マダガスカルへと向かう戦治郎達と別れ、俺達はアムステルダム島の泊地へ向かっていた
道中で今一度こちらのチームの目的を確認する、この作戦は何としてでも成功させたいところだからね
①泊地に所属する艦娘及び転生個体である春雨 望の救出、治療
②泊地の提督の身柄を拘束し大本営へ連行、その際大本営に提出する泊地の提督がこれまでやって来た事に関するレポートなどを証拠として押収する
「①に関しては既に移植手術を施術されている艦娘も一応は対象にしているよ、助けられる命は助けたいからね」
皆に向かってそう告げる俺、それを聞いた皆は表情を暗くしながらも頷いてくれた。まあそんな表情にもなるよね……、何たって……
「もし救助不可能だった場合、俺達の手でそいつらの事を楽にしてやらねぇといけねぇからなぁ。そんで救助出来る奴がどのくらいいるかについては遭遇するまで不明ときてらぁ、時間経過で深海化抑制薬の効果が切れて侵食が進む可能性も考慮すっと、最悪全滅の可能性もあるから一応って事だよなぁ?」
悟がまるで俺の心を読んだかのように言う、こいつ実は能力2つ持ってるなんて事は流石にないよな……?
「それを考慮しての高速統一編成ですからね、侵食の被害を抑える為にも急ぎましょう」
悟の言葉を聞いた通が言う、被害を無くすとは言わず抑えると言っているあたり施術されている艦娘の救助はあまり期待していないのだろう。正直に言えば俺もそうだからな……、一応と言ったのはそう言う事なんだ……
「そういや、向こうの主力艦娘ってどうなってるんッスか?加賀がいるのは分かるッスけど、それ以外は誰がいるか聞いてなかったッス。もしかしたら道中で遭遇する可能性があるかもしれないッスから教えてもらえないッスか?」
「加賀さん以外となると……伊勢さん、天城さん、龍鳳さん、羽黒さん、由良さんの5人ね……、でももし遭遇したら私が何とか説得するわ。私があの泊地から脱走する時手伝ってもらったから、きっと私の事を覚えてくれているはずだからね」
「その時は私も協力しよう、私が施術された事を話した上でこの腕を見せれば、どちらが味方かすぐに分かるだろうからな」
話の流れを切るように護が神風さんに質問し、神風さんの返答を聞いた長月さんが義手を掲げながら向こうの主力艦娘達の説得に協力すると申し出る。実際に移植手術をされた長月さんが説得に加われば、きっと説得し易くなる事だろう
……何か羽黒さんの名前が出た瞬間、妙高さんの表情がえらい事になったような気がするのは気のせいだろうか?
「そういえば、神風さんは一体何処で移植手術の事を知ったのでしょうか?」
不意に神通さんが神風さんに移植手術の事を知った経緯について尋ねる、そう言えばそのあたり聞いていなかった気がする
「それなんだけど……実は私、長月が手術室に連れて行かれるところを偶々見ちゃったのよ……、何をするんだろう?って思って2人が出て来るまでずっとそこで見てたの……。そしたら長月の腕が……」
そう言って俯く神風さん、その言葉を聞いた長月さんは
「そうだったのか……、それで移植手術の事を知ったお前は泊地を脱走して彼らと出会ったと言うわけか……。ならば私が移植手術をされた事も決して無駄ではなかった事になるな」
そう言って神風さんの肩に義手になった右腕を置き、気にするなと言わんばかりに笑顔を向ける
「しっかし、何でこないな事やってまで深海化抑制薬やったか?そんなん作ろう思うたんやろ?艦娘を救うとか言っとったみたいやけど、これやったら本末転倒もいいとこやろ」
「そこらへんの事情は提督から直接聞いた方がよかごたぁね、まあ多分その提督は正気の人間じゃなかと思うとけど」
龍驤さんと九尺のやり取りが耳に入る、確かにそのあたりは気になるところである。もしかしたら何かがきっかけで艦娘の深海棲艦化の事を知って、それを防ぐ為の薬を作ろうとしたとか……?
