死神組織の根幹である組織のなかで五番隊隊長という重責を担う男、愛染惣右介。
これは死神代行・黒崎一護が尸魂界に来る少し前のお話。
庭の木の枝に積もった雪が滑り落ちた。空気は澄み、積雪が月明かりを反射する。周囲には人の気配はない。
静寂に溶けるように護挺十三隊五番隊隊長 藍染惣右介は硯に筆を浸し、蝋燭の灯りを頼りに執務をこなしていた。隊首室の机の前にピンと背中を伸ばして座り、障子窓を僅かに開けている。羽織を肩にかけていつもの柔らかな雰囲気に加えてラフな印象がプラスされている。
「隊長?」
廊下側の襖から声が聞こえた。
「隊長、いらっしゃいますか?」
襖がゆっくりと開かれる。律儀に正座をしていた雛森 桃は体一つ分襖を開くと、摺り足で室内に入り、再び正座をして襖を閉めた。
「たいっ……寒いっ!」
廊下よりも寒い室内に雛森は腕を抱いた。
「ああ、すまないね」
藍染が障子を閉じる。
「新年の隊員たちへの挨拶を考えていたら。つい、癖で」
「それはお昼にお互いのをチェックしたじゃないですか。毎年なんですからそんなにこだわらなくても」
「いや、今書いているのは夕方からの夕食会で京楽隊長から頼まれた分だよ」
「今年もですか?これで何年目ですか!」
「十三年、いや、八年前は伊勢副隊長が代筆を代わってくれたから十二年かな」
藍染は話しながらもサラサラと筆を滑らせていく。
「京楽隊長は藍染隊長の人の良さに甘えているんですよ。ちゃんと断らないと」
「別に仕事が有るわけじゃないし、それにこれを理由に夕食会を早く抜けられたよ」
「ても、こうして仕事をしていては意味がありません。結局、食事会よりも長引いちゃってるじゃないですか」
「そうでもないさ」
藍染は硯に筆を置くと眼鏡を外して雛森を見た。
「雛森君とこうしてゆっくりと話が出来た。食事会よりも大事だよ。これは」
「……それでも、やっぱり断るべきです。享楽隊長が自分で考えないと意味がありません」
雛森は顔を紅くする。
「ところで雛森君は日番谷隊長と松本副隊長と一緒に除夜の鐘を見に行く約束をしてなかったかい」
「はい。なので着替えて今からお風呂に行こうとしたら隊長のお部屋から灯りが見えたので」
「すまないね」
「いえ、気にしないでください。私のお節介ですから」
雛森は藍染と机を挟んで正面に向き合う。
「隊の仕事初めは明後日からだ。明日は休日だけど、早く休んだ方が良いよ」
「あ、はい、いえ」
「ふふっ、どっちだい?」
藍染は微笑む。
「私、お茶煎れてきますね」
そう言って雛森はそそくさと隊長室から出ていく。入ってくるときのそそととした所作を披露したが、今は扉を開けるとパタパタと足音を立てて部屋を後にする。
藍染は静かにそれを眺めると襖を閉めて再び筆を手に紙に目を落とした。
◎
「ふう」
お茶を一口飲んだ藍染は、暖を取るように両手で湯飲みを抱える。雛森は部屋の隅の火鉢から残り火を掘り起こし、粗朶を数本入れて勢いがついた火に薪を加える。
「あったかい」
赤い火柱に手のひらを翳していた雛森はくるりと手の甲を火に向けると両手を擦り合わせた。
「隊長もこっちで一緒に暖まりませんか?」
「……そうだね」
見下ろしていた紙から目を上げた藍染はスッと立ち上がり、雛森の斜め前の藁座布団に腰を下ろした。
「確かに少し体を冷やしすぎていたみたいだね」
火鉢に手を翳す藍染がしみじみと言う。
「ちょっと意外です。藍染隊長はもっとしっかりしていると思ってました」
「厳しい意見だね」
「いえっ! 悪い意味じゃなくてっ。ほらっ、藍染隊長ってなんでもそつなくこなすじゃないですか。だから、こうしてうっかりしてる姿が珍しいなって」
