※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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盆休みが終わってしまった……

恨めしや、憎らしや、残業時間ェ……


出撃! 鎮守府正面海域 前編

「♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪♪♪~♪♪♪♪♪~」

 

戦治郎が鼻歌を歌いながら海の上を駆ける、その姿は最初に会ったときの軍服姿とは違い黒いノースリーブシャツに黒いバイカーレザーパンツ、それに改造軍用ブーツと黒ずくめである

 

今、漣達は鎮守府を発ち鎮守府の正面に広がる海の上を移動していた

 

現在の陣形は単縦陣、旗艦が漣の為漣を先頭に戦治郎、大五郎が続いている形になっているが違和感が半端じゃない、本当に漣が先頭でいいのだろうかとすら思う

 

「しっかし、ここは何処の海なんでしょう? 思ったより広い感じがしませんし~、どこかの湾の中とか?」

 

自分の中の違和感をちょっとでも和らげようと思って、今自分達が移動している海の事を戦治郎に聞いてみた

 

「ん? ここは有明海だ、因みにウチの鎮守府は佐賀県にあんぞ」

 

佐賀……、確か長崎と福岡の間にある県だったか……、しかし長崎には佐世保鎮守府が無かっただろうか? 佐世保鎮守府は規模が大きかったはずだからこのあたりも管轄に入っていそうなものなのだが……、そう考えてる中戦治郎が言葉を続ける

 

「本来ならここは佐世保の管轄なんだろうが、あそこは規模がでけぇからでかい作戦とかにもよく引っ張られるわけだ、そうなるとここの警備や防衛は佐世保の予備の戦力でやる事になるんだが、佐世保の予備の戦力だけじゃ不安だって近隣の住民達が騒いだみてぇでな、どうするかと上が考えてるところで都合よく俺らが登場したんだわ、そんでここに鎮守府建てるからそこの提督やってくれって頼まれたってわけよ」

 

笑いながら答える、なるほど、ここは佐世保鎮守府の予備戦力の補強みたいなものだったのか、何か佐世保の予備どころか主力すら喰らい尽くしかねないような戦力があるような気がするが……

 

「まあ、俺らもいい加減本拠地らしい本拠地欲しかったからOK出したわけだ、ただ提督業がどんなもんか知らんって言ったら変装して江田島の軍学行くハメになったんだがな、鈴谷達と会ったのはその時だ」

 

「本拠地らしい本拠地ってどういう事です? 提督になる前は何やってたんでしょう?」

 

戦治郎に今の会話で気になった点を質問する、この際だから聞けるもんはガンガン聞いていこう

 

「ああ、提督なる前は色んなとこ駆け回って海賊まがいの事やってたな、深海棲艦相手にな、ワ級襲ってボッコボコにして物資奪ったり、補給拠点襲撃して資源や資材強奪したりな、その最中に摩耶とかドロップ艦連中助けたりしたらついてくるようになったりしたっけなぁ……、陰ながら輸送任務の手伝いしたり海域解放の為に来た艦娘と戦ってる深海棲艦を思いっきり横殴りしたり、ブラ鎮所属の艦娘から助けを求められたから助けてあげたりとか、ホント色々やったわ~……」

 

やだ、この人達自由過ぎ

 

「こんな事やってたのとあっちの都合がうまく噛み合った結果スカウトされたって感じだな、腕のタトゥーのおかげでカスガダマ沖で共同戦線張った大本営所属の長門達に覚えててもらえてたのもでけぇ」

 

大本営の長門って、確か元帥の秘書艦じゃなかったか? この人はそんな人とパイプ持ってるのか……、しかし……

 

「何か、鎮守府の案内してるときより色々と教えてくれますね~、漣が聞くタイミング逃したのが大きいかもしれませんが……」

 

「ああ~……、確かに何か聞きたそうにはしてたな、ホント悉くタイミング逃していたが……、まあ、食堂でも言ったがホントは明日夕張達来てから色々教えるつもりだったかんな、そこはホントすまん、こっちの配慮が足りんかった」

 

そう言って頭を下げる戦治郎、ああ、そういう事されるともうこれ以上言えなくなるじゃないか……

 

