予想通りと言うべきか、俺達が泊地に近付くと異形艦娘が泊地の方から次々とその姿を現した
だがその数はこの間泊地を襲撃してきた艦隊よりも少ない36人くらいで、戦艦はおらず空母は軽空母と思わしきものが3人ほどとなっていた。恐らくこの間のに戦力を割き過ぎたのだろう
「うへぇ……、ウチと同じ格好したのがおるで……」
異形軽空母の姿を見た龍驤さんがそう呟いた、まあ自分と同型の異形がいたらそう言いたくなるだろうな……
「気持ちは分かるよ……、私達も同型の異形の娘がいたからね~……」
「しかも戦治郎に瞬殺されてたし……」
龍驤さんの呟きが聞こえたのだろう、二航戦の2人が龍驤さんに向けてそう言った。確か蒼龍さんの同型が首刎ねられて、飛龍さんの同型が胴体真っ二つだったっけ……?
俺がそんな事を考えていると、不意に悟が話し出した
「おめぇら朗報だぁ、あの連中の中に何人か救助出来そうなのがいるみたいだぜぇ」
「それは本当なのかっ?!一体どの娘だっ!?」
悟の言葉を聞いた俺はついつい悟に詰め寄ってしまった、異形艦娘の救助は半分くらい諦めていたところだったからね……
「落ち着きなって光太郎、今から俺が印を付けて回るからそいつらをおめぇと通で掻っ攫ってきなぁ。そいつらの説得は神風と長月に任せんぞぉ、印付け終わったら合図すっからそれまでは大人しくしてな。んじゃ行って来るわぁ」
そう言って悟は海の中へと潜行する、その様子を見ていた異形艦娘達は爆雷を周囲に撒き散らしながら俺達への攻撃を開始した
俺達は悟が言っていた通りに異形艦娘対して攻撃はせず、合図が来るまでの間相手からの攻撃を回避するのに専念する
「なぁ、悟さんは本当に大丈夫なのか?あっちはあんなに爆雷をばら撒いているんだが……」
「その程度で悟さんを倒せると思わない方がいいですよ、本気で悟さんを倒そうと思ったら潜行する前に仕留めるべきでしたね」
悟を心配する長月さんに対して通がそう答える、水の中に潜ったあいつは厄介過ぎるからな……、速度強化なんてされてるもんだから爆雷が爆発した際の衝撃波からも余裕で逃げ切れるからな……
そんな事を考えていると、異形艦娘達の足元から大量のメスが飛び出して来て、一部の異形艦娘の移植された部位に深々と突き刺さる。きっとこのメスが悟が言っていた目印なのだろう
海中からの奇襲に異形艦娘達が動揺している最中、悟からの通信が入る
『見てたはずだから分かるよなぁ?って事でやっちまいなぁ』
それを聞いた俺と通は待ってましたとばかりに行動を開始、異形艦娘からの攻撃を避けながら敵陣に突撃しメスが刺さっている異形艦娘を攫っては自陣に連れて行き、ついでとばかりにメスが刺さっていない異形艦娘達に攻撃する
攫われた異形艦娘達を神風さんと長月さんがすぐに説得し、異形艦娘からの了承を得たところで局部麻酔の後神通さんが移植部位を切断、すかさず悟が傷口の処置を行っていた
異形艦娘攫いの最中に通とすれ違った際、神通さんが辛い役割やってるから作戦が終わったら慰めてやれと言っておいた
そんなこんなで相手の数は見る見るうちに減っていき遂に最後の1人、足にメスが刺さっている娘を俺が攫って自陣に戻って来たところでそれは起こった
「な、何するんだよっ!離せって!!!」
そう言って俺の腕の中で暴れる最後の異形艦娘、暴れたところで俺の腕からは逃げられない……んだけど、目的地に着いたからもう抱きかかえている必要もないので言われた通りに離してあげた
「なっ……、皐月っ!?」
その娘の説得の為に近づいて来た長月さんが、その娘の顔を見るなりそう叫んだ
そう、最後の異形艦娘は長月さんの姉妹艦である睦月型駆逐艦5番艦の皐月だったのだ
