※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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鶴の悪寒 そして・・・・・・

「……以上が今回の出撃で分かった事だ」

 

日向さんがその言葉を以って今回の出撃での成果の報告を締めくくります、その報告を聞いた提督達は沈痛な面持ちのまま黙り込んでしまいました……

 

今このショートランド泊地の提督執務室で日向さんの報告を聞いていたのは、私達の提督であるショートランド泊地の提督、ブイン基地の提督、そして用事があってここを訪れていたパラオ泊地の提督、そして私の4人。本来はトラック泊地の提督もお呼びする予定だったのですが……

 

「自分のところに所属する艦娘がそんな目にあったら、誰だって復讐したくなるものよね……」

 

執務室内の静寂を打ち破るように、ブインの提督が口を開きます。この人はここに集まっている提督の中で唯一の女性で、今回の集まりは彼女の提案で開かれる事になったのです

 

彼女の言葉についてなのですが、この集まりが始まる前に彼女からトラックの提督が強硬派に所属するラバウルの提督と協定を結んだと聞かされたのです

 

「その復讐の為にラバウルの戦力を利用しようって魂胆だろうな、ラバウル基地はこのあたりで一番戦力整ってるところだし、提督の血の気が多過ぎるからちょっと唆してやればすぐに大艦隊を動かすだろうからな」

 

「問題はその大艦隊で本当に相手が倒せるかよね~……、貴方達は確かその相手と似たような深海棲艦と行動を共にしたんだったわよね?」

 

提督とブインの提督がそんなやり取りをした後、ブインの提督が私達の方へと話を振って来ました

 

「空さんの事でしょうか……?「そうそう、そいつそいつ」でしたらそうですね、私達は確かに空さんと行動を共にしていました」

 

「彼についてだが、彼はあの報告書に出ていた長門屋海賊団のサブリーダーで、その戦闘能力は折り紙付きだな。実際24隻からなる深海棲艦の艦隊を1人で瞬く間に殲滅していたからな」

 

「「え"……?」」

 

私がブインの提督の質問に答えると、日向さんがその事について補足を入れ、それを聞いた提督とブインの提督が驚きのあまり変な声を出して固まっていました……

 

「ちょっと待て、俺そんな事聞いてねぇぞっ!?たった1人で24隻の大艦隊を相手して勝っただとっ?!」

 

「しかも殲滅って言った!?1隻残らず全部水底に沈めたって言うのっ?!何よその化物っ!有り得ないわよ普通っ!??」

 

「信じ難い話だが、私達の目の前で実際にやってのけていたからな。しかも当の本人はまだ余裕があったようだがな……」

 

日向さんは目を閉じてその時の光景を思い出しながらそう言いました、あの時は私も夢でも見ているのかと思いました……

 

「嘘だろおい……」

 

「冗談じゃないわよ……」

 

日向さんの言葉を聞いた2人は、椅子の背もたれに力なく背を預け呆然としていました……。気持ちは分かりますが、これは事実なので何とか受け止めて欲しいところです……

 

「……そいつはその事件の犯人と同等の力を持っているんだったか……?」

 

「そのあたりは犯人に遭遇しない限りハッキリしないと彼は言っていたな、彼は空母棲姫の転生個体だが過去に姫級より下位であるはずのル級の転生個体に手酷くやられた事があると言っていたからな……」

 

「転生個体……、これも確か報告書に書いてあった奴ね……。そのあたりについて詳しく聞いてない?」

 

今まで沈黙を続けていたパラオの提督が口を開きそう尋ねて来たので、日向さんが答えたところ、今度はブインの提督から転生個体についての質問が飛んできました

 

「それについてなんですが……」

 

ブインの提督の質問に対して、今度は私が転生個体についての説明を始めるのでした。この時、川内さん達に報告書の事を話した後に、空さんから頂いた詳細が分かり易くまとめられたメモ帳が大いに私を助けてくれました。これについては本当に空さんに感謝しなくてはいけませんね……

