※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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鶴の涙

「空さん!空さんっ!!!」

 

空さんの仲間と思わしき深海棲艦の登場に愕然としていた私は、両腕に感じる重みで我に返り必死になってその腕の中でグッタリとしている空さんに呼びかけました

 

どうして空さんがこんな目に遭わなくてはいけなかったのか、どうして空さんはこんなになろうとも私を助けようとしたのか、どうして私は空さんが傷付く姿を見守る事しか出来なかったのか……。いくら考えてもパニック状態になっている今の私の思考ではそれらの答えを出す事が出来ず、今この状況で私は何をしたらいいのかも全く分からず、私は空さんにただひたすら縋るようにして何度も呼び掛けるのでした

 

「翔鶴よぉ、そんなに空の事が大事ならとっととこっちに連れて来てくれねぇかぁ?」

 

そんな私を呼ぶやたらネットリとした声が聞こえ、驚きながら向けた視線の先には先程左腕に大和魂と刻んだ戦艦水鬼から大五郎と呼ばれた艤装の背中にあるコンテナを展開し様々な器具や機材を載せたような物に乗った、潜水棲姫の姿がありました

 

「貴女は……?」

 

「そんな問答してる場合じゃねぇよなぁ?空を死なせたくなかったらよぉ、急いでこっちに空を連れて来いっつってんだわぁ」

 

口調はかなり攻撃的ですが、その言葉には空さんを何としてでも助けたいと言う必死な気持ちが込められているのが分かりました、しかし……

 

「申し訳ありません……、そちらに向かいたいのは山々なのですが……、艤装が大破していて浮いているのがやっとのようなのです……」

 

「チッ、太郎丸、翔鶴と空をこっちに連れてきなぁ」

 

「OK悟、僕だって空を死なせたくないからね!」

 

私の言葉を聞いた潜水棲姫は舌打ちすると、大五郎と言う艤装の2本の首の間に座っていた北方棲姫の方を向いて声を掛け、それに答えた太郎丸と呼ばれた北方棲姫は艤装の首から飛び降りて私達の下へ駆け寄り、私達を悟と呼ばれた潜水棲姫のところへ連れて行くのでした

 

「よくやった太郎丸よぉ、んじゃあ早速治療と……ってこりゃぁまた酷ぇなぁおいぃ……」

 

「うわぁ……、人間のう〇ちが傷口に一杯付着してる……。悟、これ急いで何とかしないと破傷風になるんじゃない?」

 

「んなこたぁ分かってんだよぉ、俺を誰だと思ってやがんだぁ?」

 

空さんの腕の具合を見た2人の深海棲艦がこのようなやり取りを交わしました、破傷風って……っ!?本当に空さんは大丈夫なのでしょうか……?!

 

「あの……空さんは助かるのですか……?」

 

空さんの事が心配になった私は、空さんの傷口に付着した人糞をしっかりと取り除き、消毒する悟さんとやらにそう尋ねたところ……

 

「助かるとか助からねぇとかの問題じゃねぇんだよなぁ、何があろうとこの俺が助けてみせるんだよぉ」

 

傷口の消毒を終え、早速治療に移る悟さんがそう言いました。私は悟さんのこの言葉から悟さんが本気で空さんを助けようとしているのを理解し、私はその様子を静かに見守る事にしました

 

それからすぐの事、川内さんと時雨さんが江風さんと夕立さんを連れて何とかここまで辿り着き……

 

「翔鶴さん!空さん!2人共大丈夫ですかっ!?」

 

川内さんが慌てたようにして、私達の容態について尋ねてきました

 

「私は艤装が大破しているだけなので……、それより空さんが……」

 

川内さんの問いかけに何とか答えたものの、最後のあたりは私の心が悲しみと不安に押し潰されてしまい、蚊の鳴くような声になってしまいました……

 

「うげぇ!こいつはひでぇ……」

 

「この人はこんな姿になってでも僕達を助けようとしていたのか……」

 

「うぅ~……、ものすっごく痛そうっぽい~……。空さん、本当に大丈夫っぽい?」

 

ボロボロになった空さんの姿を見た江風さん達が思い思いの言葉を口にして、空さんの事を心配そうに見つめていました……

 

「脈も呼吸もあるから生きてはいるんだよなぁ、ただまあ相当無茶したようでなぁ、見ての通り全身、いやそれだけじゃねぇなぁ、神経系も含めてズタボロになってやがらぁ。まあ尤もぉ?」

 

空さんの左腕の傷口の縫合を終えた悟さんが、夕立さんの問いにそう答えると共に空さんの左腕を掴み……

 

「今の俺ならそんなこたぁ些末な問題なんだよなぁ」

 

自身の両手の掌を淡く、優しく、緑色に発光させながらこう言い放ちました。この光は一体……?

