※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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鬼とショートランドの提督

「そういや、ヌ級に食われて亡くなったって言う戦艦艦娘の艤装は何処いったんだ?」

 

俺は翔鶴達の艤装を修理している最中に、ふと思い出したように翔鶴にそう尋ねた

 

翔鶴達にショートランド泊地への案内を頼んだ後、俺達がいざ行かんとばかりに移動を開始したところで、彼女達の航行速度が妙に遅い事に気付き、何事かと思って尋ねてみたら皆艤装が中破以上の損傷受けてると言って来たんだよな~……、何で初見で気付かなかったんだよ俺……、俺ってホント馬鹿……

 

そういう訳で俺は一人で翔鶴達の艤装の修理を始めたんだよな、んでその最中に翔鶴達の艦隊には本来もう1人、戦艦艦娘がいたのだがあの臭ぇヌ級に食われて亡くなったと言っていたのを思い出して、今こうやって気になった事を尋ねてるところ

 

「それが……」

 

翔鶴がその表情を曇らせながら教えてくれた、どうやらその艦娘の艤装はヌ級に捕食される直前に、ヌ級の腕力で強引に引き千切られた後海に捨てられ、この辺りの海底に沈んでいるんだとか……

 

「あの艤装、あの娘の遺品として何とか持ち帰ってあげたいところなんだけど、専用の装備も持ってない今の私達じゃ海底に沈んだ艤装のサルベージは出来ないからね……。取り敢えず泊地に戻ったら提督に何とか出来ないかってお願いしようと思ってるんだけど……」

 

川内がその表情に陰りを見せながらそう言った、確かにそうだよな~……、この世界の艦娘って要は艤装で武装した人間だから、俺達や潜水艦の艦娘みたいに海に深く潜ったりとか出来ねぇから今現在のこいつらじゃ回収不可能だもんな……

 

「って事らしいぜ?」

 

「ったくよぉ……、潜水艦使いが荒過ぎんだろうがよぉ……。まあいいぜぇ、どうせ暇だから回収して来てやらぁ」

 

今の翠緑の力ではこれ以上空を回復させる事が出来ない為、少々暇になっていた悟がそう言ってリヴァイアサンから飛び降りるなり海中に潜り、件の戦艦艦娘の艤装を回収しに行ったのだった

 

 

 

それからしばらく時間が経ち、翔鶴達の艤装の修理が完了したところで……

 

「輝よぉ……、少しばかり手伝いやがれぇ……。あの艤装がよぉ、思った以上に重てぇんだよぉ……」

 

海面から首だけを出した悟が言う、どうやら艤装の位置は分かったようだが如何せん艤装が悟の腕力じゃ持ち上げられなかったようだ……。阿武隈見つけて密林の中ダッシュした時もそうだったが、こいつは昔から体力なかったよな~……。まあ奏姉ほどじゃねぇけどさ……

 

「悟はホント昔からモヤシだったよな~、っとそれはそうとその艤装とか言うのは何処だ?俺が引っ張り上げてやんよ」

 

「輝ならそう言うと思ってよぉ、縫合糸全部括り付けてきたんだわぁ。ほれぇ」

 

2人のそのやり取りの後、悟が差し出した右手の指先に付いた縫合糸を輝が右手で全て掴んで握り込み、思いっきりそれを引っ張ると戦艦艤装が一本釣りでもされたかのように、海中から勢いよく飛び出して来たのである。まあ当然の事だが、それを見ていた艦娘の殆どが呆然としていたわ。唯一の例外?そりゃおめぇ好奇心旺盛なぽいぽいに決まってるだろうがよぉっ!!!

