証拠集めを担当する大本営の3人と神通さん、泊地に残っている艦娘達の救助を担当する司と九尺と陽炎型の3人に龍驤さん、そして提督を拘束する悟
それぞれの役割を果たす為に、皆が一斉に行動を開始する
それを見た望ちゃんは皆の方へと砲を向けようとするが……
「させませんよっ!」
通が瞬時に間合いを詰め、横一文字に朝日影を振るい望ちゃんの砲撃を妨害する
「君の相手は俺達だよ、この間は無様を晒したけど今回はそうはいかないからねっ!」
そう言って俺は自身が出せる最高の速度で、望ちゃんへ突撃していく
この娘に対して砲撃戦はハッキリ言って弾の無駄である、本気で倒そうと思ったら接近戦に持ち込むしかない。これは前回の戦いで学んだ事だ
その経験を踏まえて、俺は大本営組の特訓期間中に空に頼んで体術の基本を教えてもらっていた。大本営組の特訓で忙しかったにも関わらず、丁寧に指導してくれた空には本当に感謝している
「せぁっ!」
気合いの声と共に右の脇腹を狙って繰り出した俺の中段回し蹴りは、惜しくも望ちゃんの腕に防がれてしまうが
「フッ!」
俺の蹴りを防いだ為に出来た隙を突いて通が斬りかかる……が、それも寸でのところで後方に下られて回避されてしまったのだが
「これで終わりだと思いましたか?!」
通が叫ぶ、通の斬撃を回避した望ちゃんの背後には、いつの間にか作り出されていた通の分身が待ち構えていたのだ
望ちゃんの身体が分身の間合いに入ったところで振り下ろされる刃、しかしそれも砲の反動を利用したスライド移動で回避されてしまう
「相変わらずすばしっこい娘ッスね~……、だったらこれはどうッスか?」
先程まで異形だった艦娘達が俺達の戦闘の巻き添えにならないように護っている護がそう言って指を鳴らすと、海面から突如としてネットが飛び出してきて望ちゃんの進路を遮った。恐らく俺達が戦っている間にイワンとトビーを出して、この罠を仕掛けておいたのだろう
望ちゃんはそのネットを切り裂こうと鋭い爪の付いたその右手を振り下ろすのだが、爪の先がネットに触れた瞬間何かが爆発したかのような轟音と共に大きな火花が盛大に散っていた
「このネットに迂闊に触れちゃ危ないッスよ~っと」
そう言えばこのネットには高電圧大電流が流れていたんだった、そうとは知らずにネットに触ってしまった望ちゃんの艤装から黒煙が立ち上る、恐らく艤装内にあった弾薬が全部爆発してしまったのだろう。燃料に引火しなかったのは、不幸中の幸いなのかもしれない……。俺達はこの娘を助けに来たのであって殺しに来たわけじゃないからね、もしここで沈めてしまったら俺はもう立ち直れなくなりそうだ……
「……チィ、あの首の機械しぶといッスね~……。あの電撃喰らって無事とかどうなってんッスかね~?」
舌打ちしながら護がそう言った、どうやら先程の攻撃で首輪も破壊するつもりだったようだが、肝心な首輪は見た限りどうやら無事のようだ……
「う……、ぐぅ……」
ここで初めて望ちゃんが呻き声を上げる、どうやらさっきの電撃は望ちゃん本体にはかなりダメージを与えているようだ
「光太郎さん!」「ああっ!」
俺は通の呼び掛けに応じ、通と共に再び望ちゃんに突撃する。このチャンスを逃す手はないからね!
俺が思った通り、ダメージを受けた望ちゃんの動きは最初と比べるとかなり悪くなっている。さっきまではこちらの攻撃をよく回避していたのだが、今はどちらかと言えば反応速度が鈍っているからなのかガードを多用しているように思える
こうして俺達が何度も攻撃を繰り返していると、徐々に有効打が増えていき望ちゃんに着実にダメージを与えられるようになっていた
そしてかなりダメージが蓄積したのだろうか
「損傷が危険域に到達……、これより撤退を開始する……」
望ちゃんがそう言って撤退を開始したのだ、だがここで君を逃す事は出来ないっ!
