「カスミン、大丈夫~?」
「ホント何なのよ……、おかしいでしょ……」
気絶した霞が復活した後、シゲと護と別れ漣達は埠頭の方へと移動していた、そろそろ戻ってくるであろう剛という人物に会いに行く為だ
「ペットにワニって何なのよ……、普通そこは猫とか犬でしょう……? 鷲四郎と大五郎も鷲と熊とか言ってたけど何でそんな猛獣ばかりペットにしてるのよ……、あいつは動物園でもやるつもりだったの……?」
気絶から復帰してから霞はずっとこの調子なのである、まだベンガルトラだった弥七がいる事は黙っておこう
「カスミンが気絶してる間に聞いてみたけど、クロちゃんとゲータちゃんは卵から育てたそうですよ? シゲさんの爬虫類好きは筋金入りみたいだね~」
「いらないわよ、そんな情報……、爬虫類とか両生類とか何で飼おうなんて思うのかしら……」
どうやら霞はそういうのが苦手のようだ、メモしておこう
「さてさて、次は剛さんという方ですか~、今度はどんな面白人間なんでしょうね~?」
「私としてはマトモな人である事を願いたいわね……、どいつもこいつも変なのばかりじゃない……」
これは早めに光太郎に会わせるべきだろうな……、って言うか漣が見る限り護も比較的マトモだと思うんだけどな~……
そんな事を考えながら海を見てみれば人影が6つ、光太郎も巡回の為出ていたのでどちらかの部隊が帰ってきたのであろう
「どうやら出ていた艦隊が戻ってきたみたいですね~、それじゃ行きましょか」
そう言って若干早歩きで埠頭へ向かう
「ちょっと、そんなに急ぐ必要ないでしょう?!」
慌てて付いてくる霞、開き直ってしまってからは戦治郎の仲間がどれほど愉快な面白人間なのか楽しみになってしまったのだから仕方ない
「は~い、皆今日はお疲れ様~☆ 特に不知火ちゃんは前のときより動きが良くなっていたわね~、訓練よぉっく頑張ってたみたいね~偉い偉い♪」
そう言って埠頭に上がるなり不知火の頭をいい子いい子と言わんばかりに撫でる水母棲姫
「いえ、不知火は当たり前の事をしただけです」
頭を撫でられながらそう答える不知火だが頬はほんのり桃色に染まっている、尻尾でもあったらブンブンと振ってるところであろう
「司令や剛さんに褒めて欲しい~ってオーラ全開で訓練してたのによく言うわね~」
「なっ!? 陽炎、何を言い出すんですかっ?! いえ、不知火は別にそんな邪な理由で訓練をやっていたわけではなくてですねっ!!」
陽炎に本音を暴露され慌ててそれを否定する不知火だが、その否定する勢いがそれらを全て肯定してしまっている事に気付いていないようだ
「あらそうだったの? でも理由が何であれ頑張っていたのは事実なんだから、う~んと褒めてあげないといけないわね♪」
そう言って水母棲姫は不知火を抱き寄せながら頭を撫で続ける、不知火が顔を真っ赤にしプルプルと震えながら陽炎を睨みつける、それに対して陽炎は悪戯っぽい笑みを浮かべながらその光景を見ていた
「確かに不知火さんは訓練を頑張っていましたけど、陽炎さんも負けないくらい頑張っていましたよね? 今日の戦闘でも命中精度が上がっているのが見て取れましたしね」
「ちょっ! 神通さん?!」
神通に言われ今度は陽炎が慌て始める、因果応報とはこの事だろう
「あらあら、陽炎ちゃんも頑張り屋さんだったのね~、だったら陽炎ちゃんもしっかり褒めてあげなきゃね~、不知火ちゃんばっかりだと不公平だものね♪」
不知火を解放し陽炎に向かって両手を広げ迫る水母棲姫、その姿に下心は一切感じられない、不知火が少々残念そうな顔をしていた
「いやいや、私は大丈夫ですから……、そういうの望んでないので……」
