※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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鶴の報告

「今日は本当に災難だったな……」

 

私の隣で湯船に浸かる日向さんがそう話しかけてきました、ここは私達の拠点であるショートランド泊地にある入渠施設内の大浴場、私と日向さんは先程の戦闘の疲れを癒す為に一緒にお風呂に入っていたのです

 

「そうですね……、まさかあんなところに深海棲艦の大艦隊がいるなんて……」

 

先程の戦闘の事を思い出しながら、私は日向さんの言葉にそう返すのでした

 

「だがまあ、おかげで私達の任務は達成出来たのだがな」

 

日向さんが言う任務、それは深海棲艦同士が戦っていると言う噂の真偽を調査する事でした

 

事の発端は泊地に所属する駆逐艦の皆さんの間に広まっている噂話でした、何でも遠征を終えて泊地に帰還するその道中で、深海棲艦同士が激しい戦闘を繰り広げていたというものでした

 

少し前まではそんな話は一切なかったのですが、ある日を境に誰かがそう囁き始め、今ではショートランド泊地だけでなく、トラック泊地やブイン基地、ラバウル基地の方でもその噂が広がっているのだとか……

 

この噂が真実なのか、将又深海棲艦が私達を混乱させる為に流したデマなのか、噂が広がっている泊地や基地の提督達が話し合った結果、噂の真偽を各拠点がローテーションで調査する事が決まり、今日は私達ショートランド泊地が調査をする日だったのです

 

「あの噂は本当だった……、しかし何故深海棲艦同士が戦うのか……、そこだけがどうしても分からんな……」

 

日向さんが言うように、何故あの時後から来た深海棲艦達が仲間であるはずの深海棲艦と戦い、私達を助けるような真似をしたのかが何度考えても分かりませんでした……

 

特に私を助けてくれた空母棲姫のあの反応……、砲弾を蹴り砕いた直後に私の顔を見て驚愕し、動かなくなってしまった事については本当に謎が多いような気がします……

 

「まあ、ここで私達がいくら話し合っても答えは出ないか……。この続きは提督に任務の報告をした後、提督を交えて話し合おうじゃないか。このままここで話をしていたらのぼせてしまいそうだからな」

 

日向さんはそう言って湯船から出て脱衣所の方へと向かい、私もその後を追うようにして大浴場を後にするのでした

 

 

 

「……以上が今回の調査結果となります」

 

「噂は本当だったか……、しかも艦娘を助けるというおまけ付き……か……」

 

私が今日の出来事を提督に報告すると、提督はそう呟きながら机の上に置かれた書類に視線を向けるのでした

 

「それは?」

 

「お前達が出撃している間に届いた奴だ、見てみてくれ」

 

秘書艦を務める日向さんが書類の事を尋ねたところ、提督はそう言って書類を日向さんに手渡します。日向さんがその書類に目を通したところ……

 

「……これはっ!?」

 

とても衝撃的な内容だったのか、日向さんは驚き目を見開いたまま硬直してしまいました。私が日向さんの反応を不思議そうに見ていると、日向さんが私にその書類を手渡してきたので、私はその書類を受け取りその内容を読み始めました

 

それは先日行われた大本営直属の主力艦隊の方が書いた作戦名『カスガダマ沖海戦』の報告書の写しでした

 

深海棲艦の拠点があるというマダガスカル島に向かう道中に謎の深海棲艦の襲撃を受け、旗艦である長門さんが大破、随伴艦の方々も全員中破や小破と言った損害を受けてしまった為、相手を撒く為に南へ進路をとって移動を開始し、何とか相手を引き離し安全そうな場所を見つけ、そこで救援を待とうとしていたらそこには珍妙な深海棲艦達がいて、怪我の治療や食事の提供、艤装の修理だけでは留まらず改修までしてくれたと書かれていました

 

