「ヘーイテートクー!さっき振りー!」
「いやホントそうですね……、それで一体どうしたんですか?何か伝え忘れた事でもあったんですか?」
ショートランド泊地に到着するなり、こんな事を言いながら執務室に突撃する俺。そんな俺の姿を見た提督は一瞬驚きはしたものの、すぐに気を取り直し用件を聞こうとしてくるのだった
「いや~……、それがさ~……」
俺がそう言って用件を伝えようとしたその時だった
「大変だ提督っ!ラバウルが陥落したぞっ!!!」
慌てた様子で執務室に飛び込んで来た日向が、俺が伝えようとしていた事を代わりに提督に伝えてくれましたよっと
「何だってっ!??今ラバウルはどうなっている?!!」
「それが……」
「その事なんだけどよ~……」
緊張感溢れる2人のやり取りに割って入る俺、2人の視線が俺に集中する中俺は2人にラバウルであった事を報告し始めるのだった
「ラバウルでそんな事があったのか……」
「ヌ級だけでも頭が痛いのに、絶対平和党だと……?流石にもう勘弁してくれよ……」
俺の話が終わったところで、日向はこめかみを指で押さえ、提督は両手で頭を抱え込んでしまいましたとさ……
「平和な世界を作ると言う目標は素晴らしいのだが……、その手段が全ての兵器や危険物の破壊と他者の洗脳か……」
「そのせいでラバウルが冗談抜きの地獄と化してたわ……、建物の類も全部破壊された後持ち去られて、そこら中肉片だらけってな具合よ……」
「艤装が取り外されてしまえば、艦娘は妖精さんの加護も受けられないし海上に立つ事も出来ないからな……、正直その光景は想像したくないな……」
俺と日向のやり取りを聞いていた提督が、顔を青くさせながらそんな事を言っていた。今の提督に強硬派の潜水艦共が何やったか教えるのは流石に酷だろうな~……、後で日向に教えておいて提督の調子が戻った時にでも話してもらいますか
「んで、俺達がここに来たのは俺達が回収して来た遺体と遺品をここ経由で遺族の方々に送り届けて欲しいってのと、たまたま遠征に出てて助かったラバウルの艦娘達を預かって欲しいってお願いしに来たわけよ」
「なるほど、そう言う事だったんですね。分かりました、遺体と遺品については何としてでも遺族の方々のところに届けて見せます。それで、先程生き残った艦娘がいると仰っていましたが……」
「応、そこで待たせてるから連れて来るわ。っとそうそう提督さんや、俺に対しては敬語じゃなくていいからな、普段の話し方で話してくれた方がこっちとしては気が楽なんだわ」
「……分かった、じゃあこれからはそうさせてもらうぞ」
俺と提督はこのようなやり取りを交わし、俺は提督の言葉に納得したように大きく頷いた後球磨達を執務室に招き入れたのだった
「んじゃ俺は空にこの事伝えて、遺体と遺品の受け渡し手伝ったらガダルカナルに戻るわ!」
球磨達が全員執務室に入ったのを見届けた俺は、そう言って執務室から出ようとするのだが……
「クマ?戦治郎さんもう行っちゃうクマか?」
球磨に呼び止められてしまった、その表情は心なしか寂しげに見えたのだが……
「ああ、俺らもまだ他にもやる事あっからな」
「む~……、そう言う事なら仕方ないクマ……。戦治郎さん、今日は本当に色々とありがとうだクマ。またいつか会える事を願うクマ~」
俺の言葉を聞いた球磨は、少々不服と言った感じではあるが取り敢えずのところはそれで納得し、俺に対して感謝と再会を願う言葉をかけてくるのだった
俺は球磨の言葉に応、またなって具合に短く返し、執務室を出て医務室の方へと足を運ぶのであった
「ってな事があったんだわ」
「ヌ級だけでなく、あの馬鹿げた政治家の軍団まで相手にしなければならんのか……」
俺が医務室のベッドに横たわる空に、今回の件を報告すると空は嫌悪感丸出しでそう吐き捨てていた
「話聞いてる限りだと、ホントとンでもねぇ奴らだな……」
「強硬派と戦闘している時に介入されたりなんかしたら、厄介な事この上ないね……」