1歩後退りする陽炎
「別に恥ずかしがらなくてもいいのよ~? ほ~ら、アタシの胸に飛び込んでらっしゃい☆」
そう言って1歩分前進する水母棲姫
「ですが、まだ改善出来る点もいくつかありますので今日の結果に満足せず、改善すべき点を考慮しながらこれからも訓練していきましょう」
「多分あっちは話聞くどころじゃないだろうな……、というか陽炎もさっさと観念したら楽になるのに何やってんだか……」
神通が今後の訓練の方針を告げるが向こうは碌に話を聞いていない模様、それを見て木曾がため息交じりに言う
「あっちはとりあえず放っておいて、あたし達は提督のとこ行って報告済ませて早いとこ入渠ドックに行こうぜ」
「何だ? てっきりすぐシゲのところに行くと思っていたんだが違うのか?」
摩耶が先を促そうとするが、それに木曾がからかうように返す
「さっきから身体がベタベタして気持ち悪いんだよ、だからさっさと風呂に入ってサッパリしたいんだっつの」
バリバリと頭を掻きながら摩耶が答える、その様子を見て木曾がククッっと忍び笑いをこぼす
「だーっ! 笑うな! ほら、さっさと行くぞ!」
「分かった分かった、そう怒るな……、って、誰かこっちに来ているぞ?」
叫ぶ摩耶を宥める木曾がこちらに近付いてくる人影に気付く
「初めて見る顔ですが、あの子達は一体誰なのでしょう?」
不思議そうに問う神通、しかし摩耶も木曾もあの2人の事は知らないようだ
「あの~、剛さんという方はどちらにいらっしゃいますでしょうか?」
近付いてきた少女が尋ねてくる、どうやら剛に用があるようだが何者なのだろうか?
「剛さんに用事か? 今あっちで陽炎と不知火とじゃれ合ってるが……、お前ら何者だ?」
2人を警戒し軍刀に手をかけながら木曾が問う
「あ、今日この鎮守府に着任した綾波型駆逐艦の漣と言います、そんでこっちの子が……」
「霞よ」
「え~、カスミンは先程出撃したときに保護したドロップ艦なんですよ~、それで鎮守府を案内したとき会えなかったご主人様のお仲間さん達に挨拶をと思いましてですね~」
「そういう事でしたか、では私が呼んできますね……、あ、その前に自己紹介しておきますね、川内型軽巡洋艦2番艦の神通です、どうかよろしくお願いいたします、それでは呼んできますね」
深くお辞儀をした後、剛達の元へ駆けていく神通
「球磨型軽巡の5番艦の木曾だ、今は雷巡になっているがな、まあよろしくな」
簡潔に自己紹介を済ませる木曾、その様子を見た漣がイケメンだ!と声を上げていた
「高雄型重巡洋艦3番艦の摩耶さまだ、ま、よろしくな!」
これまた簡潔に自己紹介する摩耶、だが漣は摩耶を見るなり虚ろな目になり恐らく無意識だろうが自分の胸のあたりをさすっていた
「そういやお前らは提督達の事どのくらいまで聞いたんだ? 剛さんに挨拶しに来るって事はそれなりに話聞いてるとは思うんだけどな……」
「ああ~、ご主人様達が違う世界の生まれ変わりだって言うのは聞きましたよ、血の色も見せて頂きました、ただまだ話す事があるみたいでこの後執務室に行く事になってるんですよね~」
摩耶が尋ね漣が答える、まだ全てを教えてもらっているわけではなさそうだ
「なるほどな、まあ詳しい話は提督から聞くのが一番だな」
「そうね~、戦ちゃんが今はアタシ達のトップなわけだし、そこはトップらしく説明してもらわなくっちゃね☆」
摩耶の言葉に続いたのは摩耶の背後から現れた水母棲姫、唐突に話しかけてきた為摩耶が驚きの声を上げていた
「背後から話しかけんな! びっくりしただろう! 全く……」
「ごめんなさいね摩耶ちゃん、さてさて、アタシを呼んだのは貴方達?」
