「深海棲艦の穏健派ですか……、まさか深海棲艦にもそのような考えを持つ個体がいるなんて……」
「何と言う事じゃ……、もしもこの事を知らずに吾輩達が作戦を実行しておれば、戦争が泥沼化しておったかもしれんのじゃな……」
俺が大本営組に穏健派の存在について説明し終えると、妙高さんと利根さんがそれぞれ感想を口にしていた
俺が彼女達に説明している間に、空は長門の艤装の修理があるからと言ってシゲと護を連れて工廠に戻り、阿武隈さんは長月さんの事が心配と言う事で医務室に向かい、剛さんと姉様と翔は戦治郎を部屋へと連れて行き、摩耶さんと木曾さんは先程の戦闘で疲れたからと言って自室に戻ったので、この場には俺と大本営組に通と神通さん、神風さんの計9人が残っていた
「それだけならまだしも、変な深海棲艦が艦娘と深海棲艦の両方に襲い掛かって来るって……、そうなったら作戦どころじゃなくなっちゃうわね……」
「その変な深海棲艦は、もしかしたら光太郎さん達と同じ転生個体の可能性があるとか……。確か転生個体って普通の深海棲艦より強いですよね?もしそんなのと戦う事になってたら、私達無事でいられなかっただろうな~……」
二航戦の2人は件のヤンキー共の事が気になったようだ、特に蒼龍さんはさっき俺達から転生個体について聞いていたのと、俺達と一緒に戦った時に実際に見たものから如何に転生個体が危険かを理解してくれていたようだ
「こういう理由があって泊地の件と並行して、マダガスカルの件も何とかしようとしてたところだったんだよ。マダガスカルの方は泊地の方よりも時間的な余裕はあるんだけど、だからと言って泊地の方を解決してから向かうなんて事やってたら、マダガスカルが陥落してしまう恐れがあるからね」
「その作戦の準備をしている最中に、このような事態になってしまいましたからね……。早く何とかしないと泊地の方もマダガスカルの方も間に合わなくなりそうです……」
通の言葉を聞いた大本営組が気まずそうな顔をする、彼女達は何も知らずにこの拠点に来たんだし、放っておいたらさっきの異形の娘達に全員沈められていたかもしれない、これは単なる事故であって彼女達に落ち度はないので気にするべきではないだろう、少なくとも俺はそう思っている
「その為にも、早く戦治郎さんを立ち直らせないといけませんね……。確か戦治郎さんと付き合いが長い方なら分かると悟さんは仰っていましたが……」
神通さんが話を切り出す、あいつと付き合いが長いとなると……事情を知っているだろう悟を除けば俺、空、輝の3人が該当するのだろう。しかしこの3人の中で最も付き合いが長い空でさえ考え込んでいた……、本当に俺達なら分かる事なのだろうか……?
「先輩の容姿が長門さんそっくりと言うのは長門屋のメンバーなら分かる事なので除外するべきでしょうか?」
「いや、容姿の話が出た時に俺は何か引っかかる感じがしたからな、多分容姿の件も関係してるかもしれない」
通の言葉を即座に否定する俺、戦治郎の容姿の話になった時に感じた引っかかり……これが一体何を意味するのか正直今の状態じゃ分からない……、けどきっとこの件の解決の糸口になるだろうと心の中で確信していた
「戦治郎さんの生前の姿は長門さんそっくりだったと……、う~ん……もしかしたら戦治郎さんのお父さんかお母さんも長門さんとそっくりだったとか……?」
神風さんがそう言った時、また何かが引っかかる感じがした……、しかしそれは違うような気がするんだよな……。戦治郎のお父さんの姿は良く知っているから言えるんだけど、あの人に長門の要素は髪の毛の断面の短軸の半分ほどもない
「そう言えば、悟さんのヒントを聞いた後空さんが時々飛龍の事見てたけど、あれって何か関係あるのかな?」
「えっ何でっ?!何で空さんが私の方見てたのっ!?もしかして空さんって私に気があるとか!?」
「それはないですね、空さんは翔鶴一筋でしたから。もし翔鶴を不慮の事故だったとしても沈めてしまった鎮守府若しくは泊地があると聞いたら、翔鶴を沈めた深海棲艦の拠点と一緒にその鎮守府若しくは泊地も滅ぼしてしまいかねないくらい翔鶴が大好きでしたから……」