「風邪は引かないだろうから構わないのさ。それに頭は冷やしていた方が良く働いてくれる。」
「ふふっ、隊長、なんだか子供の言い訳みたい」
雛森の微笑みに藍染は頭を掻いた。
「ところで雛森君」
「なんでしょう?」
「あれは仕舞っておいた方がいいかもしれないよ」
藍染が雛森の藤籠が指差す。雛森が退出した時に倒された藤籠からは白く細い帯、さらしが顔を出していた。
「ああっ!」
雛森は顔を真っ赤にして藤籠にさらしを放り込む。
「あのっ、これは、その、理由がありまして」
藤籠を自分の後ろに隠した雛森はしどろもどろに言葉を繋ぐ。
「いや、別に気にすることはないさ。ただ、隊員の手前、副隊長として振る舞う時にはそうした退廃的な行動は慎んでくれれば問題無いよ」
藍染は全てを察した風な穏やかな顔をする。
「違うんですっ! これは乱菊さんに卵酒を勧められて、仕方なく飲んだら強いお酒を混ぜてあったみたいで、体がポカポカして、そうっ! 仕方なくさらしを脱いだんです! 仕方なくです! 仕方なく!」
「君も苦労しているんだね」
穏やかな顔は同じだったが、藍染は雛森を暖かい同情の視線で包んだ。
「それじゃ、悪い夢にしようか」
藍染は戸棚から一升瓶を取り出すと湯飲みに並々と注いで一気に煽った。甘い日本酒の香りが部屋に広がる。
「うわぁ」
「どうしたんだい?」
雛森の声に空になった湯飲みに一升瓶を傾けていた藍染が声を掛ける。
「いえ、隊長がお酒を一気飲みする姿なんて初めて見たので」
「意外かい?」
「はい。隊長はあまりお酒の席に参加されないので」
「そういう席に私が出ると隊員たちが緊張して楽しめないだろうからね」
お酒の入った湯飲みを傾けて藍染は答えた。
「雛森君みたいに愛嬌があればいいんだけど、僕、というか隊長のほとんどはそういうのとは無縁だからね」
藍染が一升瓶を雛森に差し出す。雛森は残っていたお茶を飲み干すと湯飲みを一升瓶の前に差し出した。一升瓶が傾けられて湯飲みに澄んだ液体が注がれる。
「い、いただきます」
緊張した様子で湯飲みを口に運んだ雛森は酒を含んだ瞬間に顔が綻ぶ。
「おいしい……」
体の底から出たと思うほど深い溜め息と一緒に雛森は味の感想を口にする。
「京楽隊長からもらった僕のとっておきさ」
「隊長、もしかしてそれをもらう代わりに?」
「さあ、どうかな。彼がお礼にくれたのかもしれないよ」
「七緒副隊長に言いつけちゃいますよ」
「それは勘弁願いたいな」
「もう一杯くれるなら考えます」
「交渉上手だ」
藍染は自分の鼻先に差し出された湯飲みに一升瓶を傾けた。
瞬間、湯飲みが雛森の手から滑り落ちて火鉢の灰を巻き上げる。雛森が反射的に縁を持ち上げると湯飲みは灰まみれだった。
「……新しいの取ってきます」
雛森が立ち上がろうと膝を引いた。
「いや、いいよ」
藍染は自分の湯飲みに酒を注ぐとそれを雛森の前に差し出す。
「あの、その」
「嫌かい?」
「もしかして、酔ってます?」
「かもしれないね」
藍染は穏やかな笑みを崩さない。
「……それじゃ、いただきます」
雛森は藍染から湯飲みを受け取ると一気に湯飲みを傾けた。
「いい飲みっぷりだね」
藍染は空になった湯飲みに新しくお酒を注ぐと雛森に渡す。
「このお酒がおいしいのがいけないんです!」
湯飲みを受け取った雛森は半分ほど飲んだところで藍染の言葉に応える。いつもの淑やかな雰囲気は成りを潜め、藍染を見つめる目が据わっていた。
「それは良かった」
藍染が一升瓶で注ぐ仕草をすると、雛森はまだ中身が残っている湯飲みをにこにこしながら藍染の前に差し出す。
