※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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変身

「ちょっと!これは一体どういう事なのさっ!?」

 

「これは……、長門型の艤装に戦艦水鬼の艤装ですか……?!」

 

提督だったものが変貌したそのすぐ後、工廠に自分達の艤装を取りに行っていたらしいこの泊地の主力艦隊の艦娘達が戻って来るなり、それぞれの疑問を俺達にぶつけてきた

 

「天城の言う通り、提督から生えてるのは長門型の艤装と戦艦水鬼の艤装の砲塔部分なんだわぁ。恐らくあの提督は吸収した相手の力を使えるみてぇだなぁ……、まあそんなところだわぁ、分かったかぁ?伊勢ぇ」

 

悟の話を聞いた伊勢さんは納得いかないと言った顔をしながら押し黙る、多分聞きたかったのは提督がこうなった経緯だったんだろうな~……

 

「も、もし私達が提督に吸収されてしまったら……」

 

「そうなったら俺達の艤装があいつの身体に仲良く並ぶ事になっちまうなぁ、それは嫌だったら絶対に提督に触れるんじゃねぇぞぉ、何たって触れただけで無理矢理引き込まれてドロッドロに溶かされながら吸収されちまうんだからなぁ」

 

「悟さん、羽黒をあまり脅かさないで下さい。大丈夫よ羽黒、そんな事私が絶対にさせませんから!」

 

悟の話を聞いて怯えだす羽黒さんに、それを落ち着かせようと話しかける妙高さん

 

俺達がそんなやり取りをやっていると、艤装を展開した提督が動き出した

 

先程展開した艤装で砲撃する為だろうか、俺達を見定め砲塔と砲身を動かし……、動かし……?

 

「……あれは何をしているの?」

 

天津風ちゃんが提督の艤装に付いている砲塔と砲身の挙動を見て思わずそう呟いた

 

提督の艤装の砲塔と砲身は、さっきからガチャガチャガチャガチャと忙しなく動いているのだが、一向に俺達の方に向く気配がしないのである

 

「なんだか、必死になってこちらに照準を合わせようとしてるけど、艤装が言う事を聞いてくれないって感じですね……」

 

今度は由良さんが言う、言われてみれば確かにそう見える気がする……。提督の表情は変わらないが、なんだかイラついてきている雰囲気だけは感じ取ることが出来た

 

「……あれ、もしかしたら艤装が暴走しとるんかもしれんなぁ……」

 

龍驤さんがそんな事を呟く、そういえば艤装って使える人は女性ばかりなんだっけ……?それに適正とかいうのが無いと、艤装をまともに扱えないとかなんとか……?

 

「ル"オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"ーーーッ!!!」

 

俺がそんな事を考えていると、提督が急に咆哮を上げ……

 

「ちょっ!?撃って来たぁっ!」

 

「照準が上手く合わせられなかったからと言って、無差別攻撃に走るとは……っ!」

 

陽炎ちゃんと不知火ちゃんが驚きの声を上げながら回避行動に移っていた、不知火ちゃんが言っていたように提督はどうやら照準を合わせるのを諦めたようで、荒ぶる砲塔と砲身などお構いなしと言わんばかりに砲撃を開始したのである

 

これは不味い事になった……

 

まず敵の攻撃が予測し辛い、直接こちらに飛んで来る砲弾もあれば、明後日の方向へ飛んで行ったかと思えば、艦娘寮などに当たって建物を吹き飛ばしその瓦礫がこちらに向かって飛んで来たりするのである

 

「ゥ"ォ"オ"ロロロ……、ゴボッ!ゲボォッ!ゥ"ォ"エ"エ"エ"……」

 

「悟さんっ!?大丈夫ですかっ?!」

 

次に悟がダウンした、提督の砲撃が原因で建物火災が発生してしまい、それを運悪く悟が直視してしまったのである。特に弾薬庫や燃料保管庫なんかが激しく燃え盛り、近くにある建物が次々と延焼していくのである

 

更に厄介事が続く……

 

「っ!?ここに来て弾薬が……っ!」

 

妙高さんが舌打ちしながら言う、そう、伊勢さん達みたいに途中から参加した娘は兎も角、最初のあたりから提督への攻撃を仕掛けていた艦娘達の弾薬が尽き始めてきたのである

 

「こっちも艦載機の機銃の弾と爆撃用の爆弾が尽きちゃったよっ!」

 

「このままじゃこっちの攻撃手段がなくなっちゃうよっ!どうするのっ?!」

 

資料集めチームの弾薬が尽きたところで、提督に攻撃を続けられるのが泊地の艦娘達と俺だけになってしまった

 

「くっ……!弾薬が尽きた人は悟を連れて下がって!そして……」

 

俺は皆に指示を飛ばしながら通信機を操作して

 

「護っ!お前のミサイルってここまで届くかっ?!」

 

『問題なく届くッスけど、なんかあったんッスか?』

 

「殆どの娘の弾薬が尽きて攻撃手段が激減したんだよっ!」

 

俺が叫ぶように返答すると、通信機の向こうの護がうへぇと呟き

 

『そういう事なら了解ッス!つか、その提督タフ過ぎるんじゃないッスか?』

 

「どうやら自己再生してるっぽいんだよ、でも攻撃を続けていたらいつかきっとそれも止まるはずだっ!確証なんてないけどなっ!!!」

 

『再生が追い付かなくなるほどの飽和攻撃……は現状では無理ッスけどシャチョー達が来たら何とかなるかもッスね。OK、取り敢えずそれまでの足止めって事で攻撃開始するッスよ~!』

 

俺は護に頼んだと言って通信を切り、提督への攻撃を再開するのだが……

 