「そんな事されたら、夕立達は戦えなくなっちゃうっぽい!」
「それを防ぐ為に支持者を先に倒そうとしても、洗脳攻撃があるんだっけ……?」
「私達の場合……、それよりも先に海に沈められてしまいそうだけどね……」
俺が来るまでの間、医務室で空と談笑していた江風、時雨、夕立、川内、雲龍が今の話を聞いて思い思いの言葉を口にする。つか雲龍とも知り合いだったのか
「あの……、その政治家の方の話が出た途端に空さんの機嫌が悪くなったような気がするんですが……」
そんな中、翔鶴がオズオズとそんな事を言ってきたのだった。翔鶴の奴、この短い間で空の機嫌が分かるようになったか~……、いいぞ^~これ~
「ああ済まない、俺はあの七瀬と言う政治家が吐き気がするほど嫌いだからな」
翔鶴の言葉を聞いた空がそう答える、空のその言葉を聞いた面々は意外とばかりに驚きの表情を浮かべる。空はホントあいつの事嫌いなんだよな~……
あの七瀬の公約、危険物の中には武術の知識や技術も含まれていたりするのである。それを聞いた空はもうホント、烈火の如く激怒して思わず俺ンチの食卓を叩き割ってたんだよな~……。ただそれもタイミング悪く飯の最中で、空が食卓叩き割ったせいで並んでた飯が華麗に宙を舞い、全部ダメになってしまって直後に翔にキレられて説教されてたっけか~……。それ以降、空は七瀬の事を猛烈に毛嫌いするようになったんだとさ
「空は武術のおかげで人並みの生活が出来るようになった奴だからな、それが規制されるってなるとこうも言いたくなるだろうな~……」
俺がそう言うと皆押し黙ってしまい、医務室に重い空気が流れる。空の事情知ったらまあそう言う反応になるわな……
「確かお前も七瀬の事を愚痴っていなかったか?危険物撤廃以外の部分でな」
「ああ~……、まあな~……」
「その七瀬とか言う奴、まだ他にも変な事言ってたの?」
俺と空のやり取りを聞いた川内が話題に食い付いて来た、これについて気にしてたのはこっちの面子だと俺と祖父さんくらいじゃねぇかな~?
「あの野郎、企業の競合も争い事認定して撤廃させようとしてたんだわ……、ライバル関係の企業があってこそ企業はお互い切磋琢磨して新しい技術を生み出したり、面白い商売方法考えるんだろうがって言ってやりたかったわホント……」
「武術や企業の競合だけでは収まらず、サッカーや野球など相手と競うスポーツも全面的に規制する方針だったみたいだぞ。本当に七瀬と言う人物は何を考えているのかが分からなかったぞ……」
俺の言葉を聞いた空が付け加えるようにそんな事を話し、聞いていた艦娘達皆をドン引きさせていた……。まあこんな事聞きゃそうなるよな~……
「あれもダメ、これもダメって何かとっても窮屈な人生になっちゃいそうっぽい~!」
「ああそうだな……、あいつの思想が実現したら平和な地獄が待ってるだろうな……」
夕立がジタバタしながらそんな事を言ったので、俺は夕立の言葉を肯定しこのような言葉を続けるのだった
「平和な地獄って……、何かおかしな表現だね……」
「まあな、でもこれ以外で適切な言葉が思いつかねぇわ。だってそうだろ?確かに戦争や争い事はないかもしれねぇけど、企業も人間も全くと言っていいくらい進歩する事なければ規制だらけで自由もねぇ、場合によっては平和の為に人権も簡単に無視されるような世界、それを地獄と言わずなんと言うかってな」
時雨の言葉にそう返す俺、そして俺の言葉を聞いた艦娘達は皆揃ってその表情を引きつらせるのだった。実際、こんな世界とか嫌だろ?俺は嫌だぞ!
「っと、つまんねぇ話して悪かったな。長居し過ぎたみてぇだし俺はこの辺りで行くわ、また何かあったら来るかもしんねぇけどな。っと空は怪我治るまでここで大人しくいい子しとけよ?いいな?」
「分かっている、そう心配するな。それより早く外の連中の手伝いに行かなくていいのか?」
おっといけねぇ、忘れるとこだったわ!そういう訳で、俺は空とそんなやり取りを交わした後、医務室を後にし外で遺体と遺品の受け渡しを手伝うのだった