 

「な、なンだそりゃっ!?」

 

「手が……、光っている……?」

 

「ぽい~……、凄く綺麗っぽい~……」

 

「えっ!?ちょっ?!……えぇ~っと……「悟、伊藤 悟ってモンだわぁ」悟さん!その光は一体何なのっ?!!」

 

悟さんが放つ光を見た皆さんが口々にその感想を述べ、川内さんがその光について悟さんに驚きながら質問しました

 

「こいつはなぁ、『快癒の翠緑』って言う俺の能力なんだわぁ。効果はまぁ、手っ取り早く言やぁ副作用のねぇバケツだなぁ」

 

「バケツの副作用……?そンなのあンのか?」

 

悟さんはこの光の正体と効果を説明した後、江風さんの疑問について懇切丁寧に解説してくださいました……、老化の促進……バケツにはそんなに恐ろしい副作用があったのですね……。話を聞いていた皆さんも衝撃の事実を知らされて思わず絶句していました……

 

「……ちょっといいかな?」

 

誰よりも早く我に返った時雨さんが、悟さんに質問しようと小さく挙手していました。一体どうしたのでしょう……?その様子を見た悟さんはおうと短く返事をして、それを聞いた時雨さんが悟さんに質問します

 

「今、悟さんは能力と言っていたけど、それは深海棲艦全てが持っているものなのかい?」

 

「これについては俺達も完全に把握したわけじゃねぇんだけどよぉ、恐らく能力を持っているのは俺達のような転生個体だけだと俺は推測してるんだよなぁ。因みにあっちのヒーローみてぇな奴、南 光太郎っつぅ南方棲戦姫の転生個体なんだけどよぉ、あいつのあの姿も能力の1つなんだぜぇ?」

 

悟さんの答えを聞いた時雨さんは、不思議そうな顔をして「転生個体……?」と呟きました。そう言えば時雨さんはまだ転生個体の事を聞いていませんでしたね……

 

それを見ていた悟さんは、今度は転生個体について話し始めました。それを聞いた時雨さんは一瞬驚愕の表情を浮かべますが……

 

「あのヌ級も恐らく転生個体なんだね……、改flagshipとは言え動きが僕が知っているものと違い過ぎる……。そしてあのヌ級は何らかの能力を持っていて自身を強化している可能性がある、と……」

 

「ご明察って奴だなぁ、おめぇ中々頭回るじゃねぇかおいぃ。輝よか頭いいだろうよぉこれはよぉ」

 

時雨さんの言葉を聞いた悟さんは、そう言って大笑いし始めました。私はと言うと、悟さんが名前を出した輝さんと言う方がどんな方なのか気になり、悟さんに聞いたところ悟さんは今ヌ級と戦っている中間棲姫を指差しながら

 

「あのハンマー振り回してる脳筋がそれだわぁ」

 

そう言って再び大笑いしました。仲間の方をそれ扱いですか……

 

「っとぉ話が逸れたなぁ、あのヌ級は話を聞いてる限り空と同じ脳障害を抱えてるわけなんだからよぉ、全力の空を相手にしたらあいつも空みたいに血濡れになるはずなのになぁ……、しかし現実はそうじゃなかったわけだぁ、恐らくあいつが今も無事なのは何らかの能力の影響って事になるわけだよなぁ」

 

悟さんが丁度セリフを言い切ったそのタイミングで

 

『くっそ!やっぱ同類3匹相手すんのは分が悪ぃか!』

 

「黙れ豚野郎っ!!!誰が喋っていいって言ったっ!!?」

 

『てめぇ二度とその口開くなっ!!吐く息が果てしなく臭ぇんだよっ!!!』

 

「ヘッドパーツにガスマスク機能あって助かった……」

 

向こうからそのようなやり取りが聞こえ、そちらの方を向いたところヌ級が艦載機を空さんの仲間の方々に直接ぶつけるような軌道で発艦させ、撤退を開始するのでした

 

「てめぇっ!!!待ちやがれっ!!!」

 

「待て輝!それよりも空の容態が心配だっ!!!」

 

「だね、急いで空のところに行こうっ!」

 

艦載機を凌ぎ切った3人の内、輝さんがヌ級の後を追おうとしたところを戦艦水鬼の方が制し、光太郎さんがそう言ったところで3人は急いでこちらへ向かって来るのでした

 

それを見た私は脅威が去り無事に生還出来た喜びと、戦艦艦娘の娘を失った事と空さんがボロボロになった事による悲しみが綯交ぜになった涙を一筋流すのでした

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