◎
一升瓶を半分ほど空にした雛森は後ろに倒れるように寝そべっている。正座していた足を左右に開き、袴から白い太ももを露にしていた。火鉢のおかげで部屋の一角は過ごしやすい温度を維持している。追加の粗朶をくべられた炎が火柱をパチパチと上げていた。
「さてと、それじゃお開きにしようか」
火を始末しようと藍染は火箸に手に取ると、その上に雛森の手が乗せられる。。
「いいじゃないですかぁ。もう少しお話しましょうよぉ」
雛森は落ち着いた口調だったがどこかハイテンションだった。
「仕方ない」
藍染は火箸を囲炉裏の灰に刺し直すと、小さなため息を吐いた。
「まったく、隊長といい、シロくんといい真面目過ぎです。人の心配ばかりしてたら総隊長みたいハゲちゃいますよ」
雛森は頬を膨らませる。
「気を着けるよ」
藍染は雛森から返してもらった湯飲みに酒を注いでちびちびと口を着ける。
「隊長ぉ」
藍染の膝に手を乗せると、雛森は藍染を見上げた。その顔は真っ赤に染まり、まぶたは妖しく落ちて奥の瞳は潤んでいる。
「おいしいお酒のお礼に非番の交代以外ならなんでも言うこと聞いちゃいますよぉ。お昼の買い出しでも、稽古場の雑巾がけでもなんでも言って下さい」
藍染は顎に手を当てるとしばらく考えると雛森の胸に手を当てた。
「隊長?」
さっきまでまどろんだ目をしていた雛森は藍染の行動にキョトンとしている。
「雛森君のが見たいと言うのはダメかい?」
藍染は指先で服の上から的確に雛森の突起を撫でる。厚手の死霸装は感触が無かったが、雛森が口に手をやり声が漏れるのを防いだ。
「あの、酔ってますか?」
「どうだろうね」
「ずるいです」
「大人はずるいものさ」
「子ども扱いしないで下さい」
「そうは言っても僕にとっては雛森君は可愛い娘みたいなものだから」
「あ、ありがとうございます」
雛森は顔を伏せて藍染から顔を隠すが、声から照れているのがはっきりと解る。
藍染は雛森の死霸装の衿に手を入れる。雛森は身体を固くするだけで拒絶する様子はない。手が触れた肌は飲酒によって血の巡りがいいのかぽかぽかと暖かかった。
手のひらを雛森の左乳房の上に乗せて暖を取る。
「冷たっ」
雛森は小さく体を跳ねた。
「雛森君は暖かいね」
「はい……」
返事をする雛森の声は消えそうに小さく、意識する必要がないほどに心臓の脈動が伝わる。
藍染は雛森の顎に手を当てると、ゆっくりと自分の顔に近づける。雛森は藍染の膝に手を着いてその誘導に身を任せて目を閉じた。
藍染と雛森の唇が重なる。どちらともなく唇を開くと舌を絡み合わせる。
「んっ、あんっ」
舌を絡ませながらも藍染はしっかりと雛森の乳房を愛撫していた。
乳房を掬い、乳首を弾く。指で挟んでそのまま引っ張る。雛森の主張の少ない部位は一生懸命にそれに応えるように柔らかく変形する。
「隊長、藍染隊長ぉ」
自分の舌の主導権を藍染に明け渡した雛森は舌っ足らずな口調で藍染を呼ぶ。それに応えるように藍染は雛森の舌を啄むと優しく自分の口内へ誘い込んだ。
「んっ、あっ、あむっ」
口の中で舌を開放された雛森は藍染の舌に絡め直す。
「おやおや」
藍染は雛森の顎に当てていた手を首に回した。雛森は膝から手を離すと両手を藍染の首に回す。
唇を合わせていたのは一分も無かったが、雛森はこれ以上無いというくらいに赤面している。息も上がり、興奮しているのが解る。
藍染は雛森の死覇装の衿から腕を抜くと彼女の後頭部を包んで優しく床に寝かせる。藍染の手が袴の紐に掛かると体を引き離した。
