せずに断固とした決意で場に臨む必要があった。

 

 レイアは下腹に力を入れ、二人の強敵と向かい合った。開戦の口火はレイアが切った。

 

 麗亜曰く。

 

「何故(なにゆえ)春とのうむがし湯浴みを止(とど)むなりや」

 

 庵慈恵理華曰く

 

「男女七歳にして席を同じうせず。これ日の本の理(ことわり)なりけり」

 

 而(しこう)して秋奈曰く

 

「御身らの先々を憂ふ(うれう)二心無き親心からなり」

 

 麗亜曰く。

 

「応へ(いらえ)ならざりけり!親ののたまふこと、ひたぶるに否(いな)び申さむこといとほしなれど断乎として否(いな)と答(こた)うるものなり!」

 

 話し合いは当然平行線を辿る。止めたいアンジェリカと秋奈。止めたくないレイア。妥協点などあろうはずがない。

 

 そうだ。これはピンチではない。チャンスだ。逆に説得することに成功すれば誰に憚(はばか)ることなく春と一緒にお風呂に入れる。交渉次第では止められたちゅーもまた出来るようになるかもしれない。

 

 絶対に負けないため、必ず勝つため、二人を睨みつけたレイアは下腹に力を入れ直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■

 無理だった。

 

 所詮小学三年生。アンジェリカは病弱の身で一族の反対を押し切り、輝政をアメリカから単身追いかけ、言葉の分からない異国で多くの苦労を経験した。実の両親からは勘当をされ、その後も輝政の家族の反対も乗り切り、幸せを勝ち取る波乱万丈の人生を送った女傑である。漢字は未だに勉強中だが僅かな期間で日本語も習得する程の聡明さも持っている。

 

 一見普通の女性に見える秋奈も、付き合ってきた九年間、キス止まりで一度も性行為を迫れなかったヘタレの夏彦と、愛想を尽かすこと無く付き合い続け、最終的には三〇分求婚一本勝負に快勝。家庭の事情で大学に進学できず、高校を出て働き始めた夏彦を支え続けた。今でもを縁の下と内助の功でひたすら夏彦を立て、穏やかだがアンジェリカに負けない幸せな家庭を築きあげた。夏彦が時折『あげまん様』と拝んでいる通り、秋奈なくして桐山家は立ち行かない。彼女もアンジェリカとは違った形で幸せを自らの力で掴み取った腰強の女性である。

 

 齢一〇。甘いは毎日自覚なく噛み締めているが、年幼い人生の大半を春に捧げ、酸いも辛いも噛み締めたことがないレイアに、人生経験豊富で連携も抜群、ある意味夫婦より意思疎通が得意な二人がタッグを組んだのだ。レイアに勝てる道理がなかった。

 

 レイアは頑張った。五時間以上耐えたのだ。快挙だろう。極力感情論に持ち込むこと無く少ない語彙を組み替えることで必死に反論。二〇分の水入りを何度も行い、何故いけないのか性教育を交え詳しく解説される。

 

 雄しべと雌しべの例えは通じるのに、男性器と女性器の話になると、呪いにでもかかっているかのように全く通じなくなる。輝明の出産を例に具体的に説明すれば、日々膨らむお腹を見ていた為か、子供がお腹で育つことは理解できても、女性が赤子を産み落とすことを全く理解出来ないレイア。赤ちゃんとはある日突然いるものだとのたまう。

 

 どうすれば子供を授かることが出来るのか。アンジェリカは羞恥心に100-101の超僅差で競り勝ち、レイアが覗き見てしまった夫婦の営みを、耐え難きを耐え忍び難きを震えながら説明。途中レイアがアンジェリカの喘ぎ声をモノマネしてアンジェリカが憤死。顔を真赤にした秋奈が後を引き継いだ。

 

 その結果。

 

「春の赤ちゃんなら欲しい!絶対に欲しい!!」

 

