「この度、皆さんには大変ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでしたっ!」
異形達の襲撃を退けた俺達は、皆に改めて謝罪がしたいと言う戦治郎の提案に乗り会議室に集合しているのだ
会議室に皆が集まったところで、戦治郎が皆に謝罪の言葉を述べ頭を下げた
「復ッ活ッ!長門 戦治郎復活ッ!長門 戦治郎復活ッ!」
「立った!シャチョーが立った!」
その瞬間、シゲ海王とアルプスのペンギン飼いのマーモーが叫ぶ、お前ら嬉しいのは分かるけどうるさいぞ……
「戦治郎、俺が言いたい事……、分かるな?」
腕を組み戦治郎をジロリと睨みつける空が言う、これは間違いなく怒っているな……
「ウッス、この事空に黙っててすみません、はい……」
「俺はお前の親友なのだろう?だからせめて俺くらいには教えて欲しかった。お前は俺の親友なのだからな、お前が苦しい時は助けになってやりたいんだ」
「ウッス、マジサーセンっした……」
空の言葉を聞いた戦治郎がそう言ってションボリするところを見た空は、次からは頼んだぞ、とだけ言っていつもの表情に戻る
「戦治郎いじるのはそのへんにしとけぇ、まだやりてぇってぇ奴ぁ後で個人的にやんなぁ。んで今丁度ここに全員集まってるみてぇだからなぁ、長月の血液検査の結果を報告させてもらうぜぇ」
そう言って資料を皆に配りだす悟、相変わらず仕事早いなぁ……
「長月の血液を調べさせてもらったんだがよぉ、何かよく分かんねぇモンが検出されたんだわぁ」
いつの間にか準備されていたプロジェクターから資料が映し出され、その映像の一点を指示棒で差しながら悟が言う
「気になって俺の方で成分を調べてみたんだが、これが一体何なのかサッパリ分からなかったんだよなぁ……。ってぇ事で長月本人が何か知らねぇか聞いてみたらよぉ……」
悟は申し訳なさそうな表情でガリガリと頭を掻いた後、長月に視線を送る。その視線に気付いた長月は1度頷いてから皆に話し始める
「悟さんが言うよく分からない物……、それは恐らくあの男が私に移植手術をした後に投与した艦娘の深海棲艦化を止める薬の試作品だと思う」
皆が驚きの表情を露わにしざわめきだす、ちょっと待て、深海棲艦化を止める薬だと……っ!?
「後遺症の薬の効きが悪くなってきた事をあいつに報告したところ、すぐに手術室に連れて行かれてな……。目を覚ました時には移植手術は終わり、私の腕はあの悍ましいものに変わっていたんだ……。その後だ、あいつがその薬を私に注射したのは……」
長月さんの表情が暗くなる、きっとその時の事は思い出したくもなかったんだろうな……
「その薬を投与された後、その薬の事を聞いたらペラペラと饒舌に話していたな……。拒絶反応にも効果があるだとか、これが完成したら多くの艦娘を救う事が出来るだとかな……」
「はぁっ?!艦娘を救うだぁっ!?」
長月さんの言葉を聞いた摩耶が、そう叫びながら勢いよく立ち上がる
「恐らくだがよぉ、移植手術はその薬の実験の為に行われていたんだろうなぁ……。ホント反吐が出るぜぇ……」
「艦娘を救う薬を作る過程で、犠牲になった艦娘達から目を背ける……。とんでもない屑じゃのう……」
悟と利根さんがそれぞれの意見を言う、どちらの言葉にも凄まじい怒りが込められているのがよく分かった
いや、長月さんの話を聞いて怒っていない者はこの場には誰一人としていない、部屋全体に剣呑な空気が流れていた。皆を刺激するような事を一言でも喋れば、皆が飛び出していきそうな雰囲気である
「私達が襲われたのは、私達にその実験の邪魔をされるかもしれないと思ったからなのかもしれないな……」
長門さんが呟く、こんな事が大本営にバレたら薬の研究どころではなくなるだろうな……
