俺はヌ級の叫びに合わせて奴目掛けて突撃し、その腹にライトニングⅡを装着した右腕を叩き込んでやろうと光速正拳突きを撃ち出したのだが、何と奴は俺の光速正拳突きに合わせるようにして拳を撃ち出してきたのである
その衝撃で海面が激しく揺れ、大きな飛沫をあたりに撒き散らしていた。それほどの衝撃が発生したにも関わらず奴は無傷のようで全く動じた素振りを見せない
「中々良いパンチ出すじゃねぇか、まあ尤も?そのオモチャが無かったらその拳がグチャグチャになってただろうけどな?」
そう言ってゲラゲラと気持ちの悪い笑い声を辺りに響かせるヌ級
認めたくないものだが、こいつと拳をぶつけ合った時に直感してしまったのである、こいつが言った通り俺がライトニングⅡを装着せずにこいつに殴りかかっていたら、俺の拳はあいつの拳に潰されてしまっていただろうと……
「しっかしおめぇ、今まで食って来た奴らと全っ然違うな~。他の連中はおめぇのオモチャみたいなの使っても大した事なかったのによ~……」
ヌ級は余裕があるのだろうか、そう言って考え込む素振りを見せるのであった。奴の口振りからすると、どうやら奴は純正の深海棲艦も食った事があるようだな……、いや、その前に俺を見た直後にクソ不味い青白い奴と言っていたので、ほぼ間違いなく食っているな……
「おめぇ……、もしかして俺と同類か?」
「貴様などと……、一緒にするなっ!!!」
考える素振りを止め、俺に向かってヌ級がそう言ってきた。それを聞いた俺は先程以上に怒りを覚え、奴に連撃を仕掛けるのだった
恐らく奴は転生個体と言う意味で同類と言ったのだろうが、俺には全く別の意味に聞こえてしまった為、それを否定したくて攻撃を仕掛けたのである
奴と同類……、脳のリミッターが外れているが故に人間離れした身体能力を手に入れてしまった人の形をした化物……、人間離れしているが故に人から恐れられ忌み嫌われる存在……、そしてその力を己の欲望を満たす為だけに振るい続けた外道……
違う!断じて違うのだ!俺には確かにこいつと同じように人間離れした力がある、だが俺はこいつのように自身を化物や怪物などとは思ってなどいないし、腐れ外道に身を堕とした覚えもない!貴様とは違うのだっ!!!
奴の言葉を否定したくて、拒絶したくて、受け入れたくなくて……、俺はそれだけを考えながら奴に対してありとあらゆる攻撃を奴の身体にひたすらに叩き込む、拳を撃ち込み、蹴りを叩き込み、肘で突き、膝を見舞う。俺は俺が思いつく限りの全ての攻撃を、奴の身体に絶え間なくブチ込んでやった。ブチ込んでやったのだ……、だが……
「アッハッハッハッハッ!ムキになってやんの!何だ?もしかして俺が言った事がそんなに気に入らなかったのか?ん~?」
このヌ級は俺の攻撃を一切回避する事無く、その全てをその身に受けたにも関わらず、まるでお前の攻撃なんて効きませんよと言わんばかりに、そう言って平然と振舞うのだった。俺はそれを見て得体の知れない恐怖を感じて、急いで間合いを取って奴を警戒する
「なん……だと……っ!?」
流石の俺でもこれに対しては衝撃を受けざるを得ない……、俺の攻撃が一切効いていないだと……?まさか……、そんな馬鹿な……っ!?
「驚いてやんの!まあ普通そうだろうな~、自分の全てを叩き込んでも俺がケロッとしてるんだからな~」
そう言ってまたゲラゲラと不愉快な笑い声を上げるヌ級、今この時だけはこいつの笑い声が本当に不愉快極まりなかった……
「よし!おめぇは中々頑張ったからご褒美として俺の秘密教えてやらぁ!どうせブチ殺すんだから冥途の土産に丁度いいだろう!」
不愉快な笑いを止める事無くヌ級がそう言った、こいつの秘密だと……?もしやそれがこいつのタフネスに関係あるのではないか……?そう思った俺は黙ってヌ級の話を聞く事にした。但しいつでも攻撃を再開出来るように警戒しながらではあるが……
「俺はいつものように血ぃダラダラ流しながら飯を獲ってたんだがよぉ、ある日を境に全力で動いても平気な身体になってたんだよな~。それからはもうスゲェ事スゲェ事、今まで直撃したら痛かった青白い連中や水に立つ女達の攻撃受けても、全く痛くなくなったんだよな~。ホントそれのおかげで気に食わねぇ奴は殺し放題だし、飯も食い放題、そのおかげで俺は天国を満喫出来るってわけだ。分かったか?」
そう言い終えた後、ヌ級は先程よりも大きな声で笑いだすのだった。身体が全力行動に耐えるようになっただと……っ!?それに深海棲艦や艦娘の攻撃も効かなくなった……、まさかこいつのタフネスは能力によるものだと言うのか……っ?!
それを聞いた俺の心に焦りが生まれる、こいつはその能力のおかげで常に全力で行動出来るようになっており、その副次効果で耐久性も跳ね上がっていると言う事になるのである。そんな奴を相手にするのは流石に分が悪すぎる……!