 性器の挿入を伴うセックスを全く理解させることが出来ず、二人で何かを協力し合うことで春の赤子を得る事ができるという歪んだ知識をレイアに与えてしまう秋奈痛恨の大エラー。春と協力して何かを成すのはレイアが大好きな事だ。これでは益々一緒にくっついて試行錯誤を繰り返されてしまう。

 

 セックスを論じているにも関わらず過程を飛ばし子を得るという不射之射じみたエクストリーム無邪気を発動したレイアがここで理不尽にも二人を押し返すかに見えた。

 

 しかし、秋奈のエラーでグラブをすり抜け、グランドを転々と転がっていたボールを、憤死から復活したアンジェリカが拾った。そしてスキップしながらホームに向かっているレイアに向けてレーザービームを放った。

 

「どうやって育てるの!!食事は!?服は!?住む所は!?何よりお金は!?」

 

 ぐうの音も出ないど正論。声を張り上げてしまい、少しだけ恨みっぽく聞こえたならそれはきっと気のせいだ。

 

「それにね、赤ちゃんを産むって命がけの事なの。私も秋奈も命をかけてあなた達を産んだの。大人でもそうなのよ。体が出来上がってすらいないあなたが赤ちゃんを産む?冗談はYOSHIKOちゃんよ」

 

「…アンジー……使い方は間違ってないけど…使い所間違えてるわ……」

 

 秋奈の指摘にアンジェリカは自らの発言を無かった事にした。覚えたての日本語は直ぐに使わないほうが良い。アンジェリカの日本語の先生でもある輝政を閨で絞り尽くす事を誓った。

 

「この国は弱者には厳しいわよ。もしあなたが赤ちゃんを産んだとしても取り上げられてあなた自身の手で育てることなんて不可能よ。春君とも当然引き離されるわね。それでもいいの?」

 

 アンジェリカは一気呵成に攻め立てる。ここが勝負時だ。天下分け目のTENNOUZANだ。アンジェリカの口から政治システム、社会シムテム、教育システム、経済システム、etc、etcアンジェリカが理解するこの国の仕組みを次々と説明、子供が子供を産み育てることがいかに不可能であるかをマシンガン打線の如く怒涛の激しさで解説し始めた。

 

 レイアは決して馬鹿ではない。セックスに関する事は突然と理解が及ばなくなるがアンジェリカと輝政譲りの聡明さでアンジェリカの言わんとすることはおおよそ理解できた。故に分かった。分かってしまった。ホームに絶対に届かないことが。

 

 レイアは届かなかった。ホームとの距離は10メートル。しかしその距離は無限の距離といってもおかしくない距離だったのだ。レイアに出来ることはもう殆どない。ベンチにいるTOKYOレイアーズ軍が一人、また一人と審判に退場を食らっている。没収試合にして、せめて首を縦に振らないことだけがレイアに出来るただ一つの手段だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■

 負けたレイアは春のいる部屋に逃げ込んだ。春はいた。ベッドに座って天井の染みを数えていた。レイアは春の膝に抱きつく。春の顔を見て今まで我慢していた涙がとめどなく溢れてきた。

 

「春ごべんね。もう、もういっじょに、おぶろはいれな、いがもじ、れない……」

 

 泣きながら春に謝るレイア。春は天井の染みを数えるのを止めレイアの綺麗な髪を撫でて慰める。

 

 レイアは春に申し訳ない気持ちで一杯だった。レイアスペシャルを完成させるまでどれほど春の協力を仰いだことだろう。間違って何度も春のおちんちんを握ってしまった。回転する時、滑って春の顔に跨ってしまった事も。乳首が強く擦れ合い何度も洗体が止まってしまった。軽く触れる程に至るまでどれだけの時間を費やしたことだろうか。

 

 ごめんね。ごめんね。

 

 何度も何度も春に謝るレイア。

 

 おちんちんは大事だと秋奈に言われたにも関わらず強く握ってしまった時は慌てた。春の顔に跨ってしまった時も慌てるよりおしっこが出るところを春の顔に当ててしまった焦りが大きかった。春は一度も怒らなかった。まだちゅーを禁止される前だったので嬉しくて何度もちゅーをした。

 

 もし逆の立場だったらどうだろうか。春がレイアの背中にまわり、おちんちんをレイアの頭の上に載せる。

 

 あっ!

