俺達は悟が捕獲したソ級に尋問して手に入れた情報の内容を確認する為に、ソ級を引っ張りながらラバウル基地があったと言う場所に上陸する事にした
うん、お茶会の時ラバウルが消滅したって聞いたけどさ、ホントに消滅してるよこれ……
もうね、瓦礫の1欠片すらないのよここ、建築物があったと言う面影すら残っておりません……。あるのは野晒しにされた大量の血溜まりと肉片のみ……、その肉片もご丁寧に骨をキチンと抜き取ってあるのよね……。コンクリートで固められた埠頭だったと思われる場所も、わざわざコンクリを全部剥がした上に岩とかも除去して、土や砂が剥き出しになっておるのですよ……
何故こんな事になっているのかと言うと、絶対平和党の連中が危険物を完全に排除したからである。埠頭のコンクリや岩、建築物から出た瓦礫や遺体の骨や遺品になりそうな物も危険物だと言って何処かに持ち去っていったんだとか……。確かに骨とかちょっち加工したら武器になるけど、そこまでやらにゃならん事なのか?あいつらはホトケさんを見ても、ただの物くらいにしか思ってないのか?正直イカれてるとしか言えねぇぞ……
んで、ラバウル基地だったところが肉片まみれになってる理由については、あのリコリスの策なんだとさ……
リコリスが立てた策、それは水上艦60隻と潜水艦60隻の大艦隊を編成し、水上艦の艤装を潜水艦に持たせ、非武装状態の水上艦を絶対平和党に接触させて絶対平和党を言葉巧みに丸め込み、ラバウルに差し向けるように上手い具合に唆し、絶対平和党がラバウルに対して攻撃を仕掛けたところで潜水艦に持たせていた艤装を水上艦に装備させ、絶対平和党の攻撃のせいで丸腰になった艦娘や基地、そして絶対平和党に対して総攻撃を仕掛けると言うものだった……
「何とか海上に出た艦娘も、すぐに艤装を奪われて次々と海の中に沈んで来てたわね。まあそこに私達が魚雷を叩き込んでやったんだけどね、自分達に迫って来る魚雷を見て表情を絶望の色に染める艦娘を見るのは最高の気分だったわ~。まあ貴方達がそれを台無しにしてくれたんだけどね……」
尋問中拘束されたソ級が、忌々し気に俺達を睨みながらそう吐き捨てていた。沈んだ艦娘に追撃したのもリコリスの策の内らしく、後々救助されてまた艤装持ち出して来て戦場で戦う羽目になったら面倒だから、遺体も完全に潰しておけとの事らしい……
それを聞いた直後悟がソ級を1発ブン殴ってたな……、策を立てたのはリコリスだがソ級もそれを楽しんでた感じだったから、これは命大好きマンの悟に殴られてもシカタナイネ
その後、悟が穏健派の潜水艦艦隊を率いて海底を徹底的に調べ尽くし、回収可能な遺体や遺品を全て回収して来てくれた。まあどれもこれも腕だけだったり脚だけだったりと凄惨な状態になっているが、まだ骨が残っている分まだマシって感じだわ……。陸の上にいた艦娘は骨も遺品も残ってないからな……、遺族の方々に何と申し上げればいいか分からねぇよ……
尋問の内容を確認し終えた俺達が、拘束したソ級をほったらかしにしたままショートランド泊地経由で遺体を故郷に帰してあげる為に、遺体の回収と一緒にそこら一帯を掃除しているその最中だった
近辺を哨戒していた穏健派の深海棲艦から、ラバウル所属と思わしき艦娘を6人ほど保護したと言う通信が届いたのである
それを聞いたリチャードさんがすぐにこちらに連れて来るように指示を飛ばすと、すぐに6人の艦娘が俺達のところに連れて来られた
「そんな……、姫や鬼がこんなに沢山……」
「これほどの軍勢に襲撃されれば、いくら南方海域最強と謳われたラバウル基地でも太刀打ち出来ないだろうな……」
連れて来られた6人の艦娘の内の、睦月型駆逐艦10番艦の三日月と同じく9番艦の菊月がそんな事を言っていた、まあこの惨状を見て俺達の姿見たら俺達が襲撃したと思うわな……、実際は全然違うけどな……
「答えるクマ、これはお前達がやったクマか?」
この艦隊の旗艦を務めていたのだろうと思われる、球磨型軽巡洋艦1番艦の球磨が俺達を睨むようにしてそう尋ねて来た。よく見ると球磨の主砲は既に俺達を捉えている状態になっており、返答次第ではすぐにでも攻撃を仕掛けられる状態になっていたのである
取り敢えずこの娘達の誤解を解かないとな……、そう思って俺が声を出そうとしたところで……
