輝達を見送った後、俺達は悟達がいるであろう医務室の方へと足を運んだ
マダガスカルへ向かうその道中で、悟からマダガスカルに到着し次第望ちゃんの精密検査をすると聞いていたからだ
望ちゃん自身は精神的にも肉体的にも大丈夫だと言ってはいたものの、薬漬けにされていた関係で望ちゃんの感覚が麻痺している可能性も考えられた為、悟が念の為と言って何とか望ちゃんを説得して精密検査をする事になったのである
そういう訳で医務室に辿り着いた俺達は、ノックして返事を待つが中々返事が返ってこない事を不審に思い勝手に医務室の中に入るのだが……
「誠にありがとうございましたあああぁぁぁーーーっ!!!」
俺達の目の前には、悟に対して土下座して感謝の意を表明するエリチの姿があった。そしてそんなエリチを見て、あたふたしてる望ちゃんと何故か医務室にいる龍鳳さん。龍鳳さんが何故ここにいるのかは取り敢えず置いておくとして、一体何があってこのエリチは悟に土下座をしているのだろうか……?
「悟……、こりゃどういう事だ……?」
「光太郎かぁ、まあ見ての通りなんだわぁ」
いや分かんねぇよ……、面倒臭がらずちゃんと説明しろよ……
「こいつって……、確かシゲが尋問の時火達磨にしたあのエリチ?」
え?何それ怖い、尋問中に火達磨って……、それ尋問じゃなくて拷問じゃね?
キャシーさんの言葉を聞いた望ちゃんと龍鳳さんがビクリと身体を震わせて硬直するが、今は敢えてスルーしておく。何があってシゲはこいつを拷問にかけたのだろうか……
「あの火傷はシゲのせいだったのかよぉ、道理で全身満遍なくこんがり焼けてるわけだわぁ。んで、シゲは何でこいつの事ウルトラ上手に焼いたんだぁ?」
俺がそんな事を考えてると、悟が俺の隣にいるキャシーさんに尋ねる。それを聞いたキャシーさんはその時の状況とその尋問の結果手に入れた情報を俺達に分かり易く教えてくれたんだが……
「シゲの元カノの話が出て、それが切っ掛けでシゲの能力が発現した……ねぇ……」
「そりゃぁそうなっても仕方ねぇわなぁ……、確かあの女だろ?長門屋に乗り込んできてシゲぶん殴って盛大にフッた奴だろ?」
俺に話を振って来る悟にウンウンと頷き返す、確か殴られたシゲが盛大に吹っ飛んでたのが印象的だったな~……
「あ、あの……」
不意に声を掛けられたのでそちらを見てみると、先程の話を聞いて思うところがあったのかオドオドしているエリチがいた
「先程の話を聞いてる限りだと、俺の事丸焼きにした奴は可奈子さんと付き合ってたって事ですよね……?それってまさか……?」
「お?おめぇシゲ……、愛宕山 重雄の事知ってんのかぁ?」
シゲの名前を聞くなり、エリチは顔を真っ青にしていく……、この反応見る限り知ってるんだろうな~、あいつの事……
「お前の想像通り、お前の事をこんがり焼いたのはあの『大天狗』の愛宕山 重雄だよ」
「ぎゃあああぁぁぁーーーっ!!!」
俺がエリチに真実を告げると、彼は悲鳴を上げて蹲りガタガタと震えだした
「あの、『大天狗』って確か私達の世界にいた暴走族でしたよね……?クラスのちょっとワルぶった男子がよくその名前を口にしてカッコイイとか言っていたんですけど……」
「あぁそうだぁ、シゲはその暴走チーム『大天狗』の元総長……、一番凄ぇ奴だったんだわぁ」
俺達のやり取りを聞いていた望ちゃんがオズオズと尋ねてくる、それに対して悟がありのままに事実を伝えると、望ちゃんは目を丸くして驚いていた
「シゲさん、本当に不良さんだったんですね……」
話を聞いていた龍鳳さんも驚いた表情のままそう呟く、まあ道中の戦闘で相手の事滅茶苦茶口汚く罵ってたからその辺は想像し易かったんじゃないかな~?
