「絶対平和党の党首、名前は
「誰に何と言われても自分の考えを変える事無く、ただひたすら己の思想の為に行動を起こす人物……。このような言い方をすれば普通ならば好感が持てる人物なのですが……、彼はあまりにも独善的過ぎたのです……」
先程のショックから立ち直った俺達に、リチャードさんとスウさんが絶対平和党の党首について教えてくれるのだが……、その名前を聞いた俺と剛さんはまたも驚く羽目になってしまった……
俺、こいつの名前知ってるわ……、前に選挙に出てた奴だ……。俺達と年が近かったからよく覚えてる……
確か公約に憲法第9条の改定阻止と在日米軍の追放を掲げて支持者を集めたのはいいけど、自衛隊の解体と警察の武装解除も公約に追加したところで一部の支持者に疑問を持たれ、危険物廃絶を宣言したところで産業関係者や飲食業関係者、建築業関係者など数多くの労働者や主婦と主夫を敵に回したんだったな……
こいつが言う危険物ってのが、料理人の包丁や食器、俺達が普段扱う工具、農具や建材、筆記用具や家電、自家用車や自転車までと幅広く対象となっており、それら全てを規制、或いは許可制にしようとしてたんだよな~……。しかも許可制の場合毎日書類を何枚も書かせた上で、何度も慎重に書類審査して許可を出すシステムにするつもりだったらしい……
そんなふざけたシステムなんて誰も望んでいなかった為、こいつは結局その選挙では投票数0を記録し落選したのだが……。何とこいつ、それ以降の参議院選と知事選以外の全ての選挙に同じ公約で出馬していたのだ。当然誰にも相手にされてなかったが……
それからしばらく経ったある日、リチャードさんが暗殺された直後にエデンが声明出して活動開始するわ、それと同時期にNが活動を活発化させるわで世界中が大混乱になっている最中、この男が暗殺されたのだ……。誰にも関心を持たれなかったがな……
専門家が言うには、こいつの公約がエデンの反感を買って暗殺されたのではないかと言われていたが、誰も興味を示さなかった為マスコミもそれ以上の事を追及せず、結局こいつは世間から存在しなかったものとされてしまっていたのだった……
「親や兄は優秀な政治家だったんじゃが、こいつは戦治郎が略取された件でそれを恐れた両親から世間から隔離されて育ったようじゃったからのう……。おかげで世間と感覚がガッツリとズレてしもうてああなってしまったんじゃろうと儂は思っとる」
俺がそんな事を考えてる最中に祖父さんがそんな事を言った、あいつがああなったのって俺のせいだったりすんのっ!?俺って知らず知らずの間にやらかしちゃってたのっ?!
確かに俺は長門コンツェルンの2代目総帥の次男坊だから、政界や経済界の人達に存在を知られてる事だろう、つかガキの頃父さんに連れられてパーティーとか参加してたから知られてて当然だわな……。俺が攫われた件もそのパイプを経由して広まったんだろうな~……。俺のせいであの男が歪んだってなると、ちょっと複雑な気分になるな~……
「そんな顔をするな戦治郎、あやつの人格についてはお前が攫われた件が間接的に関わっているかもしれんが、お前自身が好き好んでやった事ではないんじゃからお前が気に病む必要はないわい。むしろそれに気付かず放置した親の問題じゃろう」
「正蔵さんの言う通りだ、だからそんな顔をするな。お前がそんな顔をしていると海賊団の皆が不安になってしまうだろう?」
どうやら沈んだ感情が顔に出ていたらしく、祖父さんと剛さんにそんな事を言われてしまった。確かにそうだよな、俺のせいで息子がおかしくなったとか言われても、俺はそいつと直接会って何かやったわけじゃないからな!何か言われたとしても知らんの一点張りでいけるな!実際今の今まで知らなかったわけだし!!!
