戦治郎の作戦成功宣言の後、俺達は泊地の艦娘達を連れてマダガスカルへと向かう事になった
当初の予定では泊地の方で元異形艦娘達の義肢を作ったり、宴会したりするつもりだったらしいのだが、今長門さんが乗っている水上バイクに括りつけられている提督だったものとの戦闘のせいで、泊地が壊滅状態になってしまった為急遽予定を変更してマダガスカルにあるワンコさんとやらの拠点で、それらを実行する事になったんだとさ
「お~キャシー、出迎えご苦労さん」
「さっき通信である程度状況は説明してもらってたけど……、これはまた酷い有様ね……」
俺達の事を出迎えてくれた空母棲鬼のキャシーさんとやらが、元異形艦娘達の姿を見てその表情を曇らせる
「これをワンコさんが見たら確実に気絶するだろうからな、ワンコさんに見られる前にチャッチャとこの娘らの義肢を作ってあげてぇわけよ。って事で工廠使わせてもらってもいいか?」
「そう言う事なら全然構わないわ、私の方から言っておくから貴方達は早く工廠に行きなさい」
戦治郎の頼みを快諾するキャシーさん、今の発言からするとこの人はこの拠点で結構重要なポジションにいるみたいだな
「サンキューキャシー、んじゃ工廠組と移植手術されちゃった娘達は俺に付いて来てくれ~」
戦治郎がそう言って工廠組と元異形艦娘達を集めて移動しようとしたその時だった
「あの、戦治郎さん、ちょっといいですか?」
明石さんが戦治郎を呼び止める
「んお?明石か?一体何事ぞ?」
「いえ、大した事じゃないんですけど、もしよければなんですが私にも皆の義肢を作る手伝いをさせてもらえませんか?」
明石さんが元異形艦娘の皆の義肢作りに参加したいと申し出たのである、まあ明石さんの事情はここに来るまでに聞いていたから分かるんだよね。義肢作りを手伝いたいと申し出たのは、恐らくちょっとだけとはいえ移植手術に加担した事に対しての罪滅ぼしと言ったところだろうか
「おっそりゃ助かるわ、作らなきゃいけない義肢の数が数だからな、手伝いは大歓迎だぜっ!」
戦治郎の返答を聞いた明石さんは、感謝の言葉を述べた後戦治郎達と共に工廠へと向かうのであった
その後、残ったメンバーもキャシーさんの許可を得て拠点の方へと向かって行くんだけど……
「え~っと……、キャシーさん?」
拠点へ向かおうとした俺の前に、キャシーさんが立ち塞がり俺の事をジロジロと見て来るではないですか……。まあそれも仕方ないっちゃ仕方ないよな……、だって……
「貴方のその恰好は一体何なの?アイアンマンか何かのコスプレ?いくら何でも怪し過ぎるでしょう?」
そう、今の俺の姿はあのヒーローの姿なのである、戦治郎に言われて変身する事になったんだけど、何度理由を聞いても教えてくれなかったんだよな~……
「ですよね、やっぱこんな格好の不審者何かそう簡単には入れられませんよね~……。何で戦治郎は俺にこの姿になれって言ったんだか……」
「え……、戦治郎の指示なの?って言うかそのへんの事情聞いてないの?」
残念ながら教えてもらえませんでした……、ただ変身解除する前にキャシーさんとよく話をしておけとは言われたんだが……、一体何が狙いなんだか……
「聞いても教えてもらえなかったんですよね……、まああの戦治郎の事だから何か理由があってこんな事させてるんだと思ってるんですけど……」
「そう……、まあいいわ、取り敢えずそのヒーローみたいな格好は解除出来るの?出来るんだったら解除してもらえるかしら?」
俺はキャシーさんに言われるがまま、変身を解除する
因みに変身方法とその解除方法なんだけど、これが思った以上にシンプルなものだったんだよね。初めて変身解除した時から俺の腕に付いているブレスレットを操作してから、腰に付いているベルトのバックル(大きさは拳1つ分程度)にかざすと変身、解除もヒーロー状態で同じ事をすると変身解除が出来るのだ。感覚的には電王やオーズ、ウィザードの変身みたいな感じである。
……それが分からなかった時はホント色々と酷い目に遭ったよ……、変身解除方法が分からずパニック起こしてる時に、戦治郎達にそそのかされて幕張の奈良づくしの真似事させられたっけな~……。俺の事見てる皆の視線が物凄く痛かった……
そしてキャシーさんは変身を解除した俺の顔を見るなり、ギョッとした表情のまま固まってしまった
「え……、ウィル……?」
「えっウィル?誰ですかそれ?」
キャシーさんの呟きに反応し、ついウィルさんとやらについて尋ねる俺。そこで我に返ったキャシーさんから詳しい事情を聞いて、俺は戦治郎の意図をようやく把握した
