マグロ尽くしを堪能し、休息を入れてからガダルカナル島へ向かった俺達を待っていたのは……
「ぬがあああぁぁぁっ!!!敵と味方が分かり辛えええぇぇぇっ!!!」
「穏健派の皆さーんっ!もうちょっと!もうちょっとだけ後方に下がってもらえませんかー!」
「そちらの方ー!突出しないで下さーい!サインは後で書きますからー!」
ガダルカナル島攻略を目論む強硬派とそれから総本山を守ろうとする穏健派による激しい戦いであった……
戦治郎が言うように、穏健派の深海棲艦と強硬派の深海棲艦の見た目の違いが全くと言っていい程分からない為、取り敢えず俺達に砲を向ける奴を片っ端から沈めているのだが、正直これで本当に合っているのか分からなくて少々不安になるのである
以前マダガスカルで穏健派と長門達と共同戦線を張った時は、同じ場所から出撃したおかげで対峙している相手を沈めればいいと言う認識で何とかなっていたのだが、今回はそれも無いので非常に苦労しているわけだ
今は光太郎や翔が声を張り上げて、俺達が敵味方を判別し易くする為に穏健派は後方に下がるように頼んでいるわけだが……
「きゃー!戦治郎さんかっこいいー!」
「マジで長門屋海賊団が来てるのかよっ!」
「司様ー!お慕い申し上げておりますー!」
「やべぇ……、手が震える……」
「空さーん!光速正拳突きを見せて下さーい!」
「翔きゅんきゃわわ~」
「これ本当に後でサインもらえるんだよねっ!?ねぇっ?!」
「シゲさんマジカッケーッス!マジリスペクト!」
「……勝ったな」
「ああ……」
……こいつら本当に戦う気があるのだろうか……?俺達がこの戦場に姿を現したところで急に大歓声が上がり、それからしばらく経った今でもこの調子なのである……。一応俺達の言葉は聞いてはくれるのだが、たまに我慢出来なくなって飛び出してくる奴がいるのである……
戦況に関しては俺達が介入した関係で穏健派優勢のようなのだが、如何せん相手の数が多過ぎて減っているように見えないのである……。まあ難攻不落の穏健派総本山を陥落させようと思ったら、これくらいの戦力が必要になるのは分かるのだが……、いくら何でも多過ぎるぞ……
そんな事を考えながら強硬派を沈めては移動、沈めては移動を繰り返していると先程俺に光速正拳突きを見せて欲しいと言って来た奴とすれ違いそうになったので、リクエストに応えてそいつの脇腹に叩き込んでやると、「アリガトウゴザイマスッ!!!」と言う断末魔を上げてそいつは倒れ伏してしまった。これについては俺は何も悪くないはずだ
「だあああぁぁぁっ!後どんだけ倒せばいいんだよ畜生っ!」
「気持ちは分かるけど落ち着きなさい、もしかしたらもうちょっとで撤退し始めるかもしれないじゃない?だからもうちょっとだけ頑張りましょう?」
倒せど倒せど一向に減らない強硬派にイライラし始めるシゲに、それを窘める剛さん。2人のやり取りを聞いた後、気になって周囲を見回してみると一部の艦娘達もシゲと同じように苛立ちを感じているのか動きが段々と雑になってきている……、これをあいつらに気付かれては不味いな……、俺がそう思ったところで……
『苦戦しているようだね?手を貸すよ、長門屋海賊団の皆さん』
「うぇっ?!あんた誰ッスかっ!?何でこの通信機に割り込めるんッスかっ?!?」
通信機から聞こえた声に護が驚愕する、この通信機は護が細工してそう簡単に外部から割り込めないようにしてあるのだが、先程の通信はその内容から考えて外部の者からの通信だったのである
『そう警戒しないでくれ、大丈夫、僕は君達の味方だからね』
「いきなりそのような事を言われましても……、正直信用出来ません……」
通信機の先にいる人物に対して、通がそのような事を言った。そうだな……、普通では割り込めない通信に平然と割り込み、いきなり味方だと主張したところで信用出来るわけがないのである
『まあそうだろうね……、分かった、ならば僕が君達の味方であると証明してみせよう。今すぐにね』
声の主は悪戯っぽくそう言うと通信を切ってしまった、その直後……
