悟と一緒に大破していた長門をストレッチャーに乗せた後
「中破以上の連中はこっちで面倒見っからよぉ、光太郎は蒼龍と綾波の治療やっといてくれよぉ、そのくらいの傷ならおめぇでも何とか出来っだろうしよぉ。頼んだぜ元ハイパーさんよぉ」
悟のこの一言により、俺はこの場で蒼龍と綾波の治療を行う事となった。まあ医務室も収容人数の都合とかあるから仕方ないか……
ストレッチャーを押しながら医務室に向かう悟と、リアカーを引っ張りながら工廠に向かうシゲと護を見送った後、俺は悟に言われた通り蒼龍さんと綾波さんの治療を始める為に2人の方を向いたのだが……
「さてと……、それじゃあ蒼龍さん達の治療を始めますか……ってどうしたの?そんな難しい顔して何か考え事?」
思案顔でうんうんと呻る蒼龍さんを見て思わずそう尋ねてしまった、まあ何について考えていたのかは何となく予想がついてるんだけどね……
「あっすみません!さっきの防空棲姫が言っていた事が気になって……」
やっぱりな……、護の奴この世界の人が知らない事を知ってますよと言わんばかりに喋っていたからなぁ……気になるのも仕方ないな……
「その話については治療しながらでいいかな?ついでに飛龍さんが聞こうとしていた事についても教えてあげる、それでいいかな?」
俺がそう言うと2人は驚き、顔を見合わせた後にこちらに向き直り静かに頷いた
「あ~……、どうせだから木曾さんと摩耶さんは綾波さんの方をやってあげて。前に教えた事をちゃんと実践出来るか確認したいしね」
「お、おう……、あたしらだけで実践か~……ちょっと緊張するな……」
「不安なのか?……とは言ったものの俺自身が正直上手く出来るか不安なんだがな……」
「分からない事があったらすぐ聞いてくれていいからね、それと阿武隈さんは俺がやってるのよく見てて……ってごめん!2人に了承取らずに勝手に話進めちゃって……」
怪我をしている2人のOKも貰わずについ思い付きで発言してしまった……
「いえ、お気になさらないで下さい。むしろ綾波達の方こそ唐突に押しかけて来た上に治療までして頂いて……その、ごめんなさい……」
「そのくらいで物凄く貴重そうな情報が手に入るって考えたら、私はOKかな~?って思っちゃった……あはは~……」
形はどうあれ2人の承諾は得たので、俺と阿武隈さんで蒼龍さんの、木曾さんと摩耶さんで綾波さんの治療を開始する
俺は治療をしながら俺達が何者なのか、何をしようとしているのかを全部2人に打ち明けた。そういう約束だったからね
「転生個体……ですか……」
「こことは違う世界で死んだ人が生まれ変わって深海棲艦になるって……」
「しかも転生個体は普通の深海棲艦より明らかに強いみたいなんだ、俺達は1度ラリ子って呼んでいるノーマルなル級の転生個体と戦って艦隊を半壊させられたからな……」
「あの時は死ぬかと思ったな……」
「実際木曾は死にかけてたよな……」
あの時の事を思い出して渋い表情になる摩耶さんと木曾さん、蒼龍さんと綾波さんは俺からもらった情報を頭の中で整理しているようだ
「さっきの改二の情報も、光太郎さん達がいた世界にあるゲームの情報か~……、上の人に信じてもらえるかな~?」
「証拠なら今の俺の姿が証明してくれてるんだがな」
蒼龍さんの言葉を聞いてニヤリと笑う木曾さん、っとその時通信機から声が聞こえた
『司、服を仕立ててもらってもいいか?』
『おっおっ?空さんですかい?一体どんな服をご所望なんでしょ?』
『飛龍、蒼龍、利根、妙高、綾波の改二の衣装だ』
「え?マジで?」
驚きのあまり思わず声を出してしまった、通信機を付けている他の3人も驚きの表情のまま固まっている
『光太郎か、マジだ。全員改二改修可能なところまで練度がいっているようだからな、修理ついでに改修しておこうと思ったんだ』
うわぁ……、サービス満点だなこりゃ……。って俺通信のスイッチ入れっぱなしだったのか……恥ずかしい……
『長門の改修は後回しッスね、設計図足りないッスから。それにまだ動ける状態じゃなさそうッスからすぐ動けそうな利根を優先したッス』
護の発言は、恐らく工廠組の総意なのだろうな……
『そう言う事だ、それで司の方はいけそうか?』
『OKOK!この俺様が皆が惚れ惚れしちゃったりしそうな超素晴らしい奴仕立て上げてみせますよっと!んじゃ早速作業入りま~す!ついでに長門のまで仕上げておきますね~』
『すまんな、助かる』
空の言葉で切れる通信、この娘達が所属してる鎮守府か泊地に戻ったら、そこの提督さんびっくりするだろうな~……
そんな事を考えていると、ふととある疑問が頭に浮かんだ
「なんか通信が入ってたみたいですけど、何かあったんですか?そこの3人すっごく驚いてますけど……」
俺達の様子を見ていた蒼龍さんが不思議そうに聞いてくる
「蒼龍さん達の艤装を改二改修するって言ってたよ、長門さんのが諸事情で改二改修出来ないみたいだけどね……」
俺の話を聞いた2人が驚愕している、休む為に訪れた場所で改二改修されるって言われたらそうなってしまうよね……
2人が驚いている間に治療が終わったので、俺は先程頭に浮かんだ疑問を2人にぶつけてみる事にした
「そう言えば、蒼龍さん達は軍属なんだよね?何処の所属なんだい?それとこのあたりに来てたのは任務か何か?」
「……あっごめんなさい!えっと私達は横須賀鎮守府内にある大本営の直属の艦隊なんです、このあたりに来たのは作戦の関係なので詳しい事は言えませんが……」
俺に声をかけられてハッとしてから答える蒼龍さん、って大本営直属だってっ?!
