「ねえ戦ちゃん、さっきおじい様が通ちゃん達を一閃で片付けたとか言ってたみたいだけど……?」
「ああ~、ウチの祖父さんは色々武術やってて、その中でも抜刀術が得意なんですよ。多分通達はそれをモロに喰らったんだと思います……」
我に返った剛さんが俺にそう尋ねて来たので、俺は予想を交えながらそう返す
「あのくらいの相手じゃったら抜くまでもないのう、実際通達をノした時も鞘付けっ放しじゃったし」
3人まとめて鞘で殴ったのかよ……、峰打ちですらないのかよぉ……。ってまた剛さん固まっちゃったよぉ……
「何つぅか、祖父さんパワーアップしてね?通って俺の目から見ても結構出来る奴だったと思うんだが……?」
「ん~、ここに来るまでの間はずっと戦い続きじゃったからのう、もしかしたらそれのせいで儂自身鍛えられたからかもしれんのう。確かこっちに来たのが2年前じゃったか……、っとなると大体1年半の間はずっと独りで強硬派と斬った張ったしとった事になるはずじゃ」
1年半て……、ちょっちそこら辺が気になって詳しく聞いたところ、なんでも最初この世界に来た時は祖父さんに攻撃して来た6匹編成の強硬派の連中を週に2、3回相手にしてたらしいんだが、ある日を境に一気に30匹編成に増えたとかなんとか……
「1匹仕留め損ねた後じゃったかのう?それから急に儂に襲い掛かって来る時の数が増えおったわい、確かリチャードの話によると今の強硬派のトップは儂と同じ姿の奴なんじゃろ?恐らく儂がそやつと同じ姿なのが気に食わんから、意地になって儂の事を倒そうとしとるんじゃろうな~」
ああ~、リコリスだったらそうなるかもしんねぇな~……。俺がそんな事を考えてる最中にも祖父さんの話は続く
祖父さんはその30匹編成の艦隊も問題なく退け続けていたんだとか、そしたら今度は襲撃の頻度が上がって毎日の様に強硬派を30匹ずつ倒す羽目になったんだとか……
そんなんを1年半も続けていたらそりゃ強くなるか……、つかよく今まで無事でいれたな……
っと、俺がそんな事を考えていたその時だった
「正蔵さん、そろそろよろしいですか?」
ついさっき紅茶を噴き出してたリチャードさんが、俺達に声をかけて来たのである。そういやお茶会するんだったな、祖父さんの事でスッカリ忘れてたわっ!
「すまんすまん、つい話に夢中になってしもうたわい。って事で行くぞ戦治郎、楽しいお茶会の時間じゃ」
祖父さんはそう言って部屋の中央にある紅茶と菓子が並べられたテーブルの方へと向かって行き、俺達はそれに従うようにして祖父さんの後を追い席に着くのだった
「おや?空君の姿が見えないのだが……、彼はあの後どうしたんだい?」
簡単な自己紹介を終えたところで、空の姿が見えない事を不思議に思ったリチャードさんが俺に尋ねてきた
「空の事なのですが……」
俺はそう言って空が不在である理由とヌ級の件を皆に伝える、それを聞いたリチャードさんと剛さんは顔を顰め、スウさんは驚きのあまり目を見開き、祖父さんは軽く舌打ちをしていた
「空坊が全力で挑んで倒せなかった相手か……、とんでもない奴がおるようじゃのう……」
空の事を昔から知る爺さんがそう言った、先程の舌打ちも空が全力を出せばどうなるかを知っているが為、自然と出てしまったのだろう
「ヌ級か……、最近になって何処かの海域からフラリとやって来て、この辺りで暴れ回っている奴だったね……」
「ええ、そいつのせいで私達の仲間も1人犠牲になっています……」
リチャードさんとスウさんが言う、2人の言葉を聞く限り2人はヌ級の事を知っているようだな……。つか1人犠牲になっていたのか……、そう言えば空はあいつと対峙した時クソ不味い青白い奴とか言われたとか言ってたが……、それはそういう事だったんだな……
「剛、そいつの正体について何か知らないかい?僕はあくまでそいつがこの辺りで暴れている事くらいしか分からないんだ……」
「そいつの事ならよく知っている、何たってあいつを殺したのは私だからね」
おっと、剛さんマジモードですか、だったら俺もこのお茶会の間はマジモードでいきますか。俺がそんな事を考えている間に、剛さんはヌ級の正体である食人鬼Nの事をリチャードさん達に話すのだった
