「これじゃない……、これでもない……、あぁもう!アレは何処に仕舞ったんだっけっ!?」
明石さんと共に手術室を脱出した私は、明石さんに手を引かれるまま工廠へと来ていました
明石さんは工廠に着くなり、工廠の隅に置かれた大きな箱の中を漁り何かを探しているようでした
「あの、明石さん?一体何を探しているんですか?」
「武器ですよ武器っ!それもとっておきの奴ですっ!!!」
とっておきの武器?それは一体何なのでしょう?私が疑問に思っている傍らで明石さんは必死になって箱の中を漁り……
「あったー!まずは1つ!後の2つは……っと」
そう言って明石さんが箱の中から取り出したのは……
「これは……、拳銃ですか?これが明石さんの言うとっておきの武器なんですか……?」
そう、明石さんが取り出したのは1丁の自動拳銃でした。スライドの部分にアルファベットで『Cerberus』と刻まれているその拳銃は、私が見たところではちょっと変わったデザインをしていると思うくらいで他の拳銃と何ら変わりがないように見えました……
「そうです、これがとっておきの武器第1号です!……と言っても、これは私が作ったわけじゃないんですけどね……」
明石さんはそう言いながら私にその拳銃を渡すなり、再び箱の中を漁り始めます
「その拳銃と他の2つ……、グレネードランチャーとアンチマテリアルライフルなんですけど、過去に提督に処分するようにと渡されていた物なんですよ」
そう言って明石さんはそれらの武器の入手経路を話し始めました
明石さんが言うには、泊地に所属していた長門型戦艦の艦娘の娘が行方不明になった頃に、提督が急に工廠を訪れるなり明石さんにそれらの武器を渡して、使う事もなさそうなので処分するようにと指示を出したそうです
「私は工作艦ですからね、触っただけでこれらの銃がとんでもない代物だって分かっちゃったんですよ。だから提督の指示を無視して処分せずに隠しておいたんです」
明石さんが提督の指示を無視するほどの代物……、そう聞かされて改めてよく見たりペタペタと触ってみたりしてみても、素人である私にはこの拳銃の価値と言うものがよく分かりませんでした……
「この3つの銃器を作った人は、恐らく本物の天才だと思うんですよ……っとあったあった!2つとも見つけたぁっ!!!」
そう言って明石さんはグレネードランチャーと言う銃とアンチマテリアルライフルと言う銃をそれぞれの手に持って掲げ、大喜びしていました
グレネードランチャーの方には『Karkinos』、アンチマテリアルライフルの方には『Neméos léōn』と刻まれていましたが、これがこの銃の名前なのでしょうか?
「よし!探し物も見つかりましたし行きましょう!」
「え?行くって何処にですか?!」
アンチマテリアルライフルを背中に背負い、グレネードランチャーを手に持った明石さんが唐突にそんな事を言って走り出そうとしていたので、私は慌ててそれを制します
「何処って、手術室にですよ!あんな化物を相手にしているんです、いくら悟さんが転生個体だったとしてもきっと苦戦しているはずですっ!!!」
「悟さんって誰ですかっ?!転生個体って何なんですかっ?!?」
私がそう言うと、明石さんは一瞬キョトンとしたかと思えば、何かを思い出したのか慌てて私に悟さんについて話し始めました
「……あの潜水棲姫が悟さんと言う方で、悟さんとその仲間の方々は神風ちゃんの話を聞いて私達を助けに来たと……」
「ごめんなさい!龍鳳さんに悟さん達の事情を教えるのをスッカリ忘れてました!」
そう言って明石さんは両手を合わせて頭を下げます
「いえ、あの状況だったら仕方ないと思います。それよりも……、本当に助けが来てくれたんですね……」
「ええ、それも凄いメンバーなんですよ?あの望ちゃんと同じような深海棲艦、彼らは転生個体って呼んでるそうなんですが、そんな人が悟さん合わせて6人も!それにあの大本営直属の二航戦に妙高さんまで来てくれたそうですよっ!」
明石さんが興奮気味に話してくれた内容を聞いて、私は嬉しさよりも先に恐ろしさを感じてしました。望ちゃんの強さは何度か見た事があるのでよく知っています、そんな望ちゃんのような方が6人も来ていてると聞けば薄ら寒いものを感じずにはいられません……
「凄い……、よくそんなに大勢の方々を……」
私がそこまで言ったところで、外から何かが叫ぶような大きな音が鳴り響き、私の声はかき消されてしまいました
「え……?今のは一体……っ!?」
「行ってみましょう!何かヤバいのがいたら即撤退で!いいですね?!」
そう言って明石さんは工廠から飛び出して行ってしまい、私もその後を追うようにして工廠から出て行きました