 

「別の世界で死んだ人間が深海棲艦に生まれ変わる、ねぇ……」

 

「こちらの世界で死んだ人間が深海棲艦になるパターンと言うのはないの?」

 

「そのパターンも一応はあるそうだ、事実海賊団には1度沈んで深海棲艦になってから、記憶と姿を取り戻した者が2人いるらしい。ただこのパターンの場合普通の深海棲艦よりは強いが、転生個体には性能で劣ると聞いている……」

 

「……っ!?」

 

私の説明を聞いた提督とブインの提督がそれぞれ呟いたり更なる質問を投げかけて、それに日向さんが答えます。そして日向さんの言葉を聞いたパラオの提督が反応し……

 

「それで……、それで1度沈んだ艦娘が戻って来てくれると言うのかっ?!どうしたら深海棲艦になった艦娘を元に戻せるんだっ!?頼む!その方法を教えてくれっ!!!この通りだっ!!!」

 

そう言ってパラオの提督は私達に土下座して、その方法を教えて欲しいと言ってきたのでした……

 

このパラオの提督は私達が行方不明になった艦娘を捜索している事を聞き、そのついでで構わないからと、ある艦娘の捜索の協力をお願いしに来ていたのです

 

ですが、偶々居合わせた執務室で私達の報告を聞き、その艦娘の生存が絶望的だと直感したようで、このような行動に走ったようです……

 

「……恐らく、その艦娘は深海棲艦にすらなれないだろうな……。艦娘の深海棲艦化には損傷の少ない艦娘の身体が必要なようだからな……」

 

これも空さんから渡された情報でした、空さん達と共にいる妖精さんから聞いた話だそうで、艦娘の艤装に組み込まれたコアと言うものが沈んだ艦娘を深海棲艦に作り替えるらしく、身体に損傷が多かったり欠損部位がある場合はコアが思うように身体を深海棲艦化させる事が出来ないそうです

 

今回の場合、相手が食人鬼なのでほぼ間違いなく身体の何処かを食べられて欠損状態になってしまうので、深海棲艦になる可能性は0だと空さんは断言していました……

 

日向さんの言葉を聞いたパラオの提督は、土下座の姿勢のまま泣き崩れてしまいます。折角一筋の希望の光が見えたと思ったところで、それがすぐに断たれてしまったのですからね……

 

「パラオの、お前もトラックの奴と同じように復讐に走るつもりか?」

 

そんなパラオの提督に、私達の提督がそう話しかけました。正直、私としては思い留まって欲しいところですね……、犯人が空さんと同等、若しくはそれ以上の実力者であった場合、いくら艦娘が束になって戦いを挑んでも返り討ちにさせるのが関の山だと思いますから……

 

「……いや、それはダメだ。それをやっては余計に被害が広がるだけだ……」

 

どうやらパラオの提督は思い留まってくれたようですね……、私はその言葉を聞いて内心ホッとしました

 

「よく思い留まったわね、まあ翔鶴達の報告を聞いたらそいつと真正面からやり合おうなんて思えないわよね」

 

「だな、つか俺達の場合搦め手入れたとしても勝てるか分からねぇからな……。取り敢えず今回の件は俺達じゃどうしようもなさそうだから、例の海賊団とやらに頼るしかなさそうだな……。っとそういや日向、海賊団をここに連れて来てくれって頼んでたはずだが、それはいけそうなのか?」

 

ここで提督が思い出したように日向さんに海賊団を連れて来る件について尋ねます、しかし日向さんは首を横に振り、その件の詳細を提督に話し始めるのでした

 

「サブリーダーだけでの判断じゃ無理か……、まあ相手も組織だから仕方ねぇか……。もしあっちがOK出した時は遠慮なく連れて来てくれよ、お前達の話聞いてたらそいつらに興味湧いたからな!」

 