「シゲってヤンキーの割には貴方達には敬語使ってるわよね?……まさか貴方達……」
「キャシーさんが想像してるような事はしてないよ、あいつは根はいい奴だから社会がどういうものか理解させたら、それに合わせてキチンと応えてくれる。たったそれだけさ」
俺達がシゲに対してよからぬ事をしたと思ったキャシーさんの誤解を解くように俺が言う、まあシゲと初めて出会った時は少々手荒な事はしたけどさ……、でもあれはあっちから仕掛けてきた事だからノーカン……、に出来るかな~……?
「やべぇよやべぇよ……」
不意にエリチの声が聞こえたのでそちらに視線を向けると、未だに蹲って震えているエリチがブツブツと何かを言っていた
「この人、シゲさんの事物凄く怖がってますけど……、この人とシゲさんの間に一体何があったのでしょう……?」
エリチの異常なまでの怖がり方に対して疑問を抱いた龍鳳さんが言う、言われてみれば確かにこの怖がり方は尋常ではない、彼の過去に一体何があったのだろうか……?
「なぁ、シゲの事怖がってるみたいだけど、昔あいつに何かやったのか?」
俺が彼にそう尋ねてみると……
「やったんじゃなくてやられたんですよっ!!!」
彼はそう叫びながら勢いよく立ち上がる、……あ~、そういやあいつ言ってたな……
「『大天狗』が活動を開始した際、真っ先に俺がいたチームが襲撃されて『大天狗』の傘下に突っ込まれたんですよぉっ!!!それ以降『大天狗』の活動全てに付き合わされて……、あいつのすぐ傍でその実力を見せつけられ続けたんですよぉ……」
最初こそ勢いよく捲し立てたものの、途中からその時の事を思い出したのか段々威勢が無くなっていき、最後は頭を抱えてしまっていた。その光景を見ていた望ちゃんと龍鳳さんは愕然とし、キャシーさんは……
「あいつ、昔は相当ヤンチャしてたみたいね……」
コメカミに指を当てながらそう呟いていた、まあそうなるよね~……
「シゲにとってその頃の話は今では黒歴史……、触れて欲しくない恥ずかしい過去になってるみたいだけどね。あっ本人に聞いたらダメだからね、激怒するか滅茶苦茶落ち込むかのどっちかになるから」
俺がそう言うと、望ちゃんと龍鳳さんはブンブンと首を縦に振る
「……ってすっげぇ今更なんですけど、大先生はあいつの知り合いなんですかい?」
ふと思い出したようにエリチが悟に尋ねる、……今の話聞いてる限りだと……
「クカカカカッ!本当に今更だなおいぃ」
エリチの話を聞いた悟が笑いながらそう答えると、またエリチの顔色が悪くなっていく
「ちょっと待って下さい……、その笑い声……、まさか……」
「あぁそうだぁ、『大天狗』が壊滅する切っ掛けになったあの大乱闘、俺とこいつはそれに参加してたんだよなぁ。クキャキャキャッ!!!」
悟が俺の方に親指を向けながらそう言い放つと再び笑う、それを聞いたエリチはガチガチと歯を鳴らして震え始める。やっぱりあの現場にいたのか~……
「あの、大乱闘って……?」
「戦治郎の家で飲みやろうってなった時にね……、皆で酒を買いに行ったその帰りに偶然『大天狗』の集会に遭遇しちゃってね……」
「そこで奴らに絡まれてなぁ、穏便に済ませようとしていた戦治郎をシゲの手下だった奴が押し倒しちまってなぁ、それで空がキレて攻撃開始、それに便乗して輝の奴も暴れ出しちまって収拾つかなくなっちまったんだわぁ」
「その時俺と悟も巻き込まれて、結局皆で大乱闘になっちゃったんだよ……。んで、戦治郎の号令で逃走した直後に警察が来て、『大天狗』のメンバーは殆どが捕まっちゃったんだよね」
「その結果『大天狗』は壊滅して、その仇討ちの為に単身長門屋にカチコミに来たシゲは戦治郎達に翻弄されて、そのまま長門屋の仲間入りって訳よぉ」
大乱闘について尋ねて来た望ちゃんに、俺と悟は当時の事を思い出しながら説明する
「……貴方達も随分ヤンチャしてたみたいじゃない……」
キャシーさんが頭を抱えながら放った言葉に悟は大笑いし、俺は苦笑するしかなかった……