※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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龍鳳の決意

さて、1曲歌い終わったところで降壇し独りで酒を呷ろうとしたのだが……

 

「歌ってる悟さん、とってもカッコ良かったですよ~」

 

龍鳳の奴が俺から離れる気配が毛ほども感じられない……、俺はこいつに付き纏われるような事を何かしたのか……?

 

「そりゃぁよぅござんしたぁ、つかよぉ、おめぇさっきから俺にべったりなんだが他の奴のとこ行かなくていいのかぁ?」

 

宴会の喧騒から離れながら龍鳳に尋ねる、別にこいつの事を嫌ってこういう事を言っている訳ではない、ただほんの少し気になっただけなのだ

 

「皆さんのところには悟さんのところに来る前に、もう行って来ちゃったんですよ。その時にはもう加賀さんは輝さんのところに行っちゃってて、もう話しかけられるような状況じゃなかったですね~」

 

龍鳳の言葉を聞いてチラリと輝の方を見てみると、輝は加賀に酒を取り上げられ、加賀は輝から取り上げた酒を飲みながら輝に説教しているようだった。その内容はこの場所からは流石に聞き取れなかったが……、大方輝の飲酒量についてだろう。これについては俺の方からも言いたいところだったし、まああいつにはいい薬になるかと思い無視する事にした

 

「それにしても、静かになりましたね……」

 

ふと龍鳳がそう呟く、今はもう夜の帳が下りていて辺りは暗くなっていたのだ。駆逐艦の多くは騒ぎ疲れて床に就いているようで、残っているのは軽巡以上の艦娘や一部の穏健派深海棲艦といったところだ。望も神風に連れられて既に夢の中だろう、まああいつは今日は色々あって非常に疲れているだろうから、早めに眠ってしっかり疲れを取ってもらいたいところだ

 

「中心になって騒いでた連中も大体大人しくなったからなぁ、まあ俺としてはこのくらい静かな方が落ち着くんだよなぁ」

 

そう言いながら俺は浜辺に腰を降ろし、先程適当に取って来たバーベキューの串にかぶりつき、良く味わった後それを飲み込み胃に酒を流し込む

 

今回の宴会で大暴れした特撮同好会の連中も今はとても大人しくしているものだ、シゲと通の姿が見えないのは恐らく酔い潰れた摩耶と神通を寝室に送ったからだろうな……

 

翔の奴は穏健派深海棲艦達と片付けられそうな食器を片付け始め、戦治郎はワンコさんと長門と何かを話しているようだった。空はと言うとカラオケ大会の会場の方を片付けているな……、もう寝てる奴がいる以上カラオケを続ける訳にもいかねぇからな

 

そして今回の功労者の1人である光太郎は、浜辺に大の字になって寝そべりキャシーに膝枕されてやがった。今回の作戦の成功を一番喜んでいるのはあいつだし、あいつの最大のトラウマを乗り越える事も出来たわけだから、騒ぎたくなる気持ちは分からんでもないな……。取り敢えず今はゆっくり休みな、光太郎……

 

「悟さん、何か嬉しそうですね」

 

「……さて何の事やら、ってなぁ」

 

俺の顔を見てそんな事を言う龍鳳、しまった表情に出ていたか……?俺はそんな事を考えながらその言葉に対して誤魔化すように返事をし、手酌でグラスに酒を注ごうとするが、酒瓶を龍鳳に奪われてしまい……

 

「はい、どうぞ♪」

 

そのまま龍鳳に酌をされる……、ホント俺はこいつにここまでさせるような事を何かやったのか?まるで思いつかんぞ……

 

「龍鳳よぉ、おめぇ何でここまで俺に絡んでくるんだぁ?」

 

思っていた事がつい口から零れる、それを聞いた龍鳳は一瞬キョトンとした後

 

「だって、悟さんは私の事を2回も助けてくれたじゃないですか。ですから、その恩返しをしたいな~って思ったんですよ」

 

そう言って俺に微笑みかけてくるのだった、……あぁあの時の事か……

 

「ありゃぁ俺の自己満足みてぇなもんだ、おめぇが気にするような事じゃねぇ」

 

「自己満足……?」

 

俺の言葉を聞いた龍鳳が小首を傾げながらそう呟く、それを聞いた俺は先程龍鳳に注がれたグラスの酒を一気に呷り、自身の自己満足の事について話し始めるのだった。……口が軽くなってるのはきっと酒のせいだろう

 

自身の目の前で命が失われる事を大いに恐れ、誰かの命を弄ぶような輩を絶対に許す事が出来ず、それらから命を守る為に医者になった事、そして気付けば自分がどのような人生を歩んで来たかを捲し立てるように話していた

