ショートランドの提督との話し合いが終わった後、俺達はすぐにガダルカナルへと戻ったわけなんだが……
「なあ……、俺達がここ出る時こんなのあったか?」
「いや……、無かったと思うんだけど……」
「つまりよぉ、俺達が出て行った後誰かがこいつに乗ってここに来たって事だよなぁ……」
「こいつに乗るって事は、俺達みてぇに生身で海を渡れねぇ奴って事だよな……?一体誰だ?」
俺達は上陸した地点の近くにある埠頭に停泊してある大型クルーザーを眺めながら、そんなやり取りを交わしていたのだった
こんなバカでかいクルーザーに乗ってここに来るってなると、こいつの持ち主は艦娘や深海棲艦ではないただの人間のはず……?いや、もしかしたら海上で速度を出せない陸上タイプの深海棲艦の可能性もあるのか……?う~ん……、分からんっ!!!
取り敢えずクルーザーの事は後で考えるとして、今はリチャードさんにヌ級の事を伝えないといけない、俺がそう思ったところで……
「おかえりなさい、皆さんお疲れ様です」
不意に誰かが俺達に声をかけてきたのである、急に声をかけられた俺達は驚くと同時に声をかけて来た人物に対して警戒心を抱く……、先程見慣れないクルーザー見たばかりなのでここが穏健派の総本山であるにも関わらず、皆警戒心が高まっているのである
でもな~んかさっきの声に聞き覚えあるんだよな~……、他の連中の反応を見る限りそう思ってるのは俺だけっぽいんだけど~……。何処で聞いたんだっけな~……?
俺はそんな事を考えながら俺達に話しかけて来た人物の顔を見る、うん、見た瞬間思い出した!俺この人知ってるわ!
「ヲ改さん!ヲ改さんじゃねぇかっ!ひっさしぶりだなおいぃっ!どうやら無事にここに辿り着けたようだなっ!」
「お久しぶりです戦治郎さん、あの子達もツ級も何とか無事にここに来る事が出来ましたよ」
そう、俺達に声をかけて来たのはフェロー諸島で出会い、俺達に穏健派の存在を教えてくれたあのヲ改さんだったのだ。そっか~、チビ達もツ級も無事だったか~。それ聞いてちょっち安心したわ~
俺とヲ改さんの会話を呆然としながら眺める光太郎達に、ヲ改さんの事を紹介する。すると光太郎達は警戒心を解いて、俺の知り合いであると判明したヲ改さんに自己紹介を行うのだった
その後、ヲ改さんに俺達を出迎えた理由を聞いたところ、どうやらリチャードさんに俺達を部屋に案内するよう頼まれたんだとか
そういう訳で俺達はヲ改さんの後に付いて行きながら、拠点の方へと向かうのだが……
「そう言えば、戦治郎さんと剛さん、それと空さん宛てにリチャードさんから伝言を頼まれていました」
道中でヲ改さんがそんな事を言ってきたのである、生憎空は別行動中なんだよな~……。まあそのへんの事情は俺からリチャードさんに話すとするか
で、その伝言とは部屋に荷物を置いたら、一緒にティータイムにしないかと言うものだった。ヌ級の事もあるから好都合だな、そう思った俺はすぐに了承、剛さんも構わないと言う事で、俺と剛さんは部屋に荷物を置いた後ヲ改さんの案内でリチャードさん達が待つ部屋へと向かうのだった
ヲ改さんの案内で通された部屋には、リチャードさん以外に2人ほど見知らぬ顔があった。片方は中枢棲姫、恐らくワンコさんの友人であるスウさんなんだろう。だがもう片方の顔は……
「リコリス……棲姫……っ?!」
剛さんが驚きつつも警戒心を高めいつでも仕掛けられる状態になる、俺もまあ驚きはしたが多分剛さんと驚いたポイントが全然違うと思うのん……
このリコリス棲姫、普通のリコリス棲姫と格好が全然違うのよ。普通のリコリスってドレス着てるじゃん?このリコリスは黒の紋付羽織袴なのよ……、あ、でもこれ紋が染め抜きじゃなくて縫紋だ。いや、それはどうでもいいや。問題はその紋の形なのよ、この紋……めっちゃ見覚えあるんだよねぇ俺……
その3人が今入って来た俺達の方を一斉に向く、リチャードさんは笑顔でこっちに手を振っていて、スウさんはちょっち緊張しているのか表情が固い。そして問題のリコリスはと言うと……
「戦ちゃん、下がってて……っ!」
そう言って俺の前に立ち塞がろうとする剛さん、そう、このリコリスは俺達の姿を確認すると席から立ち上がり、こちらへ向かってゆっくりと歩いて来たのである。それも妙に太い杖を突きながらだ……
「剛さん、大丈夫ですよ。きっと剛さんが思ってるような事にはならないはずですから……」
俺は剛さんにそう言って後方に下がってもらい、問題のリコリスと対峙する……。そして……