 

こうして翔鶴達の艤装の修理と遺品となる艤装を回収して、俺達はショートランド泊地へと向かったのだが……

 

「おぅおぅ、派手に歓迎されてるじゃねぇかよぉ!翔鶴っ!ここの提督は本当に俺達を連れて来いって言ったんだよなぁっ!!?」

 

「は、はい!確かに提督は戦治郎さん達を遠慮なく連れて来いと仰っていましたっ!!」

 

砲弾と爆撃の嵐の中俺と翔鶴がこのようなやり取りを交わす

 

何か俺達が泊地に近づくなり泊地中に警報が鳴り響いて、泊地に所属してるだろう艦娘達がゾロゾロ姿を現して一斉に俺達に向かって攻撃して来たんだよなぁ……。一応俺達が泊地に近付く前に翔鶴に頼んで連絡入れてもらってたはずなんだけどな~……

 

「ちょっと皆っ!ストップストップ!攻撃中止中止ー!!!」

 

「お前らぁ!江風達の姿が見えねぇのかよぉっ!!?」

 

「皆落ち着いてっ!この人達は敵じゃないからっ!!!」

 

「夕立達は敵じゃないっぽいー!皆攻撃止めるっぽいーっ!!!」

 

川内達も必死になって呼び掛けるのだが、悲しい事にその声はあちらの娘さん達には聞こえていないようで、攻撃の手を止めてはくれなかった……。その時だった、翔鶴がこの泊地用のものと思われる通信機に手を当て、その通信機の先にいる相手と会話を始めたのだ

 

「提督っ!これは違うんです!私達は深海棲艦に捕まったわけではないんですっ!!」

 

ああ、相手はここの提督なのね……。察するに翔鶴達と一緒に現れた俺達が、翔鶴達を人質やら何やらにしてると勘違いしてるわけね……

 

「違います!むしろこの人達は私達を助けて下さったのです!ええそうです!この人達が件の海賊団なんです!!!」

 

翔鶴が通信機に向かってそう叫んだ後、しばらくしたら俺達を狙った攻撃がピタリと止まる……。どうやら誤解は解けたみたいだな……

 

こうして、俺達はようやくショートランド泊地の敷地を跨ぐ事が出来るようになったのである……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に申し訳御座いませんでしたっ!!!」

 

翔鶴の案内で通された提督の執務室で、ここの提督が俺達に向けて角度90度のお辞儀と共に謝罪の言葉を述べる

 

「私もこいつを止められなくて、本当に済まなかった……」

 

謝罪する提督と共に、秘書艦の日向も頭を下げる

 

「いやいや、気にしないで下さいって。提督として多くの艦娘の命を預かる立場なんですから、こういう時はむしろそちらの判断の方が正しいんですから」

 

俺はそう言って2人に何とか頭を上げてもらおうとするのだった、だって俺もこの人の立場だったら絶対翔鶴の通信は脅されてやったとか考えちゃうもん……。こればかりはホントシカタナイネ……

 

「まあ実際、鬼級と姫級だけで構成された艦隊がいきなり来たら、誰でもこうなるよね~……」

 

「特に戦治郎は墨入れてるわ、艤装が有り得ねぇくれぇでけぇわで余計警戒されちまうだろうしよぉ」

 

光太郎と悟がこんな事言ってるけど、あんりょ~?これ俺が悪いの~ん?

 

因みに俺の艤装である大五郎や、俺達について来た太郎丸は現在お外でこの泊地の駆逐艦の皆さんと戯れてる最中でございます。姉様の形代なんかより圧倒的にでかい大五郎はチビッコの興味を引くようで、俺達が泊地に上陸した際ここの駆逐艦達が興味深々と言った様子で大五郎に群がって来たのである。その時の駆逐艦達の警戒心が薄れていたのはほぼ確実に、大五郎の上に乗ってはしゃいでいた夕立のおかげだろうな……

 

そうして俺達はここの提督さんとそんなやり取りを何度か交わし、それから翔鶴から今回の哨戒任務についての報告が行われると、提督は「そうか……」と短く返事をしてしばらくの間俯いてしまった……。まあ所属艦娘が1人亡くなったわけだからな……、それに艤装はあっても遺体が無い、キッチリと弔ってあげたいけどそれも叶わないとか辛いだろうからな……

 

それからしばらくして、提督が気を取り直したところで今度はそのヌ級に翔鶴が狙われている事を告げると……

 

「あいつだけでなく翔鶴まで奪うつもりでいるだと……っ!?ふざけるのもいい加減にしろっ!!!そもそもそいつは一体何なんだっ!?艦娘を捕食する深海棲艦なんて今まで聞いた事がないぞっ?!」

 

