文月ちゃんを助けようと必死になって走ってたら、知らない間にヒーローに変身していた
……うん、状況を整理しようと考えれば考えるほど、どうしてこうなってしまったのかが益々分からなくなった
誰かに話を聞こうにも、皆驚きのあまり呆然としちゃってるし……
「ル"オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"ーーーッ!!!」
ってそんな事考えてる場合じゃなかった!提督だったものが誰よりも先に我に返り、雄叫びを上げながらこちらに拳を向けて来たのだ
「文月ちゃん、独りで皆のところに行けそうかい?」
「うん~、文月は大丈夫だけど~……」
文月ちゃんはそう言って心配そうに俺を見つめる、俺が独りでと言った事で今から俺が何をしようとしているのかを察して心配してくれているようだ。皆が文月教とか言って、この娘を持ち上げている理由が分かったような気がした
「俺の事なら大丈夫、なんたってヒーローだからねっ!」
俺は文月ちゃんにそう言って、彼女の頭を優しく撫でてあげる
「う~……、分かりました~……。でもヒーローさんも無理だけはしないで下さいよ~……?」
未だ不安そうな表情は変わっていないが、文月ちゃんはそう言って俺の言葉に従い皆の下へと走って行った
「さて……っとぉっ!」
俺は皆のところへ向かう文月ちゃんの背中を見送った後、すぐさま地面を蹴って左の方へスライド移動する。すると今まで俺達が立っていた場所に提督だったものの拳(?)が突き刺さる、提督だったものの動きが緩慢だったからこそ間に合ったって感じだな……
「お前ら!いつまでもボーっとしてないでさっさと行動起こせっ!!!」
俺がそう叫んだ事でようやく皆が我に返って行動を再開、撤退の準備を開始するのだった
皆の動きを見て、一部が撤退しようとしているのに気付いた提督だったものは俺から視線を外して、そちらへ攻撃しようとするのだが……
「させるかよぉっ!!!」
俺は提督だったものの注意を皆から逸らす為に、そう叫びながら放水砲を放ったんだが……
「ぶっ!?変わってるのは見た目だけじゃないのかよっ?!」
なんと放水砲だったものからレーザービームが出た、ホントどうなってんだこれ……?
俺が放ったレーザーは提督だったものから生えている戦艦水鬼の艤装の右肩に付いている砲塔に直撃し、ものの見事にその砲塔を破壊したのである
その結果提督だったものの注意は皆から逸れ、この状況で最も危険な存在であると認識された俺の方へと意識が集中する
「そうだ!お前の相手はこの俺だっ!皆のところに行きたかったらまず俺を倒すんだなっ!!!」
言葉が通じるか分からないが、提督だったものを挑発して更に意識を釘付けにしようとする俺。何としてでも提督だったものの意識を俺に向けさせ続けなくちゃいけないからな!
「ル"オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"ーーーッ!!!」
提督だったものは再び咆哮を上げ幾度となく俺にその拳を振り下ろす、無差別砲撃も右肩の砲塔を破壊したとは言え未だに続いており、砲弾や瓦礫もこちらに向かって飛んできている
だが……!
