砲撃音が鳴り響く中、私は照明の点いていない工廠の中で妖精さん達と共に震え上がっていた
恐らく戦っているのはこの泊地に所属する艦娘……いや、艦娘だった娘達だろう、先程提督から泊地に残っている施術済みの艦娘を全て出撃させ侵入者を殲滅せよと言う連絡が私に回って来たのだから……
何故その連絡が私を経由して施術済みの艦娘に伝えられたのか、何故泊地に所属する艦娘全てに伝えられなかったのか……
私を経由して連絡していたのは、私が施術済みの艦娘達を皆工廠の地下に匿っていたからだ。泊地に所属している艦娘で移植手術の存在を知っているのはほんの一つまみ程度しかいないので、何かの拍子で施術された艦娘が手術の存在を知らない艦娘に発見された場合、泊地内が大騒ぎになってしまう。最悪味方同士での殺し合いが始まってしまうかもしれない……
それを危惧したのと、施術された娘が他の娘にこの姿を見られたくないと言う理由が合わさった結果、私は独断で工廠の地下に彼女達が安心して暮らせる居住スペースを作ったのである。ただそれもすぐに提督にバレてしまったので、今のように私が彼女達の連絡要員になっているんですけどね……
先程の連絡を受けて工廠を飛び出して行った彼女達の無事を祈っていると、外から砲撃音が聞こえなくなった……。果たして彼女達は無事なのだろうか……?
そう思っていると工廠の扉が外から開かれた、彼女達が戻って来たのだろうかと思い視線をそちらに向けると……
「明石と言えばやっぱここだよなぁ……、っとぉやっぱりいたなぁ明石ぃ」
その視線の先にいたのは、ややネットリした男口調で話す潜水棲姫だった
「な、何で私の名m「そんなこたぁどうでもいいんだよぉ」どうでもいいって……」
何故この潜水棲姫が私の名前を、私が工作艦 明石である事を知っているのかを尋ねようとしたのだが、どうでもいいと切り捨てられた……。そしてこの潜水棲姫は私の都合などお構いなしとばかりに用件を一方的に話し始めたのである
「俺達はこの泊地で人道を踏み外したような研究をやってるばぁたれを締め上げに来たんだわぁ、その為に力を貸しやがれ。いいよなぁ明石ぃ?」
人道を踏み外したような研究……、まさかこの潜水棲姫はこの泊地の提督が何をやっているのかを知っているの……?でも一体何処でそんな情報を手に入れたの……?いや待て、もしかしたらこれはブラフなのかもしれない……、ちょっと試してみるか……
「人の道を踏み外したようなって、一体何のこt「深海化抑制薬……」……っ!!!何故それを知っているんですかっ!??」
「そのモルモットになりかけてた長月をこちらで保護したからなぁ、その長月は術後に提督とやらから情報を聞き出したとか言ってたっけかぁ……」
長月ちゃんを保護した……?保護したって事は、この人は長月ちゃんを助けたって言うの……?何で深海棲艦が艦娘を助けたの?これは一体どういう事なの……?
「まあその前に俺達は神風から頼まれて動いていたんだがなぁ、友達を、春雨 望を助けて欲しいとお願いされてなぁ」
神風ちゃんと望ちゃんの事まで……、そうなるとこの潜水棲姫はこの泊地で行われている事を全て知っていると考えていいだろう……、でも何で?何でこの潜水棲姫は敵である私達を助けようとしているの……?敵ならば普通艦娘がどうなろうと知った事ではないはずなのに……
「……俺達がおめぇ達を助ける理由が分からねぇって顔してんなぁ、それについて話をする前に確認しときてぇ事があるんだわぁ、いいよなぁ?」
確認したい事ってなんだろう?その部分を疑問に思いながらも私達を助ける理由が気になるので、私は1度だけ静かに頷いた。それを見た潜水棲姫が話を始める
「おめぇは望が普通の深海棲艦じゃねぇ事、知ってるよなぁ?」
「え?あ、はい……、あの娘の検査を最初に行ったのは私ですから……」
私の言葉を聞いた潜水棲姫は、ニヤリと笑いながら大きく頷く
「なら話がはえぇってもんだわぁ、俺達も望と同じく普通じゃねぇ深海棲艦、転生個体って呼ばれる深海棲艦だってこったぁ」
潜水棲姫の言葉を聞いた私は驚愕する、この潜水棲姫も望ちゃんと同じ……?って事はこの潜水棲姫も望ちゃん並に強いって事……?いや、その前に潜水棲姫はさっきから俺達って言っている……。つまりこの潜水棲姫には仲間がいて、その仲間も皆望ちゃんレベルの強さって事なの……?何それ怖い……、そんなのが沢山泊地に押しかけて来たらと考えると、つい身震いしてしまった
「続きいくぞぉ、そんな俺達がおめぇ達を助ける理由なんて簡単だぁ、俺達がこの泊地の提督がやっている事が非常に気に入らねぇってだけなんだわぁ。……まあ、俺と相棒には他にも事情があるんだがなぁ」
助けてくれる理由が非常にシンプル!他の事情と言うのも気になるけど、これは今は触れない方がいいのかな?うん、取り敢えず今は触れないでおこう!
