悟の号令によって泊地の提督との戦いが始まるその少し前まで時間は遡る……
「ミサイルの時もそうだったッスけど、アリーさんとやらはホントとんでもない人みたいッスね~」
護が望ちゃんに取り付けられた首輪を外す為に、キーボードをカタカタと操作しているその最中にそんな事を呟いた
俺の重機アームに拘束されている望ちゃんの様子はと言うと、護が奏でるキーボードの操作音がする度に苦悶の表情を浮かべながら、重機アームから逃れようと必死になって身悶えしていた
「どうしたんですか?唐突にアリーさんの話題を振るなんて」
護の呟きを聞いて、望ちゃんの拘束が外れた時に備えて待機している通が、不思議そうにそう尋ねる
「いや~、この首輪のプロテクトに使われているコードなんッスけど、なんか似てるんッスよね~、あの弾道ミサイルのプロテクトのコードと」
キーボード操作の手を止める事無く護が答えた、答えてくれたんだが……
「あの、コードって何ですか……?」
俺の今の気持ちを神風さんが代弁してくれた
「コードって言うのはコンピュータを動かす為の命令文みたいなもんッス、そんでこのコードは入力した人のクセが出たりするんッスよ。んでんで、さっきこの首輪のプロテクトと弾道ミサイルのプロテクトのコードがよく似ているって言ったじゃないッスか?」
ここまで話を聞いたところで流石に皆気付いたのか、あのミサイル地獄を味わったメンバーの表情が険しくなった
「まさか……、その首輪を作ったのって……」
「恐らくアリーさんッスね、ホント色んな事に精通してるッスね~あの人は」
「そうなると、この泊地の件にもアリーさんが関わっていると……」
ここでもアリーさんが暗躍しているのか……、いくら戦争がしたいからって色んなとこに首突っ込み過ぎだろう……
「まあ、そのあたりの話は泊地にカチコミに行った面子から話を聞くとして……ッス」
そう言って護がキーボードのエンターキーを押すと、カキンッ!と言う音と共に望ちゃんの首に付いていた首輪が外れた。それと同時に重機アームの中であんなにもがいていた望ちゃんが急に大人しくなる、その表情を見るとどうやら気絶してしまったようだ
「首輪の解除完了ッス!身体に異常が無いかについては悟さんが戻ってから調べてもらうとして、取り敢えず自分達の方の目的は達成したッスね」
「そうだな……、取り敢えずは、な……」
護の言葉にそう返す俺、確かに望ちゃんから首輪を外す事には成功したが、果たして本当にこれで大丈夫なのだろうか?もしかしたら意識が戻らずにずっと眠ったままになったりしないだろうか?そういった不安ばかりが俺の頭の中をよぎり、正直気が気でないのである……
望ちゃんが泊地の提督に捕まり薬の実験台にされていたという話も、俺の不安に更に拍車をかける。それが原因で身体に異常が出ていたりしないだろうか?身体だけではない、薬のせいで精神崩壊など起こしたりしていないだろうか?もう不安で不安で仕方がなかった……
俺はそんな不安を抱えながらも、重機アームで掴んでいる望ちゃんを神風さんの前に優しく降ろしてあげると、神風さんは今も気絶している望ちゃんを優しく抱きしめていた
「光太郎さん、望ちゃんの事を心配するのもいいですが、今は泊地に向かった皆さんの心配もしましょう」
どうやら俺の不安は顔に出ていたようだ、通に指摘されるまで全く気付かなかった……
「そういや首輪の解除に結構時間かかったはずなんッスけど、証拠集めチームがまだ帰って来てないッスねぇ……」
護の言葉を聞いて気付く、護が言う通り首輪の解除にはかなりの時間がかかっていたのだが、その最中に証拠集めチームや救助された泊地の艦娘がこちらに来た事が1度も無かったのである……、まさか道中で何かトラブルでもあったのだろうか?
