今年もこの『鬼の鎮守府』を楽しみながら書いていきたいところです
無事完結出来るよう頑張りたいと思います
半壊した入渠施設の中、外で激しく鳴り響く砲撃と爆撃の音を聞きながら己の無力さを嘆く
提督の命令で自室で待機していた私と龍鳳でしたが、突如私達の部屋に訪れた提督が細かい説明もなく龍鳳を連れ出そうとしたのです
嫌がる彼女を助ける為に私は提督に詰め寄ったのですが、提督は懐から取り出したスプレーのようなものを私に吹き掛けてきて……、それからの記憶がありません……。恐らくあのスプレーは、提督が作った暴徒鎮圧用の催眠ガスか何かだったのでしょう
私が意識を取り戻した時には、既に2人の姿は何処にも見当たりませんでした……
それに気付いた私は提督の暴挙を止めようと自分の艤装を取りに急いで工廠へと向かうのですが、そこには普段いるはずの明石の姿もありませんでした。まさか明石も提督に……?私の中にそんな考えと共に焦燥感が募ります
私はすぐに艤装を装着し提督達を見つけ出す為に泊地の中を走り回りますが、提督達の姿を見かける事はありませんでした……。途中で何度か提督達とは違う複数の気配を察知し、物陰に身を潜めてやり過ごしましたが、あれは一体何だったのでしょうか……?まさかこの状況で侵入者……?
気配の正体は確かに気になるところではありますが、今は龍鳳達の事の方が重要だと考え直します。仮に本当に侵入者だった場合、いくら腕に自信があっても独りでは太刀打ち出来ないかもしれないので、龍鳳達を救出した後侵入者の排除に協力してもらおうと思ったのです
そして提督達を見つけられないまま、未だに捜索していなかった入渠施設に入り提督達を探していたのだけど、唐突に何かが壁を破壊するような音と共に入渠施設が激しく揺れ動きました。この入渠施設で一体何が起こっているのだろうか……?
「きゃ~~~っ!」
そんな事を考えている私の耳に、女の子の悲鳴が聞こえてきました。私がその声が聞こえた方向を見てみると、頭を抱え蹲る文月の姿がありました
「文月っ!?一体どうしたのっ?!」
「あっ!加賀さんっ!」
私は文月に慌てて声を掛けると、それに気付いたのか文月は私の方を見るなりその目に涙を湛えながら駆け寄って来ます
私は飛びつくように抱き着いて来た文月を落ち着かせながら、彼女に事情を聞く事にしました。まず彼女がここにいるのは遠征の後お風呂に入っていたからだそうで、お風呂を出ようとしたところで龍鳳の悲鳴が聞こえ、それが怖くなって脱衣所に籠り悲鳴が聞こえなくなるのを待っていたとの事……
龍鳳はここに連れて来られていたのか……、そんな事を考えている私を余所に文月は話を続けます
悲鳴が聞こえなくなった後、文月は勇気を出して脱衣所から出て入渠施設の出口に向かっていたそうなのだけど、その途中で慌ただしい足音が聞こえてきた為物陰に隠れてしまったそうだ
「それでね、文月は誰が来たのか気になっちゃって隠れながらコッソリ覗いてみたの。そしたらね、明石さんと真っ白い女の人が並んで走って行ってたの」
明石は提督に連れて行かれたわけではなかったのね……、それよりも明石と一緒にいた女性とは一体何者……、もしかして本当に侵入者……?でも何で侵入者は明石と行動を共にしていたの……?まさか明石はそいつらと内通していたとか……?
私がそんな事を考えていると再び入渠施設が揺れる、今度の揺れは先程と違いまるで誰かが入渠施設内で暴れているかのように連続して揺れているのである
「ここに留まるのは危険ね、取り敢えずここから出ましょう」
私は文月にそう提案すると文月は私の目を見ながら頷き返してくれました、それを見た私は文月の手を握り出口へ向かって走り出すのですが……
「……っ!?」
後方から足音が聞こえて来た為、私は文月の手を引き物陰に隠れました。恐らく先程文月が言っていた明石と誰かが戻ってきているのではないかと思ったからです。物陰に隠れながら耳を澄ますと、足音と共に話し声が聞こえてきました
「明石さん!あれは一体どういう事なんですかっ!?」
「そんな事は後回しっ!今は無事に工廠に行く事だけを考えて下さいっ!!!」
……今のは明石と……、龍鳳っ?!これはどういう事なの?さっき文月が言っていた白い女性とやらは何処へ行ったの?