「な、何なんですかあれえええぇぇぇーーーっ!??」
明石さんが目の前にいる巨大な何かを見て叫びます、正直私もその姿を見て思わず悲鳴を上げそうになりました……
「おめぇら何で戻って来たっ!?ここは今から戦場になるんだぞぉっ!!!」
私達に気付いた潜水棲姫……、悟さんが1度ギョッとした後にそう叫びます
「いくら悟さんでもあの戦艦宿儺でしたっけ?あれを1人で相手するのは大変だろうと思って武器を持って来たんですが……、それはそうとアレは何ですかっ!?」
「ありゃおめぇらんとこのの提督の成れの果てだぁ、あの提督自分に深海棲艦の血液を注入しやがったんだ。そしたらあんな姿になってなぁ……」
明石さんと悟さんのやり取りを聞いて驚愕しました、まさかあれが提督だなんて……
「それはそうと、あいつに絶対触るなよ?触れた瞬間喰われるぞ……」
「悟さん?触った瞬間喰わるってどう言う事か説明してくれん?」
悟さんの言葉を聞いた九州訛りが強いト級の方が尋ねました
「言葉の通りなんだよなぁ……、あいつの身体の何処かにちょっとでも触れたらあの表面のドロドロした液体の中に引きずり込まれて、身体を溶かされながら吸収されちまうんだわぁ……、俺は宿儺とその艤装が実際そうなってんのを見てたわけだぁ……」
それを聞いた私達全員の血の気が引きます……、触れただけでそんな事になるなんて……
「そいぎんたぁ砲撃くらいしか攻撃方法のなかね……、悟さん、そいばはよ通さん達に教えたらどがんね?はよせんぎんたぁ通さん達の来て突っ込んで行くかもしれんよ?」
「だなぁ……、それにあいつがあんな大きさになったのは宿儺と艤装を喰ってからだぁ、恐らくあいつは喰えば喰うほどでかくなるかもしんねぇなぁ……」
そう言いながら、悟さんは耳に付けているものを操作して誰かに話し始めました。内容は先程悟さんが話していた事でしたので、恐らく他のところにいる仲間の皆さんと情報共有しているのでしょう
「……っ!龍鳳さん、その手に持っているハンドガンは一体何処で手に入れたのですかっ!?」
不意に誰かが私に話しかけてきたのでその声がする方を見てみると、不知火ちゃんがとても驚いた表情で私が手にしている拳銃を見ていました
「その拳銃と私が持っている銃器2つは、前に提督から処分するようにと渡されたものなんですが……」
そう言って明石さんは不知火ちゃんにグレネードランチャーとアンチマテリアルライフルを見せました、それを見た不知火ちゃんは驚きのあまり目を見開いていました
「『ネメアーズレオン』に『カルキノス』……間違いないです、これはアリーさんが作った武器です……っ!」
不知火ちゃんの言葉を聞いた悟さんの仲間の皆さんが、驚きの表情のまま一斉に不知火ちゃんの方を見ます、皆さん一体どうしたのでしょうか……?
「不知火、それ本当なの……?」
「はい、剛さんにそのあたりの事を色々と教えてもらいました。その中にこの2つの名前があったんです、どちらもギリシャ神話でヘラクレスに倒された怪物の名前……、剛さんが手に入れた武器も皆そうだったので間違いありません」
私にはサッパリ分からない話でしたけど、皆さんの反応を見る限りだとこれらの武器は明石さんが言っていたように、とんでもない代物なんだと言うのが分かりました
「明石さん、その銃器をどちらか貸してもらえませんか?」
不知火ちゃんが鬼気迫る表情で明石さんにお願いしていました。正直あまりの気迫に気圧されてしまいました……
「か、構いませんけど……、不知火さんはこれらの武器を使えるんですか?」
「問題ありません、これらの銃器の扱いは剛さんからしっかりと教えてもらいましたから。それに……」
不知火さんは明石さんからアンチマテリアルライフルを受け取り、動作確認をしながら言葉を続けました
「恐らくですが、ネメアーズレオンとカルキノスは戦艦主砲クラスの火力があると思われます。それらの火力はこの戦いで重要になってくる、不知火はそう考えています」
ネメアーズレオンの動作確認を終えた不知火さんは、まるで戦艦艦娘のような眼光で提督だった怪物を見据え、こう言い放ちました
「徹底的に追い詰めてやるわ」
「不知火がやる気になってるみてぇだなぁ……、っとぉ司の方から連絡だぁ、ここの艦娘達の避難が完了したんだとよぉ。って事でおっ始めるぞっ!艤装ねぇ奴はとっとと取ってきなぁっ!全艦、一斉射撃……、始めぇっ!!!」
悟さんの号令と共に、皆さんが一斉に提督だった化物へ砲撃や艦載機による爆撃を開始しました。私も工廠に行った時に念の為にと装着していた艤装で艦載機を発艦させた後、例の拳銃を提督だった化物へ向けて幾度となく発砲するのでした
こうして泊地の提督だった怪物との戦いが始まった……