『おめぇら、ここの艦娘の避難はどのくらい進んだんだぁ?』
この泊地に所属している艦娘達の救助作業を行っていた不知火達の通信機から、提督の拘束に向かっている悟さんの声が聞こえました
「全体の7割と言ったところでしょうか、伊勢さん達の協力のおかげで救助作業はスムーズに進んでいます」
『いきなりどうしたんです?何かそっちでヤバい事でも起こったりしちゃったりするんですかい?』
不知火が悟さんに現在の避難状況を報告したところで、司さんが不知火が疑問に思った事を代弁してくれました
現在不知火達は不知火、陽炎、九尺さん、天城さんのチームと司さん、龍驤さん、天津風、伊勢さんのチームに分かれて救助作業を行っています。不知火達の事情を知った伊勢さん達が協力を申し出てくれたおかげで、チーム分けによる作業効率アップと泊地の艦娘達の説得が円滑に進むようになりました。2人には本当に感謝しなければいけませんね
『司が言う通り不味い事になったわぁ……、具体的に言うと提督の奴が化物になりやがった』
『悟さん、一体何があったのですか?』
司さんの質問に悟さんが答えたのですが、その内容がいまいち飲み込めず今一度話を聞こうとしたところで、今度は大本営の皆さんと一緒にこの泊地の提督がこれまで行ってきた数々の悪行の証拠を集めに行っている神通さんが悟さんに尋ねました
『提督の奴、自分に深海棲艦の血液を注入しやがったんだぁ。そんで姿がバイオブロリーとか腐った巨神兵みたいになりやがった』
バイオブロリーと言うのが何なのか分かりませんでしたが、腐った巨神兵と言うので泊地の提督がどのような姿になったのかが想像出来ました。あの作品は名作ですからね、施設にいた時に何度も観た覚えがあります
『バイオブロリーって……、あの身体がドロドロになってるアレか……。お前そんなの相手にしながらよく通信出来るな?』
『それがなぁ、あいつ俺の事無視して絶賛食事中なんだわぁ。俺が倒した戦艦宿儺とその艤装をなぁ……』
望さんと戦っていた光太郎さんの疑問に対して、悟さんはそう答えました。戦艦宿儺とは何なのでしょうか?悟さんが倒したという事は敵だったのは分かりますが……
『宿儺については後で説明してやらぁ、それよりもおめぇらはこいつが飯食い終わるまでに艦娘達の避難を完了させなぁ。それより先にこいつが動き始めたら、そんときゃぁ俺が出来る限りの足止めはしてやんよ』
「分かりました、急いで艦娘達の避難を完了させます。悟さんもあまり無理はしないようにして下さい」
『あいあいさ~、そんじゃちゃっちゃと艦娘ちゃん達をお助けしちゃったりしましょうかね~。その後すぐにそっちに向かって悟さんの事カッコよく助けちゃいますよ~、この超イケてる俺様がねぇ!』
悟さんの指示に返答する不知火と司さん、悟さんがここまで言うとなると提督は相当危険な存在に成り果てたのでしょう……、戦艦宿儺とやらが異形艦娘だと仮定したら、それを食す提督は艦娘も食す事が出来るのではないでしょうか……?
「あの、不知火さん?今の通信はどういった内容だったのでしょうか……?」
不知火が思案しているとこの泊地の主力艦隊の1人であり、不知火達に協力を申し出てくれた天城さんから声をかけられました。そう言えば天城さんは通信機を持っていませんでしたね……
「先程の通信の内容ですが……」
不知火は天城さんに先程の通信の内容を伝えようとしたのですが……
ヴィイイイィィィーーーッ!!!ヴァアアアァァァーーーッ!!!ヴィイイヴィイイヴァヴァヴァヴァアアアァァァーーーッ!!!