「最悪の場合、長門さん達を捕まえて素材にしていた可能性もありますね。行方不明になった原因を深海棲艦になすりつける事も出来ますからね……」
通が恐ろしい事を言う、知り合いが移植手術される姿とか想像したくもない……
「そんな奴に望は……っ!」
そう言って拳を強く握り締める神風さん、この話を聞く限りそこの提督は正気ではなさそうだからね……、一刻も早く望ちゃんを助けてあげないと何をされるか想像も出来ないからね……
「後遺症の薬がダメになったら、今度は深海棲艦化防止の薬で脅迫か……、胸糞悪い……」
木曾さんがそう吐き捨てる、人間の生きたいという願望を利用しての脅迫、本当に質が悪いなこれ……
「そいつもうぶっ殺してもいいんじゃねぇか?裁判とかやってもどうせ死刑確定だろ?だったら俺らで殺ってもいいんじゃねぇか?」
「流石にそう言うわけには……、日本海軍の人間がやった事ですから、日本海軍の方でその罪を裁き処罰しないと国民の信用に大きく影響が出てしまいます……」
輝の発言に待ったをかける妙高さん、今の大本営は強硬派有利なんだったっけか……、俺達が好き勝手やった結果、大本営が強硬派に乗っ取られる可能性を考えると下手な事が出来ないな……
「こりゃ本気でやるしかねぇな……、ただでさえ俺のせいで遅れ出ちまってるからな~……。っと長門達も協力してくれるんだったよな?」
「無論、そのつもりだ。私はこんな状態だがな……」
戦治郎が長門さんに問いかけ、それに答える長門さん
「いや気にすんなって、俺もさっきまで酷い状態だったかんな。んでさっきの戦い見て、時間ねぇけどちょっち準備しなきゃなんねぇようだわ」
準備?一体何をするつもりだ?戦治郎の言葉を聞いた皆がそう思ったのか、不思議そうな顔で戦治郎の方を見る
「さっきの戦いでビビって動けなくなってた奴がいたからな、そいつらをちょっち鍛えるのと、長門の艤装の改修だな。設計図についてはもう妖精さんにお願いしてっから、それが完成したら作業開始してくれ。長門はその間は怪我治すのに専念してくれ」
そういえばそうだったな~……、特に大本営組が酷かったっけか……
「いいのか?時間がないのだろう?」
「こういうのは全員参加が基本だろうよ、まあ長門はマダガスカルの方に来てもらうつもりだがな。速力の都合もあるが、深海棲艦の穏健派の事をよく見聞きして大本営にしっかり伝えて欲しいからな」
なるほど、それが上手くいけば穏健派と艦娘の武力衝突を抑えられるからな。そうなると俺達もソロモンの方で動き易くなるかもしれないしな
「そ・れ・に~……、長門って確か41cm砲持ってたよな~?」
戦治郎がニヤニヤしながら長門さんにそんな事を聞いていた、正直気持ちが悪かった……
「あ、ああ……、艤装には41cm砲と46cm砲を積んでいるが……、それがどうかしたのか?」
「46cm砲もあんのっ?!是非見せてくれっ!!!それ参考にして作りたい武器があるんだっ!!!」
そう言って長門さんに土下座する戦治郎、ミゴロさんと対戦艦ライフルの更新が目当てか……。まあ戦力強化に繋がるからそれについては何も言うつもりはないけど……、皆が見てる前で土下座するのはどうかと思うんだよな~……
「アニキ、利根と妙高が確か3号砲持ってましたぜ」
大本営組の艤装を改修したシゲが余計な事を口走る
「何とぉっ?!そっちも見せてくれっ!ハタチさんの強化に使えるかも知れねぇからなっ!!!」
土下座の態勢のまま利根さん達の方を見る戦治郎、肝心の2人は訳が分からないと言った感じで動揺しているようだった
しかし、深海棲艦化を止める薬か……。件の泊地の提督はどういった動機でそんなものを作ろうと思ったのだろうか……?まあそのあたりは本人に聞けば分かるか……。それよりも、何としてでも望ちゃんや泊地にいる艦娘達を助けなければ……っ!!!
俺は長門さん達に土下座する戦治郎を眺めながら、決意を新たにするのであった