「あれか……っ!」
俺は海上を疾走し、件の異形達を視認出来る位置まで接近していた
「これは酷いですね……」
「もしあの時、あの誘いに乗っていたら私もあの中にいたのかもしれない……、そう考えると……」
俺が海に飛び出した後同じくすぐに海に飛び出し俺の後を追って来た通と、通に抱きかかえられた神通が思い思いに言葉を口にする
異形達は駆逐や軽巡、重巡ばかり12人、片腕だけ移植されたものから、身体の6割くらいを侵食されたもの、複数個所移植されているものと様々なタイプが揃っていた
「死にたくない……、死にたくない……」
「タスケテたすけてタスケテタスケテ助けてタスケテタスケテ……」
「いや……やめて……いやぁ……」
彼女達から助けを……救いを求める声が聞こえる……、出来るならば助けてあげたい、助けてあげたいのだが……
「……駄目ですね、朝日影も月影も反応していません……」
「私の夕日影も全く反応していません……、恐らくあの娘達はもう……」
助けられない、か……、コアの暴走とは訳が違うと聞いてはいたが……、輝にハンマーで頭を殴られたような衝撃が走る
「オベロニウムもそこまで万能というわけじゃないんだな……」
俺はポツリと呟く、その呟きは2人にも聞こえていたらしく2人共沈痛な表情を浮かべていた
さて、俺は今非常に残酷な選択を迫られる事となった。俺達に助けを求める彼女達をこの手で沈めるか否かである……
「やりましょう光太郎さん、彼女達をこのまま放置してしまえば望さんと同じように件の提督の駒としていいように利用され、艦娘と深海棲艦に今よりも遥かに多くの犠牲者が出てしまいます。それに使えなくなったと判断されれば即座に切り捨てられて拒絶反応で苦しんで死んでいくだけです……そうなるくらいなら……っ!」
通がそう言うと同時に、仮面から口布状の追加パーツがガシャリと言う音と共に出現した。もしかしたらこの口布みたいなのは通の怒りに反応して出てくるのか?ってそんな事考えてる場合じゃないな……
「私も通さんに賛成です、先程蒼龍さん達が襲われたそうですから、もしかしたら作戦行動中の艦隊を襲撃して拉致、移植手術の素材にしている可能性も考えられます。そうなると負の連鎖が続いてしまいますから、今ここでそれを断ち切るべきだと思います」
……2人の言う通りだな、助けてあげたいけど俺達には助けてあげる手段がない……、だからと言って放置したらその被害は増すばかり……。可哀想ではあるがやるしかないようだ……っ!
『あ~光太郎達よぉ、ちょっといいかぁ?』
俺が決意を固めたところで悟から通信が入る、えぇいこんな時に何の用だっ!!!
『もしやるんだったらよぉ、1人生きたまま攫って来てくんねぇかぁ?血液のサンプルが欲しいんだわぁ。死体のはとてもじゃねぇが使いもんにならなかったからなぁ』
そう言えばまだ中途半端な形態変化の原因探ってるんだったな……、神風さんも移植手術の事は知ってても、これについてはよく分からないって言ってたからな……
そうなると一体誰を攫うべきか……、そんな事を考えながら改めて彼女達の方を見回すと……
「……あの娘とかいいかもしれないな……」
俺の目に留まったのは、右腕だけを移植されている駆逐艦だった。血液サンプルを採取するなら少しは侵食している必要ありそうだからね、この娘の場合肘よりちょっと先の部分までで侵食が止まっていたので丁度いいかもしれない
「よし、これ以上被害を増やさない為にも……彼女達の為にも……、2人共、やるよ!」
「「了解っ!」」
俺の号令に合わせて3人が一斉に動き出す
「悟のお使いの件は俺に任せてくれ、その間に2人には悪いけど……」
「大丈夫です、もう覚悟は出来ていますから!」
「今更ですよ光太郎さん、そもそも私達が沈める事を勧めましたからね」
俺が悟の件を引き受ける事を2人に告げると、2人は快く承諾してくれた。2人の手を汚すのは気が引けるが、2人は既に覚悟を決めていると言うので通の言う通り今更なのだろう