「……僕が死んだ後に活動を活発化させた猟奇殺人鬼か……、道理で僕が知らないわけだ……」
剛さんの話を聞き終えたリチャードさんがそう呟く
「武装した兵士を素手で5人も殺めるなんて……、とんでもない人間もいるのですね……」
今度はスウさんがそんな事を言う、因みに剛さん達がNを襲撃した際Nがフルチンだった事は伏せられていた。まあお茶の席でフルチンだとかブランブランさせてたとか言えるわけねぇもんな……
その後、俺の方から2人に対して空の前でNの事を化物とか怪物とか言わないようにして欲しいとお願いしておいた。最初は2人共不思議そうにしていたが、理由を話すと納得してくれたようだった
「んで、空坊はその後ヌ級に狙われた愛しの翔鶴を守る為に、ショートランドに残ったと……、しかし勝算はあるのか?」
「0ではないと言ったところですね、一応俺達のところに配備されている装備の中に有効打になるものがあるので、それを上手く使えば奴を倒せると思います」
祖父さんの問いにそう答える俺、今回はマジモードなので祖父さん相手でもこんな口調で行くつもり
「そうか……、ぬ~ん……、儂ももうちょっち自由な時間があったら空坊に加勢出来たんじゃが……」
そう言って頭をバリバリと掻く祖父さん、今の祖父さんはヤマグチ水産の仕事があるので自由に動ける時間が限られているそうだ……。まあこれについてはシカタナイネ
「全く……、次から次へと問題が発生するね……」
「そうですね……、ヌ級の事も気になりますが、絶対平和党の件もありますからね……」
リチャードさんの呟きに対してスウさんがそんな事を言ったのだが、その中に聞き慣れない単語が1つだけあった
「絶対平和党……?リチャード、それは一体何なんだ?」
俺が疑問に思っていた事を剛さんが尋ねる、名前からして政党っぽいんだが……、こりゃ一体何なんだ?
「ああ、剛達は知らないのか……、そうだな……、簡単に言うと空気の読めない平和ボケ集団かな?」
うん、余計意味が分からなくなった。それが表情に出ていたのかリチャードさんが俺の顔を見るなり苦笑いして、詳細の説明を開始してくれた
絶対平和党とは、この世界から戦争と暴力、その元となる兵器や武器を全て無くして永遠に平和な世界を作ろうとしている転生個体と深海棲艦からなる集団なのだとか
こう聞くと穏健派と仲良くやれそうな集団のようだが、実際のところは完全に対立しているそうだ
「彼らが言うには、全ての事柄は話し合いで片が付くものであり、自衛手段を持つ事すらも戦争の原因になるんだとさ」
「戦いが虚しいものである事は身をもって知っています……、ですが仲間を守る為には、時として武器を手に戦う必要もあると言うのに……。彼らはそれすらも許さないと言っているのです……」
「しかも奴らの武器の定義の幅が広すぎてのう……、ぶっちゃければほんのちょっちでも危険だと思われる物は全て武器認定しよるんじゃ。確かコンクリート片や食器、ボールペンですら武器扱いじゃったぞ」
3人の話を聞いて耳を疑った、この戦争の真っ只中、戦場のド真ん中を丸腰で動けと申すか……、しかも筆記用具まで武器扱い……、そいつらアホなんじゃね?
「普段は艤装を外した状態でデモ行進をしているのだが、艤装を装備した者の姿を見かけたらすぐに取り囲んで罵詈雑言を浴びせ、最終的にはその艤装を奪い破壊して去っていくと言うはた迷惑な集団なのだよ……」
いやホント迷惑な連中だな……、艤装を奪って破壊って……。……ん?
「リチャードさん、先程その集団のターゲットになるのは艤装を装備した者と仰っていましたけど……、それは艦娘も対象となると思って良いのでしょうか……?」
俺がリチャードさんにそう尋ねると、リチャードさんは目を伏せて静かに頷く……。それを聞いた俺と剛さんは驚愕し互いに顔を見合わせるのだった
おいおいおいっ!これちょっち冗談じゃ済まされねぇぞっ!?艦娘からも艤装を奪うだとっ?!艦娘は艤装のおかげで海上に立てると言うのを知らないとでも言うのか!??もし艦娘が海上でそんな事されたら溺死確定じゃねぇかっ!!?
「恐らく彼らのせいで轟沈した艦娘も少なくないだろうね……」
その言葉を聞いた俺と剛さんは、衝撃のあまり言葉を失ってしまうのだった……