※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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異常体質と進む道

「先に確認しときたい事があるんだがよぉ、光太郎、おめぇ今の望の姿を見てどう思うよ?」

 

「望ちゃんの今の姿……?」

 

悟の問いかけに疑問を抱きながら望ちゃんの方を見る俺、当の望ちゃんは表情を曇らせて俯いているくらいで、他は普通の駆逐棲姫の姿を……

 

そこである事を思い出した俺は、悟に思い出した内容について尋ねる

 

「なぁ、望ちゃんに付いてた鉤爪や追加装甲みたいな胸当てが見当たらないんだが……」

 

「直接やり合ったおめぇならすぐに気付くわなぁ」

 

そう、あの時の望ちゃんに付いてた鉤爪やら胸当てやらが綺麗サッパリ無くなっていたのだ。もしかしたら着脱可能だったのかもしれないと思い辺りを見回してみたが、それらしいものは影も形も見当たらない……

 

「その鉤爪や胸当てなんだけどよぉ、精密検査始めようとした時に溶けるようにして望の身体の中に入っていっちまったんだわぁ」

 

「はぁっ!?」

 

話を聞いた俺は驚きのあまりつい声を荒げてしまい、望ちゃんと龍鳳さんを驚かせてしまう

 

「俺だって最初見た時は驚いたわなぁ、んでその辺も気になって必要以上に細かく検査して分かった事がいくつかあるんだわぁ」

 

そう言って悟は望ちゃんの身体について説明し始める

 

鉤爪や胸当てについては、どうやら望ちゃんの血液中にアドレナリンが分泌されると出て来るようになっているらしい

 

この状態になると、彼女は俺達と戦った時と同等の力を発揮出来るんだとか何とか……

 

その状態になっていなくても、提督に投与された薬の影響で筋肉細胞や皮膚が強化されているみたいで、スピード以外なら通並のスペックを叩き出せるそうだ

 

更に言えば、筋肉細胞の強化は出力だけでなく耐久面も強化されているようで、脳のリミッターを完全に外して行動しても空ほどのダメージにはならないんだとか……

 

ここまででも十分戦慄ものなんだけど、何と更にヤバイのがあるみたいなんだ……

 

望ちゃんの血液中にアドレナリンが分泌されてから、一定以上の時間が経過してもアドレナリンの分泌が止まっていなかった場合、特殊な物質が血液中に分泌されるようになっているらしい……

 

「こいつがホント厄介なもんでなぁ……」

 

そう言って悟が言葉を続けるのだが、どうやらその物質は人間だろうと深海棲艦だろうと体内で生成出来るようなものではないらしい。しかし望ちゃんの身体はそれを生成出来るようになってしまっているらしく、悟は提督が膨大な種類の薬を望ちゃんに投与したのが原因なのではないかと予想しているようだ

 

んで、その物質の効果なのだが、極めて強力な覚醒剤のようなものらしく気分をとんでもなくハイにさせながら脳のリミッタ-を外すと同時に痛みや疲労感を感じさせないようにした挙句、筋肉細胞を更に強化させるんだとか……

 

ただ、こうなると自分を制御出来なくなる上に、効果が切れると同時に凄まじい絶望感や自殺衝動が襲ってくるそうだ。要は空の精神ヴァージョンってところか……

 

「取り敢えず俺が分かってるのはこんなとこだなぁ、望を長時間興奮状態にさせないように気を付けりゃ何とかなるって感じだなぁ」

 

悟はそう言って望ちゃんの身体についての説明を締めくくった、その話を聞いた俺はやり場のない怒りに耐えるように拳を握り締める……

 

本当は今すぐにでも医務室を飛び出して、樹脂で固められた提督だったものに今一度フルチャージしたレーザーを叩き込んでやりたいのだが、それをやってしまうと長門さん達に迷惑が掛かると思うと実行出来ないでいたのだ……

 

「光太郎さん……、その……ごめんなさい……」

 

不意に望ちゃんが俺に向かって頭を下げて謝罪してきた、俺はそんな望ちゃんを見て少々混乱してしまった。何でこの娘は俺に謝っているんだ?今までのやり取りの何処に望ちゃんがそんな事しなきゃいけないとこがあったんだ?

 

「え……?急にどうしたの?」

 

「私のせいで光太郎さんは沢山辛い思いをしてきたのに……、折角光太郎さんが頑張って私の事を助けてくれたのに……、それなのに私はこんな事になってしまってて……、本当に、ごめんなさい……」

 

そう言って彼女は涙を流しながら何度も俺に謝罪する、俺はそんな彼女の頭に優しく手を乗せてこう告げる

 

「望ちゃんが謝る必要なんてないんだよ、身体の事に関してはちょっと残念ではあるけどさ……、でも君を死なせる事無く助け出す事が出来た、それだけで俺は救われたんだ、だからもう謝る必要も、涙を流す必要もないんだよ」

 

そう言って俺は彼女の頭を優しく撫で始める

 

「この件については全部あの糞野郎が悪いって事でいいよなぁ?じゃなけりゃまぁたお通夜ムードになっちまうからなぁ。っとそれはそうと、だぁ」

 

俺が望ちゃんを落ち着かせようとしていると、悟がそう言って話を切り出して来た

 

「望の今後についてなんだがよぉ、体質の都合で俺達の戦いに巻き込むのは悪手だと思うからよぉ、長門達か穏健派の総本山に預けるべきだと思ってんだわぁ」

 

