※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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龍の勉強会

俺と翔鶴は互いに見つめ合ったまま、ピクリとも動けなくなっていた

 

翔鶴の方は恐らく深海棲艦である俺達が何故自分を助けてくれたのかについて、頭の中に浮かび上がる疑問を処理しきれずに軽いパニックに陥っているのだろう。そのくらいの事は翔鶴の表情と雰囲気で大体予想が付く

 

一方俺の方はと言うと、今まで会いたくて会いたくて仕方がなかった翔鶴が今自分の目の前にいるという事実に心底驚き、完全に固まってしまっているからである。……不味いな、胸の高鳴りが止められそうにない……

 

因みに彼女達を襲っていた深海棲艦も動きを止めてしまっている、これは間違いなく俺達が武力介入してきた事で艦隊全体が動揺してしまったからだろう

 

その隙を突いて通と光太郎が作戦通りに敵陣に突入し、通は朝日影と月影を、光太郎は双腕重機アームを振り回して深海棲艦達を蹴散らし、更に混乱と動揺を拡散させていた

 

そして追撃とばかりに翔と龍鳳が発艦させたと思われる航空隊が到着し、相手の航空隊を食い散らしながらも、隙あらば魚雷や爆弾で混乱し足を止めてしまった奴らを次々と沈めていく

 

そこでようやく我に返り戦闘態勢に入ろうとした深海棲艦が唐突に仰け反り倒れ、暗い水底へと姿を消していく、これはきっと不知火の狙撃が直撃したのだろう……。あの場所から狙撃したとなると、不知火は相当腕を上げたようだな。不知火の頑張りもあるのだろうが、これほどまでに成長出来たのは剛さんの教えがあったからこそあろう、不知火は本当にいい師に巡り合えたようだな……

 

俺がそんな事を考えていると、今度は空から大量にミサイルが降り注ぎ、海上に汚い花火がこれでもかと言わんばかりに咲き乱れる。これは護からの援護射撃だろうな、この場でこんな芸当が出来るのは現状奴しかいないからな

 

「翔鶴!大丈夫かっ!?」

 

不意に聞こえた声に反応し、何事かと思いそちらの方を向いてみると翔鶴の随伴艦と思わしき日向が、大破した翔鶴の元へ慌てて駆け寄って来ていたのだ

 

「日向さん……申し訳ありません、どうやら機関部をやられてしまったようで自力で航行出来そうにないです……」

 

翔鶴のその言葉を聞いた俺の胸がチクリと痛む、俺達がもっと彼女達を発見し早く駆けつける事が出来れば、彼女はこのような姿になる事はなかったはずだ……。そう考えると胸が締め付けられるような気分になってしまった……

 

「分かった、ならば私が曳航しよう。相手が混乱しているこの隙に、私達は撤退するぞ!」

 

日向はそう言って翔鶴に肩を貸し、彼女達の艦隊は俺達に背を向けて撤退を開始するのだった

 

(待ってくれ!)

 

……そう言いたかったのだが、その時の俺はどうしても上手く言葉を紡ぐ事が出来ず、結局彼女達の背中に向けて手を伸ばした姿勢のまま、俺は彼女達が撤退するその様子をただ見送る事しか出来なかったのである……

 

結局俺は彼女達の背中が見えなくなるまでその手を伸ばしたままその場でしばらくの間立ち尽くす、折角出会えたのに名乗る事すら出来なかった……、これが本当に残念で仕方がなかった……。それから俺は伸ばしていた腕をゆっくりと下ろし……、反対の腕で俺の方へと飛んできた砲弾を掴む

 

俺が立ち尽くしている間に、結構な数の砲弾が俺の後頭部にバカスカ当たっていたのである。えぇい貴様らは空気の1つも読めないのか……っ!

