「―――――!!!」
先程の叫びのせいで声帯が潰れてしまったのか、声にならない声を張り上げながら俺は奴に突撃を仕掛ける
その際海面を蹴った足から奴を蹴り飛ばした時とは比べ物にならないほどの激痛が発せられるが、俺はそれを気にする事なく真っ直ぐ奴に向かって行き、まずはライトニングⅡを装着した右腕で奴に殴りかかる
「うぎっ!」
それがヌ級の腹部に突き刺さると、耐久性を上げているヌ級も流石にこれは効いたようで呻き声を漏らす
それと同時に俺の右腕からビキリ!と言う音と共に激しい痛みが駆け抜けていく、どうやらライトニングⅡを装着していても衝撃を殺し切れず、骨にヒビが入ったようだ……。だがそんな事を気にしている場合ではない……っ!
俺はそのまま続けて左腕を突き出して奴の頬に拳をめり込ませる
「ぶべっ!」
奴の声と共に今度は左腕からバキャリ!と言う音が聞こえる、何も付けていなければこうなるのは仕方ない、俺はそう割り切って砕けてしまった左腕の事を無視して追撃で右足で蹴りを入れる
「あがっ!」
衝撃であらぬ方向へ曲がろうとした右足を、筋肉を使って無理矢理矯正して真っ直ぐにする。その結果右足から鮮血が飛び散る、筋肉を酷使した為筋肉細胞や血管が破裂して皮膚から飛び出してしまったようだな……、当然だが相手にしない
「ごぼっ!」
蹴りを放った際の回転を利用して、左足で後ろ回し蹴りを放つ。それが奴の顎に直撃すると同時に踵が粉砕し左足も関節とは逆の方に曲がろうとする、これも筋肉で強引に阻止するとまたも鮮血が宙を舞い、更にブチブチと靭帯が悲鳴を上げる……、当たり前のように無視する
正面に向き直ったところで、今度は奴の頭部を掴んで己の額を叩きつける
「んごっ!」
衝撃で額の骨が砕け、額が割れて流血し、激しく脳が揺さぶられた為意識が飛びそうになるが何とか踏ん張って耐え、それらを一切無かった事にする
こうして俺は身体が発する警鐘の全てを無視してひたすら奴に攻撃を浴びせ続け、身体の感覚が麻痺してこようともその手を緩めず、徹底的に奴にその全てを叩きつけてやる
それからしばらくの間その身を己の血で真っ赤に染め上げながら、ヌ級を殴り続けるだけの機械と化していた俺の身体が急に動かなくなってしまった。どうやら限界が来てしまったようだな……、倒れそうになる身体を何とか踏ん張って立たせようとするのだが、既に全身の感覚が無くなってしまっている為それも叶わず、俺は海面に倒れ伏してしまったのである……
「はぁ……はぁ……はぁ……」
俺の攻撃を喰らい続けていたヌ級が、肩で息をしながら俺の様子を窺っている……。どうやら俺の全力の攻撃は流石に効いた……
「……なんてな♪」
そう言って先程まで息を上げていたのがまるで嘘だったかのように振舞うヌ級……、そんな馬鹿な……っ!?俺の全力の攻撃でも奴にダメージを与えられなかったとでも言うのか……っ?!
「いや~、おめぇは頑張ったと思うぜ?実際俺もノーダメージってわけじゃねぇからな、これでも所々痛むところあんだぜ?」
お道化たようにヌ級が言うが、その振舞いからはそんな様子が微塵も窺えないのである……
「だがまあ、俺を倒すまでには至らなかったな、いや~それだけはホント残念だったな!」
ヌ級はそう言って身体の向きを変え、翔鶴達がいる方角へと歩み寄っていく。その速度は距離が詰まる毎に徐々に早くなっていき……
「そんな残念なおめぇに、最高のショーを見せてやんよ!俺によるあの銀髪の捕食ショーをなぁっ!!!」
そう叫ぶと、ヌ級は翔鶴目掛けて走り出したのであった。このままでは翔鶴がっ!頼む俺の身体!ほんの少しでいいから俺の言う事を聞いてくれっ!