「確かに……、戦闘ってなるとどうしても長時間興奮状態や緊張状態になってしまうからな~……、その方がいいかもしれないな。んで、出来るなら顔見知りがいる大本営の方がいいんじゃないか?総本山は強硬派が結構来るって話だから避けた方がいいかもだな」

 

「大本営に送った場合どっかの阿呆がいらん気起こして望を攫いに来るかもしれんがなぁ、まあそこらは龍鳳達に頑張ってもらうとしますかねぇ」

 

俺と悟が2人で話を進めていると……

 

「「えっ!?」」

 

望ちゃんと龍鳳さんが驚きながら声をハモらせる

 

「そ、そんなっ!私、悟さんに助けてもらった恩を全然返せてないのにっ!?」

 

まずは龍鳳さんがそう叫ぶのだが……、確か龍鳳さんって悟に2回も命を助けられたんだっけ?1回目は移植手術開始直前に手術室に乱入した悟が囮になって提督達の注意引き付けてくれたおかげで脱出出来た奴で、2回目は飛んで来る瓦礫に気付かずに文月ちゃんのところに駆け寄ろうとしたのを縫合糸で引き寄せて止めた奴だったっけ?

 

……そりゃフラグの1つも立つわな、でも悟も輝とは方向性は違うけどかなり攻略難しいと思うぞ?大丈夫か龍鳳さん……

 

「ちょっと待って?今のリアクションからすると、望ちゃんは俺達について来るつもりだったの?」

 

「あっはい……」

 

俺が望ちゃんにそう尋ねると、彼女は弱弱しく返事をして、その理由について話始めるのだった

 

望ちゃんには尊敬する医者がいて、その人に憧れて医者を目指していたとは聞いていたんだけどさ……、その医者ってのが俺の目の前にいる医学界の怪物と言われたこの半狂人、伊藤 悟その人だったんだって……

 

何でも昔、望ちゃんは深夜に急患として救急車で病院に搬送されたそうなんだが、病院を何件かたらい回しにされ、当時悟が勤めていた病院に辿り着きはしたもののそこでも受け入れを拒否されそうになったんだとか

 

んで、いよいよもってヤバイと思っていた時に偶々悟がその場に居合わせて、望ちゃんの姿を見るなり血相を変えて上に掛け合って了承を得て、すぐに治療を開始して望ちゃんを助けたんだそうな

 

「何処の病院も専門の先生がいないからって言って、受け入れてくれなかったのに伊藤先生だけが専門医がいねぇなら俺が診る!って言って私を助ける為に動いてくれて……。その姿が本当にかっこよくて、私もこんなお医者さんになりたいなって思ったんですよ。どんな時でも患者さんを見捨てないで手を差し伸べるようなお医者さんに……」

 

「あん時の事まで覚えてやがったのかよぉ……、おめぇどんだけ記憶力いいんだって話だわぁ……」

 

話を聞いていた悟がバリバリと頭を掻きながらそう呟く、こいつ今絶対照れてるだろ、付き合い長い俺達にはそういうのお見通しなんだからな~?

 

「それで、私はこの世界に来た時にお医者さんになるのを半分くらい諦めてたんですけどね、この世界で先生と再会して、先生がこの世界でもお医者さんとして頑張ってる姿を見て、もう1度頑張ってみようって思ったんです」

 

望ちゃんの話を聞いていた悟が急にそっぽ向いちゃった、これで確定したな……、悟の奴柄にもなく照れてやがる、それも最大クラスで

 

「それでその……、先生達が危ない事をやっているって言うのはここに来るまでに沢山見て来たので知っています、先生達について行けば私も危険な目に遭うのも分かっています……。それを覚悟した上でお願いがあります」

 

望ちゃんはそこで言葉を区切り、1度深呼吸をしてからこう言い放った

 

「お願いします!先生みたいな立派なお医者さんになれるように私に指導して下さいっ!!!」

 

深く頭を下げたまま動かなくなる望ちゃん、しばらくの間医務室に沈黙が流れるが……

 

「……望ぃ、悪ぃ事は言わねぇから俺みたいになるのはやめておけぇ」

 

悟はそう言いながら望ちゃんの方へと向き直る、それを聞いた望ちゃんは泣き崩れそうになるのだが……

 

「だがよぉ、医者になりてぇって事ならよぉ、本当におめぇが望むんならよぉ」

 

そう言いながら視線の高さを望ちゃんに合わせる悟、その言葉を聞いた望ちゃんは顔を上げ、悟としっかりと目を合わせる

 

「俺が持っている全ての医療技術を、その知識をおめぇに叩き込んでやらぁ。その覚悟、あるんだろうなぁ?」

 

その言葉を聞いた望ちゃんは思わずその瞳を潤ませる、今度は嬉し泣きみたいだね

 

「はいっ!どうかよろしくお願いしますっ!!!」

 

望ちゃんはそう言って悟に対して今一度深くお辞儀をする

 

「って事だからよぉ、望の事はおめぇがしっかり守ってやってくれよぉ、いいよなぁ?ヒーロー様よぉ?」

 

悟が俺の方を見ながらそう言ってきた、これに対しての俺の返事は決まっている

 

「当然だ、つかそん時はお前も手伝えよ?」

 

こうして、俺達の旅に望ちゃんが同行する事となったのだった

 

 

 

 

 

「……あの、私は……?」

 

「龍鳳の方は長門達と話し合って決めるんだなぁ」

 

悟の言葉を聞いた龍鳳さんは、肩をガックリと落とし項垂れるのであった。龍鳳さんの場合軍属ではなかったら素直にOK出せたと思うんだけどね……、まあこればかりは仕方ないかな?

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