俺はリコリスに持ってた杖で思いっきり頭を殴られた、それを見た剛さんが飛び出そうとしたが俺がそれを手で制する。そしてリコリスは俺の胸倉を掴みこう叫ぶ
「こんの親不孝もんがぁっ!!!何でお前が総一より先にこっちに来とるんじゃ馬鹿タレがぁっ!!!順番が違うじゃろうが順番がっ!!!分かっとるのか戦治郎っ!!?」
胸倉を掴まれたまま前後にグワングワンと振られる俺、そしてリコリスの方はそんな俺の事などお構いなしに、これでもかと言わんばかりに俺に罵詈雑言を浴びせて続けるのだった。うんまあ、これは仕方ない事だな、言ってる事大体合ってるからな。つかやっぱりアンタだったのかよ……、アンダーゲートで聞いた伝言でまさかとは思ってたけどさぁ……
それからしばらくしたら、言いたい事言い終えたらしくリコリスがその手を放して肩で息をし始める。俺の方はと言うとリコリスの手から自由になっても、しばらくの間前後にグワングワンしておりました
「ちょっと貴方、いきなりアタシ達のリーダーに何やってるのかしら?」
リコリスがある程度落ち着いて来たところで、タイミングを見計らったように剛さんが剣呑な雰囲気を出しながらリコリスに尋ねる。するとリコリスは
「何、ちょっち悪ガキに説教しただけじゃ。ホントこいつはちっこい頃から悪ガキじゃったからのぅ」
あっけらかんとそんな事を言う、ああ~、俺もガキの頃は空達とつるんで色々やったよな~、ホント懐かしい……
「貴方、戦ちゃんの何を知ってるって言うの?」
相変わらず警戒心MAXの剛さん、剛さ~ん、この人は敵じゃないからそんな警戒しないで大丈夫ですよ~
「儂はこいつの事、いや命や理紗、奏に天音に兼続の事もよ~く知っとるわい。青海さんや龍美さんに頼まれてよく面倒見る事があったからのう」
リコリスの言葉を聞いて驚愕する剛さん、そりゃまあ母さん達の名前が出て来たら驚きもするだろうな~……
「いや~、懐かしいのう……。青海さんに頼まれて儂がぐずるこいつのオムツを替える事になった時じゃったか……、こいつ儂がオムツを外すタイミングを見計らったかのように小便しおってのう、思いっきり顔にひっかけられた事があったわい。全く……、う〇こした後に小便を出すとか器用な真似しおって……」
ちょっとぉっ!??その話止めて下さるぅっ!?!めっちゃ恥ずかしいんですけどぉっ?!!ほらぁ!リチャードさんがその話聞いた瞬間紅茶噴き出したぁ……、スウさんが慌ててリチャードさんの顔拭ってらっしゃいますわよぉ?
「貴方、一体何者なの……?」
「お?聞くか?聞いちゃうか?だったら答えて進ぜよう!儂の名前は
ほらやっぱり~、2年前にポックリ逝った祖父さんだった~。祖父さんはそう言って剛さんに向かって角度90度の綺麗なお辞儀をし、それを見た剛さんは驚いた表情で俺と祖父さんの顔を交互に見る
「やっぱ祖父さんがヤマグチ水産の社長だったか……、だったら異常過ぎる成長速度も納得だわ……」
「たっはっはっ!!!総帥の座は総一に譲ったが、企業経営の手腕はまだまだ現役っ!一切衰えたと思ってはおらんからのうっ!」
姿勢を正した祖父さんはそう言って笑いだす、ああ、また経済界の歴史に長門の名が刻まれるのか……、俺がそんな事を考えていると、祖父さんが何かを思い出したかのように尋ねてきた
「そう言えば、埠頭で儂の姿を見るなり斬りかかって来た木曾と神通と軽巡棲姫は戦治郎の仲間じゃったか?つい反撃してノしてしまったんじゃが……」
「ちょっち祖父さん何してくれちゃってんのぉっ!??それ俺達の仲間ぁっ!!!そんでその軽巡棲姫はカネの友達の通ぅっ!!!」
「おおそうじゃったか!あやつは通じゃったんかっ!姿が変わっとったから分からんかったわいっ!つか、あの3人ちょっち鍛え方が足りんのじゃないかのう?3人まとめて一閃で片付いたぞ?」
おぉぅ……、もう……、経営手腕だけでなく抜刀術の腕も鈍ってないのね……。って事はその杖は仕込み刀なんだろうな……、って祖父さんの話聞いてた剛さんが固まっちゃったよぉ……、どうすんのこの状況……
「よっし決めた!今決めた!お茶会が終わった後、あやつらが目を覚ましたら儂直々にあやつらの事鍛えてやるわい!鍛え方は足りんが筋は良いみたいじゃからのう、きっとあやつらは名だたる剣豪になるぞ~!」
祖父さんがウキウキしながらそんな事を言ってる、それを聞いた俺は現実ではこの
やっとお祖父ちゃんが出せた……