※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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アシスタント

「落ち着いたかい?」

 

「あっはい……、おかげさまで……」

 

俺は大いに脱線した話を元に戻す為に、悟の笑い声を聞いて取り乱したエリチを何とか落ち着かせる

 

「取り敢えず、君の名前を教えてもらってもいいかな?いつまでも個体名で呼ぶのもどうかと思うからね」

 

彼が何故悟に土下座して感謝の言葉を述べていたのかを聞く前に、まずは彼の名前を聞く事にした。その方が親しみ易くなって話がスムーズに進むだろうと思ったからだ

 

「え?この身体エリチって言うんですか?名乗っても無いのに皆エリチエリチ言うから、ここの連中皆エスパーかよっ!?って思ってたとこなんですわ~。いや~、そう言う事か~」

 

何かこの人俺の話聞いて勝手に納得してるんですが……、一体どういう事だよ……

 

「ごめん、ちょっとどういう事か説明してもらえるかな……?」

 

「ああ、すいやせん。俺、江利地 正人(えりち まさと)って言います」

 

彼の自己紹介を聞いた皆が思わずズッコケそうになる、まさか苗字がまんまエリチだったとは……、ちょっとばっかし予想外だったよ……

 

「皆してどうしたんすか?」

 

「あ、いや、気にしないで……、それで……え~っと……、正人君、でいいかな?「あっはい」うん、それで正人君は何で悟に土下座してたのかな?」

 

彼の事は名前の方で呼ぶ事にする、折角名前を教えてもらったのに苗字で呼んでたら今までと何ら変わらないからね、苗字が苗字だから……ね……

 

「そんな難しい話じゃねぇだろうよぉ、望の精密検査の後そいつの治療をしたらああなった、たったそんだけだなんだわぁ」

 

ここで悟が口を挟み、そこでようやく俺は事態を把握する事が出来た。そう言う事だったのね……、いやホントちょっと考えればすぐ分かる事だったな……。あの絵面のインパクトが強くて考えるどころじゃなかったけど……

 

「全身の火傷のせいで碌に身体を動かせなかったのに、あの人がちょっとの間手をかざしてるだけで火傷が見る見るうちに治っていって、今じゃこの通りっ!こんな凄ぇ事するからきっとあの人は神か仏かとか思ってたんですが……」

 

正人君の方からも事情を話してくれたわけなんだけど……

 

「俺が神だぁ?あんな糞野郎と俺を一緒にすんじゃねぇ」

 

悟が正人君の方へと向き直り睨みつける、こいつは過去に色々あり過ぎて神様とか言う単語大嫌いだからな~……。それはそうと、悟に睨みつけられた正人君は短い悲鳴を上げて思わず身を竦ませる、今の悟は異様なまでに迫力あるのに加えて、正人君にはあの大乱闘の時の記憶があるからね、相当怖いだろうな~……

 

「こいつはエネミー認定した相手に対しては情け容赦を一切しない悪魔そのものだけど「おいコラ」味方と怪我人に対しては良い奴だからさ、もうそんなに怯える必要はないと思うよ?」

 

悟のツッコミをスルーしながら俺が言う、それを聞いた正人君は少し考え込んだ後こう言い放つ

 

「エネミー認定って敵だと思うって事ですよね……、つまりこのまま姐さんのとこに帰ったら……、……すいやせん、何処か隠れるのにうってつけの安全な場所ってありやすかね……?」

 

まあそうなるよね……、あっちは彼らを見てる限り修羅の国みたいだからこのまま帰ったら何されるか分かったもんじゃない、それを覚悟して戻った場合今度は彼のトラウマになっているであろう俺達を相手にしなきゃなんない……、そりゃ逃げたくもなるよね……

 

「貴方、可奈子とやらのところに戻らなくていいの?」

 

「このまま戻ったら姐さんにボコられるのは目に見えてるし、それを乗り切ったら今度はこの人達の相手しなきゃいけないでしょ?俺が死ぬの確定じゃないですかっ!!!だったら地の果てまで逃げた方がいいでしょっ!!?」

 

キャシーさんが正人君にそう尋ねると、正人君はオーバーアクションしながらそう答えるのだった

 

「そう……、だったらいいところがあるんだけど?」

 

