※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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復活の龍

見習い妖精さんと出会ったその次の日、翔鶴と散歩しているところで悟が言っていた護のロケットが天に昇っていく姿を見かけ、それからしばらく経ったところで急に空から幾多の光の柱が降り注ぐ光景を目の当たりにし2人揃って愕然としていたあの日から数日が経過した

 

「こんだけ回復してりゃぁ、後はリハビリして感覚を掴むだけだなぁ」

 

往診に来ていた悟の口からそんな言葉が放たれた、これでようやくオムツとベッドを卒業出来るのか……、そう思うと心の底から喜ばしく感じる……

 

食事を解禁された次の日から今日この時まで、俺は常にオムツを装着した状態だったのである。理由は油断していると括約筋が緩み、中のモノが漏れ出してしまう時があったからである。これでは俺も糞漏らしではないか……、そう思うと本当に自分が情けなくて泣きそうになったものだ……

 

そして何より辛かったのは、俺が粗相する度に翔鶴が嫌な顔一つする事無くその後始末をしてくれた事だった。この時ばかりは心底申し訳なく思い、幾度となく涙で枕を濡らしたものだ……

 

だがそんな悲しみに明け暮れる日々も今日この時を以って終わったのである、これからは自分の2本の足で立ち、行きたいところへも自らの足で歩き、自力でトイレにも行けるようになったのだ、これほど嬉しい事は中々お目にかかる事は出来ないだろう……

 

「おめでとうございます空さん!これからは普通通りに生活出来るんですね、空さんの事を介護している時、いつも思っていたんです……。もしかしたら空さんの容態が急変するんじゃないかと、もう2度と立ち上がれなくなるのではないかと……、ずっと心配してたんです……。でもそれも杞憂で終わったんですよね……?良かった……、本当に良かったです……」

 

俺の傍にいた翔鶴が、悟の言葉を聞いて俺に祝福の言葉と共に今までの不安を曝け出し、思わず涙ぐんでいた

 

「心配かけて済まなかったな、そして今まで俺の面倒を見てくれてありがとう。翔鶴がいなければ俺はまともに生活が出来ない状態だったからな……、翔鶴には本当に感謝している」

 

俺はそんな翔鶴に向かってそう言いながら、翔鶴の頭に触れ落ち着かせるように優しく撫で始める

 

「あ~……、んんっ!甘ったるい空気の中悪いんだがよぉ、いくら身体が動かせるようになったからっていきなり出撃とか無茶な事してくれんじゃねぇぞぉ?さっきも言ったがまずはリハビリして身体の感覚取り戻すのが先だからなぁ?」

 

そんな俺の幸せタイムを粉々に破壊するように、悟がわざとらしく咳払いをしてからこんな事を言ってきた。流石に自分の身体の事は自分がよく分かるからな、そんな無茶な事はする訳ないだろう。ただでさえ長い間寝たきり生活をしてきたせいか、筋力が低下しているのか身体が鉛の様に重いと言うのに……

 

「そんで翔鶴よぉ、こいつの事だから早く調子を戻したいとか言って無茶苦茶なトレーニングを始めるかもしれねぇからよぉ、おめぇはそれをさせないように監視及び空のリハビリの手伝いをやって欲しいんだがよぉ、頼めるかぁ?」

 

「そうですね……、それでまた調子を崩されてしまっては大変ですし……、分かりました、私も空さんの力になりたいと思っていますから、空さんのリハビリのサポートは任せて下さい!」

 

俺が自分の身体の事を考えている間に、悟が翔鶴に俺のリハビリの手伝いを頼み、翔鶴もそう言って悟の頼みを快諾していた。また翔鶴に迷惑をかけてしまうな……、本当に申し訳なく思えて来るものだ……、翔鶴にはいつか改めて礼をしなければいけないな……

 

「んじゃぁ俺は帰るわぁ、何かあったら空の通信機で俺達に連絡入れやがれってなぁ。護が腐れペンギンを打ち上げたおかげでよぉ、どこからでもその通信機で通信が繋げられるようになったからなぁ」

 

俺が考え事をしている中、悟はそんな事を言い残しショートランド泊地の医務室から出ていくのであった。悟が言う腐れペンギンとは護が打ち上げた人工衛星の事なのか……、ペンギンは兎も角腐れとは一体どういう事だろうか……?機会があったら護……、いやここは戦治郎に聞いておくか、護の場合ペンギンが絡むと碌な事にならん筈だからな……