ヌ級に対して怒りを露わにする提督、感情の赴くままに机を何度も殴りつけ、その怒りをこれでもかと言うくらい込めた叫び声を上げ、肩で息をしながらようやく我に返るのだった

 

そこからは翔鶴とバトンタッチして、俺がヌ級……食人鬼Nについて提督達に説明し始めるのだった。それを聞いた提督と日向は顔面蒼白になり、日向に至っては恐怖でその身を震わせるも、それを誰にも悟らせないようにと必死になって震えを抑えようと己の身体を強く押さえ始めるのだった

 

「そんな異常者の転生個体がこの近辺に潜伏していると言うのか……?」

 

「提督、これは流石に危険過ぎると思うぞ……、その問題がどうにかなるまでの間艦隊の運用は控えるべきではないか……?」

 

驚愕する提督にしばらくの間艦隊の運用を中止するべきだと進言する日向、これについては俺達も同意だったので、日向の意見に賛成の意を示すのだが……

 

「しかし、だからと言って大本営がそれを了承してくれるかどうかなんて分かったもんじゃないからな……、くっそ!一体どうしたら……っ!!?」

 

「だったら……っと、日向、ペンと紙……何かの裏紙でもいいや、貸してくれ」

 

提督がそう嘆いているのを聞いた俺は、日向に頼んでペンと紙を用意してもらい、1通の手紙をしたためる

 

「戦治郎さんだったか……、それは一体……?」

 

「読んでみりゃ分かる、ほれ」

 

手紙の事が気になった日向が俺にそう尋ねて来たので、俺は今したためた手紙を日向に渡してその内容を黙読してもらう

 

「……これはっ!?」

 

その内容を読んだ日向が驚愕し、それが気になった提督も手紙を読んで驚きのあまり固まってしまう。うん、これの宛先は大本営で元帥の秘書艦やってる長門なんだよな、長門だったら転生個体について理解があるし、俺達が困っていると言ったら力貸してくれそうだからな。手紙には今回の事件の分かる範囲の詳細を細かく書き記し、しばらくの間南方海域にある泊地や基地の艦隊運用を止めて欲しいと書いておいたのである。そしてこの手紙が本当に俺が書いたものである事を証明する為に、俺の血判まで捺しておいたのである。尚血判を捺した直後に悟から頭叩かれました……、痛ぇ……

 

「これを書類と一緒に出しておいてくれ、そしたらちょっちの間くらい艦隊運用を止めてても大丈夫になるはずだ。それとだ……」

 

手紙の件が終わったところで、今度は空が翔鶴の護衛を希望している事を提督に伝える

 

「あいつとしては負けたままなのが嫌ってのと、翔鶴がターゲットにされてるのが気に食わないってところだろうな。あいつ翔鶴の事ホント大好きだからな~」

 

俺がそう言うと翔鶴が顔を真っ赤にし、日向がニヤニヤし始める。ああ、日向は生で空の告白シーン見てたんだったな~……、そりゃニヤニヤしたくなるわなっ!

 

「あの……、空さんが私を守ろうとするのは、本当に私が好きだからなのですか……?」

 

「応、あいつに翔鶴の事語らせたら2~3時間はずっと翔鶴に対しての熱く激しい想いを語り続けるからな。まあそこらへん気になるなら本人に聞いてくれ」

 

自信なさげに尋ねて来た翔鶴に対して、俺は取り敢えずそう返しておいた。まあさっき言った負けっ放しが嫌なのと翔鶴が好きなのは確実として……、他にも護衛を申し出た理由はあるだろうな……。だがそれが何なのかはサッパリ分からん、確か空とヌ級の共通点と言えば……

 

俺がそんな事を考えていると……

 

「分かりました、空さんの申し出に関しては喜んで受けさせてもらいます。空さんには3回もウチの艦娘達を助けてもらっていますからね、彼が望むのならそれを受けるのが私からの恩返しになる事でしょう」

 

提督から空の護衛希望についての返事をもらい、空のショートランド泊地一時滞在が正式に決定されるのだった




これでようやく過去編3章の本筋みたいなのが書ける……

果たして、ショートランド泊地の提督の頭髪と胃粘膜は無事でいられるのだろうか……?
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