私は2人に事情を聞こうと追いかけようとしますが……
「きゃ~~~っ!!」
またも壁を破壊するような音が鳴り響くと同時に先程よりも大きな揺れが発生し、私と文月は思わずその場に座り込んでしまいました
揺れが収まると今度は砲撃音、音の大きさから恐らく戦艦の主砲クラス……っ!?本当にこの入渠施設で一体何が起こっているのっ!?
私が混乱しそうになったところで、私の腕がグイグイと引っ張られる。そこには今にも泣きだしそうな文月の姿があった、ここで私が混乱しようものなら彼女が不安になってしまう、そう思った私は何とか冷静さを保つ事に成功し、彼女を連れて再び出口へ向かうのでした
もう少しで出口というところで、最悪の事態が発生しました。これまで幾度となく振動に耐えて来た入渠施設の壁が、まるでタイミングを見計らったかのように崩落し私達に降り掛かって来たきたのです
「っ!?」
それに気付いた私は文月が崩落に巻き込まれないように、咄嗟に彼女を前方に投げ飛ばしました。その直後私の下半身は崩落した壁に圧し潰されてしまいます……
「加賀さんっ!?」
「私に構わず行きなさいっ!」
私に投げ飛ばされた文月は、下半身が瓦礫に埋まっている私を見て慌てて駆け寄ろうとするのだけど、私はそれを制し早く脱出するようにと声を張り上げます
「でもぉ……」
「この状況、貴女独りでどうにか出来るものではないわ。だから貴女は助けを呼びに行って頂戴、そうしたらきっと私も助かるはずだから……」
私は文月にそう言い聞かせると、彼女は頷き走り出します。これできっと彼女は大丈夫なはず……、私はそう思いながら彼女の背中を見送るのでした
それからしばらくすると、またも足音が聞こえてくる。恐らく文月が言っていた真っ白い女性のものなのかもしれない。一瞬助けを求めようかと思うも、素性が分からない相手に助けを求めるのもどうか、最悪トドメを刺しに来るのではないかと考え思い留まる
足音が近づいて来たところで、私は気付かれにくくする為に息を潜め足音が通り過ぎるのを待つ。ある程度足音が遠のいたと思ったところで、今度はズシンズシンと重量がありそうなものが歩いているような音が聞こえた為、またも息を潜める……
重そうな足音がある程度通り過ぎた後、そちらの方へ視線を向けると得体の知れない化物がこの目に映る……。あれは一体何なのだろうか……?ただ1つ分かるのはあの化物が非常に危険な存在である事……、私の直感がそう告げていた……
化物が完全に遠のくと、この場所にいるのは身動きの取れない私だけになる。そうなると頭が勝手に余計な事を考え出す……
思えば、私がこうなるのは必然だったのかもしれない……
私は提督がこの泊地で何をやっていたのかを知っていて……、いや、それどころかその切っ掛け、提督が指輪を渡したあの娘が沈むその瞬間をその場で見ていたのだから……
もしあの時私が彼女を助ける事が出来ていたら……、そんな負い目があった為私は提督に強く言う事が出来ず、提督の暴走を止める事が出来なかった……。その結果多くの艦娘達が提督の魔の手にかかり、今も苦しんでいるのである……
それどころか、私は任務と称して移植手術の材料となる深海棲艦を捕獲し、提督の暴挙に加担していた……。そうしなければ今いる泊地の艦娘に渡している後遺症の症状を抑える薬を作るのをやめる、それどころか泊地の艦娘全員を実験の材料にすると言われたから……
もし私がそんな脅迫に屈することなく、大本営に提督の事を通報していたらきっと救えたかもしれない艦娘がいたはずなのに……、そうは思ってもその切っ掛けが私にあると思うと提督を通報する事が出来なかった……
そう考えると私の最期がこのような形になるのは仕方ない、むしろお似合いではないか……、そう思っていると……
「うおっ!何で動かねぇんだとか思ってたら瓦礫の下敷きになってて動けなくなってたのかよっ!?」
私の頭上から唐突に声が聞こえてきた、そちらの方へと視線を向けてみると……
「……っ!?中間棲姫っ?!」
「中間……ってあぁ、俺の事か。んまぁ今はんなこたぁどうでもいいな、ちっと大人しくしとけよ~……、ってそういや光太郎からこういう時は千切れる可能性あっから無理に身体を引っ張るなって言われてたっけな……、って事でっ!」