「……何か藤吉君のキャラ変わってない?最初見た時はオドオドしてて頼りない感じだったんだけど……」
「それどころか話し方も全然違うよね?初めて話した時は吃音が凄かったのに、今はどこかの地方の訛りみたいになってるけど普通に話せてるし……」
二航戦の2人が九尺の事で驚いているようだ、そう言えば泊地の2人と大本営組には九尺の事話してなかったな~……
「今のおいは九尺って名前やけん覚えとって、藤吉の別人格やけんキャラの違うとか言うとは強ち間違いじゃなかよ」
九尺はそう言って事情を知らないメンバーに自分の事を紹介していた、それを聞いていたメンバーの表情が暗くなっていくのが傍から見ていてよく分かる
「何て言うか……、長門屋の人達って何か抱えてる人多くないかしら?」
「確かに……、戦治郎さんはこの間の事がありますし、光太郎さんや悟さんも望さんの事で……」
「ちょっと不知火っ!!!」
天津風ちゃんがついこぼした言葉を不知火ちゃんが拾い、それを陽炎ちゃんが止めに入る。そういやちょっと前に望ちゃんの名前が出た時、俺の右目に激痛が走ったっけな~……
「大丈夫だよ陽炎ちゃん、ちょっと疼きはするけどあの時みたいにはもうならないみたいだから」
俺は陽炎ちゃんに向かってそう言った、実際あれ以来望ちゃんの名前が出ても右目は無事だからね。多分あれは気持ちの問題だったのだろうか?
「羽黒……、どうか無事でいて……」
そんな事を考えていると、不意に妙高さんの声が聞こえた。そちらの方を見てみると、妙高さんは凄く心配そうな顔をしていた。やっぱあれは気のせいじゃなかったか……
「やっぱり羽黒さんは……」
「はい……、私の妹です……」
妙高さんが言うには羽黒さんは妙高さんと別の鎮守府に着任していたそうで、羽黒さんがアムステルダム泊地に異動するまでは手紙でやり取りをしていたそうだ。
「手紙の中に負傷して艦娘を続けれそうにないと書かれていた時は、本当に取り乱してしまいました……。しかしその後に後遺症がどうにかなりそうだと言う知らせを聞いて、心からホッとしたのですが……」
そう言ったところで妙高さんの表情が曇る
「その異動先がまさかこんな事やってるなんて予想も出来ねぇわなぁ、手紙が来なくなったのは外部にこの事がバレたら不味いって事で、提督が処分していたんだろうよぉ」
妙高さんと俺のやり取りを聞いていた悟が言う、もしかしたら処分された手紙の中には妙高さんに助けを求めるような内容のものがいくつもあったかもしれないな……
「まあ、それも今日までなんだよなぁ……。その提督の悪事は俺達にバレちまった、最も知られちゃぁ不味い俺達になぁ……」
悟はそう言葉を続ける、他者の命を救う事に執着していると言える悟にとって、泊地の提督がやっている事は絶対に許せない事だろう。恐らくこのメンバーの中で最も提督に怒りを覚えているのは悟なのだろう……
まあ、俺もそれに負けない程提督とやらに怒っているんだけどな。望ちゃんの件を絶対に許すつもりはない
「皆気合い入っちゃってますね~、そんな皆に俺様から朗報ですよ~」
哨戒機と偵察機を飛ばしていた司が急に声を出す
「もうちょっとで件の泊地に着きそうだったりしちゃいそうなんだよね~、皆カチコミの準備はOKですかい?」
どうやら問題の泊地の近くまで来れたようだ、だがここまで1度も異形艦娘と遭遇していないのが気になる……
「もしかしたら異形艦娘を泊地に集めて、俺達を迎え撃つつもりなのかもな……、その中に望ちゃんもいるはずだ……、皆準備はいい?」
\応っ!!!/
「じゃあ……、これより泊地に突入するっ!いっくぞおおおぉぉぉーーーっ!!!」
旗艦である俺の号令の下、俺達は異形艦娘の巣窟と化しているであろうアムステルダム泊地に突入していくのであった