 

結局のところ、俺が龍鳳を助けたのは俺の目の前で龍鳳が死ぬ事が恐ろしくて仕方がなかったから、自身が不快にならないようにする為の自慰のようなものだったのだ。そんなものに感謝などされても……

 

そんな事を考えていると、俺の身体を柔らかいものが包み込んでいた。よく見ると龍鳳の奴がいつの間にか俺の後ろに回り込み、俺の事を抱きしめていたのだ

 

「悟さんは、本当に優しい方なんですね……」

 

「……はぁ?」

 

「誰だって自分の目の前で誰かが死んだりするのは嫌ですし、命を弄ぶような真似なんて絶対に許せません。例え自己満足だったとしても悟さんはそういうのに真正面から立ち向かっている……、私はそんな事が出来るくらい優しい人を今まで見た事ありません。そんな悟さんは何処の誰よりもきっとかっこいい、少なくとも私はそう思います」

 

俺を抱きしめたまま龍鳳が言葉を紡ぐ、そういや今までこんな事言われた事はなかったな……、改めて龍鳳の言葉を頭の中で反芻すると少々気恥ずかしくなってくる

 

「……よし、私決めました!」

 

「あん?何をだぁ?」

 

唐突に声を上げる龍鳳に驚き、思わず聞き返してしまった

 

「私、悟さん達について行きます!例え誰が何と言おうとも絶対に絶っ対について行きますよっ!」

 

「おっま、何言い出してんだぁ?」

 

「今の話を聞いて思ったんです、こんなに優しい悟さんですもの、きっと誰かを助ける為に無茶しちゃうんじゃないかって。他の人の命を守る為に自分の命を二の次にして、そんな事をずっと続けていって……、そして最後は倒れちゃうんじゃないかって……」

 

そう言って龍鳳は涙ぐむのだった、龍鳳の言葉を聞いて思い返すと、確かに自分の命を勘定に入れた事がこれまで1度もなかったな……。そのせいで医者やってた時は何度か倒れかけた事もあったっけか……

 

「だから、私は悟さんが無理をしなくて済むように……、苦しまなくていいように……、傍で支えてあげたいんです……、悟さんの力になりたいんです……」

 

遂に龍鳳が泣き出してしまった……、しかしどうしたものか……

 

こうなってしまった以上申し出を断るわけにはいかないが、如何せん龍鳳は現在日本の海軍に所属している為このような自分の都合だけで軍を抜けるなんて真似は出来ないはずなのだ。もし勝手に連れ出そうものなら日本海軍から目ぇ付けられかねん……

 

「女を泣かせてんなぁ、この色男」

 

そんな事を考えていると、俺の頭上から声が聞こえた。その声の主は……

 

「戦治郎……、誰が色男だってぇ?」

 

「おめぇだよおめぇ、いつの間に龍鳳とそんな仲になったんだよ、ちょっちおっちゃんに聞かせてみ?ん?」

 

そう言って耳に手を当てこちらに向けて来る戦治郎、ちょいそのツラぶん殴ってもいいか?

 

「今それどころじゃねぇんだよぉ、龍鳳の奴が「軍を抜けてお前達に同行したいそうだな?」……おめぇもいたのかよぉ、長門……」

 

俺が戦治郎に事情を話そうとしたところで、会話に長門が割って入って来やがった。どうやらワンコさんとの話が終わって皆の様子を見に来たようだ

 

「龍鳳の件だが、私の方から元帥に話をつけるとしよう」

 

長門の奴がとんでもない事言いやがった……、本当にそれでいいのか日本海軍……

 

長門曰く、龍鳳を俺達が日本に着くまでの間の監視役として同行させるようにするとの事だった、そうなった場合龍鳳はその間俺達の動向を逐一記録し、俺達が日本に着いた際その記録を大本営に提出する事になるらしい

 

「そうすれば龍鳳もお前達に同行出来るし、その記録の内容次第では日本海軍がお前達を信頼してくれるようになるかもしれないからな」

 

「記録方法についてなんだけどよ、ここ出る前に皆の通信機改修してカメラ付けようと思ってるから、それと手記で頑張ってもらおうと思ってるんだわ」

 

俺達全員の映像も提出して、龍鳳の映像の信憑性を上げようって魂胆だな。他にも何かありそうだが、まあ気にしても仕方ないか

 

「そういう事なんだが、頼めるか?」

 

龍鳳の件について長門が説明し終え、龍鳳に監視役を引き受けてくれるか尋ねたところ

 

「是非やらせて下さい!お願いします!」

 

龍鳳は頭を下げながら二つ返事で快諾し、龍鳳はめでたく俺達に同行出来るようになったのであった

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