だが、だからと言って俺は退く事は出来なかった、もしここで俺が退けば間違いなく翔鶴達が殺されてしまう……、それだけは何としてでも避けねば……っ!!!
「何だ?俺の話聞いてビビったのか?何だよ面白くねぇなぁ……。まあいいや、取り敢えずビビりなお前は後でぶっ殺すとして~、先にあっちの雑魚を始末すっか!俺が見てない間に銀髪連れて逃げようとしてたみたいだからな~!」
俺はヌ級の言葉を聞いてハッとして後ろを振り向く、するとそこには翔鶴、夕立、江風を連れてここから撤退しようとしていた時雨と川内の姿が見えたのだった
「逃がすかよぉっ!!!」「行け!お前達っ!!!」
「「「「うー!にゃーっ!!!」」」」
俺とヌ級の声が重なり、それと同時にお互いの艦載機が発艦し壮絶な空中戦を開始するのだった。ワイルドとベアが片っ端から相手の艦攻と艦爆を撃ち落とし、魚雷を爆弾に積み替えたヘルとタイガーが爆撃で相手艦載機を破壊すると言う荒業を実行し、この空中戦は俺の航空隊が優勢の展開となり、それに伴い翔鶴達への被害を出さずに済んだ
「な~んだ、てっきりビビってもう動けねぇと思ってたんだけどな~……。まあいいか、殺す順番がちょっと変わったくらいだ、何の問題もねぇ……なっ!!!」
ヌ級はそう言って俺との距離を一気に縮め、その勢いに乗って貫手を放ってくるのだった
「ふんっ!」
「はんっ!それを待ってましたよっとっ!」
俺は奴の貫手を半身をズラす事で紙一重で躱し、お返しとばかりに奴の顔目掛けて左腕で突きを放つのだが、奴はそう言ってそれを躱そうともせずあろう事か口を開いて待ち受けるのだった
それを見た瞬間、俺は直感で不味いと感じすぐにその突きを止めて左手で下顎を掴み、ライトニングⅡを装着した右腕で上顎を押さえる
「ははへほらぁっ!!!」
口を開けたまま叫ぶこいつの息が俺の顔に直撃する、うむっ!臭い!尋常じゃないくらいこいつの息が臭い!!鼻の感覚が麻痺してしまいそうなほどの途轍もない悪臭ではないかっ!!!思わずそれで力が抜けそうになるが、何とか堪えて俺はこいつの顎を押さえ続けるのだった。もしここで力を緩めてしまえば、俺の手はこいつのこのデカい口にガブリと噛まれ、最悪食い千切られてしまうからな……
と、そこでふとヌ級の歯が俺の目に映るのだが……、その隙間や根本には乾燥してガチガチになった黒い物体と茶色で柔らかい物体がびっしりとこびりついており、歯の表面は赤黒い液体がべっとりと付いていた……
そこで俺はある事を思い出す、こいつが何を好んで食っていたのかを……
「ぬうううぅぅぅんっ!!!」
それを思い出した俺は、すぐさまヌ級の腹に蹴りを入れて吹き飛ばし、急いで足元の海水で手を洗うのだった。そう、こいつの歯にこびりついていたのはこいつが今まで食って来た人糞、赤黒い液体はこいつに食われた者の血液なのだ
もしこいつに噛まれていたら、ほぼ間違いなく破傷風になっていただろうな……。そう考えると何としてでもこいつの噛み付きを喰らうわけにはいかなくなった……っ!
「何だよ、オモチャ使わなくてもいい蹴り放つじゃねぇかよ、えぇ?おい」
ヌ級にそう言われて気付く、先程あいつに蹴りを入れる時に思わずかなりの力を入れてしまったようで、蹴り足に負担がかかってしまったのかズキリとした痛みが蹴り足を駆け抜けたのだ
「ん~?んん~?もしかして~?もしかしちゃう~?まさかお前も~?俺と同じで限界超えて動けちゃったりするのかな~?ハッハッハッ!な~んだ、お前もなのか~!お前も俺と同じ化物だったのかよ~!俺と同類だと思ってたらそんな事まで同じだったんだな~!それなら先に言ってくれよ兄弟~、そう言う事ならこれから仲良くしようぜ~?なぁ?ば・け・も・の・さん♪」
お道化たようにヌ級が言い放つ、それを聞いた俺は……
「黙れえええぇぇぇーーーっ!!!」
力の限りにそう叫び、奴に向かって突っ込んでくのだった。もういい……、もうこいつに容赦はしない……!望み通り全力で相手をしてやる……!!こいつだけは絶対に殺してやる……!!!例えこの身が滅びようとも、俺を化物扱いしたこいつだけは絶対に殺してやる……っ!!!戦治郎が言ってくれた通り、俺は……、人間なんだあああぁぁぁーーーっ!!!
こうして俺は、食人鬼ヌ級に対して全力攻撃を敢行するのであった……
作者はこれを書いてる最中、メタルマックス2:リローデッドの『WANTED!』をかけっ放しにしてました。人によっては『お尋ね者との戦い』の名前の方が馴染み深いかもしれませんね