 

 レイアは気付いた。怒る理由など何もない。レイアなら逆に嬉しい。もっとして欲しいと思う。そしておちんちんでほっぺを左右交互にぺちぺち叩いて貰うのだ。おしっこが出るおちんちんでも春のおちんちんなら汚くない。口に入ってもいいくらいに思っている。だって春のおちんちんはとても可愛いのだから。もうレイアの手に馴染んでいるほどのおちんちんなのだから。

 

 きっと楽しいに違いない。春もそうだったに違いない。

 

 レイアの涙はいつしか止まっていた。

 

 悲しくて涙が出る。でも涙が出ることを何故か嬉しく思う。不思議だ。そして泣いているレイアを慰め、気がつけば嬉しい気持ちに変えてくれるのはいつも春だ。

 

 レイアは春の瞳を見つめた。春もレイアを見つめていた。春の瞳に映るレイア。涙で崩れた顔は決して彼女の魅力を損ねない。逆に悪い大人を引き寄せてしまう魘魅めいた色気があった。

 

 春とお風呂に入れないのなら!!

 

 涙が止まったレイアの瞳には決意があった。そうだ。簡単な事だ。

 

 レイアはいつもの様に春の手を握り部屋を飛び出した。足取りは軽やかに。とても軽やかなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■

 アンジェリカはリビングで項垂れていた。レイアが強く反対するとは思っていたが、あそこまで強固に反対するとは思っていなかったのだ。大きな声を上げてしまった。大人気なく理屈をこね回し追い詰めてしまった。涙を必死でこらえ、それでも首を縦に振らなかったレイア。後日もう一度冷静になって話し合う必要がある。

 

 ここで彼女達は失敗していることに気がついていない。レイアを説得するのではなく、春に話をすればよかった事に。

 

 春はぼーっとしているが、聡明である。大人の理屈を聞かせるまでもなく二人の将来を思っての事だと間違いなく分かってくれる。そしてレイアは寂しく思っても春には絶対的に従う。

 

 突然の自体に冷静になれなかったアンジェリカと秋奈は気が付かなかったのだ。

 

 秋奈はキッチンで夕飯の準備をしていた。

 

「アンジー。折角だから食べていってね」

 

「ありがとう。秋奈」

 

 アンジェリカもレイアと二人になるのが怖かった。アンジェリカにとって秋奈の申し出はありがたいものだった。

 

「二人を呼んでもらっていいかしら」

 

 何の心構えもなく食卓を囲むより一度顔を合わせ、話をしてからの方が食事も進むだろう。秋奈なりの考えだ。そして秋奈は冬至を呼びに行く。アンジェリカは秋奈の心遣いに感謝しながら春とレイアを呼びに行った。

 

 アンジェリカは春の部屋の扉をノックする。この家でレイアがいるのはリビングか春の部屋しかない。

 

 返事がなかった。疲れて寝ているのだろうか。もう一度ノックし返事がなかったのでアンジェリカは扉を開いた。

 

 そこに二人はいなかった。ベットの上には一枚の書き置き。そこには一言だけ。

 

 

 

 かけおちします

 

 

 

 シェークスピアの四大悲劇と呼ばれる演目の一つ。

 

 アメリカ若手役者が演じるレンタルで借りた映画を、春と遊びたいレイアを説得して三人で鑑賞したのが一週間前。春にしか興味がないレイアにそれまでそんな知識はなかった。

 

 またやらかしたアンジェリカは顔を覆ってその場に崩れ落ちた。

 

 

 




次回で終わりっぽいです。
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