「オオォケイィレッツパーリィィィ!!」
先程通信機から聞こえていた声とよく似た声で何処かの誰かが叫び……
「「おお……おおおぉぉぉーーーっ!!!」」
声が聞こえた方角を見た戦治郎と護が一斉に歓喜の叫びを上げる。気になって俺もそちらを向くと……
「「メタルウルフだあああぁぁぁーーーっ!!!」」
そこにはとあるゲームに登場した大統領の愛機であるメタルウルフの姿があったのである、そのメタルウルフは敵陣のド真ん中で盛大に大暴れし大統領魂をこれでもかと言うほど俺達に見せつけて来たのであった
強硬派の深海棲艦達は、メタルウルフの姿を確認したところでその表情を歪め、俺達とメタルウルフを交互に見た後分が悪いと判断したのだろうか、すぐに撤退を開始したのである
「追撃はどうするんです?」
「ようやくお帰りになってくれたんだ、そのまま見送ってやろうじゃないか」
こちらに背を向けて撤退する強硬派の深海棲艦を見て、光太郎がメタルウルフにそう尋ねたところこのような返事が返って来た
「すっげ!これマジモンのメタルウルフじゃねぇかっ!マジカッケェなおい!」
戦治郎が目をキラキラと輝かせながら、メタルウルフをあらゆる角度から観察していた。護の方はと言うとHMDの撮影機能をフル活用してメタルウルフを撮影している
「ハハッ!どうやら君達はこいつの事を気に入ってくれたみたいだね、技術班の皆がそれを知ったら大喜びするだろうね」
「これはあんたのとこの技術者達が作ったんッスか?完成度高いッスね~」
護がそう言うとメタルウルフは自慢のスタッフ達さと返し、楽しそうに笑い始めるのであった
「メタルウルフも結構だが、そろそろ貴方が何者なのかを教えてもらえないだろうか?」
このままでは埒が明かないと思った俺が、メタルウルフに対してその正体について切り出すのであった
「済まない済まない、同好の士がいると分かるとつい話し込んでしまうのは僕の悪い癖のようだね……」
メタルウルフはそう言うと、その頭部に手をかけてバイクのフルフェイスヘルメットを脱ぐような動作で頭部を外す。するとそこには戦艦棲姫の顔があり……
「初めまして長門屋海賊団の皆さん、僕はリチャード・マーティン。戦艦棲姫の転生個体で穏健派転生個体の代表を務める者だ」
パワードスーツの中に入っていた髪の毛を外へ出すように髪を掻き上げながら自己紹介をする戦艦棲姫……、ちょっと待て、リチャード・マーティンだと……っ!?
その名を聞いた長門屋の面々が硬直する、剛さんに至っては驚愕の表情を浮かべその身を震わせているではないか……。その光景を目にした艦娘達は不思議そうに首を傾げる
「お前……、本当にリチャードなのか……?」
声を震わせながら戦艦棲姫に尋ねる剛さん、それに対してリチャード・マーティンを名乗った戦艦棲姫は……
「久しぶりだね剛、君がここにいるのは正直複雑な気分になるけど……、また会えて僕は嬉しいよ。今は忙しくて無理だけど、いつか機会があったらまた2人で飲まないか?……あぁ、アリーさんの惚気話は勘弁だけどね」
リチャードがそう言うと、剛さんは飛びつくようにして彼に抱き着き声を上げて泣き始めた。剛さんの非常に珍しい姿を見て目を丸くして驚く艦娘達、俺も驚きはしたが2人の様子を見る限り、この2人は……
「なあ、この人一体何者なんだ?名前聞いた瞬間長門屋の皆が固まってたみたいだが……」
木曾がそう尋ねて来る、まあこいつらが知らないのは当然か……
「この方は……、俺達の世界でエデンの構成員に暗殺されたアメリカ大統領だ……」
\……はぁっ!!?/
戦治郎の言葉を聞いた艦娘達が一斉に驚愕の声を上げた、まあ驚くのも無理は無かろう……
「それだけじゃ今の状況を説明するには言葉不足だね、僕は昔陸軍に所属していて剛とは同期で友人だったのさ。アリーさんとの結婚の事でよく相談されたものだよ」
リチャード大統領は剛さんを落ち着かせる為にその背中を優しく叩きながらそう言って、こちらへ苦笑いを向けて来るのであった