「本当に済まなかった……っ!僕達がもっと早く事態に気付く事が出来たらこんな事にはならなかったのに……!君達の仲間を救ってあげられなくて本当に申し訳ない……っ!!!」
突如リチャードさんがそう言って、球磨達に向けて頭を下げるのだった。いや、リチャードさんだけじゃねぇ……
「儂もガダルカナルに向かう途中、偵察機を飛ばしながら移動してればこの件にいち早く気付く事が出来たかもしれんからな……、本当に済まなかった……」
祖父さんまで球磨達に対して土下座し始めたではないか!急に物凄くゴツい格好をした戦艦棲姫と、紋付羽織袴を着たリコリス棲姫に丁寧に謝罪されて、謝罪を受けている球磨達は非常に困惑していた……
「ちょっと待つクマ!これはお前達がやったわけじゃないクマかっ?!」
「ああ、俺達はラバウルが消滅したって聞いて駆けつけて来た穏健派の深海棲艦なんだわ、俺達が来た時には既にこんな状態だったみたいだぜ?詳細はそこにいるソ級に聞きな、そいつは実行犯の内の1人だからな」
2人の謝罪を受けて混乱する球磨がそう尋ねて来た、それに対して今度は俺がその返事をしてあげた。2人が未だに頭下げてたリ土下座してたりで、まともに話せそうなのが俺しかいなかったからな……
その後、俺の発言のせいで余計混乱する球磨達を何とか落ち着かせ、ソ級に尋問させてあげたら球磨がソ級を豪快にブン殴った。そりゃまあ、基地の仲間を楽しみながら殺した相手とか殴りたくもなるわな……、これもシカタナイネ……
それからしばらくの間、ソ級の話を聞いて怒り狂う球磨を何とか宥めていたんだが……
「戦治郎さん、陸上にある遺体の回収が終わった……ぞ……?」
遺体回収完了の報告をしに来た木曾が、荒ぶる球磨の姿を見て驚きのあまり目を見開き硬直する。そして木曾の声に反応した球磨が、ゆっくりと木曾の方を向くと……
「クマッ?!お前何でここにいるんだクマッ!?つかその格好は一体なんだクマッ!!?」
今度は球磨が驚きの声を上げているではないか、こいつらもしかして知り合い……?
「い、いや……、その……」
「母ちゃんの事もお前の右目の事も姉ちゃんに任せておけって言ったはずクマッ!それなのに何でお前はこんなとこにいるんだクマッ!?」
まさかの姉妹でした!つか母ちゃんの事ってどゆ事?俺聞いてないと思うんだけど?っとそんな事考えてる場合じゃねぇな、俺は今にも木曾に掴みかかりそうな球磨を羽交い絞めにして、木曾の事情を球磨に説明するのだった……
「戦治郎さん、妹の事を助けてくれて本当にありがとうだクマ。そして出来の悪い妹がご迷惑をおかけして申し訳ないクマ」
事情を説明し終えたところで、球磨が俺に感謝と謝罪の言葉を述べ頭を下げて来た
「何、当然の事しただけだし迷惑なんてのも感じてねぇから気にすんな。それと木曾の事出来が悪いとか言ってやんな、今の木曾はウチのエースの一角担ってる実力者なんだからよ」
俺がそう言うと球磨は信じられないとばかりに驚き、木曾は気恥ずかしそうに頬を掻いていた。まあ、その木曾はこの後祖父さん主催の地獄の大特訓祭に参加する予定になってるんだがな……、きっと俺も巻き込まれる……
っと、そういや球磨が言ってた2人のお母さんの事について、球磨から教えてもらう事が出来たんだった
2人のお母さんは深海棲艦の襲撃のせいで、両足欠損と言う大怪我を負って今でも存命ではあるが車椅子生活を余儀なくされたんだとか。木曾の右目もその時に負ったものなんだとさ、なるほど、それなら木曾の復讐心も理解出来るわ。
んで、球磨はお母さんの両足と木曾の右目の敵討ちの為に、艦娘となり深海棲艦との戦いに身を投じたってわけだ。その際球磨は木曾に自分の後を追わないようにと言いつけて行ったそうなんだが、木曾はそれを破ってドロップ艦になって摩耶と共に戦場に飛び出したと……。そりゃ球磨が怒るわけだ……
「取り敢えずクマ、戦治郎さんが妹と妹の友達の命の恩人って事が分かったから、戦治郎さんが言う事は球磨は信じるクマ。んでそんな戦治郎さんに聞くクマ、あそこで球磨達に謝罪してる人達の言ってる事は本当に信じて大丈夫クマ?」
球磨が未だに謝罪した姿のままのリチャードさんと祖父さんの方を指差しながら俺にそう尋ねて来た、あの2人まだ謝罪してんのかよ……、そろそろ姿勢正していいんじゃないか……?