「やっぱり辞めませんか?好きでもない人とこんなことをしても隊長が空しいだけです。」
藍染は雛森を見つめて何も言わない。
「それに初めてはクロちゃんって思ってたから心の準備が……」
そこまで言った雛森の唇を藍染は自分の唇で塞ぐと、これまでの紳士的な態度とは打って変わり、雛森の口内を貪るように執拗に責める。
雛森は苦しそうに顎を上げるが、後頭部を掴まれた雛森は簡単に引き戻されてしまう。唇を離された雛森の唇の周りにはどちらの物かわからないよだれが溢れていて、雛森は呆然として宙を見ていた。
瞳に光の無い隙に藍染は雛森の袴を下げる。呆けていた雛森は藍染の手が太ももに触れると首だけ起こして自分の下半身を見ると、観念したように黙って顔を下ろした。
「ほう」
袴を脱がせた藍染は雛森の下腹部を見て声を上げた。
最近女性死神の間で秘かに定着しているショーツが秘所を包んでいた。
ピンクの無地のショーツは股の部分にシミを作っている。
「脱がせるよ」
藍染は雛森の足を持ち上げた。手を離されても足を上げたままの雛森のショーツを下ろす。薄い茂みが顔を出した。
「処理はするのかい」
「……たまに」
茂みを撫でながら藍染は尋ねると、両手で顔を隠した雛森が絞り出すような小さな声で答えた。
「かわいい茂みだ」
雛森の股に顔を埋めた藍染はピチャピチャと音を立てて彼女の秘部を舐める。
「あっ、だめっ」
藍染の頭に手を置いて離そうとする雛森に藍染は舌で秘部を責めて抵抗する。
抵抗が弱くなると、藍染は舐める位置を少しずつ上げていく。袴の紐で閉じられていた広袖の衿を襟を開いた。
鼠経をつたい臍に到達する。雛森が身体をよじって舌を臍から離そうとするとあっさりと開放して今度は肋骨に舌を走らせて、そのまま小さな乳首を口に含むと、甘噛んだ。
「はぅっ」
噛まれた雛森が甘い悲鳴を漏らす。今度は逃げる様子はなく、むしろさくら色に染まる乳房ごと差し出すように突き出した。
「ああんっ」
今日一番の嬌声が部屋に響く。その声に本人が驚いたように口に手を当てる。
腕が退けられたことで雛森の顔が露わになる。目がトロンと落ちて涙目になり、鼻からは水を垂らして息の荒い雛森がそこにはいた。
「綺麗だ」
雛森の手を取った藍染は腕を彼女の耳の高さで絡み合わせた、
そこで藍染は雛森から普段嗅いだことのない蠱惑的な香りを感じた、
「珍しい香水だね」
「あっ、ら、乱菊さんが貸してくれたんです。その、初詣だから、クロちゃ…日番谷隊長も一緒だったので」
「そうかい」
藍染はそれを聞くと自然な動作で雛森と唇を合わせる。雛森は口を閉じていたが、舌でつつかれるとあっさり唇を緩めて藍染を迎え入れる。
唇を離した藍染は雛森と目を合わせる。視線が外に泳いでいた雛森は藍染と視線が合うとすぐに首を横に向けた。
藍染が絡ませていた右手の指を離して自分の袴の紐を器用に解く。膝をついていた藍染は袴を膝まで下ろすとそのままぺニスを雛森のヴァギナにゆっくりと挿入していく。
「痛っ」
「もしかして、初めてかい?」
「……そ、そうですっ」
「知っていたらもう少しムードを作ってあげられたんだけど。」
藍染が雛森の頭を撫でる。
「い、いえっ、気にしないでください」
涙を流す雛森は慌てて答え返す。藍染は雛森に身体を被せると腕を雛森の首に回した。
「動くよ」
藍染はゆっくりと腰を雛森に打ち付ける。
「あっ、あんっ、ふっ」
突かれるたびに雛森は甘い嬌声を上げる。ヴァギナは蜜に溢れ、藍染のピストンを手伝う。
藍染はピストンのリズムを上げる。雛森の鎖骨周りの肌は桃色に染まり、突き上げられるのに合わせて乳房が小さく揺れる。