驚愕する私の事など知った事ではないと言った調子で、この中間棲姫は私の下半身を圧し潰す瓦礫に手を掛けるのでした
「貴女……、何をしようとしているの……?」
「んあ?何って……」
中間棲姫は私の質問に答えながら、私の上にある瓦礫の1つを片手で持ち上げます。この中間棲姫、どんな腕力をしているのですか……
「おめぇさんを助けるんだよ、桃色頭の姉ちゃんとピンクのクッソド派手な着物着た姉ちゃんに頼まれてるかんな!」
私は彼女の言葉を聞いて耳を疑いました、深海棲艦が私を助ける?一体どういう事?そんな事を考える私を尻目に、中間棲姫はまるで小石を退かすかのように瓦礫を掴んでは後ろに投げ捨てを繰り返し、私の上を圧し潰していた瓦礫をその腕力だけで完全に除去してしまいました
「よっしこれでOK!立てるか?……って聞くまでもねぇか……、そうなると……っとぉっ!!!」
彼女はそう言うと私の返事を待ちもせず、勢いよく私を抱き上げました。恐らく彼女は私の足が動かなくなっているのに気が付いているのかもしれません、まあ下半身が瓦礫の下敷きになっていたら脊髄が損傷しているかもしれないとすぐ予想が付くと思いますからね……
「っ!もう少し優しく持ち上げられないのかしら……?」
「あっ悪ぃ悪ぃ、姉ちゃんが思った以上に軽かったもんでな。つか艦娘って奴は艤装だったっけか?そんな機械身に付けてても軽いもんなんだな~」
彼女が勢いよく私の身体を持ち上げた際に発生した痛みに耐えながら、彼女に1つ小言を言うと彼女はデリカシーもへったくれもない言葉で返して来た。女性同士とはいえ体重の話はするものではないだろう……、それ以前に瓦礫を片手で持ち上げる貴女だったら、大概のものが軽いと感じるんじゃないかしら……?
「っし!んじゃちょい揺れるが我慢してくれよ!」
そう言って彼女は走り出したのだけれど……、彼女が向かう先には壁しかない……。一体何をするつもりなのかしら……?
「こっちの方が近道だからなっ!ちょい俺の首に手ぇ回してしっかり掴んでろよ?OKOK、んじゃいくぜえええぇぇぇーーーっ!!!」
そう言って彼女は私を片腕で支えながら、背中に背負っていたハンマーを片手で掴むなり壁に叩きつけ、壁を文字通り粉々にして大穴を開ける
「おっしゃ!んじゃガンガンいくぜー!」
「えぇ……」
彼女は混乱する私の事などお構いなしに、こんな調子で立ち塞がる壁を次々に破壊しながら突き進んでいく。そして……
「じゃっしゃあああぁぁぁーーーっ!!!っとぉ!今ので最後か」
「貴女、本当に無茶するわね……。もし貴女が壁を破壊する衝撃で入渠施設そのものが崩落したらどうするつもりだったのよ……?」
最後の壁を破壊し何とか外に出た私達、私は外に出たところで物凄く無茶苦茶な脱出方法を敢行した彼女を咎める
「そんときゃ降って来るもん全部ブン殴るまでよ!」
彼女は自信満々にそう言ってガッハッハッ!と笑うのであった、そう言われると彼女なら本当に出来そうに思えて少々恐ろしさを感じる……
「そんじゃ皆のところに……ってぇ!」
彼女が何かを言おうとしたその瞬間、視界の隅の方で何かが激しく輝く。私は何事かと思いそちらに視線を向けると、誰かが2本の巨大な光線を発しているのが見えました……。この泊地で一体何が起こっていたのかしら……?
「ありゃぁシゲと……、あぁ光太郎だったな、あの特撮ヒーローみたいなの。あいつらがやってくれたようだな!これでこの泊地の問題ってのも解決だなっ!」
彼女の発言を聞いて思わず目を丸くする、もしかして彼女はこの泊地でどのような事が行われていたかを知っていて、それを解決しに来たと言っているのか……?
「貴女……、一体何者なの……?」
私がそう呟くと、どうやら聞こえていたようで彼女がその呟きに答えます
「俺か?俺は赤城 輝、長門屋海賊団の専属大工様よっ!細けぇ事が知りたかったら戦治郎……、俺らのアタマに話聞きなっ!そのへん俺もよく分かってねぇから上手く説明出来ねぇからなっ!」
そう言ってまたガッハッハッ!と笑う赤城 輝と名乗る中間棲姫、事の詳細を聞くには彼女が言う戦治郎とやらと話をした方がよさそうね……。しかしその人もこの人みたいな人だったら……、気が滅入るわね……
「うっし!んじゃ改めて皆のとこにいくとしますかっ!」
輝はそう言って、光線が発生していたところに出来ている人だかりの方へと歩みを進めるのでした