今回の視点は……、ようやくあの人の登場です
今日もまた、可愛い可愛い戦争の火種達の様子を見に行く為に、私は私とあの人専用の水上バイクでこの大海原を駆けていた
プロフェッサーの話によると、どうやらまたあの子達はマダガスカルに攻撃を仕掛けたみたいなのよね……。私はいつも言ってるんだけどねぇ、攻め込むのならもっと兵の数を増やしてからにしなさいってね
それに戦争と言うものは貴方達が考えているほど生ぬるいものではない、貴方達が普段やっていたヤンキーの喧嘩とは次元が違うと言うのをいい加減分かってくれないかしら……
そんな事を考えながら、水上バイク『クリュサオル』を操縦していると……
「クソッタレ!動け!動け!動きやがれってんだっ!!!」
何処からともなく誰かの悪態と、ガンッガンッと言う機械か何かを殴るか蹴るかしているような音が聞こえたの
何事かと思ってその声と音がした方角を見てみると、深海棲艦……、あれは確か南方棲鬼だったかしら?何かそんな感じの名前だったと思う子が水上バイクに蹴りを入れていたのよ……って、あれはケートスじゃない。あの子は一体何処であれを手に入れたのかしら?
前に可奈子のところに行った時はあんな子いなかったはずだし……、新入りの子かしら?まあそんな事は重要じゃないわね、今私がやるべき事は……
「何をやっているのかしら?」
私はそう言ってこの南方棲鬼に話しかけたの、いつまでもその子を足蹴にされるのは気分が悪くなるのよね
「あん?」
私の声に反応して、南方棲鬼が私の方を見て来たんだけど、この子は私が『クリュサオル』に乗っている事に気付くとニヤリと笑ったのよ
「さっき動け動けと言っていたのは貴方なの?その子が動かなくなって困っているの?」
「ああそうだ、突然こいつが動かなくなっちまってな、俺は機械にあまり詳しくねぇから動かなくなった原因が分からなくて困ってたんだわ」
そう言いながらもニヤニヤと笑うのを止めない南方棲鬼、気持ち悪いから早くニヤつくのを止めてくれないかしら?大方私の水上バイクを狙ってるんでしょうけど、残念だけどこの子は私とあの人以外には動かせないのよね
「ちょっと見せてもらってもいいかしら?」
この先の展開は予想出来ている、けど敢えて乗ってあげる。私はそう言って『クリュサオル』のエンジンを切ってから降りて、南方棲鬼が乗っていたケートスの傍まで歩み寄る。すると……
「はははははっ!!!そいつはくれてやるからこいつをもらっていくぜっ!!!」
そう言って南方棲鬼は『クリュサオル』に跨り、エンジンをかけ……ようとしたのだけど何度キーを回しても『クリュサオル』のエンジンはかからなかったの
「……あん?何でエンジンがかからねぇんだよ!!」
「やっぱり『クリュサオル』を狙っていたのね、でも残念でした、それは私とあの人以外にはエンジンをかけられないようにしてあるのよ」
そう、『クリュサオル』には生体認証機能が付けられてて、私とあの人以外には動かす事が出来ないの
……あの人のデータを手に入れたのは本当に偶然だったのだけれどね……
ちょっと前にヨーロッパの方で取引していた深海棲艦の拠点が陥落したと聞いて、何となく様子を見に行ったら見つけちゃったのよ、私が心の奥底から愛して止まないあの人を……。姿は私同様変わってしまっていたけど、それでも一目見ただけであの人だって分かっちゃった
あの時は本当にびっくりしたわ~……、まさかあの人がもうこちらの世界に来ているなんて……、あの人が死んでしまったのは悲しいけれど、また会えたのは本当に嬉しかったわ……。私がこっちの世界で作った貴方への贈り物の紛い物を見て、すぐに私がこの世界にいるって気付いてくれた時は思わず泣きそうになっちゃったわ……
でもちょっとせっかちさんよね、私はまだ私とあの人の理想郷を作り上げていないのに、まだ準備中だったのに来ちゃうんだもの……
でもいいの、あの人がこんなに早くこの世界に来たのは、きっと私に会いたくて会いたくて仕方がなかったからだと思うの。そう思うと私は今まで以上に頑張れる、そう思うの。だから待っていて、すぐに私と貴方の理想郷を……、戦争を糧に生きる者達の最高の楽園を作ってあげるからね!
ち・な・み・に、あの人のデータはあの人があそこの拠点で使っていた寝具から髪の毛を1本頂いたの。それから得たデータを、『クリュサオル』の生体認証システムに入力してはい、お仕舞い。ね?簡単でしょ?