摩耶に謝罪を入れながら漣達に問う
「あ、はい、綾波型駆逐艦の漣です、そしてこっちが朝潮型駆逐艦の霞……カスミンです」
「何でいい直したのよ?! もう……、カスミンじゃなくて霞よ、覚えておきなさい」
「漣ちゃんにカスミンね、覚えたわ~♪」
「だから! カスミンじゃないって言ってるでしょ!!!」
そんな霞を見てクスクスと笑いを零した後自己紹介を始める水母棲姫
「それじゃあアタシの番ね☆ アタシは稲田 剛(いなだ つよし)よ♪ 今日は手空きの子がいなかったから代わりに哨戒に出てたけど、普段はこの鎮守府の憲兵みたいな仕事をしているわ♪ 何かあったらすぐに教えて頂戴、そんな悪い子にた~っぷりオ・シ・オ・キしてあげちゃうからね~♪ というわけでよろしくね☆」
科を作って剛が言う、その様子を見た漣も霞も少々引いている
「あんた、まさか……」
引きつった表情のまま霞が尋ねようとする
「あら、アタシはこういう口調だけどれっきとした男よ? そっち系の趣味はないわ☆」
ハッキリと答える剛、胡散臭い気もするが事実である
「ついでに言うと、艦娘ちゃん達はみ~んなアタシの子供くらいの感覚ね~♪ 40後半になるとそうとしか思えなくなっちゃうもの☆」
「ぶふっ!」 「はぁっ?!」
漣が噴き出し霞が驚愕する、32歳の戦治郎が剛に対してさん付けだったのはこういう理由だったりする
「さて、アタシの自己紹介はこのくらいかしらね? それじゃあ貴女達もご挨拶しましょうね☆」
剛がそう言って陽炎と不知火の背中を押して前に出させる
「えっと、陽炎型駆逐艦のネームシップ、陽炎よ! 同じ駆逐艦同士頑張りましょ!」
「陽炎型2番艦不知火です、よろしくお願いします」
これでこの場にいる全員の自己紹介が終わった、そのタイミングを見計らったように
「さてさてもっとお話したいところなんだけど、アタシ達は今から戦ちゃんのところに今回の哨戒の結果を報告しにいかなくちゃいけないの、だからまた後でいっぱいお話しましょ☆ それじゃあバ~イ♪」
そう言って剛は漣達に背を向け執務室のある本庁に向かって進んでいく、それに先程哨戒に出ていた5人が続く
「いあ~、剛さんもなかなかに濃い人でしたね~……」
その背中を見送りながら漣が言う
「ええ、そうね……、でも……」
霞は剛に対して思う事があったようだ
「……やっぱりカスミンも感じましたか~」
どうやら霞だけでなく漣も剛から何かを感じていたようだ
「「あの人、ふざけてるにも関わらず話してる間一切隙がなかった……」」
そう、剛から全く隙を感じなかったのである、砲を向けた瞬間には地面に組み伏せられるイメージが今でも頭の中にこびりついていた
それは剛が意図的にやったのか無意識でやっていたのかは分からない、だが如何ともし難い圧倒的な実力差を感じずにはいられなかった
「とりあえず、あの人は怒らせちゃいけないってのはよ~っく分かりました……」
「同感ね、確か憲兵みたいな事やってるって言ってたし、変な事しない方が身のためね……」
「なぁ、剛さん」
「どうしたの? 摩耶ちゃん」
「さっき話してるとき素人でも分かりそうなくらい完全に隙をなくしてたのは何でだ?」
「昔のクセよ、それにアタシって憲兵やるんだからどんな状況下でも貴方達を簡単に取り押さえる事が出来ますよ~って教えてあげただけ、OK?」
「そしたら剛さんの事怖がるようになっちまうだろうけどいいのか?」
「仕方ない事よ、それにそれでアタシや通のお仕事が減るんだったら別にそれで構わないと思ってるわ、警察と軍隊が暇してるのは平和な証だと思ってるからね☆」