「望っ!!!」
こちらに背を向け撤退しようとする望ちゃんに、神風さんが大声で呼び掛けた
「もういいの!もう向こうに戻らなくていいのっ!戻ったらまたおかしな事をされるだけなのよっ!?だからお願い!こっちに来てっ!!!望っ!!!」
ありったけの感情を込めて叫ぶ神風さん、すると撤退しようとしていた望ちゃんに変化が起きる
「か……みか……ぜ……?」
望ちゃんが神風さんの名前を呼んだのである、もしかしたらあの時のように本物の望ちゃんが表に出ようとしているのではないだろうか?
「神……風……な……、んで……?」
そう言って足を止め頭を抱えて呻き出す望ちゃん、その姿を見た俺はすぐに望ちゃんの下へ駆け出した。この瞬間を待っていたんだからなっ!!!
「ここだあああぁぁぁーーーっ!!!」
俺の叫びと共に、俺の艤装から2本の巨大なアームが飛び出して望ちゃんの身体を拘束する。この2本のアームこそが放水砲を更に増やした時に、空に頼んで艤装に組み込んでもらった俺のとっておきなのである
双腕重機をモデルにしたこのアーム、救助作業で瓦礫の撤去などに使うものなのだがそのパワーを活かして相手を拘束したり握り潰したりと戦闘でも問題なく使えるのだ
これを組み込もうと思ったのは、前回の戦いで姉様が形代を使って望ちゃんに不意打ちを仕掛けたのを見てこれは使えそうだと思ったからである
今回は主に拘束するのが目当てである、剛さんの拘束を自力で解くような相手だから本気で拘束しようと思ったらかなりのパワーが必要になるだろう、だからアーム本来のパワーに俺の戦艦としての馬力を加えてガッチリと望ちゃんを捕まえておく
「護っ!後は任せたっ!!!」
あの時のようにエラーとか言って、また植え付けられたであろう別の人格が出て来て逃げ出さないよう警戒しながら護に向かって叫ぶ俺
「はいはい任されたッスよ~、って事でこのコードをズブリッと~ッス」
そう言ってHMDと首輪をコードで繋ぎ、キーボードを操作し始める護。これが成功したらきっと望ちゃんは元に戻るはずだ……、俺はそう信じて護の作業を静かに見守る
「お願い……、戻って来て……、望……」
そう呟くのは顔の前で手を組み、祈るように目を閉じる神風さん
「大丈夫ですよ神風さん、きっと護が望さんを元の望さんに戻してくれるはずですから」
「だから自分にプレッシャーかけるの止めてくれって言ってるッスよ~……、それでしくじったらどうするんッスか~……」
神風さんの肩に手を置き励ます通、その通の言葉を聞いた護が何かブツブツと言っていたが俺には聞こえない、うん聞こえない。望ちゃんの運命はお前にかかってるんだから何とか頑張ってくれよ……!
「そう言えば長月達からのリアクションがないッスけど、何かあったんッスか?」
不意に護が言う、そう言えば長月さんと皐月ちゃんもこの場にいるんだったな、さっきの戦いのせいでスッカリ忘れてたよ……。それは兎も角護が言う通りさっきからあの2人は黙ったままだけど、どうしたんだろうか?
「な……、何だ今の戦いは……。何が起こってるのか全く分からなかったぞ……?」
「長月、この人達は本当に味方なんだよね?ボク何か凄く怖くなってきたんだけど……」
2人の方を見てみたら、さっきの戦いを見て混乱しているようだった。いや、この2人だけじゃない、異形だった艦娘の娘達皆が驚愕したまま固まってしまっていた
「あ~……、皆安心していいから、もう俺達は皆に攻撃するつもりはないから大丈夫だよ、それどころか皆の事を俺達が守ってあげるから、ね?」
俺は固まっている娘達にそう言って、安心した表情を見届けてからすぐまた望ちゃんの方へと視線を戻すのであった