「遅い遅い!そんな攻撃掠りもしねぇぞっ!!!」
俺はそれらの攻撃を全て回避する、心なしかいつもより反応速度と移動速度が上がっているようでかなり余裕を持って提督だったものの攻撃を躱し続ける
「そこっ!」
そして隙あらばレーザーを放ち提督だったものに生えている砲塔を破壊していく、試しに放水砲の出力を上げてみると、発射されるレーザーの威力と太さが強化されていた。出力を上げたレーザーを左肩の砲塔に当てると、なんと砲塔が爆発する事も無く消滅していた……、この武器やべぇ……
そんな調子で提督だったものの相手をしていると、龍驤さんから通信が入った
『撤退の準備が完了したでっ!光太郎さんが助けた文月も無事合流出来たし後は光太郎さんだけやっ!』
文月ちゃんは皆のところに無事辿り着けたか……、ちょっとだけホッとしたけど提督だったものがいる限りまだまだ油断は出来ない……
「こいつは戦治郎達が来るまで俺と護で何とかする!だから皆はすぐに撤退を開始してくれ!弾薬が残ってる娘は撤退する皆の護衛を頼んだっ!!!」
『そう言う事ッスから、皆早くこっちに来るんッスよ~。特に悟さんは望ちゃんの容態を確認する為にも早く来て欲しいッス、っと光太郎さんに頼まれてたミサイル、そろそろそっちに着くはずッス』
そんなやり取りをしていると、無数のミサイルが飛来し提督だったものに直撃、盛大に爆発していた
『了解や……、光太郎さん、無理だけはせんといてな』
分かってる、俺がそう答えると龍驤さんは通信を切り、皆が泊地から離れていく姿が俺の視界の隅にチラリと映った
「グオ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"ーーーッ!!!」
また提督だったものが咆哮を上げた、どうやら皆が撤退を開始したのに気づいたようで、その咆哮には悔しさと怒りが混ざっているような気がした
「そんな姿になっても多少は感情が残ってるみたいだな……、いや、そうなったからこそ感情を出せるようになったのか……?」
俺は飛んで来る量こそ減ったものの、未だに飛んで来る瓦礫と砲弾を躱しながらそう呟いた
「まあどちらでもいいか、今更感情がどうのこうの言ったところでこいつがやらかした事が覆るわけでもないし……なぁっ!!!」
俺はそんな事を言いながら、提督だったものの背後を取り長門型の艤装にレーザーを当てて破壊、これによりようやく無差別砲撃を止める事に成功したのだった
「オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"ーーーッ!!!」
すると、提督だったものは上半身だけをグルリと回転させ俺に裏拳を繰り出してきた
俺はそれを回避しようと後ろに跳ぼうとするが……
「やっべ!!!」
俺の背後には先程まで艦娘寮として艦娘達の生活を支えていた瓦礫があり、俺の回避行動を阻害していたのである。どうするか悩んでいる間にも提督の腕は俺の方へと迫って来ていた、左右がダメ、前後もダメ……、そうなると残るは……
「こうなったらっ!」
俺はそう言って地面を蹴って天高く跳び上がる、……ってちょっと蹴り足に力籠め過ぎた!思った以上に高く跳んじゃったよっ!このままじゃ提督だったものの攻撃を躱せないっ!!!
そんな事を考えていると、提督だったものの裏拳は俺の遥か下を通過、俺の姿が無いにも関わらず裏拳の手応えがなかったのが不思議だったようで、辺りをキョロキョロと見回す提督だったもの
やがて提督だったものは上空から落下する俺を見つけ、迎え撃たんと腕を振り上げて来た。これは不味い!俺はそう思い一か八かの賭けで両脇と腰の左右に付いている放水ヴェスバーを一斉に前方に放つ
その反動で少し後方に下がる事は出来たけど、これだけじゃ回避しきれない!何とかもうちょい後ろに下がれないかっ!?
そう思った時、凄い勢いで俺の身体が後方に下がる。今度は何だっ!?何が起こったっ?!こんな感じで混乱している俺の耳に、何処からともなくロケットエンジンの噴射音が聞こえてきた、そして気が付けば俺の身体はこれ以上落下する事なく、空中に浮かんでいた……
まさかと思って背中に背負った放水砲用の貯水タンクを見てみると、貯水タンクは大きなスラスターに姿を変えており、それに付随するようにバーニアがちょこんと付いているではないか……、恐らくさっきのはこれのおかげのようだ……
「まさか俺まで飛べるようになるとはな~……」
俺はそんな事を呟きながら、スラスターの出力を調整しゆっくりと提督だったものの目の前に着地するのだった……