「きゃあああぁぁぁ~~~!!!」

 

入渠施設の方から悲鳴が聞こえ、そちらの方へ視線を送ると……

 

悲鳴の主である睦月型駆逐艦7番艦 文月が入渠施設から飛び出したところで提督の姿を直視してしまい、恐怖のあまり座り込んでしまっている姿を目撃してしまったのである

 

「文月ちゃんっ!!?」

 

そしてその姿を見た龍鳳さんが急いで文月ちゃんのところへ駆け寄ろうとしたのだが……

 

「っ!?龍鳳さんっ!!下がって下さいっ!!!」

 

何かに気付いた神通さんが龍鳳さんに鋭い声で叫ぶ、何事かと思っていたら龍鳳さん目掛けて飛んで来る瓦礫を発見、これは不味いと思い俺が走り出そうとすると……

 

「きゃぁっ!」

 

龍鳳さんが物凄い勢いで後方にすっ飛んでいく、何が起こったのか分からず龍鳳さんの後ろの方を見てみると

 

「カフ……ッ!ハァ……ハァ……、ェ"ア"ァ"……」

 

吐くものが無くなり、苦しそうに喘ぐ悟の姿が見えた。九尺に支えてもらってやっと立っている状態であるにも関わらず、縫合糸を飛ばし龍鳳さんを助けたのである

 

「光太郎……、文月……、早く……っ!」

 

掠れて途切れ途切れの声で叫ぶ悟、それを聞いた俺はすぐさま文月ちゃんの方へと向き直り、全速力で駆け出した。先程の悲鳴を聞いた提督が文月ちゃんの存在に気付いてしまったからだ

 

そんな中提督が文月ちゃんの方へと腕を伸ばし始める、恐らく文月ちゃんを吸収して少しでも強くなろうとしているのだろう……そんな事は絶対にさせない……っ!

 

泊地所属の多くの艦娘達が救えた、一部の異形艦娘達も救えた、そしてあちらの世界では救ってあげられなかった望ちゃんをこの世界でようやくこの手で救う事が出来た……

 

幾度となく俺を苛み続けてきたトラウマを、ようやく乗り越えられると思っていたところで、また俺の目の前で命が消えようとしているのである……

 

また俺はあの悲劇を繰り返すのか……?またあの苦しみを味合わなければいけないのか……?

 

否、断じて否!俺はもうあの頃の俺とは違う!俺はもう誰も見殺しになんてしないんだ!

 

「させるかあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

俺はそう叫びながら文月ちゃんの下へと疾走する、文月ちゃんを助け出すと言う思いが俺の中で熱く激しく燃え上がり、その熱が胸から全身へと広がっていくような感覚に陥る。するとどうだ、身体中に力が漲ってくるではないかっ!そのおかげなのか身体がまるで羽毛のように軽く感じる、これならもっと速度を出せるかもしれないっ!!!

 

そう思って地面を蹴る足に更に力を籠めると、思った通り更に加速する事が出来た。これならきっと文月ちゃんを助け出せるっ!!!

 

提督の腕が文月ちゃんに近付く、加速する、更に近づく、更に加速する

 

それを幾度となく繰り返していると、まるでスローモーションの映像でも見ているのではないかと思うほどに周りの風景が、世界がゆっくり動いているように見えて来た。そして俺は遂に文月ちゃんのところに辿り着き……

 

「でぁあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

文月ちゃんを抱きかかえ、提督から距離を取ったところでブレーキをかけ……って制動距離が凄い事になってるんですがぁっ!!!ギャリギャリとコンクリを削りながら滑る俺、結局勢いを殺しきれず艦娘寮だった瓦礫に突っ込んでしまった。当然だけど抱きかかえた文月ちゃんに被害が及ばないように、激突する寸前に体の向きを変えて背中から瓦礫に突っ込んだから文月ちゃんは無事である

 

「痛ててて……文月ちゃん、大丈夫?どこか痛くない?」

 

文月ちゃんに声をかけてみるも、彼女は目を何度もパチパチさせるばかりでそれ以上の反応がない……。多分俺の姿を見て驚いているのかもしれない、普通に考えたらそうだろうなぁ……、まさか深海棲艦が助けてくれるなんて夢にも思わないだろうからね~……

 

「……お~い」

 

念の為にもう1度声をかけてみると……

 

「ヒーローだぁ……」

 

全く予想外の言葉が返って来た、ヒーローってどういう事?俺の方見ながらそう言ってるから俺の事なんだろうけど……俺って南方棲戦姫だったよね?

 

そんな事を考えながら文月ちゃんを見ていると、視界の端に見慣れないものが映った。何かえらく近未来的なデザインをしている厳ついガントレットみたいなものが文月ちゃんの身体を支えて……ってぇっ!

 

「何じゃこりゃぁっ!?!!?」

 

そう、今文月ちゃんの身体を支えているのは俺の腕のはずだから、この近未来的なデザインのガントレットは俺の腕に付けている事になるのだ

 

文月ちゃんを優しく降ろしてあげた後、改めて自分の姿を見てみると……

 

「いやマジでなんだこれ……」

 

俺が着ていた服はメタルヒーローのパワードスーツに甲冑の要素を盛り込んだようなものに変化しており、艤装も腕同様近未来的なデザインになっているではないか

 

誰かに俺の身に何が起こったのか説明してもらおうと思い、皆の方を見てみると……

 

「光太郎さんが……、ヒーローに変身しちゃった……」

 

皆目を見開いて固まってしまっていた……、そんな中誰の呟きか分からなかったけどそんな言葉が聞こえてきた……

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