※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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戦治郎のトラウマ

「おめぇも来たかぁ、光太郎よぅ」

 

「光太郎か、お前も戦治郎のアレの原因が分かったのか?」

 

俺が医務室に入ると、そこの主である悟と俺と同じく戦治郎の件で何か掴んだのだと思われる空がそこにいた

 

「多分これで合っていると思うんだけどな……」

 

こうやって改めて聞かれると、ちょっと自信がなくなってくる……。これで本当に大丈夫だよな……?

 

「念の為に確認だ、戦治郎が長門アレルギー(仮)を発症する根本的な原因を当てる事が出来れば、その詳細を教えてもらえる……、そうだったな?」

 

「ああその通りだぁ、当てる事が出来れば約束通り教えてやんよぉ。そんでおめぇらが出した答えってぇのを言ってみなぁ。但し大声は出すなよ?寝てる奴もいるからなぁ」

 

空は悟に長門アレルギー(仮)の詳細を教えてもらう為の条件を確認し、悟がそれを肯定した後俺達にその答えを聞いてくる。その答えとは……

 

「「戦治郎の生みの母親だ」」

 

俺と空の声が重なった、どうやら空も俺と同じ結論に至ったようだ。それを聞いた悟はニヤニヤしながら俺達に続きを話すよう促した

 

「俺が戦治郎と会った時にはもう龍美さんが戦治郎のお母さんだったから、それが当たり前だと思ってて1度教えてもらってたのをすっかり忘れてたんだよ、龍美さんが総一さんの、戦治郎のお父さんの再婚相手だって事をな」

 

「俺に至っては2人の再婚に関わっていたにも関わらずな……、言い訳するとしたら俺と戦治郎が出会った時には既に戦治郎の母親はいなかったから生みの母親の事を知らなかったとしか言えん……」

 

ちょっと待て空、お前今何て言った?2人の再婚に関わってるだと?お前一体何やってんの?

 

「総一さんには外見的な長門要素は皆無、龍美さんは飛龍そっくりな上に再婚相手だからな、そうなると戦治郎のあの姿は生みの母親に似たからああなったのだろうと俺は推測している」

 

あっスルーですか、そうですか……

 

「俺は天音が親戚の集まりの時に、戦治郎が親戚の方々にお母さんに似てきたと言われてたって教えてくれたのを思い出したおかげでこの結論に至った感じだな」

 

俺達がこの答えに至った理由を言い終えると、腕を組みウンウンと頻りに頷いていた

 

「2人共正解だぁ、あいつのあの症状はあいつの生みの母親が大きくかかわっているんだよなぁ」

 

そう言って悟は約束通り、戦治郎の長門アレルギー(仮)の詳細を教えてくれたのだ

 

最初に長門アレルギー(仮)と言うのは、護達が勝手に付けたあの症状の名前でありその正体はアレルギーでも何でもない、PTSD……心的外傷後ストレス障害だったのである

 

戦治郎の生みの母親である長門 青海(ながと おうみ)さんは、愛する夫である長門 総一(ながと そういち)さんを支える為に家事に育児にと奮闘していたそうだ

 

子供達には時に厳しく、時に優しく接し人として大切な事を沢山教えてくれたそうで、戦治郎はそんな母親が大好きだったんだそうな

 

そんな大好きな母親が、ある日突然倒れてしまい救急車で病院に搬送されたのだとか……

 

診察の結果、早期から治療をしていれば助かる病気だったそうだが、夫と子供達に心配させまいと思い無理をしたせいで手遅れになってしまい、その場で余命宣告されたそうだ……

 

そうとも知らず、戦治郎達は毎日のようにお見舞いに行ったそうだ。そうすれば母親もきっと元気になって帰って来てくれると信じていたからだ

 

しかし運命とは残酷なもので、遂にその時が来てしまったのである

 

青海さんは最後の力を振り絞り、家族1人1人に感謝の言葉と願いを1つだけ言っていた

 

戦治郎の番が来た時、青海さんはこう言ったそうだ

 

「生まれて来てくれて本当にありがとう、お前はとても優しい子だった、その優しさで如何なる争い事も治められるような強い男になってくれ」

 

これが戦治郎が愛する母親から聞いた最後の言葉だったそうだ……

 

その後、しめやかに葬儀が行われたそうだが、母親の死をどうしても受け入れられなかった戦治郎は葬儀の最中に1人で何処かに飛び出してしまったそうだ……

 