チェーンソーが発するけたたましい音が、不知火の声を完全に打ち消してしまいました……
どうやら九尺さんが部屋の扉を破壊して、中にいる艦娘を引っ張り出そうとしているのでしょう。まあこれに関しては仕方がない事ですね、不知火達が今すぐ避難するようにと懸命に説得していたにも関わらず、それに耳を一切傾けず部屋の中に立て籠もろうとしていましたからね……。部屋の中から凄まじい悲鳴が聞こえますが気にしません
「ふんぬぅっ!!!よっし扉開いたよっ!」
「いくら扉に鍵が付いてても、鍵が付いてる部分を扉から切り離されちゃどうしようもないわね……、っとそれは兎も角……ここは今から戦場になるわっ!だから急いで逃げてっ!」
チェーンソーを停止させてから扉に体当たりするようにして部屋の中に侵入する九尺さんを見て、陽炎がそれらの行動に対する感想を引き攣った表情で述べた後、気を取り直してから中にいた艦娘達に避難するように呼び掛けます
「……天城達の時もそうでしたけど、これは流石に強引過ぎませんか……?」
「状況が状況ですからね、この場から離れなければ待っているのは絶望的な死だけです。不知火達はそんなものを見たくはありません、だから少々強引だったとしても彼女達にはここから逃げて、生きてもらわなければならないのです。っと通信の話でしたね、先程の通信ですが……」
天城さんの言葉に不知火はそう返した後、通信の内容を天城さんにしっかりと伝えました。……少々強引な手段だったとしても、それで助けられる命があると言うのならば不知火達は躊躇う事無くその手段を用いるつもりです。もうフェロー諸島の時のように無駄な犠牲を出したくはありませんからね……
「そんな……、提督がそんな事になっているなんて……」
不知火から通信の内容を聞いた天城さんは、口元を手で覆いながら驚愕の表情を浮かべている。自身の提督がそのような化物に変貌してしまったと聞けば、誰だってこのような反応をするでしょうね……
「戦艦宿儺と言うのがいまいちよく分かりませんが、恐らく移植手術の被害者なのでしょう、提督がそれを食べているとなると恐らく艦娘も食べる可能性があるので、急いで艦娘達の避難を完了させて欲しいとの事でした」
「まあそいももうちょいで終わるやろうね、天城さん達の
そう言って九尺さんが先程までチェーンソーを握っていた腕を回しながら不知火達の会話に加わってきました。まあチェーンソーを持ったト級が部屋に入ってくればそうなるのも仕方ないとは思いますが……
「あの時はすみませんでした……、天城達も気が動転していましたので……」
「よかよか、おいもこがんナリばしとっけんそがんなるて思っとったけんね。そいよいも次はどっけ行けばとね?向こうで陽炎の待っとうごたんよ?」
そう言って九尺さんが指差した先には、腕を組み右足をパタパタさせている陽炎の姿がありました。どうやら私達が話をしている間に、この部屋の艦娘は無事に部屋から出てくれたようです
「あんた達、お喋りはそのへんにして次に行くわよっ!」
「待たせてしまってすみません、確かここは先程の人達で最後でしたよね?」
「はい、この艦娘寮にいたのはさっきの娘達で終わりですので、次の寮へと向かいましょう!」
早く次に行くようにと急かす陽炎に謝罪を入れながら、天城さんに確認を取った後不知火達は次の場所へと移動を開始しました
こうして着々と避難を完了させていた不知火達ですが、遂に危惧していた事態が発生してしまったようです
『遂に提督の奴が動き出しやがったぁっ!ってぇこれはぁ……、足止めするのは俺1人じゃぁ無理そうだわぁ……、すまんが撤退するわぁっ!』
通信機から悟さんの声が聞こえるなり急に地面が揺れ始めました、何事かと思い周囲を見回していると入渠施設から悟さんが飛び出して来て……
「何よあれえええぇぇぇーーーっ!??」
悟さんが入渠施設から飛び出して来た直後に、入渠施設の入口を突き破って巨大な何かが姿を現しました
「あれが……提督だと言うのですか……?!」
それを見た天城さんが思わずそう呟いていました、不知火達の前に現れたそれは何とか人の形は保っているものの、その身体の表面はドロドロとした何かに覆われていました。そしてその大きさはあの大五郎よりも一回り大きく、悟さんが腐った巨神兵と例えた事に妙に納得してしまいました
「足止めするとか言っておきながらこの様だぁ、笑いたきゃ笑いなぁ」
悟さんはそう言いますが、そんな事をするつもりは全くありません。これは流石に足止めは無理だと不知火も思いましたから……
「ル"オ"ォ"ォ"ォ"ーーーッ」
不知火がそんな事を考えていると、腐った提督は咆哮を上げた後不知火達の方へと視線を向けたのでした……