「そういえば……」
護達と動画を見ていた不知火が、ふと何かに気付いたのか動画を見ながら不思議そうに護達に尋ねる
「ドイツでの宴会の時、戦治郎さんは終始お酒を飲んでいたはずなのに今回は途中からジュースに切り替えていらっしゃるようなのですが……、一体どうなさったのでしょうか?」
「そうなんですか?私はドイツの宴会の事は分からないんですけど……、でも確かに動画にちょくちょく出て来る戦治郎さんが握ってるグラスには、オレンジジュースみたいなものが注がれてますね」
不知火の言葉を聞いた龍鳳が、動画に映っているであろう戦治郎のグラスの中身を見てそんな事を言った
「ドイツの時はセオドールさんと通さんと一緒に二次会もやったと聞いていますが……、通さんは戦治郎さんから何か聞いていませんか?」
龍鳳同様動画を見ていた神通が通に尋ねる、しかし通はその問に対して
「いえ、私は特に何も聞いていませんね……、もしかしたらこのグラスの中身はスクリュードライバーかもしれませんよ?」
そう返すのだが、俺から見たら嘘を付いているのが丸分かりだった……。通よ、もう少し挙動を抑えて嘘を付いている事がバレないようにする努力をしたらどうなんだ……?
「枠々さんがこう言ってるんだから、多分そうなんじゃないッスかね~?」
通の発言に便乗するように、今度は護がそんな事を言った。恐らく通のフォローなのだろうな、まあその発言を聞いていた艦娘達は枠々さんと言う単語を聞いて頭に疑問符を浮かべているようだったが……
因みに今護が通の事を枠々さんと呼んだのだが、これは通が恐ろしいほどに酒に強い事から付けられた渾名である
飲む量は輝がダントツでトップなのだが、アルコール耐性については通の方が圧倒的に高いのである。いくら飲ませたところで全くと言っていいほど酔わない、そんな素振りすら見せないのである。通は過去に輝と飲み比べをして勝った実績があるからな……
そう言えば、輝は飲み比べで通に負けた結果『鬼コロリ』なる渾名を付けられていたな……。枠々さんと鬼コロリ……、どこぞのTV番組に登場して番組内で終始酒を飲んでいそうだな……
それは兎も角、戦治郎のグラスの中身についてだが、あれは正真正銘オレンジジュースである
戦治郎は高校の頃に発生したとある事件のせいで、クセが付いてしまったのか痔の発症率が普通の人よりも高くなっているのだ。そのせいで酒と刺激物が大量に摂取出来ず、色々と苦労する羽目になったのだ
こちらの世界に来た時に光太郎の右目が治っていた事から、戦治郎のそれも治っていると思われていたのだが、ドイツでの宴会からしばらくしてから発症してしまい、戦治郎はその事実が発覚した後長門屋の面子以外にバレないように表面に出す事無く、心の中でさめざめと泣いていたのである
因みに今回の宴会では、そのあたりの事情を警戒しながら楽しんだおかげで発症するに至らなかったようだ。……前回悟から次発症させたら、注入式から坐薬に変えると釘を刺されていた為気合いを入れて発症を抑えたのだろう……
そんな事を考えていると、俺宛の通信が入ってきた。どうやら哨戒機として飛ばしていた艦上戦闘機に生まれ変わったワイルドからのようだ
『ご主人、深海棲艦に襲われている艦娘の艦隊を発見したニャ!』
「そうか……、深海棲艦側の規模はどうなっている?」
『36匹くらいだニャ!艦娘達の方は6人しかいないから、このままじゃ嬲り殺しにされちゃうニャ!』
ワイルドの報告を聞いた俺に緊張が走る、そしてそれを感じ取ったのか皆と動画鑑賞を楽しんでいた通、護、神通の3人が一斉にこちらへ視線を向けてきた
「空さん、猫達が何か見つけたのですか?」
真剣な表情で尋ねてきた通に先ほどの報告内容を伝えると、今度は海賊団全体にピリピリとした空気が漂い始める
「36隻っ!?何でそんな大艦隊がこんなところにいるんですかっ?!」
「俺達がソロモンに向かってるって情報がリコリスに伝わったのかもしれねぇなぁ……、そんで俺達が穏健派の総本山と接触するのを阻止する為にそいつらを派遣したってところだろうよぉ」
相手の規模を聞いて驚愕する龍鳳さんと、その質問に答えるようにその艦隊がこのインド洋を徘徊している理由について自分の予想を述べる悟。恐らく悟の考えている通りなのだろう