「確か飛行可能な艤装を保有しているとか……、ただそれをノリと勢いだけで作った為根本的な部分を自分達でも把握出来ておらず、他の艤装に応用出来なくなっているんだったか……。こうやって聞くと馬鹿のようだが、技術力も実力もとんでもないものを持っているんだな……。確かにそいつらがどんな奴らか見てみたくなるな」

 

提督がそう言ったところでパラオの提督が提督の話に乗り……

 

「馬鹿のようって言ったら!そのサブリーダーって翔鶴に告白して来たんでしょう?!ちょっとそのあたり詳しく教えなさいよっ!悪いようにはしないからっ!ねっねっ!?」

 

それから今度はブインの提督が、空さんが私にその……、こ、告白して来た事についての詳細の報告を要求して来ました……

 

「えっ!?そ、それはちょっと……」

 

「ああ、それはもう情熱的なアプローチだったな、片膝を突いて想いを真っ直ぐぶつけて来て、挙句の果てに左の手の甲にキスだったか……。私の時もこのくらいの事はしてもらいたかったものだな」

 

困惑する私の方にニヤニヤしながら視線を向け、空さんがどのような告白をしたかを赤裸々に話す日向さん。最後のあたりのセリフについては、左手の薬指にある指輪がよく見える位置に手を置いて、提督の方に視線を送りながら言っていました

 

その後は、日向さんの話を聞いたブインの提督がヒートアップしながら返事はしたのか、どう返事するつもりなのかなどを根掘り葉掘り尋ねられてしまいました……

 

そんな中、私は急に悪寒のような何かを感じ、ついキョロキョロとあたりを見回しました。しかし執務室の中には特に何か変わったものがあったわけでもなかったので、その感覚について不思議に思っていると……

 

「ちょっと翔鶴!?私の話聞いてるっ?!」

 

その様子を見ていたブインの提督から告白の件で、更に色々と追及されてしまいました……。その……、誰か助けて下さい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少々時間は遡り、翔鶴達が遺体を回収しトラック泊地へ向かった後の事である……

 

誰もいなくなったコロンバンガラ島の沖に、1つの影が姿を現した

 

その影は1人の人間を脇に抱えたまま、沖から浜まで移動を開始する

 

「チッ!あいつら俺の保存食を持って行きやがった……、まあ晩飯は確保出来たからいいんだが、飯が確保出来なかった時の事考えるとやっぱ保存食があった方がいいよな~……」

 

その影は保存食と称した駆逐艦達の遺体が無くなっている事に気付き、舌打ちしてそんな事を独り言ちる

 

その影が抱えているのはパラオ泊地付近で確保した金剛型の艦娘であった

 

この艦娘は泊地の哨戒をしていたところでこの影に襲撃され、影との実力差を直感した彼女は仲間を逃がす為に囮となり、何とか足掻いて時間を稼ぎ仲間が全員退避した事を確認したところで仕留められてしまったのである

 

その彼女の下腹部からは小腸が飛び出しており、既に彼女が息絶えている事を明確にしていた

 

彼女を仕留めたのは影が放った貫手であり、それが下腹部に突き刺さるなり影は彼女の腹部をその手でまさぐり、彼女の意識があるにも関わらず大腸を引きずり出し、その場で美味しそうに、見せつけるように食べたのである……。彼女はその光景を目の当たりにしたところで、意識を手放してしまった……

 

「殺した後だとクソを撒き散らしちまうからな、ホント勿体ねぇよな~……。っと盗られたもんは仕方ねぇ、今日はこいつを食ってとっとと寝て、明日代わりを確保しにいくか」

 

そう言って影は彼女の遺体から腕を引き千切り、口の中へと放り込み咀嚼を始める

 

「そういや、保存食持って行った連中の中の弓持った銀髪の女……、あいつは美味そうだったな~……。よっし!明日の晩はあいつ食おう!ありゃ絶対美味いぞ~……」

 

月明かりにに照らされてその姿が露わになった軽母ヌ級改flagshipは、遺体を貪り食いながら、そんな事を呟いていたのだった……

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