「まず指差すのやめてあげて?んで、あの人達は信頼出来る人達だから信じて大丈夫だ。特に紋付羽織袴着てるリコリス棲姫の方は俺の祖父さんだから、尋常じゃないくらい規格外だから頼りまくっていいぞ」
「分かったクマ、戦治郎さんがそう言うなら球磨はあの2人の事も信じるクマ。……しかし球磨達はこれからどうしたらいいクマか……、遠征から帰ったら基地が綺麗サッパリ消滅してるとか、冗談でも笑えないクマ……」
球磨がそんな事を言いながらウンウンと呻り始める、こいつらは遠征行ってたから助かったのか……、中々運がいいな……
「なあ、他に遠征に出てたラバウルの艦娘はどのくらいいるんだ?」
「私達の任務が一番時間がかかるものでしたから……、恐らく他の方々は私達よりも先に基地に帰還していたと思います……」
「一番時間がかかる任務と聞いた時は運が悪かったと思ったが、まさかそれに救われる事になるとはな……」
他に生き残りになった奴がいるかもしれないと思った俺が、球磨達にそんな質問をしたところドラム缶を括ったロープを腰に巻いた三日月と菊月が答えてくれた。つまり生き残りはこいつらだけか……
「そうか……、分かった、だったら~……、リチャードさん、そろそろ俺達は撤収するんですよね?」
「そうだね、やる事は全てやった事だしそろそろ引き上げようと思っているところだよ」
俺はリチャードさんに確認を取ったところで、球磨達に1つ提案をするのだった
「俺達はそろそろ撤収するんだが、途中でここで回収した遺体や遺品を故郷に帰してもらう為にショートランド泊地に届けるつもりなんだわ。そういう訳で、お前達の事をショートランドまで送るから付いて来てくれないか?」
「ふむ~……、でもそれは本当に大丈夫クマ?戦治郎さん達と行動してた球磨達が裏切者扱いされて処分されたりしないクマ?それに戦治郎さん達も泊地の艦娘に攻撃されるかもしれないクマよ?」
「ああ、それなら大丈夫だ、泊地の提督は俺達の事知ってるからな、つか仲間の1人がそこに厄介になってるんだわ。だから裏切者とか疑われる心配ねぇから安心してくれ、そのへんの経緯が知りたかったら道中で説明する、それでいいか?」
俺の提案に疑問を投げかける球磨に対して、俺はそう答えて球磨達を納得、同行を了承させる
「待ちなさい、貴方達が撤収するのは良いけど、私の事はどうするつもり?確か尋問前に私が知っている事を全て話したら解放するって約束したはずよね?」
俺と球磨達がそんなやり取りをしていると、それを聞いたソ級が叫ぶようにして俺に尋ねて来た。そういやそうだった、球磨達の事ばかりでソ級の事忘れてたわ
「ああ、済まん忘れてた。ちょっと待ってろ……」
俺はそう言ってソ級の拘束を外してやった、するとソ級は……
「覚えていなさい!この事はリコリス様に報告して絶対貴方達の事を潰してやるんだからっ!覚悟していなさいっ!!!」
そう言って海の方へと走って行くのだが……
「大五郎」
「あいさ~」
俺は大五郎に呼び掛け、大五郎も俺の言葉に応じてソ級の背中に照準を合わせる
「撃て」
大五郎の照準がソ級の背中に定まったところで、俺はたった一言そう言ってグスタフ&ドーラをソ級に叩き込んでやる、するとソ級がいた場所が盛大に爆発しそれはそれは大きなクレーターを形成する。約束通り解放してやったぞ、この世界からな……
「戦治郎さん……、ここまでやる必要があったクマか……?流石にやり過ぎじゃないクマか……?」
ソ級がいた場所に出来たクレーターを、驚愕の表情を浮かべながら眺める球磨が尋ねて来る
「あいつに情報を持ち帰らせるわけにはいかねぇし、何よりあいつらがやった事は許されねぇ事だからな。いくら戦争でも殺しを楽しむのはダメだろうよ……」
俺がそう吐き捨てたところで、出発準備が整ったと言う連絡を受け、俺達はラバウルを後にするのだった……
名前が出てない艦娘は基本モブです