「そのウィルって言うのと俺がそっくりで、拠点にいる皆が俺をウィルと勘違いして攻撃してこないようにって配慮だったわけか……。だったら先に言ってくれよ戦治郎~……」
「その、さっきはごめんなさい。光太郎とあいつがあまりにもそっくりだったものだから……」
先程の事を謝罪するキャシーさん、そんなにそのウィルって奴は俺に似ているのか……、なんかちょっとショックである……
そこでふと思う、キャシーさんは転生個体で艦これの事知らないっぽいから仕方ないとして、純粋な深海棲艦であるこの拠点にいる穏健派の皆さんも俺とウィルとやらの区別が付かないのだろうか?……まあそれは今はどうでもいい事か……、俺はそう思い直して先程の考えを頭の隅っこに押し込める
「いえ、気にしないで下さい。それよりも俺とそっくりな奴が皆さんにご迷惑をおかけしたようで、本当に申し訳ないです」
俺はそう言ってキャシーさんに頭を下げる、その姿を見たキャシーさんは
「……自分と全く関係ない事なのに頭を下げるなんて……、完全にあいつとは別人ね……」
そんな事を呟いていた、どんだけ評価低いんだよ俺のそっくりさんとやらは……
「さって、光太郎があいつとは全くの別人ってのがたった今証明されたわけだし、拠点の方へ向かいましょう。さっきのお詫びって事で私が案内するわ」
キャシーさんはそう言うなり、俺の手を引っ張りながら拠点へ向かって進み始めるのだった
「光太郎のあの姿も、戦治郎達が言っていた能力って奴なのね~……」
「俺自身、あの能力についてはまだ把握しきっていない状態なんだけどね。機会を見て色々と試してみないとってところだよ」
俺はキャシーさんの案内を受けながら、彼女と他愛もない話をしていた。……その前にお互いが生前どんな事をしていたかって話題になってすっごく気まずい空気になってたりするんだけどね……
「それにしても能力か~……、私だったらどんな能力になるのかしら?」
「ん~……、確かキャシーさんって女優だったんだよね?だったらそれに関係する感じの能力になるんじゃないかな?」
「TV女優関係?ちょっと想像しにくいわね~……」
そんな感じで彼女と話をしながら歩いていると、輝と藤吉、そして加賀さんの3人と遭遇した。ここに来る道中もそうだったけど、何か輝と加賀さんの距離近くないか?
「おっ光太郎、女連れて歩いてるなんていい身分だなおい」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。って言うか加賀さんの方はもう大丈夫なの?」
輝の奴が俺がキャシーさんと並んで歩いているところを見るなり、ニヤニヤしながらそう言ってきたので、俺はお返しとばかりに言い返す。そしてそこで加賀さんの足の事を思い出し、俺は加賀さんに容態について尋ねる
「心配ないわ、さっき悟さんのところで念の為にと精密検査をして来たところなの。それで異常無しと診断されたわ」
加賀さんは表情を崩す事無くそう告げる、それを聞いた俺は一先ず安堵する。悟の事を信頼してないわけではないんだけど、あの能力もまだまだ完全に解明されているわけじゃないからね、もしかしたらがあるのではと少々不安だったのである
「つか加賀さんよぉ、ここ来る時もそうだったがおめぇ俺に絡み過ぎじゃねぇか?」
「あら?何か問題でも?」
そう言って輝から離れようともしない加賀さん、この拠点に来る時も悟から単独航行可能だと言われていたにも関わらず、移動は輝のケートスだったっけ?それに2人乗りしてたし……
「いや、特に問題があるとかじゃねぇけどよ……」
「そう、なら問題ないわね」
そう言ってやっぱり輝から離れようとしない加賀さん、一緒にいる藤吉が非常に気まずそうにしている。藤吉も何処か別のところに行けばいいだろうと思うんだけど、藤吉の行く当てってかなり限られてるからな~……
「ねぇ、もしかしてあの人って……」
俺がそんな事を考えていると、キャシーさんがコソコソと話しかけて来た。多分俺も同じ意見です、はい……
「そろそろいいかしら?検査も無事に終わったから、私は輝にこの拠点の案内をしてもらおうと思うのだけれど?」
「ああ~……、分かった分かった、って事で悪ぃけど俺ら行くわ。んじゃまた後でな」
不意に加賀さんがそう言うと、輝は観念したのか俺に詫びを入れて加賀さんを連れて何処かへ行ってしまった
「攻めてるわね~……、でもあれだけじゃ輝はあの人の想いに気付かないんじゃないかしら?」
「相手が輝ってのがな~……、俺からは加賀さん頑張れとしか言えないよ……」
俺とキャシーさんは、輝達を見送りながらお互いの意見を口々に言うのであった