「えっ……な、長月っ!?何で長月がここにっ?!……み、見るなっ!こっちに来るなっ!!!」
そう言って皐月ちゃんは取り乱し両腕で顔を覆い、長月さんを拒絶するような言葉を吐く。恐らく今の自分の姿を長月さんに見られたくないからなのだろう……。長月さんの最初の反応を見る限り、2人は本当に仲がいい友達だったのかもしれない。そんな友達に今の自分の醜い姿を見られたくない、嫌われるのが恐ろしくて仕方がない、だから皐月ちゃんは長月さんに対してそんな事を言ったのだろう……
「落ち着け皐月っ!話を聞いてくれっ!」
そう言って皐月ちゃんに近付く長月さん、それを見た皐月さんは……
「う、うわあああぁぁぁーーーっ!!!」
完全に我を忘れ、長月さんに向けて砲撃したのである
危ないっ!そう思って俺が飛び出そうとしたが、長月さんの視線がそれを制した。その次の瞬間
長月さんは皐月ちゃんの砲撃を、義手となった右腕で弾いてみせたのである
「んな……っ!?」
その光景を目の当たりにした皐月さんは、驚きのあまりその手に持っていた主砲を落として両膝を海面に突き呆然とする
「怖がらなくていい、お前の気持ちは痛いほどよく分かる、私もお前と同じだったんだからな……」
そう言って皐月さんに近付いていく長月さん、皐月ちゃんはと言うと先程の長月さんの言葉を聞いてより驚愕の色を濃くしていた
やがて長月さんは皐月ちゃんのすぐ傍まで辿り着き、その鋼鉄の右腕で皐月ちゃんを優しく抱擁する。すると皐月ちゃんの瞳から涙が一筋零れ落ち、海の中へと溶けて消えていった
「安心しろ、私の腕を何とかしてしまった人達だ、きっとこの人達ならお前の足も何とかしてくれる。だから……もう、大丈夫だ」
長月さんがそう言うと、遂に耐えきれなくなったのか皐月ちゃんが声を上げて泣き始めてしまった。よっぽど辛かったんだろうな……
皐月ちゃんが何とか落ち着いたところで悟達が侵食を防ぐ為の処置を行う、移植された部位が足だった為切除後は長月さんが皐月ちゃんの補助を担当していた。片足だと立っているのも辛いだろうからね
「そんで皐月よぉ、ここにいる移植手術を受けた艦娘はさっき出て来た分で終わりなのかぁ?」
「そうだね、今出撃した人達で移植手術をされた人達はお仕舞いさ。残るは移植手術をされていない加賀さん達と……」
悟の問いに対して皐月ちゃんがそこまで言ったところで、急に俺達の目の前で水柱が発生した。それが収まりその場所に視線を向けると……
「お出ましだなぁ……」
「望……」
そこにはこの泊地の最高戦力であり神風さんの親友、そして俺がこの作戦で最も救いたいと思っている春雨 望ちゃんの姿があった……
「光太郎、分かってるよなぁ?」
「分かってる、通、護、神風さん準備はいいか?」
「いつでもいけます、この間のリベンジと行きましょうか……」
「この作戦、光太郎さんにかかっているッスからね、頼みますッスよ~」
「絶対に……望を助け出してみせる……っ!」
俺達は思い思いの言葉を口にして、目の前にいる望ちゃんをしっかりと見据える
「他の皆は手筈通りにお願いね、それじゃあ……いくぞっ!!!」
俺の声に反応して、皆がそれぞれ決められた役割を果たす為に動き出す
泊地の中に残っている艦娘達を助け出す為に、今しがた救助した異形だった艦娘達を護る為に、提督の悪事を白日の下に晒す為の証拠を集める為に、そして目の前にいる少女を救い出す為に……
「侵入者を発見、これより排除を開始します」
感情と言うものを完全に取り払ったような冷たい表情で俺達を見据え、抑揚のない無機質な声を辺りに響かせる望ちゃん……
今度こそ……、絶対に助け出してみせる……っ!!!
こうして俺達と望ちゃんの戦いの火蓋が切られた