「……どうやらあちらもちょっと手間取ってただけのようですよ」
通がそう言いながら泊地がある方角を指差す、その先を目で追ってみると泊地から出て来たと思われる大勢の艦娘達がこちらに向かって来ているではないか。先頭にいる艦娘が俺達の姿を見て一瞬ギョッとするが、その近くで望ちゃんを抱いている神風さんの姿を視認すると今度はホッとした表情をして俺達に近付いて来た
話を聞くとやはり司達が救助した泊地所属の艦娘達だった
「……神通さん達の姿がない……、まだ向こうにいるのでしょうか……?」
通がそう言った直後、悟から艦娘の避難状況の確認の通信が入る……
「とんでもない事になったッスね~……」
悟の通信を聞いた護がそう呟く、まさか泊地の提督が化物になるなんて……、そんなの誰が予想出来るだろうか……
「光太郎さんっ!!!」
唐突に通が声を上げる、その表情から神通さんの事が心配で心配で仕方ないと言った様子だ
「……よし、俺は今から皆と合流して一緒に提督に攻撃を仕掛ける、通は証拠集めチームの方に向かってくれ、もしかしたら何かあったのかもしれないからな。護はここの皆の事を頼んだぞ、神風さんと長月さんは護のサポートをよろしくね」
\了解!/
「それじゃあ、各自行動開始っ!」
俺は皆に号令をかけると、皆はそれぞれの役目を果たす為に動き出した
「砲撃音……、悟達が攻撃を開始したのか……。だったら急がないと……っ!」
泊地に向かう道中で、悟達が戦闘を開始した事を告げる砲撃音や艦載機の爆撃によって発生している爆発音を聞いた俺は、そう呟いて更に速度を上げていく。それらの音を辿るように進路をとって行くと……
「あれが泊地の提督か……、本当にドロリーみたいになってるじゃないか……」
泊地の提督の成れの果てである化物の姿を確認出来た、一体何がどうしたら人間がこんな姿になるのだろうか……?いや、今はそれどころじゃないな、提督だったものは自身に攻撃してくる悟達に殴りかかろうと腕を引いているところだった
「させるかっ!!!」
俺はそう叫び放水砲を出力90%で放ち、提督だったものが今にも撃ち出そうとしている腕に直撃させた後、自身の腕を振り上げて提督だったものの腕を切断する
放水砲によって切断された腕は、入渠施設と思わしき建物に勢いよくぶつかりその壁を破壊してその内部へと消えて行った。取り敢えずこれで一安心といったところだろうか
「すまん!遅くなった!」
「遅ぇぞばぁたれ!だがよくやったぁ!」
俺は皆と合流するなり遅れた事に関して詫びを入れ、それに対して悟が文句を言いながらも腕を切断した件を褒め称える
「光太郎も加わった事だぁ、派手にやってy……」
悟が皆を鼓舞しようと何かを話そうとしたのだが、それが途中で止まってしまった。提督だったものの方に変化があったからだ
まず先程俺が切り落とした腕だが、提督だったものは残った腕をそちらの方に向けてから勢いよく伸ばして入渠施設内に落ちているそれを掴んだかと思えば吸収し、腕を再生させてしまったのである
それだけではない、急に腰の方が盛り上がったかと思えばその中から長門型の艤装が出現したのである。こいつこんなの何処から持って来たんだよ……
「こいつぁ……、まさか宿儺の艤装に付いてた長門型の艤装かぁ……?喰ったもんを使えるようになるとかどこの桃色玉だよ……」
俺がそんな事を考えているその隣で、悟がそんな事を呟いていた。宿儺の艤装に長門型艤装……?その言葉を聞いた瞬間嫌な予感がした
「悟さん……、まさかと思いますが……」
「あぁ、戦艦宿儺は長門型艦娘に戦艦水鬼を埋め込んだ異形艦娘なんだわぁ、その結果長門型の艤装を装着した戦艦水鬼の艤装なんてオプションが付いてやがった」
悟が不知火ちゃんの言葉に返事をした直後、提督だったものの身体から今度は戦艦水鬼の艤装に付いている砲塔が出現するのだった