「……どうやら3人は彼の事を知ってるみたいだね、良かったら彼の事を詳しく教えてもらえないかい?色々と気になる言葉も聞こえた事だしね」
俺達の先程のやり取りから、俺達がそいつの事を知っていると気付いたリチャードさんがそう尋ねてきたので、俺達はそいつの事をリチャードさんに説明すると同時に、ウチの世界の同じ国の馬鹿な政治家が迷惑をかけている事を謝罪するのだった
「済まない……、正直なんて言えばいいのか分からない……」
「少し可哀想な方ですが……、だからと言って彼の行いや思想を肯定する事は出来ませんね……。その行いのせいで尊い犠牲が出ていますから……」
俺達の説明を聞いたリチャードさんは頭を抱え、スウさんはその表情を曇らせるのだった……。いくら生前冷遇されたからって、こっちで好き勝手やっていい理由にはならないからな~。まあ当の本人は生前の復讐とか一切考えず、至極真面目にその歪んだ正義を貫いてるだけな気もするが……
「っと、取り敢えず絶対平和党についてはこんなところだね。あまり面白くない話を長々としてしまって申し訳ない、そう言うわけで気分転換にお茶とお菓子を頂こうじゃないか。折角スウが頑張って準備してくれた品だからね、思う存分楽しもうじゃないか」
そう言ってリチャードさんは絶対平和党の話を終わらせて、俺達にお茶とお菓子を勧めてくるのだった。さっきのリチャードさんの言葉から推測すると、このお菓子はスウさんが作ったのか……?だったら穏健派の上層部は女子力が高いみたいだな~、ウチの艦娘達にもこういうの覚えさせた方がいいのかな~?先生はもちろん翔な!
俺がそんな事を考えながら菓子に手を伸ばしたその瞬間……
「スウ様!リチャードさん!大変ですっ!!!」
この部屋に慌てた様子で飛び込んで来た深海棲艦の娘がそう叫ぶ、すると場の空気がすぐに張り詰め……
「どうしたんだい?そんなに慌てて……、取り敢えず落ち着いて、何が大変なのか教えてくれないかい?」
リチャードさんがその深海棲艦の娘に向かって落ち着いた様子でそう言うと、その娘は1度深呼吸をしてから報告を開始する
「先程哨戒に出ている艦隊から連絡があり、ラバウル基地が絶対平和党と強硬派に襲撃されて消滅しましたっ!!!」
その報告を聞いた全員が思わず目を見開く、ラバウルが消滅だとっ!?壊滅じゃなくて消滅っ?!つか絶対平和党と強硬派が一緒にいるのはどういう事だっ!??これは現場行って確かめた方が良さそうだな……
俺はそう思って立ち上がるのだが、どうやら俺と同じ考えだったのが他にもいたみたいで、スウさんを除く全員が一斉に席から立ち上がった
「報告ありがとう、これは事が事だけに僕も出た方がよさそうだね。……それで僕と一緒に立ち上がった皆は、僕に協力してくれると考えてもいいかな?」
「当然だ、流石にこれは看過出来ない問題だからな」
「絶対平和と強硬派が一緒にいるとなると、相当な数を相手せにゃならんじゃろうからな。それにこの後戦治郎のとこの娘っ子達に修行をつけてやるつもりじゃからな、準備運動に丁度いいじゃろうて」
「だったらウチの連中も連れて行くか、祖父さんの戦いは学べる事も多いから見せておきたいところだし、何より日本海軍の提督志望の俺が日本海軍の拠点のピンチに駆けつけないってのも可笑しい話だからな、って事で……」
そう言ってマジモードから戦闘モードに気持ちを切り替えた俺は、通信機に手を当て……
「長門屋海賊団のメンバーに告ぐ!これよりラバウル基地の救援に向かう!すぐに出撃準備に取り掛かれっ!!!」
そう叫び、すぐにこの部屋と飛び出して出撃準備に取り掛かるのであった