「いえ、何か考えがあってそうしていたわけなんですし、それにこれが終わったらちゃんと教えてくれるんですよね? だったらこっちももう気にしませんから顔を上げて下さい、ほらほら~」

 

そう言って戦治郎の頭を上げさせようとする漣、ダメだ、全然上がる気配がしねぇ

 

「ありがとよ、漣……、っとお喋りはここらで終わりだ」

 

そう言うなり右腕を水平に上げる戦治郎、一体何が始まるというのだろうか

 

「鷲四郎、偵察頼む」

 

戦治郎がそう告げると、彼の右肩に黒い塊が出現する

 

「ちょっ!! 何ですかこれ?! って鷲四郎?」

 

確か執務室で戦治郎が言っていた名前だ、どういう事だと思っていたら巨大過ぎて視界に納まり切れていない大五郎の事を思い出す、大五郎は戦治郎のペットで生まれ変わったら戦治郎の艤装になっていたそうだ、もしかして鷲四郎とは……

 

漣が考えてる最中に、黒い塊に変化が起きる

 

まず目が1つ中央に出てきた、その後口、尻尾、2本の足が生えてきて戦治郎の腕の上を走りだす、そして勢いが付いたところで翼が出てきて空に飛び立った、そのタイミングに合わせて戦治郎がいつの間に持っていた爆雷のようなものを上に投げる、それを空中で2本の足を使って掴みこちらへ向かって飛んでくる

 

「漣は初めて見るだろうから紹介しとく、俺の艦載機になっちまった鷲四郎だ」

 

「どうも初めましてだな、嬢ちゃん、俺は鷲四郎ってんだ、よろしくな」

 

どういう原理か分からないが、空中に停滞しながら挨拶をしてくる鷲四郎

 

「嬢ちゃんって、漣には漣っていう名前があります! というか、この子もペットなんですか?」

 

「ペット云々は大五郎から聞いたのか?」

 

「ごめんよご主人~、もう教えてるもんだと思って言っちゃっただぁよぉ……」

 

そう言ってしょんぼりする大五郎、工廠で話をしたりしていたせいか最初見たときみたいに恐怖感みたいなのは感じなくなった、むしろちょっと可愛いかも?

 

「気にすんな大五郎、どうせ今日教える事になったかんな、で、鷲四郎の事だが漣が言う通り俺のペットで元は雄の白頭鷲だ、でも何でこの艦載機になったんだろうな? 戦艦水鬼だったらこの艦載機運用出来ねぇはずなんだがな……? つか何で俺使えてんだ?」

 

戦治郎が分からない事が漣に分かるわけがない、つか鷲がペットってすげぇ……、他にもヒグマだとか虎も飼ってたみたいだし、どんだけ生活に余裕あったんだ……

 

「まあいいや、とりあえず鷲四郎、偵察してきてくれ」

 

「あいよ旦那、んじゃひとっ飛びしてきますかねぇ!」

 

そう言い残し鷲四郎は空の彼方へと飛んで行った、この子は戦治郎の事旦那呼びなのね

 

鷲四郎からの通信が来るまでの間に、聞いた事といえば太郎丸がジャーマンシェパードだった事と弥七がベンガルトラだった事くらいだった

 

そんな事を話していたら、鷲四郎から通信が来る

 

「旦那、1時の方向にちっこいのが1匹いるぜ、9時の方向に移動してやがる。距離はそこからそう遠くないがどうする?」

 

どうやら仲間からはぐれた駆逐艦だろう、結構近いとこまで来ているようだ

 

ここが何処かを考えたら、これはかなり不味いのではなかろうか? どう考えても防衛ライン突破してね? 何というザル警備、何やってんだ佐世保鎮守府!