それにはまだ続きがあり、長門さん達を追って来た謎の深海棲艦達をその珍妙な深海棲艦達が蹴散らし、その正体がとある泊地で行われていた非合法の手術が原因で深海棲艦のようになってしまった艦娘である事を教えてくれたそうなのです。そして驚きの新事実はそれだけではなく、なんと長門さん達が攻撃しようとしていた深海棲艦の拠点は、人類との和平を望む深海棲艦の穏健派の拠点の1つだった事まで教えてくれたそうなのです

 

ここまで書類を読み進めた時点で私は既に混乱しているのですが、書類にはまだまだ信じがたい出来事が数多く書かれていました……

 

「他にもマダガスカルの拠点の代表の直筆の手紙やら、泊地の提督の成れの果ての標本、作戦成功を祝って開催された宴会でその拠点の深海棲艦と泊地所属の艦娘達が一緒になって騒いでる映像やらが元帥の下に届けられたそうだ……」

 

「待ってくれ、今標本と言ったかっ?!」

 

私が書類を読み進めている途中で、提督がそのような事を仰いました。提督のその言葉を聞いた日向さんがその事について問い詰めたところ、提督は机から写真を取り出し私達に見せてくれました。そこにはプラスチックのようなもので固められている得体の知れない化物の頭部と思われるものが写っていました……

 

「珍妙な連中に泊地を襲撃された提督が、反撃の為に自分の身体に深海棲艦の血液を注入したところこんな姿になってしまったんだとさ……。直接触ると取り込まれてしまうからって事で、その珍妙な連中が連れていた妖精さんがこのプラスチックみたいなのでこの化物の頭部をガッチガチに固めて、持ち運び出来るようにしたんだとか……」

 

深海棲艦の血液を自分に注入した結果こうなってしまった事や、直接触ると取り込まれる事など気になる点はいくつかありましたが、私が一番驚いたのは深海棲艦であるはずの珍妙な方々が妖精さんを連れている事でした

 

妖精さんは深海棲艦と敵対関係にあったと記憶しているのですが……、何故その妖精さんはこの方々と行動を共にしているのでしょう……?もしかしてこの方々は私達が知る深海棲艦とは何か違うのでしょうか……?

 

「その書類を見て分かった事をまとめると、深海棲艦にも穏健派がいる事、転生個体と言う強力な変わり種がいる事、そしてこれは俺達に大いに関わる事なんだが……」

 

提督はそこで言葉を区切り、一拍入れてから言葉を続けます

 

「穏健派の深海棲艦の総本山がソロモン諸島にあり、長門屋海賊団を名乗る珍妙な深海棲艦達がそこを目指していると言ったところだな……」

 

「……もしや」

 

提督の話を聞いた日向さんが少しだけ考え込み、何かに気付いたのかそう呟いた後その内容について話し始めました

 

「噂の正体は深海棲艦の穏健派と強硬派の派閥争いだとして、私達を助けてくれたのはソロモン諸島に向かっていると言うその長門屋海賊団の連中だったのではなかろうか……?砲弾を蹴り砕く空母棲姫に、剣術で戦う軽巡棲姫、ウォータージェットで相手を真っ二つにする南方棲戦姫……、こんな深海棲艦を私は今まで見た事も聞いた事もないぞ」

 

「え?翔鶴の報告に出て来た奴らってそんな戦い方してたの?」

 

「はい……、他にも海中から沢山腕が伸びて来て深海棲艦を捕まえて海中に引きずり込んだり、大量にミサイルが飛んできたりしました。恐らくあの深海棲艦の仲間が放ったものだと思われます……」

 

少々自信がなくて小さな声になってしまいましたけど、私は私がこの目で見たものを正直に提督に伝えました

 

「何それ怖い……、珍妙とか言われてたけどそんなレベルじゃないだろこれ……」

 

そう言って提督は頭を抱えてしまいました……、とても信じがたい事ですがこれらは全て私達の目の前で実際に起こった出来事なんです……

 

「……まあ、そうなるな……」

 

その光景を目にした日向さんがそう呟いていました……

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