ピストンのリズムが一層早くなる。藍染は雛森に密着させた。
「あぁ」
雛森の顔が緩む。藍染がペニスを引き抜くと雛森のヴァギナからは白濁した精液が垂れ落ちた。
「はあ、はあ、はあ」
腕を広げて呆然としている雛森は、胸で深く息をしていた。
◎
「隊長、やっぱりストーブを置きましょうよ」
藍染の膝を枕に仰向けに天井を見ていた雛森が声を上げる。汗で濡れた死覇装を脱いで藍染の羽織を肩から掛けていた。
火鉢の中の粗朶はおおよそ燃え尽き火柱も小さくなり、周囲の温度もどこか低くなった気がした、
「詰所にあるから僕はいらないと思うんだけど」
「やっぱり無いと寒いじゃないですか」
「雛森君はね」
藍染に頭を撫でられていた雛森は拗ねたように頬を膨らませる。しかし、撫でている藍染の手を振り払う気配はなく、甘えるように手のひらに頭を擦りつけている。
「しかし」
襖に視線を移した藍染は、撫でている方とは逆の手で眼鏡の位置を調整する。
「こんな風に君と会うことが増えるなら意見も聞かなくちゃいけないね」
藍染は視線を雛森に戻すといつもの様な穏やかな笑みを浮かべたが、その顔は悪戯を仕掛けているのが隠せていない。
「あーあ、」
雛森は声を出すと、両手を上げて藍染の腹にぶつける。藍染がその手を掴み目で返事を求めた。
「じゃあ、ストーブは隊の予算で買っちゃいますね」
「構わないよ」
撫でられていた雛森がおもむろに藍染の手を取ると、自分の首元に運ぶ。
「隊長はふんどしとか着けないんですか?」
「あんまり好きじゃなんだ。ふんどし。」
「でも、そのっ、寒くないんですか?」
「あんまり気にしたこと無いなぁ。でも雛森君が言うなら着けた方がいいかもしれないね」
藍染は少し考えるようなしぐさをすると、雛森につかまれたてを握り返しながら答えた。
口をもごもごさせていた雛森が緊張した面持ちで藍染を見る。
「あのっ、私が下着を買ったお店って男性用も売ってるんですよ。それでっ、もしよかったら隊長の分も買ってきましょうか?」
「じゃあ、お願いしようかな」
「はいっ」
藍染は火鉢に枝をくべると、そのまま雛森が眠るまで頭を撫でていた。
◎
「日番谷君、いる?」
十番隊の詰め所の執務室で書類を眺めていた十番隊隊長 日番谷 冬獅朗は視線を上げる。
「雛森、どうしたんだ?」
視線の先には手を後ろに回した雛森 桃が入口の扉の前に立っていた。
「乱菊さんに聞いたらここじゃないかって言われて。ダメだよ、無理しちゃ。隊長が休まないと他の隊員が気を使っちゃうんだから」
日番谷は小さなため息を吐く
「どうせ、明日からは仕事なんだ。一日くらい早くても問題ない」
雛森の視線が鋭くなる。
「それはシロくんだけでしょう! 他の隊員の見本がそれじゃダメだよ。しっかりと休むのも仕事なんだから」
日番谷は書類を引き出しにしまうと席を立った。そして入り口の襖に立っている雛森の前に立つ。
「日番谷隊長だ。で、お前はそんなことを言いに来たのか?」
雛森は首を横に振ると、後ろに隠していた茶色い紙袋を差し出す。日番谷が紙袋に目を落とした。
「俺にか?」
「うん」
日番谷は紙袋を受け取ると無造作に紙袋を開く。中には青いマフラーが入っていた。
「最近よくお買い物するお店で見かけて日番谷君に似合うと思って」
雛森は顔を赤らめる。
日番谷は相変わらずの仏頂面で紙袋を見ていたが、雛森のキラキラした視線に小さく息を吐くと、マフラーを首に巻いた。巻いたマフラーの端が斬魄刀に当たる。
「少し長いな」
「ごめんね。」
「まあいいさ」
日番谷はマフラーをもう一巻きして長さを調整する。
「……ありがとな」