これが本当なら大きなチャンスになるかもしれない、神風さんの泊地の件を報告してもらえるかもしれないし、マダガスカルの件を実際に見せる事が出来れば戦争終結が近づくのではないだろうか?
「大本営直属……、どこかで聞いたような……?」
「そうだ!大本営直属って言ったら確かz「すみません、遅くなりました!」おっ丁度いいとこに来たなっ!」
木曾さんと摩耶さんが話をしているところに、割って入るように声を上げてこちらへ駆け寄って来る影が2つ、通と神通さんである
「「じ、神通さんっ!?」」
「さっきの通信を聞いてもしやと思いましたが……、お久しぶりですねお2人共」
神通さんの姿を見て驚く2人に、優しく声を掛ける神通さん。そう言えば神通さんも大本営直属の人だったな
俺がそんな事を考えていると、蒼龍さんが瞳に涙を浮かべながら神通さんに抱き着いていた
「ちょっと前にドイツの方で沈んだって聞いた時は頭の中真っ白になったんだよー!ホントに心配させてー!」
このやり取りを見ていると、どうやらこの2人は旧知の仲なのだろう。蒼龍さんの方は神通さんとの再会を大いに喜んでいるようだが、神通さんの方は少々浮かない顔をしている。まあ仕方ないよなぁ……
「蒼龍さん……、すみません……その報告は本当なんです……」
「えっそれってどういう……え……」
そう言って蒼龍さんから離れた神通さんの身体に黒い何かが纏わりついていく……、その黒い物体は神通さんを完全に包み込んだ後に霧散して、その後には軽巡棲姫の姿になった神通さんが佇んでいた
激しく混乱する蒼龍さんを何とか落ち着かせて事情を説明する、蒼龍さんの表情は未だに目の前で起きた出来事を受け入れられないでいるようだった……。そんな蒼龍さんを見守る神通さんもとても辛そうだ……
「確かに神通さんは1度沈み軽巡棲姫となりましたが、今は記憶もしっかりと取り戻しています。この方は紛れもなく貴方方が知っている神通さんなんです」
神通さんを助け出した張本人である通が蒼龍さんに話しかける、多分神通さんが辛い表情しているのに耐え切れなくなったんだろう
「皆さんは長い間苦楽を共にしてきた仲間でしたから、嘘をついて本当の事を隠したままにしておくのは皆さんを騙しているようでとても心苦しくて……、ですから私は本当の事を話す事にしました、皆さんにはどうしても知っておいて欲しかったから……」
「……そっか、あれは本当の事だったんだ……。ごめんね、驚いたりしちゃって……、そしてありがとう、本当の事を話してくれて……」
蒼龍さんはそう言って神通さんを優しく抱きしめた、蒼龍さんに抱きしめられた神通さんは姿を戻して涙を流し始めた……
そんな感動シーンをぶち壊しにするのは、通信機から聞こえる声
『東の方からこの拠点に例の異形が向かって来てます!迎撃出来る方は速やかに出撃して下さいっ!!!』
哨戒機を飛ばしていた翔からの通信である、あの異形がこっちに来てる?何が目的だ?
そう思って東の方を見てみれば、プリンシペ島で見たあの異形の死体と同じような何かが本当にこちらに向かって来ていたのだ
「あれはっ!先程綾波達を襲ってきた奴ですっ!」
俺の視線を目で追った綾波さんが叫ぶ、あの娘達はあいつらに襲われてあんな事になっていたのか……っ!
「俺があいつらの足止めをしてるから、皆は艤装をっ!」
俺はそう叫び、海に飛び出して異形達の方へ向かって駆け出すのであった