「おぉ!マジですかっ!?それでそれって何処なんですかい?!」

 

キャシーさんが正人君の言葉を聞いた後、何処か心当たりがあるのか正人君に話を持ち掛ける。当然の事ながら正人君はキャシーさんの話にガップリと食い付く、そのやり取りを見ていた俺は何となくだけどこの後の展開が予想出来るんだよな~……

 

「それはね~……、こ・こ♪」

 

「……は?」

 

蠱惑的な仕種をしながら正人君に詰め寄ってから、下の方を指差しながら答えるキャシーさん。キャシーさんの行動にドギマギしていた正人君は、その言葉を聞いた瞬間思わず間の抜けた声を出してしまう

 

その後、キャシーさんが正人君にこの拠点の現状を説明し、彼に取引を持ち掛けたのである

 

「……取り敢えずソロモンの方に頼んで転生個体を何人か派遣してもらう事になってるんだけど、その間私1人で貴方がいた『カルメン』だったかしら?それの相手をしなくちゃいけないのよね……。それが凄く面倒ってのが分かり切ってるから、私は貴方と取引しようと思うの」

 

「取引……ですかい……?」

 

「そう、取引。ソロモンから派遣された転生個体がここに到着するまでの間、貴方に私の手伝いをしてもらいたいの。その間貴方の身の安全は私が保障するし、ここの設備もある程度自由に使っていいわ。そして派遣された転生個体がここに到着したら、貴方が望むのならば貴方を穏健派の総本山があるソロモンに送ろうと思うんだけど、どうかしら?」

 

増援来るまでキャシーさんの手伝いしたら、現状最も安全なソロモンで暮らせる権利をもらえる、か……。確かにこれはお互いに旨味がある話だな……さて、正人君は一体どう出るだろうか……

 

正人君はキャシーさんの話を聞いた後、しばらく考え込み……

 

「分かりやした、俺はその話に乗りやす。そうした方が敵が少なくて済みそうですからね。そういう訳でよろしくお願いしやす!」

 

彼はそう言ってキャシーさんに頭を下げるのだった、彼が言う敵ってのは多分俺達の事なんだろうな~……

 

尚、正人君はその後ワンコさんの優しさに触れた結果、庇護欲を掻き立てられ彼女に忠義を誓い、派遣された転生個体がマダガスカルに到着した後もワンコさんの為に拠点に残り、キャシーさんの右腕として戦い続けたそうな……

 

「おめぇらの方の話は粗方纏まったようだなぁ」

 

キャシーさんと正人君のやり取りを見ていると、不意に悟が声を上げるのだった

 

「今から俺は光太郎と話すっからよぉ、細けぇ打ち合わせやるんだったら余所でやんなぁ」

 

そういやそうだった、俺は望ちゃんの精密検査の結果を聞く為にここに来たんだったわ、正人君の土下座シーンに意識持っていかれてスッカリ忘れてた

 

「そう、だったら私達は少し外すわね。しばらくしたら戻って来るから、光太郎の方が先に終わったらここで待ってて頂戴」

 

そう言ってキャシーさんは正人君を連れて医務室から出ていくのだった

 

「すまん悟、正人君の件でスッカリ忘れてた……」

 

俺が正直に告げると、悟は心底どうでもよさそうに鼻で笑い、望ちゃんの精密検査の結果について話し始めるのだった

 

「まず精神の方については全く以て異常無し、薬に対しての依存症なんかも見受けられなかったんだわぁ」

 

それを聞いてまずは安心1段階目、ここでもし依存症が確認されていたら俺はその怒りを何処にぶつければいいか分からなくなるとこだった……

 

「身体の方については問題なしだなぁ、日常生活送る分には差し支えねぇ」

 

その言葉に反応する俺、その言い方だと日常生活に差支えがない異常があったって事になるからな……

 

「身体の方、もうちょい詳しく聞かせてもらえないか?」

 

「やっぱおめぇにはこの言い方だと気付かれるわなぁ……」

 

悟はそう言うと頭をバリバリと掻いた後、とんでもない事を言い放った

 

「望の身体なんだがよぉ、薬が原因なのかかなり変質しちまってるようなんだわぁ……」

 

変質……?それは一体どういう事なんだ……?俺はその言葉を聞いて困惑しながら悟の次の言葉を待つのであった……

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