顔を背けながら日番谷は言った。雛森の顔に笑顔が浮かぶ。
「どういたしまして」
「ここで乱菊を待つか?」
日番谷は雛森に尋ねた。
「ううん。愛染隊長に用事があるから詰め所に行ってみるよ」
「あいつも仕事かよ。お前も他の部隊の隊長に注意する前に自分とこの隊長を注意しろよ」
「日番谷君に渡してから行こうかなって思って」
雛森が肩を落とした。
「じゃあ私、行くね」
「ああ」
襖に雛森が手を掛けると十番隊副隊長 松本乱菊が顔を出す。
「やっほー。雛森、隊長にプレゼント渡せた? あら?」
室内の雰囲気の暗さに言葉が切れる。
「あ、乱菊さん、ありがとうございました。おかげで日番谷君に渡せました。それじゃ、私はこれで」
「あら?」
雛森は乱菊の隣をすり抜けて小走りで走っていった。乱菊が雛菊を見送る。
隊長室に乱菊が戻ると日番谷は再び書類に目を通している。
「隊長、雛森から何を貰ったんですか?」
「……」
日番谷は視線を書類に落としたまま脇に置いたマフラーを持ち上げる。
「かわいいじゃないですか。お礼言いました?」
「さあな」
日番谷が書類をめくる。
「今度でいいだろ」
「そう言ってなあなあになって結局言わないんですから」
ソファーに寝そべりながら乱菊が日番谷を注意する。
「そういえば気付きました?」
「何にだ?」
「あの子、お化粧してたんですよ。薄くですけど」
手を止めた日番谷が思いだそうと目を閉じる。
「してたか?」
「ちょっとぉ、それは無いんじゃないですか。そんなことやってたらあの子、離れちゃいますよ」
「そうだな」
日番谷は乱菊の話に気の抜けた返事をすると、新しい書類を引き出しから取り出した。
◎
隊首室の襖がノックされた。
「どうぞ」
雛森が襖を襦袢姿の愛染が机で本を読んでいた。
「やあ、半日ぶりだね」
穏やかな口調の愛染だがどこか親しげな雰囲気がある。
「あの、これっ」
雛森が包装された何かを差し出した。
「僕にかい?」
雛森が頷く。愛染は受け取ると包装を解く。中には黒い下着が入っていた。
「忘れられないうちに渡そうと思って」
もじもじしながら顔を赤くする雛森が言った。
「昨日の今日どころか、その日のうちに、ありがとう。でもよく空いてたね。」
「新年の初売りでお店が空いてたんです。」
「そんなに急がなくてもよかったのに」
「気にしないでください。おかげで良い買い物が出来ました」
雛森は笑いながら答えた。
「それじゃ、僕もお礼しないといけないね」
愛染は雛森の手を取る。
「あ、」
「おいで」
引き寄せる愛染の手に抗うことなく雛森は隊首室に入ると、愛染は襖を閉じた。
◎
「愛染隊長も悪いお人や」
愛染の後ろに立った護廷十三隊三番隊隊長 その独特の口調で煽る様に言った。
「日番谷隊長が雛森ちゃんを大事にしてるのに手を出しちゃうなんて」
「合意の上だから問題ないよ」
後ろを見ることなく愛染が答えた。二人がいるのは五番隊詰め所の中庭。隊員が皆隊舎に引き上げた詰め所はひどく静かで三日月が愛染を照らす。軒に立つギンは月光を浴びず、顔色は窺えない。
「お遊びはほどほどにしておかんと総隊長からお小言貰いますよ」
「おや、意外だ。お前の事だから面白がると思っていたよ」
「ええ、おもろいですよ。ただ、ちょっと趣味じゃないってだけです。雛森副隊長も仲間に加えるんです?」
「どうして無能を加える必要がある?」
「じゃあ、やっぱり捨てはるんですか?」
「いや、いづれ彼女はコマとして我々の為に動いてもらう。」
愛染は眼鏡を外すと普段からは想像できない冷めた目をしていた。と。
ぼちぼち書いてきます。