「まあ、ここまでならよくある話だわなぁ……」

 

悟がそんな事を言うが、こっちはそれどころじゃないです……、涙が……鼻水が止まりません……。歳取るとこういうのにどうしても弱くなってしまう……、空も天を仰いで涙流してるし……

 

「取り敢えずこれでその汚ぇ顔拭きなぁ、そんじゃ続き行くぞぉ」

 

悟から渡されたタオルで顔を拭い鼻をかむ、それを見ていた悟は顔を歪めながらも話を続ける

 

葬儀場を飛び出した戦治郎は、行く当てもなくフラフラと彷徨った後、人気のない公園を見つけてそこで1人泣いていたそうだ

 

もう2度と母親と会えなくなると思うと湧き上がってくる悲しみに、一切抗う事無く声を上げて涙を流したそうだ。自分に近づいて来る2つの影に気付く事も無く、ひたすら泣き続けていたそうだ……

 

そこで戦治郎は誰かに殴られたそうだ、我が身に一体何が起こったのか分からぬまま意識を手放してしまったそうだ……

 

気が付けば口を塞がれ両手両足を縛られた状態で、廃工場と思われる場所に転がされていたそうだ

 

状況を把握する為に目だけで周囲を見回せば、目出し帽で顔を覆った男が2人いてその片割れと目が合ってしまった

 

すると2人の男はこちらへ近づいて来るなり、戦治郎の腹に蹴りを入れて来たのだ

 

唐突な出来事に混乱してしまい、男達が何を言っているのか理解出来なかったが、その目を見た時に直感したそうだ。この男達は自分を激しく憎悪しており、悪意を持って自分に何かするつもりでいる事に……

 

何故自分がこの男達にこんなにも憎悪されているのかが分からなかった為、戦治郎は更に混乱したそうだ……

 

「ちょっと待て、つまり戦治郎は母親の葬儀の最中に飛び出した先で略取されたと言うのか……っ!」

 

「そう言うこったぁ、因みにこの犯人達は戦治郎の親父さんの会社に潰された近隣の中小企業の社長さん達だったんだとさ。戦治郎を監禁した場所も、そいつらのどっちかが経営してた工場の跡地だったんだとよ」

 

戦治郎のお父さんの会社に自分の会社を潰された恨みを、戦治郎を攫って暴行する事で晴らそうとしたと言うのか……、とんでもない外道だな……

 

「更に言えば、身代金要求した上で戦治郎を殺るつもりだったみたいなんだわぁ。このへんは戦治郎が一昨年亡くなった戦治郎の祖父さんから聞いた話なんだとよぉ」

 

暴行どころか最初から殺すつもりだったとか……、しかも身代金まで毟り取ろうなんて……、救いようのない屑だな……。よくそんなのが社長なんかになれたものだ……

 

この話の顛末は、中々帰って来ない戦治郎の事が心配になった父親が警察に通報、更に戦治郎の祖父が秘密裏に組織していた私兵まで動かして捜査、戦治郎を発見するなり私兵達が突入し犯人達の身柄を拘束、警察に引き渡して幕引きだったそうだ

 

「とまぁこんなところだわぁ、戦治郎が長門を見てああなっちまうのは青海さんの死に対しての悲しみと、青海さんの葬儀の時に略取された時の恐怖が同時にフラッシュバックしちまうのが原因なんだわぁ」

 

これ、想像以上に厄介じゃないか……?こんなものどうやって治せばいいか俺にはさっぱり分からないぞ……?

 

「今回は俺がヘマしたせいでこんな事になっちまってるからなぁ……、俺の方で何とかする……って空ぁ、おめぇ何処行くつもりだぁ?」

 

悟がセリフを言い終わる前に、空が踵を返して医務室から出ていこうとしていた

 

「今の状況でそんな悠長な事は言ってられんからな、少々無茶をさせてもらう。それで何か起きた時の責任は全て俺が背負うつもりだ」

 

「それはいいんだがよぉ、具体的に何するつもりなんだぁ?場合によっちゃぁ俺も手ぇ貸すんだがよぉ」

 

空には何かいい案があるのだろうか?もしあるのなら是非とも聞かせてもらいたいのだが……

 

「今から原稿を書き、それを飛龍に読ませるだけだ」

 

……はぁ?

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