「それに何処かの艦娘達が巻き込まれてしまったと……、こうしちゃいられない!早く助けにいかないとっ!」
「んだな、俺達の厄介事に巻き込んじまったわけだし、ここはいっちょ救援するとしますか!……って言っても全員で一斉に行ったら艦娘達がパニック起こしそうだし……、ってわけで今手ぇ空いてる面子だけで行ってもらってもいいか?」
悟の話を聞いた光太郎が艦娘達を助けるべきだと意見をし、戦治郎もそれを肯定してからすぐに出撃する面子を選出し指示を出す
「その数に空さんと光太郎さんッスか~……、相手が可哀想になるくらいの過剰戦力ッスね~」
「そう言う護さんも大概だと思うのは不知火だけでしょうか……?」
出撃メンバーを聞いて護と不知火がそれぞれの感想を述べる、俺、光太郎、悟、通、護、翔、神通、龍鳳、不知火……、確かに36匹程度の艦隊には過剰戦力な気もしないでもないが、今はそんな事はどうでもいい、重要な事ではないのだ
「承知した、ではこれより艦娘の艦隊の救援を開始する。該当するメンバーは俺について来い」
俺はそう言ってワイルドから受け取った情報を下に、その戦場に武力介入する為に進軍を開始するのだった
「あれか……っ!」
途中で合流した猫戦闘機達の誘導を受けながら進んだ先で、先ほど報告にあった艦娘の艦隊を発見する。見たところ誰も轟沈している様子はないので一先ず安心するが、相手は艦娘達の抵抗でほんの少しは沈んでいるようだがまだまだ健在、油断出来ない状況であった
「光太郎!通!俺達は先行して敵陣に突入、引っ掻き回すぞっ!」
「OK!変身は……したら艦娘達が驚いちゃうだろうから無しでいいか!」
「承知致しました、私は念の為に分身を作っておいて海に潜ませておきますね」
俺がそう叫ぶと2人はそれぞれ応答し、通が分身を海の中に隠しきったところで俺達3人が海を駆け、敵陣ド真ん中に突撃する
「神通はどうするんッスか?あの後追うんッスか?」
「いえ、私はここで皆さんを襲って来た相手を迎え撃とうと思います」
「そうして頂けると狙撃に集中出来るので助かります、龍鳳さんはそろそろ艦載機を飛ばした方がいいのでは?」
「えっ?!空さん達が突撃しちゃったのにですかっ!?」
「あいつらがおめぇの爆撃を喰らうようなタマだと思うかぁ?っとぉ、それはそうと潜水艦はいねぇみてぇだからよぉ、俺は神通の援護に入らせてもらうわぁ」
「僕の方は艦載機の半分を空さん達の方へ、残りは直掩機にしておきますね。それじゃあ龍鳳さん、やっちゃいましょうか」
後方からそんなやり取りが聞こえてくる、龍鳳は俺達の戦い方にまだ慣れていないようだな……。まあそのうち慣れるだろうから今は気にしないでおこう
そうこうしていると深海棲艦が艦娘達に向けて砲撃、砲門から飛び出した砲弾は艦娘達に向かって放物線を描きながら徐々に近づいていく
ターゲットにされた艦娘は必死になって回避行動をとろうとしているのだが、艤装がピクリとも動いていなかった、恐らく機関部をやられてしまったのだろう……
不味い!そう思った俺は一気に速度を上げ狙われた艦娘と砲弾の間に割って入り……
「ふっ!!!」
掛け声と共にサッカーのジャンピングボレーの要領で蹴りを放ち、俺は砲弾を蹴り砕いたのである。因みに蹴りの威力を上げる為に足の装甲を増やしているので、砲弾を蹴った足へのダメージは一切ない
「大丈夫……か……?」
俺は海面に降り立った後、ターゲットにされた艦娘の安否を確認する為にそちらを向きながら無事かどうか尋ねようとしたのだが、その艦娘を見た瞬間それ以上の言葉を話す事が出来なくなってしまった……
「空母棲姫が私を助けた……?一体どうして……?」
砲撃のターゲットにされた艦娘、翔鶴型正規空母の1番艦である翔鶴は驚愕の表情を浮かべながらそんな事を呟き、ただただ俺を見つめてくるのであった
ワイルド……白猫戦闘機、語尾にニャーと付く
ヘル……白猫攻撃機、語尾にミャーと付く
タイガー……白猫爆撃機、語尾にニーと付く
ベア……白猫戦闘爆撃機、語尾にミーと付く
トム……白猫噴式戦闘爆撃機、語尾にナーと付く、勢いよくものにぶつかったり、殴られたり挟まれたりしても変形したりしないし、攻撃食らっても「ア"ア"ア"ァ"ァ"ァ"ーーーッ!!!」とか叫んだりしない