 

しかしこの通信機を使えば、何処からでも通信が出来るようになった、か……。……いい事を思いついた、これを利用して今まで心配と迷惑をかけてきた翔鶴にお礼として送るプレゼントを作ろう

 

それと並行して対ヌ級用の装備も作ろうではないか、ここの工廠の妖精さん達は非常に忙しそうだからな、自分が欲しい物を自力で作れるのならば自分で作ってしまう方が圧倒的に早いと思うからな……

 

だがその前に、自分の身体の感覚を取り戻すのが先決だな。その為には……

 

「翔鶴、早速で悪いがリハビリを始めようと思う。少々やりたい事が出来たのだが、このままだとそれを実行するのもままならんようだからな」

 

「分かりました!それで……、一体何をするんですか?」

 

俺の言葉を聞いた翔鶴が不思議そうに尋ねて来る、その表情も美しくも可愛らしいな……。と、今はそれどころではないっ!

 

「何、大した事ではないさ。道具なども使う必要がないから、そのまま俺に付いて来てくれ」

 

俺はそう言って移動を開始し、翔鶴は俺の背中を見るなり慌ててその後を追ってくるのだった

 

 

 

そうして俺達がやって来たのは泊地の埠頭、俺はそこで翔鶴に危険だから離れているようにと頼み、それから1度深呼吸をして心を落ち着かせ……、とある県と有名なRPGがコラボした際作られたコラボサイトで聴く事が出来る、7人の英雄との戦闘時に流れる曲のアレンジver.を頭の中で流しながら演武を開始する

 

時に緩やかに、流れるように……そして時に大胆に、力強く、頭の中で流れる音楽に合わせて突きや蹴りを繰り出していく俺。その最中に翔鶴の方をチラ見してみると、翔鶴は俺の演武を見て驚くと同時に見惚れてしまっているようで、静かに俺の姿を見入っていた

 

その後、俺は集中してしばらくの間演武を行い、ある程度自分の状態を把握したところで〆に入り、演武を終わらせると俺は翔鶴の方に向き直って一礼する。するといつの間にか集まっていた見知った面々とラバウルの生き残りである球磨、三日月、菊月の3人から盛大な拍手を送られた

 

「大したものだな、本当に病み上がりなのか疑問に思うほどの演武だったぞ」

 

「ぽい~!空さんすっごくカッコ良かったっぽい~!」

 

「素晴らしい演武だったな……、思わず見惚れてしまった……」

 

「凄いですね……、昨日まで寝たきりだったのにもうそんなに動けるなんて……」

 

「空さンってこんな事も出来たンだな~……」

 

「江風、流石にそれは空さんに失礼だよ……」

 

「クマ?この人が戦治郎さんが親友と言ってた空さんクマか?道理ですげぇ動きするわけだクマ」

 

「そう言えば球磨は空さんと初めて会うんだっけ?光太郎さんと輝さんと一緒に例のヌ級と渡り合った戦治郎さんも凄いと思うけど、空さんも十分凄い人だからね!」

 

「私達が空さんと初めて会った時、たった1人で24隻からなる強硬派の深海棲艦の大艦隊を殲滅してたわ……」

 

俺の演武を見ていた面々が、口々にその感想を言い始める。途中から俺の実力についての話になっているようだったが、そんな細かい事は気にしない

 

「お疲れ様です空さん!とても素晴らしい演武でした!その……、私も何かお手伝いをしなければと思ったのですが……、つい演武に見惚れてしまって……」

 

最後に翔鶴が俺の演武を褒め称えたかと思ったら、手伝いが出来なかった件でしょんぼりしてしまった……、やめてくれ、その顔は俺に効く……

 

「気にしないでくれ、むしろ翔鶴が俺の演武を見ていてくれたからこそ、俺は集中してあの演武が出来たんだ。翔鶴が俺の事を見ていてくれたのも立派な手伝いだったのだから、そう気を落とさないでくれ」

 

俺がそう言うと、翔鶴は一瞬驚いた後柔らかな笑顔を俺に向けて礼を言うのだった。うむ、やはり翔鶴はこの顔が一番だな。俺は誰にも悟られぬよう注意しながら、1人心の中でそんな事を思うのであった

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