蒼龍さんがふと思った事を口に出すと、それを聞いた飛龍が騒ぎ始める。しかしそれも通の言葉を聞くなり鎮静化、それどころか表情が引きつっていた。まあ空の翔鶴への重すぎる愛の事を聞けばそうなるだろうな……
「少なくとも、戦治郎は当然として幼馴染連中は皆飛龍に対してそういう感情持つ事は無いだろうな~……」
俺はボソリと呟いたのだが、どうやらそれが飛龍の耳に届いたようで物凄い剣幕で俺に噛み付いて来た
「何でですかっ!!!皆揃ってその気が無いってっ!!!私みたいにいい女って早々いないはずでしょうがっ!!?」
そう言って科を作る飛龍さん、確かに飛龍さんは可愛らしいとは思うよ?でもどうしても……、そこまで考えたところである言葉が俺の頭の中に響いた
――この間親戚の集まりに参加した時、戦君がおじさん達にお母さんそっくりになったな~って言われてたんだ~。私はそれを聞いててとっても不思議に思ってたよ、戦君とお母さん、全然似てないのに~って
この後俺がツッコみ入れたんだったな……、何で今まで忘れてたんだよこの事を……っ!!!
「そうか……、そうだったのか……っ!それなら全てが納得出来るじゃないか……っ!!!」
「ど、どうしたんですか光太郎s「母親だ……」えっ?母親?」
唐突に頭を抱えてしまった俺を見て、心配になった神通が声をかけてきたのだが、それを喰うようにして俺は話し始める
「恐らくなんだけど、戦治郎のお母さんが長門そっくりなんだと思う」
「龍美さんがですか……?あの人はどう見ても飛龍さんと瓜二つでしたよね……?」
「違う、龍美さんは戦治郎のお父さんの再婚相手なんだよ!戦治郎を生んだお母さんが長門そっくりな可能性があるんだ!」
今の今まで忘れていたのを激しく恥じる、あいつの今のお母さんである龍美さんは当時子供だった戦治郎が使える力を総動員して自分のお父さんと再婚させた人、所謂義母だったのだ
「ちょっと待って!今凄く聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけどっ!?さっきそこで蹲ってた人のお母さんと私が瓜二つっ?!」
「義母だけどね、しかも連れ子が2人いて妹の方は俺達の幼馴染ときた。そして連れ子2人共戦治郎の義姉になってるんだ」
俺の話を聞いて通以外のメンバーが目を丸くする、特に飛龍さんはとてつもなく動揺しているようだった
「小学校の頃から龍美さんがあいつのお母さんだったからな、1度教えてもらってたのにそれが当たり前過ぎて今まですっかり忘れてた……、ホント情けないな俺……」
「そうだったのですか……、それで先輩を生んだお母さんは今どちらに……?」
「そこまでは聞いてないな……、でも今回の件に間違いなくそのあたりが絡んでいそうだ……。っとそう言えば何で通は龍美さんの事知ってるんだ?」
戦治郎のお母さんが今どうしているかは気になるが、それと同じくらいに通が龍美さんの事を知っていたのが気になったから、つい聞いてしまった
「20代勢は兼続と友好関係にあったので龍美さんと会った事があるんですよ、言ってませんでしたか?」
それを聞いて納得した、そう言えばこいつら兼続と同い年だったな……
「あの、兼続さんとは何方なのでしょうか……?」
神通さんが問う、まあいきなり聞いたことのない名前が出れば気になるよな……
「兼続は先輩の腹違いの弟さんで私達の友人なんですよ、私の場合剣術の道場の都合で兼続より先に先輩と会っていましたから、兼続が先輩の弟と聞いた時は大変驚きました」
人との縁って奴は本当に不思議なものだな~……、っとそんな事考えている場合じゃないな
「よし、取り敢えずこの話はこのあたりにしておこう。俺は今から戦治郎のお母さんが原因かどうか、悟に聞きに行ってみるよ」
「分かりました、もし何か分かったらすぐに教えて下さいね」
俺は通に分かったと短く答えて医務室の方へと向かって行くのだった。その時すれ違った飛龍さんが何かブツブツ言っていた気がしたけど、気のせいと言う事にしておこう……