 

「空ぁぁぁーーー!!!そろそろ戻ってこぉぉぉいっ!!!」

 

その直後に光太郎の叫びが聞こえて来たので、俺は気持ちを切り替え……

 

「……よかろう、人の恋路を邪魔する痴れ者がどの様な末路を辿るか……、その身に嫌と言うほど深く刻みつけてやろう……っ!」

 

る様な事は一切せず、その怒りの全てを奴らに叩きつけて発散するのであった

 

後にその時の俺の様子を間近で見ていた光太郎と通は

 

「理由はどうあれあの戦いぶりを見てたら、後で反動で動けなくなるんじゃないかと凄く心配したよ……」

 

「あそこまで周囲に怒気を撒き散らす空さんは、本当に久し振りに見た気がします……。あの時は戦闘中ずっと鳥肌が立っていましたよ……」

 

このような事を言っていたそうだ……、誰だって俺と同じ立場になればこうなるものではないのか?ぬぅ……、解せぬ……

 

 

 

俺が我に返った時には敵は既に全滅し、その海域には俺達しか残っていなかったので俺達は戦治郎達のところに戻り、先程の戦闘の詳細を皆に報告したところ……

 

「今日は講師役として忙しいわね~、でも空ちゃんの今後の為だと思うとやる気が出て来るわ~♪」

 

「空さんには今日ここで、乙女心をしっかり理解出来るようになってもらわないといけませんねっ!」

 

何故か「女性のハートを掴む男の講習会」などと言う講義が俺のみを対象として開催されてしまったのである……何故だ……?

 

因みに講師は英語教室から引き続き剛さんが担当、その助手を務めるのは龍鳳であった

 

剛さんが講師になった理由については海賊団の中で唯一結婚した事があるからであり、龍鳳がサポートに入ったのは現在進行形で恋する乙女の代表としてとの事だった

 

この時点で講義を止める事は不可能と判断した俺は、発案者である戦治郎にすぐさま講義をする理由について尋ねる。すると……

 

「いや、おめぇ今までまともに恋愛した事ねぇだろ?メダル取ってからは彼女作ったりしてたけど本気でそいつらの事好きになった事なんて一切なかっただろ?そのせいで女心とか分からなくて普段通りに振舞って、思いっきりドン引きされて逃げられて……そんな調子だったから未だにサクランボなんだろうが」

 

戦治郎がそのような事を言う、ぬぅ……全く反論出来ん……

 

学生時代は戦治郎達とつるむので忙しく、恋愛などする余裕もなかった。そしてオリンピックで金メダルを獲得してからは向こうから俺に寄って来る事が多かったが、その殆どが自然体の俺ではなく金メダリストの俺しか見ていなかった為、全くその気になれなかったのである

 

「そんなおめぇが本気で翔鶴に惚れたってんなら、親友として全力で応援するしかねぇだろうがよ。この講義はそんなおめぇに絶対に必要になる、そう思ったからやる事にしたんだよ、そこんとこOK?」

 

「そういう事か……、そのなんだ……、気を遣わせてすまない……」

 

戦治郎の言葉を聞いた俺は、気を遣わせてしまった事に対して頭を下げて謝罪するのだが……

 

「あ~あ~聞こえな~い、俺はそんな言葉聞こえませ~ん」

 

戦治郎は耳を塞ぎながらそう言って、俺の謝罪を受け取り拒否するのだった。この反応を見る限り、戦治郎は俺の事を本気で応援してくれているのだと言うのがよく分かった。ならばここで返すべき言葉は……

 

「……感謝するぞ、戦治郎」

 

「最初からそう言いやがれっての、んじゃ剛さん、龍鳳、空の事お願いしますね~」

 

俺が今度は感謝の言葉を述べると、戦治郎はそれをしっかりと受け取ると後の事を剛さん達に任せ、俺に背を向けて離れて行った

 

「任せて頂戴☆アタシも今の空ちゃんの気持ちはよ~く分かるからね~、だから先輩としてみ~っちりその辺の事教えてあ・げ・る♪」

 

「私も女性の立場から色んな事を教えちゃいますから、しっかり覚えてくださいね♪」

 

剛さんと龍鳳がそう言った後、すぐに講義が開始されるのであった

 

尚、この講義を盗み聞きする者が何人かいたそうだ、海賊団にはこういった話に興味があるだろう年頃の娘もいるのだから、仕方ないと言えば仕方ない事か……

 

俺はそんな事を考えながらも、剛さんや龍鳳の言葉を普段から持ち歩いている手帳に要点をまとめながら記入していくのだった

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