 

「OK分かった、鷲四郎は戻ってきてくれ、んで漣、おめぇの腕前見てぇから1vs1でやってきてくれ」

 

「ふぁっ?! 一緒に戦ってくれないんですか!?」

 

何言い出すんだこの人

 

「さっきも言ったがおめぇの実力を見てみてぇんだ、これ以上はやばいって思ったら俺が何とかするさ、なぁに、おめぇならやれるさ!」

 

何か言いくるめられてるような気もしないでもないが、言ってる事は一理ある、ここでいいところを見せておけば後々主力に抜擢してもらえるかもしれないし、ご褒美として戦治郎からもっと色んな事を詳しく教えてもらえるかもしれない

 

「分かりました、そういう事なら本気でいっちゃいますよ~! もし勝ったらご褒美よろですよ~!」

 

「わ~ったわ~った、そいじゃ行ってこい!」

 

「そいじゃやるよ~! ほいさっさ~!」

 

そう言って駆け出す漣、その後を追う戦治郎と大五郎、漣との距離が離れていくがぶっちゃけ問題ない、実は既に相手は大五郎の射程内にいるのだから……

 

漣の方でも相手を感知したようで、漣は砲撃の準備に移る

 

相手は駆逐ハ級の様だ、まだ漣に気付いた様子もなく移動を続けている、漣達は今南を向いているわけだからそこから9時方向となると……、このままだと熊本が襲われるかもしれない、それだけは避けねばならない

 

「徹底的にやっちゃいますのねっ! これでも喰らえっ!」

 

そう言って主砲を発射するもハ級の目の前に着弾、ダメージを与えるに至らなかった

 

初出撃に加え、単独での戦闘という事もあって無意識のうちに緊張していたのだろう、思ったところに砲弾が飛んでくれなかった

 

しまった! そう思ってしまうと漣の中に焦りがその鎌首をもたげてくる、相手がこちらに気付いていないというアドバンテージを無駄にしたばかりか、そのせいで相手に気付かれてしまった、そうなると相手も砲撃してくるはず! 回避しなくては! そう思えば思うほど身体が鉛のように重くなってくる、不味い、本当に不味い! 焦りがどんどん大きくなっていく、動きも止まってしまっている、どうすれば、どうしたら……、そう考えてると

 

「頑張れ頑張れ頑張れ出来る出来る出来る!!!もっと頑張れ絶対出来る!!!いけるいけるいける!!!諦めんなよっ!!!もっと熱くなれよぉぉぉーーー!!!!!」

 

「漣~! 頑張るだぁよ~! おら達が付いてるんだ~! 焦らなくてもいいんだぁよ~!」

 

戦治郎達が大声で漣に声援を送っているではないか、特に戦治郎の声援は何かに憑りつかれたかのように熱いものだった

 

何やってんだよあの人! などと思うものの先程の身体の重さが嘘だったかのように無くなっている、それどころか身体が軽い、これならどんな砲撃でも避けられそうだ、そう思うほどにだ

 

漣の緊張と焦りを見抜いてこうやって声援を送ってくれているのならば、戦治郎達に感謝しなければならない、そうなるとお礼はしっかりとしないといけない、ならばこの戦いに勝たねば、声援のお礼はこの戦いでの勝利、それしかないだろう!

 

そう考えると闘志が燃え上がってくる、やる気が漲ってくる! この戦い、負けられない!負けたくない!負ける気がしない!!!

 

そして漣が動き出す、ハ級との距離をガンガン詰めていく

 

漣が主砲を撃った事によりハ級が漣の存在に気付き、唸り声を上げて威嚇してくるが漣が退く様子もないので主砲を撃ってくる

 

「よっと! そんな弾当たりません……よっと!」

 

絶妙な回避を決め、お返しとばかりに漣が再度主砲を撃つ、これはしっかりとハ級を捉え着弾、被弾箇所から黒煙が立ち上がってる様子を見る限り、どうやら相手は中破したようだがまだまだやる気の様で主砲を撃ってくる、が、照準が上手く定まらないのか砲弾は明後日の方角へと飛んでいき漣に被害が出る事は無かった

 

これはチャンスとばかりに漣は距離を詰め、魚雷発射管をハ級へと向ける

 

「これで……、トドメだぁっ!!!」

 

魚雷発射管から飛び出した魚雷は真っ直ぐハ級に向かって進んでいく、回避行動をとろうにも身体をうまく動かす事も叶わない

 

そしてハ級がいた場所で盛大に水柱が上がる、どうやら魚雷は直撃したようだ

 

水柱が消えた後には、さっきまでハ級だったものが静かに沈んでいく姿が確認された

 

駆逐艦漣と駆逐ハ級の勝負、それは漣の完全勝利という形で幕を閉じたのであった

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