「ってなわけでだぁ、分かったかぁ?分かったよなぁ?分かったんなら俺に力貸してくれるよなぁ?」
ちょっと言い方がウザいけど、事情を知った上で助けてくれると言うのであれば信じていいような気がして来た
「分かりました、私でいいなら力を貸します。……それで私は何をしたらいいんですか?」
潜水棲姫に協力する事を伝えるけど、私は一体何をしたらいいんだろう?っという事で潜水棲姫に具体的な内容を尋ねてみた
「なぁに簡単なこったぁ、俺をその手術室とやらに連れて行ってくれぇ。俺ぁこの泊地の事全く知らねぇからなぁ、何処をどう進みゃぁいいか皆目分からん。って事で道案内頼むわぁ」
「手術室ですか……、分かりました。今から案内しますので付いて来て下さい」
そう言って、私はこのネットリ喋る潜水棲姫を手術室まで案内する為に歩き始めました
「おう、しっかり頼むぜぇ……、っとぉそういやまだ自己紹介してなかったなぁ。俺は伊藤 悟ってもんだぁ、覚えときなぁ」
簡単な自己紹介を終えた悟さんはすぐに私の隣に並び立ち、私の案内に従って手術室へと進んで行きます
その道中で何故手術室に向かうのかを尋ねてみたら、提督を待ち伏せするついでに提督がやっていた移植手術の物的証拠を集める為だと言っていました
「集めた証拠は二航戦と妙高に渡しておけば、大本営に届けてもらえるだろうからなぁ。そうなりゃここの提督もお仕舞いだろうよぉ……」
そう言ってニヤリと笑う悟さん、……って二航戦と妙高……?大本営……?
「あの……、まさかその二航戦と妙高さんって……」
「あぁ、おめぇの想像通り、大本営直属主力艦隊の二航戦と妙高だぁ。俺達がここに来る為の準備をしてるところで偶然出会ってなぁ、ここの話したら全員協力してくれるって事になったんだわぁ」
クックッと笑いながら答える悟さん、まさかあの大本営直属主力艦隊の方まで来ているなんて……。私達はもしかしたら本当に助かるかもしれない、そう思うと涙が出そうになった
「明石ぃ、まだ泣くのははえぇぜぇ。俺はまだ提督を捕まえてもいねぇ、それどころか遭遇すらしてねぇからなぁ」
ニヤニヤしながら悟さんが言う、あれ?私泣いてた?全然気づかなかった……
「まあマダガスカルに向かっている連中も、あっちの用件終わり次第こっちに来るって事になってっから、早々しくじるなんてこたぁねぇはずだぁ。そうなりゃおめぇ達も晴れて自由の身になるってわけだぁ」
「待って下さい、マダガスカルにも戦力を送っているんですかっ!?」
「あぁ、そっちは穏健派深海棲艦の幹部との会談が目的だがなぁ。そっちにはウチの最大戦力3人に噂に名高いビッグセブンまでいやがらぁ、すぐにやる事やってこっちに来てくれるだろうよぉ。そうなりゃここの提督も間違いなく終わりだろうよぉ」
そう言ってまたクックッと笑いだす悟さん、気になるワードがあったけどそれは今は後回し、どうやらウチの提督はとんでもない人達を敵に回しちゃったんだな~……、これまでやって来た事から一切同情する気になれないけど……
そんな事を考えながらも歩みを進める私達、もうそろそろ目的地である手術室に着くはずだ……