「そんでこんだけ頑張った残念なおめぇは、銀髪の後デザートとして食ってやんよっ!良かったなぁ!俺の腹の中でずっと一緒になれるぞっ!!!タァッハッハッハッハッハッ!!!」
不愉快な笑い声を上げながら、見る見る内に翔鶴との距離を縮めていくヌ級……、そして翔鶴とヌ級の距離が手を伸ばせば届きそうなほど縮まったところで、ヌ級がその巨大な口を大きく開けて翔鶴にかぶりつこうとする……。その笑い声を聞いた翔鶴がこちらに視線を向けると同時に、その表情を絶望の色に染め上げてしまう……。そんな翔鶴の顔を見た俺は……
「―――――!!!」
先程まで全く言う事を聞かなかった俺の身体が動き出し、翔鶴達がいるところへと声にならない咆哮を上げながら駆け出し、瞬時に翔鶴のところへ辿り着くと翔鶴を左腕で突き飛ばし……
「―――――――!!!!!」
俺はヌ級に左腕を思いっきり噛まれてしまうのであった、このままでは腕を噛み千切られてしまうと思った俺は、左腕の筋肉に今残っている俺の力の殆どを込める事で噛み千切られるのを何とか阻止しようとする。尤も、今の俺は全身の感覚が無くなっているので、それが本当に思った通りに出来ているのか実感出来ないでいたのだがな……
だがヌ級の様子を見るとどうやらそれは成功しているようで、ヌ級は必死になって俺の腕を噛み千切ろうとしていた。そしてヌ級はそれに意識を集中させているあまり、周囲の状況が見えていないようだったのである。俺はそれを利用して、霞む目で位置を確認しながら奴の脇腹に右腕のライトニングⅡの杭打機をセットして……
「ぐがぁっ!!!」
オベロニウム製の杭を叩き込んでやった、そのせいで腕の一部が歯に引っかかって引き千切られてしまったが、翔鶴が食われるのと比べれば安いと思う事でその損害を無視する事に成功した
「てっめ……、そんなもん隠し持ってたのかよ……っ!」
流石オベロニウム製、深海棲艦の身体となっている奴にはよく効いたようだな。だが今度こそ本当に限界のようだな……、両足は先程無理矢理身体を動かした際にどちらとも変な方向に曲がってしまっていて、まともに動かせそうになかった……。そうして俺は再び倒れ伏してしまう……
「空さんっ!!!」
その様子を見た翔鶴が俺の身体を抱き上げ目に涙を浮かべながら悲痛の叫びを上げる、その様子を見ていたヌ級はまた気持ちの悪い笑い声を上げ……
「今の最後っ屁は冗談抜きで効いたわ、だがもう終わり……」
ヌ級がセリフを言い終わる前に、ヌ級の頬を一筋の光が掠めて行った……
「「「空あああぁぁぁーーーっ!!!」」」
その直後、3人分の聞き覚えのある叫び声が聞こえて来た……、あぁ……、あいつらが来てくれたのか……
「あの深海棲艦達、空さンの名前を呼ンだぞっ!?」
「もしかして……、あの人達は空さんの仲間なのかな……?」
「って何であの中間棲姫は水上バイクに乗ってるのっ!?そしてあのヒーローみたいなのは何っ!?」
「ぽいぃっ!!?あの戦艦水鬼の艤装、すっごく大きいっぽいっ!??」
あいつらの姿を見た江風、時雨、川内、夕立が口々にその感想を述べて若干混乱する、安心しろ、あいつらは俺の仲間だ、そう伝えたいのだがそれを口にする体力も、そして声帯も今の俺は持ち合わせていなかった……
「大丈夫か空っ!ってうげぇ!こいつ全力モードで動きやがったなっ!?」
「戦治郎っ!!!」
「OK!大五郎、ハコッ!!!」
「分かっただぁよぉっ!」
輝が俺の姿を見て驚き、光太郎ことシャイニングセイヴァーのリヴァイアサンに同乗していた悟が戦治郎に向かって叫び、それを聞いた戦治郎が大五郎にハコを展開するように指示を出し、大五郎がそれに従いハコを展開するのだった
「こいつがあの食人鬼か……、空をここまで追い詰めるなんて相当出来るみたいだね……」
「相手が強かろうが弱かろうが、今の俺達がやる事は変わらねぇだろ」
「てめぇ……、よくも俺のダチに好き勝手してくれやがったな……。この礼はたっぷりしてやっからなコンチクショウッ!!!」
3人がそんなやり取りを交わし、シャイニングセイヴァーが重機アームを光らせながら展開し、輝が背中の大型ハンマーをその手に取り、戦治郎が大妖丸を引き抜く……
「行くぞおめぇらっ!!!空の仇討ちの時間だあああぁぁぁーーーっ!!!」
戦治郎がそう叫ぶと同時に、3人はヌ級の方へと駆けだして行く。俺はそれを見送った後、静かに意識を手放すのだった……
今回はメタルマックス2:リローデッドの『Red Zone More』をBGMに書いてます
限界振り切って戦う空に合いそうな気がします