「シカトしてんじゃねぇぞてめぇっ!!!」
っと、ついあの人への想いで頭も心も一杯になってて、この子の存在をスッカリ忘れてたわ、いけないいけない♪そんな事を考えながら、私はこの子が至近距離から放つへなちょこな砲撃をヒョイヒョイと躱すの。ついつい欠伸が出そうになっちゃうけれど、はしたないから我慢我慢っと
そうこうしてると、南方棲鬼が弾切れを起こしたのか砲撃が止んだの。あんなに無駄撃ちしてたらそうなっちゃうわよね~、撃つならちゃんと相手を見ながら撃たなきゃダメじゃない
「はぁ……はぁ……ぜぇ……ぜぇ……」
あらあら、砲撃のし過ぎで疲れちゃったのかしら?砲撃の腕前だけでなく体力もないなんて……、おまけに他人様のものを盗もうともしてたしホントこの子ってゴミ未満ね~。ウチには絶対いらないわ~
「てめ……何もん……だ……?」
「あらあら?相手に名前を尋ねる時は、まずは自分から名乗るものじゃない?」
私はクスクスと笑いながらそう言ったの、そしたらこの子、苛立ってるのを隠そうともせず名乗ってくれたわ~
「ウィリアム・サウスパークだ、覚えてやがれこのアバ〇レ……」
「ウィリアム・サウスパーク……、何処かで聞いたような……」
私がこう言うと、この子ったら急にまたニヤつき出したのよね~……。ホント気持ち悪いわね、この子
「ああそうだ、俺があのk「ああ、思い出したわ!」おお、そうかそうか!だったら俺が何て呼ばれてたか分かるよなぁ?」
この子の気持ち悪いニヤニヤも、いい加減見飽きたので言ってあげたわ
「垂れ流しウィルちゃんよね?あの人が言ってたのよ~」
「おいちょっと待て!何でお前がその事知ってるんだ!いや……、あの人って誰の事だよっ!?答えやがれっ!」
そう言ってウィルちゃんは弾の入ってない砲を私に向けてきたの、取り敢えずこの子も名乗ってくれた事だし、名乗ってあげてもいいわね
「あの人って言うのはね、私が愛してやまない旦那様、貴方にその不名誉なニックネームがつく切っ掛けを作った貴方の元上司……、稲田 剛の事……。そして私はその妻、アレクサンドラ・稲田と言うの。覚えてくれたかしら?ウィ・ル・ちゃん?」
プロフェッサーが水母水姫と呼ぶ深海棲艦となった私、アレクサンドラ・稲田はウィルちゃんに微笑みかけながら名乗ってあげるの。そしたらウィルちゃんったら凄くびっくりしたまま私の事を見てるのよね、そんなに私を見つめてもその気になんてならないわよ?だって私には剛がいるんだもの♪
「さ・て・と、お互い名乗り合ったところで話を戻してもいいかしら?」
ウィルちゃんに尋ねてみたんだけど、この子驚いたまま全く反応してくれなかったの。仕方ないから無言は肯定って事にして話を進めることにしたわ
「この水上バイク、ケートスって言うのだけど、調子が悪いなら見てあげるわ。それを作り上げたのは私だからね、動かなくなった原因なんてすぐに直してあげるわ」
……これも反応なかったから勝手に修理を始めるんだけど、原因はただのガス欠だったわ……、こんな事も分からないなんて、ホントにこの子っておバカさぁん
取り敢えず予備の燃料を分けてあげて、ケートスを動かせるようにしたところで、この子が何でこんなところにいるのかを尋ねてみたの。そしたら穏健派に裏切られたとか、剛に馬鹿にされたとか、『大和魂』に腕を斬り落とされたとか……
今までの言動からしたら、全部この子の自業自得なんでしょうけどね。大方好き勝手やってたツケが回ってきた感じ、そうでしょ?
「そう、それでこれからどうしようとしてたのかしら?」
私がそう尋ねるとダンマリを決め込むお馬鹿なウィルちゃん、ノープランなのね……。こんな子をウチで面倒見るのは絶対嫌だし、だからと言って放置するのもどうかと思うし……。いっそ可奈子のところを紹介してあげようかしら?あそこならこの子と相性よさそうだしね!まあこの子がヘタレなければだけど……。……そう言えば、ここ最近作った武器でまだ試していないのがあったわね~……、……そうだわっ!
「ねぇウィルちゃん、ケートスの修理代って事でお願いしたい事があるんだけどいいかしら?」
「あぁん?」
「実はね~……」
私がウィルちゃんに話を持ち掛けると、この子はすぐにそれを了承してくれたわ。武器の事を話してあげたらお誂え向きだ~ってものすっごく喜んでいたわ~、ホントこの子って単純
そう言う事で、私はウィルちゃんの左腕に新開発した義手型の武器を取り付けて、可奈子にウィルちゃんの身柄を押し付ける事にしたの。この子の教育頑張ってね、か・な・こ♪
『憑依天龍が行く!』を執筆されている鳴神 ソラさんが、なんとこの『鬼の鎮守府』とコラボしてくださいました!
鳴神 ソラさんが描くここのとはちょっと違った戦治郎達を、どうぞお楽しみ下さい!