「ありがとう、2人共……。それじゃあちょっと行って来る!」
俺はこう言って覚悟を決め、ターゲットの駆逐艦に向かって駆け出す
「何だあいつ……っ!なんて速s……いやいやいやいくら何でも速過ぎるd……って待て待て待て!!!まだ加速するのかっ!!!」
ターゲットの子が物凄く驚いてる、だがそんな事気にしている暇はない。俺は更に加速し砲撃の狙いを定めにくくする為にジグザグに走る、そして敵陣に突っ込むと彼女達の間を高速ですり抜けながらターゲットの子へと近づく……、そして……
「確保っ!!!」
「なっ!何だお前っ!私をどうするつもりだっ!?」
ターゲットを捕まえると急いで敵陣から離脱する、捕まったその娘は必死にもがき俺の手から逃れようとするが、生憎こっちも君を逃がすわけにはいかないからね、しっかりと拘束する為に俺はその娘を両腕で抱きしめる
「ちょっ!?へ、変なところを触るんじゃないっ!!!」
そう言って彼女は余計暴れ出すが、俺一応戦艦に分類されてるからその程度じゃ俺の両腕からは逃れられないぞっと
「悪ぃ、遅くなったっ!」
「光太郎さん、大丈夫かっ!?」
「その娘は……、さっき通信で頼まれてた娘ですか?」
敵陣からかなり離れたところで摩耶さん達と合流、阿武隈さんにこの娘を託して木曾さんと摩耶さん、そして何故か付いて来た蒼龍さんと綾波さんと共に通達のところに戻って戦闘を開始した
蒼龍さんも綾波さんも改二になっており、この戦いで自身の戦闘能力が格段に上がっている事を実感出来たと言っていたけど……
「貴方達の戦い方ってどうなってるの……?皆敵陣に突っ込んでバッサバッサと敵を斬り捨てたり、放水で敵を真っ二つにするとか……、摩耶も摩耶であの距離から砲弾を撃ち落としたりとかしてたし……、私さっきからずっと混乱しっぱなしなんだけど……?」
「通さんに至っては分身してましたよね……?光太郎さんは残像が出るくらいの速さで戦っていましたし……、もしかして転生個体と言うのはこれほどまでに強いのですか……?」
戦闘終了後、阿武隈さんのところで戻っている最中に大本営組の2人がこんな事を言ってきた
その……、何かごめんね蒼龍さん……、俺達いつもこんな調子なんだよ……。戦治郎とか空とか加わったらもっと酷い事になるけどね……
転生個体の件はその通りなんだよな~……、さっき話したラリ子の件とか詳細教えたら絶対驚くだろうな……。って俺から残像出てたって本当なのか?
「皆さんおかえりなさい、それであの娘達は……」
そんな事を考えていたら阿武隈さん達がいるところに到着したらしく阿武隈さんが俺達を迎えてくれた
「残ったのはその子だけだね、オベロニウムが反応していなかったから多分救出は無理だと判断したんだ……」
「そうですか……」
そう言って阿武隈さんは俯いてしまった。この件の落とし前は件の提督につけてもらわないといけないな……
「オベロニウム?救出?一体何の話だっ!?それに私だけ残して一体何をする気なんだっ?!答えろお前達っ!」
攫ってきた娘が話に加わって来る、この娘にはきちんと事情を伝えて協力してもらわないといけないな……
「何をするって、ウチのお医者様がお前達の血が欲しいって言ってたんだよ」
摩耶……、その説明だと……、あぁもう、明らかに怖がってるじゃないか……
「ちょっといいかな?こちらの事情を話す前に聞いておきたいんだけど、君は神風さんって知ってるかい?」
「神風だとっ!?まさかお前達は……っ!」
「俺達は神風さんにお願いされてね、君達を助けに来たんだ」
俺のこの言葉を聞いたこの娘、睦月型駆逐艦8番艦の長月は心から安心したのかその瞳から大粒の涙を流し始める
「光太郎さん、この娘達を助けに来たってどう言う事なんですか?」
「その話、もう少し詳しく聞かせてもらってもいいですか?」
そして、大本営直属の2人も真剣な表情でこの件の詳細を尋ねてきてくれたのだった